第102話 妖精ティナ到着
マリは魔族の知識を教える代わりに酒瓶を貰い、美味しそうに飲んでいた。
「ん~、美味しい。 それで? 何が知りたいの?」
「その酒……結構強い筈なんじゃが。 ひゃひゃひゃひゃ、魔族の弱点じゃよ! 新兵器の可愛い人形ちゃん達で魔族に勝てると思っておったが……2体も殺られた!」
クロモトは悔しそうに机を強く叩く。
数時間前にクロモトはスィクススを人質に他の魔族達も殺そうと企てたが、サードに2体殺られたのを強く根に持っていた。
「殺った奴の見た目は近衛師団団長のカエサルじゃった。 じゃが、あの様な小物に儂の人形ちゃんは殺られん! つまり、化け物……魔族は人に変身できるのか? いや、もしやアレが……違うか……しかし」
クロモトはマリに聞いた割に思考に没頭し、何やらブツブツと呟いている。
それを全く気にしないマリは、酒瓶をラッパ飲みしながら待機している人形を見つめた。
無機質な身体、確かに人形だ。
しかし、何処か人間めいた不気味差をマリは感じ取った。
「ねぇ……貴女、もしかして人間だった?」
マリは小声で人形に問うが、返事は返ってこない。
暫く奇妙な時間が過ぎた頃、扉が開いた。
「クロモト、戻った。 忌々しい……誰のお陰で皇帝の座に着けたと思っているのだ。 あの小僧め……ん? クロモト! クロモト!!」
部屋に入って来たのは猛禽類の様な目をしたブラック宰相だ。
「……はっ?! おぉ、ブラック。 ひゃひゃひゃ、すまんすまん。 はて? 何をしておったのか……」
思考の沼にハマっていたクロモトが頭を掻くのをマリは黙って見ていた。
(おいおい、耄碌してますやん。 まぁ、聞かれても答えたくない内容だったから助かったんだけどね~)
酒瓶がそろそろ空になるのを確認しながら、2人の会話に耳を傾ける。
「しっかりしてくれ! あの御方が望まれる軍隊を作るには、滅ぼしたエントン王国の奴隷達が必要なのだ。 なのに、1ヶ月経っても1人も奴隷が送られて来ない」
「ひゃひゃひゃひゃ大方、キャット王国とドック王国が蹂躙し略奪するのに忙しいんじゃろ。 それに、もし計画が遅れる様なら囚人でとりあえず代用する話しじゃったじゃろ?」
「そうだが、お前が女以外は嫌だと拒否したでは無いか! 地下牢には男の囚人ばかりなんだぞ?」
「ぬぅ……男を人形にするのは嫌じゃぁ!!」
「貴様! あの御方がお怒りになられたらどうするつもりだ! 只でさえ、計画が狂っているのに!!」
マリは話を聞きながら、動かない人形を見る。
「やっぱり、元は普通の女性だったんだね。 何て酷い事を……」
どんな極悪非道な行いをすれば、人間をこんな無機質な人形に変えれるのかとマリは身を震わせる。
そして、マリそっちのけで口論する2人の下に黒い妖精が舞い降りた。
『2人共、其処まで。 それで? クロモト……まさか、本当にピンクの魔族を逃がしたの?』
黒いティナに制止された2人は、その場で跪いた。
「そ、そそそそそれは……あ、貴女様に、逃がすように命じられておりま、ましたので!」
冷や汗を流すクロモトの目の前に黒いティナが浮遊する。
『ふ~ん、あたいのせいなんだ?』
クロモトは瞬時に失言を悟ったが、既に時遅しだ。
「そ、そそんな滅相もぎゃぁぁぁぁぁ!!」
黒いティナがクロモトの額に手をかざすと、紋様が浮かび上がりクロモトが悲鳴を上げながら床を転げ回った。
『あははははは! 冗談冗談、いいのよ。 計画は狂ったけど、こうして……マリが戻って来たんだから』
全く冗談になってないクロモトの様子にマリは顔を引き攣らせていたが、黒いティナの不気味な笑みを見た瞬間心の中でメリー達に助けを求めていた。
(メリーさぁぁぁぁん!! 助けれるタイミング今かもぉぉぉぉぉ! 助けてぇぇぇ!!)




