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第51話 唯一無二の存在妖精ティナ

 『ふーん、あんたがエナの言ってたマリね? あたいはティナ、あんたが何で知ってるか知らないけど妖精よ』


 メリーの肩に乗った妖精はティナと名乗り、マリの目の前に舞い降りた。


 その容姿は幼さを残した美少女であり、何処か大人めいた雰囲気を醸し出していた。輝く金髪が長く伸び、肌は褐色で綺麗な羽を背中から生やしている。


 「初めまして、私がエントン フォル マリだよ。 ひくっ、さっき肩に乗ってたのがメリーさん。 よろしくね」


 『ふん! 別によろしくする気は無いわよ? このピンク髪のメイドから……エナの匂いがして付いて来ただけだし。 って、あんためちゃくちゃ酒臭いわよ!? 一応女の子でしょ?!』


 「酷い! ひくっ、お酒は大好きだけど立派な淑女に何て事を!!」


 マリはティナに胸を張って言うが、残念そうなジト目で見られ冷や汗をかく。一応不味い自覚がマリには有るようだ。


 そんな2人の会話をメリーだけが付いていけていなかった。


 「あ、あの陛下! 本当に目の前に妖精が居るのですか!?」


 何やらメリーは大興奮だが、マリにはいまいち分からない。


 当然だが、マリは乙女小説の本編にて主人公エナを支える妖精の存在を知ってはいた。しかし、詳細は不明で時々手助けをする存在という認識である。


 その際にエナ以外のパーティーメンバーには普通に見えていた描写があった為、マリは疑問を持った。


 「あれ? メリーさんには見えないの?」


 マリの問いにティナが頬を膨らせながら応える。


 『当然でしょ? 私はこの世界唯一無二の存在、全ての精霊の上に立つ妖精よ? こんなピンクに見せる訳無いし!』


 「そ、そうなんだ。 でも、そこを何とか……『い、や、だ! 』


 目と鼻の先で拒絶されたマリは苦笑いをする。しかし、どうやら声だけはメリーにも聞こえる様にしてくれた様だ。 何もない空間から発せられたティナの声にメリーは驚き身震いをした。


 「ご、ごめんねメリーさん。 見られたくないって……ひくっ、声は良いみたい、あはは」


 「い、いえ! とんでもないです! まさか、本当に妖精が実在したとは……」


 えらく恐縮するメリーをマリは不思議に思うが、残念ながら酒に酔っているせいで直ぐに忘れてしまう。


 『ねぇ、さっきの質問に答えてあげるから……あたいの質問にも答えてよ』


 「うん、私に答えれる事なら」


 ティナがマリの手のひらにそっと降り立つ。


 『エナが……あんたが世界を幸せな未来に導くって言ってた。 本当にあんたにそんな覚悟があるの?』


 きつい口調で話すが、ティナの瞳は今にも泣き出しそうだった。


 頼むからあると言ってくれと。


 そう、懇願するかのようなティナにマリは優しく答えた。


 「まだ分からないけど、大好きな弟の為に……ルーデウスが幸せに生きれる様にこの世界の未来を変えようとしてる。 私が目指す未来が、エナさんにとっての希望なら……私は全力でそれを達成させます。 私がどうなったとしても! ひくっ!!」


 「陛下……」 


 『なかなか良い返事じゃない……でも、最後のしゃっくりで全部台無しよ! 全部!』


 ティナの突っ込みに思わずマリは笑い、メリーは複雑な表情をしていた。 しかし、マリの返答に満足はしたのかティナが口を開く。


 『じゃあ……あたいの番ね。 ドワーフ達がした事を考えたら、死ぬしか無いと思うわ。 余りに多くの精霊達を苦しめてる』


 「精霊? ひくっ、それって、エルフが魔法使う時に力を借りる存在だっけ?」


 『あんた……本当に何者? 人間のあんたがよく知ってるわね。そう、この世界には魔力が集まる場所に精霊が生まれるの。 まぁ、自由なあたいと違って不憫な存在ね。 だから、普段は風や水や火とかに宿って移動する。 精霊達は好奇心旺盛だからあちこちに居るわよ?』


 「その……精霊達を苦しめてるとは?」


 『精霊達を兵器に閉じ込めて……自動で運用出来る様に改造したのよ。 勿論、ドワーフ達が望んでやった事では無いわよ?それでも、殺されてもやるべきでは無かった』


 ティナの表情は険しく、ドワーフ達に良い感情は持ってないことが図り知れた。


 「メリーさん、ドワーフ工房ってどんなのがあった?」


 「は、はい! えっと……私が見たことも無い物ばかりでしたので」


 羊皮紙にメリーが見た物の絵を書く。

 それを見たマリの表情が一変した。


 「何よ……コレ。 こんなのが戦争に使われたら大変な事になる! どうして、こんな物が!? 一体誰が考えたの?!」


 其処には、マリが前世で知識として持っていた中世の兵器がズラリと並んでいた。更にそれらを自動で運用できると聞き血の気が引く。


 『結構昔にゴルメディア帝国に奴隷としてドワーフ達を集める様に女皇帝に進言した天才技師さ。 ドワーフ達ですらその腕前と発想を認めてる』


 (天才技師? 結構昔だから、私が転生するより確実に前。 そして、多分……私と同じ転生者がゴルメディア帝国にいる)


 マリは心中で計画の変更を考えるが、残念ながら酔っぱらいの頭ではまとまらず。 後でメリーに相談しようと誓うのであった。


 『ちょっと! あんた、あたいの話し聞いてるの?!』


 「ごめんなさい! 聞いて無かった!って、痛ーーーー!!」


 正直に答えたマリの頭をティナがひっぱたくのであった。

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