表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/231

第15話 亜人解放 その1

 辺境伯爵と密談を終えたマリは客室で泥の様に眠り、朝になり館の外に出るとマリに向かって駆けてくる2人の姿があった。



 「マリ様……おはよう」


 猫耳獣人のミケルがペコリとお辞儀をする。 その愛くるしい姿に、マリの頬はゆるゆるだ。


 「ちょっ……妹がすみません、マリ陛下。 おはよう……ございます」


 まだ辿々しい鬼人のルキも可愛らしくて堪らない。


 「おっはよーーー! 2人共、朝から可愛いねぇーーー!!! ぎゅー! むぎゅー! おめかしして、とっても可愛いし、格好いいわよ!」


 マリは可愛い服を着たミケルとスーツを着たルキを抱きしめて頬擦りする。


 「ふふ……マリ様、くすぐったい」


 「ちょっ!? 待っ!! 許してー!」


 喜ぶ妹と照れて逃げようとする兄を優しく撫でる。


 「いよいよ今日だね~、長旅で疲れてると思うけど……もうすぐ家に帰れるからね」


 「マリ様……さみしい?」


 「勿論さみしいよ? でも、それより2人が亜人の皆が家に帰れる方が嬉しい」


 「ミケル、陛下を困らしたらダメだぞ? それに、俺だって……」


 ルキが何かを言い掛けていたが、メリーが来たことで会話は途切れてしまった。


 「マリ陛下、おはようございます。 皆の準備が出来ました。 参りましょう」


 「おはようメリーさん。 じゃあ、2人はキサラギさん達と居てね? 直ぐに出発するからね~」


 昨晩、キサラギは亜人達の元から動く事は無かった。


 まだ朝の挨拶も交わしておらず、遠目で亜人達を纏めてる恋人を少し寂しげにマリは見つめる。


 (そっか……エルフの奴隷も沢山居たんだもんね。 知ってるエルフもそりゃ居るか……)


 エルフの女性達と話すキサラギを見ると、何故か胸が痛んだ。


 「陛下……?」


 メリーに話し掛けられ、現実に引き戻される。


 「んあ? あ、ごめんごめん。 行こっか」


 マリはキサラギを目で追いながら、メリーと共に砦へと向かう。


 長砦の向こう側、亜人達の領域に向けて。


 ◆◇◆


 「マリ陛下、おはようございます。 昨晩は楽しい時間を下さり、感謝申し上げる」


 砦には、鎧姿のルニア辺境伯爵が多くの兵達と待っていた。


 「おはよう、ルニア辺境伯。 こちらこそありがとう、楽しかったわ。 ジャックもおはよう、準備は出来てる?」


 「はっ! おはようございます陛下。 抜かり無く、亜人側へ送る宝等も運び込んでおります」


 跪き報告をするジャックを一瞥し、伯爵や兵士達を見回す。

 

 「ありがとうジャック。 では、これより亜人解放作戦を実行します。 亜人側の皆さんが警戒しない様に、ルニア辺境伯と兵達は砦で待機。 何があっても動かないこと」


 「なっ!? マリ陛下?! それはなりませぬ! もし、陛下の身に何かあれば王国がゆらぎます」


 ルニアが止めるが、マリの意思は固かった。


 「ありがとう、ルニアさん。 でもね、ここが正念場なの。 長年、家族を友人を……奴隷にしてきた王国が許しを懇願できる……最初で最後のチャンスなの。それなら、私の命を掛けるだけの価値があるわ」


 「マリ陛下は私とメリーが必ず守ります。 辺境伯爵殿は、どうか待機を」


 マリの左右にジャックとメリーが並ぶ。


 「ふふ、そうですわ。 必ずお守り致します。 私達の命に代えても」


 「ぬぐ……了解した。 マリ陛下、昨晩の話を私はお受けします。 なので……無事でお戻りを」


 「ありがとう、ルニアさん。 メリーさんとジャックもありがとう。 2人が一緒なら怖くないよ」


 メリーとジャックの手を取り、マリは覚悟を決める。


 (亜人側には、主人公の逆ハーレムに加わる4人の亜人がいる。 エルフ、鬼人、獣人、ドワーフ……英雄と呼ばれる4人の不評を買わなければ殺されはしない筈……大丈夫。 これを乗り切らないと、王国に未来は無い)


 微かに震える手を、メリーとジャックは優しく握っていた。


 ◆◇◆


 先頭をマリ、メリー、ジャック、後方に多くの亜人達を連れて長砦を抜ける。


 その先の広場には、既に多くの亜人達が待ち構えていた。


 以前から通達はしていたので、戦争にはならない筈だが亜人側には武装した兵士が大勢見える。


 「ふー……メリーさん、ジャック。 先に伝えとくね……もし、私が危害を加えられても……手は出さないでね」


 「「ダメです」」


 即答で断られ、マリは目が点になる。


 「ふえ……? え? いや、ダメだって」


 「「いえいえ、ダメです」」


 「えええぇぇー? だから、もしそれで亜人側と更に険悪になったらダメじゃん!」


 マリが抗議するが、メリーとジャックは前を向いたまま淡々と答える。


 「ですから、私とジャックは手出しはしません」


 「そうです。 ですが、陛下が刺されるなら私が刺されます」


 「マリ陛下が虐げられるなら、私が虐げられます」


 マリは悟った。 2人は仕える主が酷い目に合うなら、執事長とメイド長の我等が受けるつもり等だと。


 2人の固い意思にマリは困惑するばかりだった。


 亜人側に大分近付いた時、メリーの元に1人のメイドが駆けてくる。


  マリの知らない顔だ。


 メリーに何か報告した後、煙の様に消えてしまった。


 (え……!? 忍者? 忍者メイドなの!?)


 マリが目を開いていると、メリーが深刻な顔でマリに話す。


 「マリ陛下……報告です」


 マリとジャックは身構えてメリーの言葉を待った。


 「キサラギが消えました。 私のメイド暗部部隊が見失うとは……申し訳ございません」


 メリーの言葉に、ジャックもマリも酷く驚いた。


 「なっ!? メリーさん……メイド暗部部隊って何? え? そんなのあったの!?」


 「「そっち!?」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ