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第1話

晴天の空

雲一つ無い青空を這うように蠢く黒い影

「あー、みっけたみっけた!」

そしてそれを追う少女

青髪のショートに高校の制服を着ている

「よっと!ほいっと!」

少女は家の屋根を次から次へと飛び移り駆けていく

「さてと、いっちょやったりますか!」

少女の手に光が集まっていく

その光は徐々に弓矢の形となっていった

パシュン!

少女が黒い影に向かって矢を放つ

シュッ…!

しかし、黒い影の動きは素早く、矢は簡単にかわされてしまう

「う~わ、どうしよ…当たんないよあれ…」

「近くまで誘き寄せるしかないわね」

耳に付けている通信機から女性の声が聞こえてくる

「え~嫌だよあれ絶対虫じゃん!うねうねしてて気持ち悪いし」

「そんなこと言ってらんないでしょ」

「う~もう分かったよ」

「お小遣い上げてよね」

「パフェでも奢るわ」

「マジ!?やったね!」

少女が矢を数発放つ

シュ…シュ…シュ…

それらは全てかわされる

「やっぱ駄目か…ほら!こっちこっち!」

シュルルルル!!

黒い影が少女の顔めがけて向かっていく

ファサッ…

その影をギリギリのところでブリッジの体勢でかわす

そして黒い影の腹部に狙いを定めて矢を放つ

パシュン!

しかしその攻撃も外れてしまう

カチカチカチ…

黒い影が顎を鳴らして威嚇する

シュルルルル!!

影がふたたび襲いかかる

ガキィッ!!

その攻撃をなんとか弓で抑える

「ぐッ…ぬぬ…」

強い力で押される

「へ…へへッ!かかったね」

「頭上にご注意ください!」

ドシュ!!

先に放った光の矢が影の身体を貫いた

「ギャース!!」

シュウウ……

影が消滅していく

「ふぅ~」

「もしもし?まといさん、終わったよ~」

「こっちでも反応が消えたわ 殲滅完了よお疲れ様」

「ねえ?さっき言ったパフェの件、忘れないでよね?」

「分かってるわよ あんた食べ物のことで怒らせると面倒だから」

「いやいや!私がおかしいみたいに言ってるけど、勝手にプリン食べたりとか普通にありえないからね!?」

「それはごめんって! ねえ?ところでさ、一つ頼みがあるんだけど」

「頼み?なにさ?」

「あたしの娘のことでね」

「あんたと同い年で、それなりにいい高校に入学したんだけど、ちょっと上手くやれなくてね」

「それで、今日あんたのとこの高校に転校することになったの」

「あんまり人付き合いが得意な子じゃないから、あんたの方から仲良くしてあげてほしいの」

「な~んだ、そんなこと!」

「いいよ!その頼み聞いてあげる」

「なんてったって私、神様だから!」

~ある日「地獄の釜」が開かれ、死者がこの世へ蘇った~

暴虐の限りを尽くす死者達を討伐する為、「アテナ」の名を持つ12人の女神が地上へと降り立つ

そして、この少女はそのうちの1人「天月アテナ」

またの「射手のアテナ」

「ありがとう助かるわ」

「先生には話してあるから、多分同じクラスになると思う」

「了解 それじゃ学校行くね」

「うん、いってらっしゃい」

「は~い」

通話を切って、家の屋根から降りる

「今日はなんだか楽しくなりそうな予感!」

~~高校~~

「ふぅ~なんとか遅刻せずに済んだ…」

「流石に朝から化け物退治はキツい…」

「アテナ!おはよう!」

「おっはよ!」

「ねぇ聞いた?うちらのクラスに転校生が来るって!」

「あぁ~聞いた聞いた」

「え?今来たばっかなのに?」

「うん、その転校生の親とちょっと知り合いでさ」

「仲良くしてって頼まれてるんだよね」

「アテナ人脈広すぎじゃね?」

「まあね!私って結構可愛いからさ!気に入られちゃうんだ!」

「自分で言うなよ!」

「にっひひ!」

~~1年1組の教室~~

朝のホームルームが終わり、先生が転校生の紹介へと移る

「どうやら噂が広まって、皆はもう知ってるみたいだがこのクラスに転校生が加わる」

「さ、入って」

ガラッ

「おお!」

転校生の美貌に思わず声が出る

恐らく180cmはあると思われる高身長

すらっとした長い足

暗い紫色の綺麗な長髪

「ど、どうも初めまして…」

「空夜テナリっていいます…」

「えっと…よろしくお願いします…」

「じゃあ空夜さんの席はそこね」

アテナの丁度前の空席を指差す

「あ、はい…」

「えっと…どうも…」

「よろしく!私アテナ!」

「あ…あなたが…えっと…天月さん…」

「もう!アテナでいいよ!」

「で…でも一応…まだ初対面ですし…」

「気にすることないって!それよりなんで私の苗字知ってるの?」

「あ~!もしかして、まといさんから聞いた?」

空夜まとい…テナリの母であり、先の戦闘でアテナと連絡をしていた女性

「あ、はい…」

「そっかそっか!それじゃ話が早いね!」

「…よ、よろしくお願いします…」

「そんな畏まらなくていいのに!」

~~昼休み~~

「よ~しお弁当お弁当!」

「テナリ!一緒に食べよ!」

「え?あ、はい…」

「どう?うちの授業、ついていけそう?」

「そこはなんとか…」

「それは良かった!ま、正直そんなに心配はしてなかったけどね!」

「あの…天月さんは…」

「待って、アテナって呼んで!」

「えっと…アテナ…さんはどうして私に優しくしてくれるんですか?」

「さんはいらないのに」

「う~ん、別に優しくしてあげようと思ってる訳じゃないよ?」

「単純に仲良くなりたいだけ」

「それって、お母さんに頼まれたからですか?」

「ううん、多分頼まれてなくても仲良くしたと思う」

「だってテナリめっちゃ可愛いもん!」

「え!いや…全然そんな…」

「いやいや可愛いって!まじびっくりした!女優さんかと思った!」

「まといさんも結構美人だからね~流石親子って感じ!」

「…………」

「そうだ!今日の放課後空いてる?」

「え?う、うん…」

「じゃあさ!」

~~放課後~~

「え…えっと…」

「フゥ~~~!!」

タンバリンを持って大はしゃぎするアテナ

「いや~やっぱカラオケっしょ!」

「次テナリね!」

「私…あんまりこういうとこ来たことなくて…」

「あ、そうだったんだ 嫌だった?」

「いや!そういうことじゃなくて…!」

「じ…じゃあ!私がんばって歌います!」

「あの…その…全然上手くはないんですけど…」

「別に歌の上手さで競ってる訳じゃないんだからそんなの気にしなくていいよ」

「私だって別に上手い訳じゃないしさ!」

「…ありがとうございます」

「それじゃあ…聴いてください」

~~~~~

「ふぅ…ど、どうでしたか…?」

「う…そ……」

「や、やっぱ聞き苦しかったですよね…」

「いやいやいや!めっちゃ上手いじゃん!!」

「え!?え!?」

「いや私、感動した!!」

「そ、そんな大袈裟です…」

「ううん!そんなことないって!」

「私、テナリの歌めっちゃ好き!」

「ひゃ…!」

「え…えと…ありがとうございます」

「そうだ!ねえ?あだ名で呼んでいい?」

「あだ名…ですか?」

「そう!テナリだから~…テナー!」

「テナー?」

「そ!よろしくね!テナー!」

「…はい!」

プルルルル!

「ん?携帯鳴ってる…」

「まといさんからだ」

「お母さん?」

「うん、ちょっと電話出るね」

「もしも~し?今いいとこだったんだけど?」

「ごめんなさいね、けどそれは私じゃなくて亡者に言ってくれる?」

「はいはい…で?今回はどこ?」

「今地図を送るわ」

「……ここって」

「私達のいるとこじゃん!?」

「達?…誰かとそこにいるの?」

「まさか…テナリ!?」

「え?う…うん」

「今すぐテナリとそこを離れて!!」

「今すぐって言ったって…」

「早く!!」

ピピピピピー

突然、電子音が鳴り響く

ドゴオオオオンッッ!!

次の瞬間、建物が爆破する

「もしもし!アテナ!もしもし!!」

視界が一瞬で煙に覆われる

「う…うぅ…」

「テナー、大丈夫?」

「アテナ……?」

テナリの身体には傷一つない

「私は大丈夫…」

「そっか…それなら良かった…」

「!?…アテナ!?」

アテナの身体にはいくつもの破片が突き刺さっており、出血している

「どうしよ…どうしよ…」

「大丈夫だよテナー」

「私さ、実は人間じゃないんだよね」

「…何を言ってるの?」

ヒュウウウ…

アテナの傷が回復していく

「嘘……」

「私、神様なの!」

「神…様……」

「そ!あ~後これ、ナイショね!」

「立てる?」

「う、うん」

「よっと!」

「わわ!!」

テナリをおんぶして外へと向かう

「驚いた?」

「え?」

「私のこと」

「う…うん」

「そっか…そりゃそうだよね」

「でも…」

「ん?」

「私、アテナと友達になりたい」

「…そっか!」

建物から離れた所でテナリを下ろす

「ここなら大丈夫だと思う」

「アテナはどうするの?」

「私は爆破した犯人をとっちめてくる」

「それが私の役目なの」

「…それ危険じゃない?」

「大丈夫だよ~!言ったでしょ?私、神様だから」

「でも…」

「心配ないって!それと、これ!」

「何?」

「お守り!大事に持っといて!」

「それじゃ!」

「あ…」

アテナは颯爽と去っていてしまった

「お礼…言いたかったのに…」

~~~~~

「いや~今回は派手にやってくれたね」

炎上する建物

「犯人はどこへやら…」

周辺を見渡す

「もうここにはいない…か」

「いや、後ろだ」

「!?」

アテナのすぐ後ろに立つ男

(こいつ…いつの間に!?)

「あの爆破で無傷だなんて…何者だ?お前」

「……亡霊退治ってとこかな」

「ちょっと前に仲間がやられたんだ…」

「そいつとは長い付き合いで美味い酒でも飲みに行こうって約束してたんだよ」

「やっぱ殺ったのお前か?」

「さぁね?私が地獄へ送ったのは1人じゃないから」

「……だったら殺してから確かめてやる」

「お~こっわ」

「言っとくけど、私そんなに優しくないからね」

「関係ないさ…死ねば一緒だ」

パシュン!

アテナが矢を放つ

しかし、そこに男の姿はない

「消えた!?」

(一体どこに…)

シュンッ…!

男がアテナの頭上に現れる

「な!?」

ガキンッ!

男のナイフが地面に刺さる

「っぶないな!」

なんとかギリギリで反応してかわしきる

(この男が突然現れた秘密は瞬間移動か…)

(近接武器を使っている辺り、恐らくそこまで遠い距離は移動できない…)

「はぁ……」

男が再び姿を消す

「そこだ!!」

アテナが後ろを向いて矢を放つ

パシュン!

「!?」

アテナの読み通り、男は後ろに現れた

「また背後取るつもりだったんでしょ?でも残念でした!」

ズシュウウ!!

「がぁッ!…!!」

矢が男を貫通する

貫かれた箇所に傷はなく、ただ光輝く

「これは……!?」

「死者を浄化させる光の矢」

「人や物は貫けないけどあんたには効果抜群ってわけ」

「クソが……」

シュ!

男が瞬間移動で姿を消す

「懲りないねえ」

アテナは身構えて男が姿を現すのを待つ

しかし一向に現れない

シュンッ…!

アテナのはるか後方に男が姿を現した

「やば!あいつ逃げる気じゃん!」

アテナが弓矢を男に向けるが

シュ!

即座に男は瞬間移動を使う

「だあ~もう!無理じゃんあんなの!卑怯者!」

「はぁ…はぁ…ひとまずあいつから…距離を取って…」

「はぁ…あいつは…?」

「アテナ…どこ行ったんだろ…」

テナリがアテナのことを探していた

「……あいつは使えるな」

男がテナリの所へ駆け出す

「!?テナー!!逃げて!!」

「え!?」

アテナの声で男の存在に気づく

だが事態の把握が出来ず、動くことが出来ない

男がテナリの目の前まで近づいたその時

パシュン!

テナリが握っていたお守りから光の矢が放たれた

「な…に…?」

矢は着実に男の身体を貫き、倒れながら消滅していく

「テナー!!大丈夫!?」

息切れしながらアテナがテナリの元へと駆け寄る

「うん……アテナがお守りくれたから」

「そっか……良かった~……」

安堵してへたり込む

「……ありがとう」

「へ?」

「助けてくれてありがとう」

「……そんな大したことないよ」

「ううん、アテナは私を守ってくれた」

「アテナは神様だよ」

「…………」

「私さ、自分で神様だって言ってはいるんだけどさ」

「正直、そういう自覚っていうのかな?あんまり無くてさ」

「だから……テナーは私のこと友達って!…思ってほしくて……」

「分かったよ」

「……本当?」

「うん!アテナがそうしてほしいなら私そうする」

「……ありがとう」

「じゃあ、私もアテナのことあだ名で呼んでいい?」

「全然いいよ!」

「じゃあ……テナーちゃん!」

「え?……それはテナリの…」

「うん、私達のあだ名」

「変かな…?」

「ううん、サイコー!!」

猛スピードで走ってきた1台の車から女性が降りてくる

「アテナ!!テナリ!!」

「まといさん!!」

「お母さん…!」

「テナリ!!」

テナリを思いっきり抱きしめる

「ちょ…ちょっとお母さん!?」

「良かった…良かった無事で…」

「お母さん……」

「ちょっと、私の心配は?」

「あんたは回復するから平気でしょ」

「あー!!ひどい!!ちょっとは心配してくれてもいいのに!!」

「はいはい…」

「あ!今めんどくさいって思ったでしょ!」

「あら?心の声漏れちゃってたかしら?」

「も~!!」

「ふふふふ!」

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