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「なろうのテンプレ」考察  作者: ぶんた
1/1

1 なぜ悪役令嬢には味方がいないのか?

トニア・ハーディング(以下、ト)「こんにちは、このエッセイでは、なろうの愛読者、ブンタさんから、なろうのテンプレについてうかがいます。

インタビュアーのトニア・ハーディングです!ハイエルフです。よろしくお願いします」



ブンタ(以下、文)「こんにちは、ほぼLOM専、ブンタです。

なろう作品をいつも楽しく拝見していますが、SF好きがたたって、たまに設定で矛盾していると感じるというか、もにゃ?となることがあります。

特定の作品の世界観がおかしい、とかそういう話ではなく、なろうのテンプレについて、なんで?と純粋に思うだけなんですが、これ、考察すると面白いかもと思いまして。


そういうわけで、自分は特定の作品を叩くつもりは全くありません。たくさん読んだ中で、どうしてテンプレはこうなってるの?みたいになったことをだらだら語りたいだけです。


でも、ご気分を害しそうな方、どうかブラウザバックでお願いします。ほんと、すいません」


ト「長い、そして、いきなり謝罪から入る!」


文「あ、いや、そこはやっぱりけじめというか…」


ト「では、次、行きましょう!えーっと、今日のお題は、『なぜ、悪役令嬢は愛されないのか?』です」


文「テンプレの不思議な点じゃないですか。


悪役令嬢のテンプレって、美人でスタイルも頭もよくて努力家、王妃教育受けていてマナーも腹芸もばっちり、実家は金持ちで王子と婚約できる程度に有力という、三拍子どころか全てを兼ね備えている、令嬢の中の令嬢、令嬢の鑑みたいな人ですよね」


ト「そうですね」


文「それにも関わらず、婚約者には嫌われる。少なくとも、原作の『ヒロイン』よりは下の存在とみなされる。でも、通常なら、嫌う理由がないことないですか?


あと、婚約者から冷たくされたり、婚約破棄だの断罪だのされたりの時、悪役令嬢の味方になってかばってくれる人がいない。


まだ年若い女の子が、婚約者に冷たくされて悩んでいるとか、これから娼館送りだの、国外追放だのひどい目にあわされそうになっているのに、手助けをしようという人がいない。


これは、周囲の人がどういう損得計算をしているかという話なので、悪役令嬢が嫌われているからだけではないと思いますが、でも、なかには損得関係なく文句を言う人がいてもいいような気がします。


でもいないか、いる場合は、悪役令嬢のことを密かに好きだった人だったりする。


なぜだろう?


というのが、今回のテーマです」


ト「まず、悪役令嬢が完璧というポイントについては、たまにお太目とか、勉強嫌いで礼儀知らずとか、テンプレを変えてくる作品があって、それはそれで面白いというか。

私、結構そういう話好きかな」


文「そうですね。


ただ、政略結婚だし、見た目が悪いから結婚したくないとか言い出す王子に問題ありませんか。マナーだって、いざとなりゃどうにかなるでしょ」


ト「そういうものですか?」


文「マナーなんて、多少恥かいて覚えていくものでしょ?」


ト「うーん、そうなると、どうしても自分の好みの見た目じゃないとか、常識知らずな言動がある相手との婚約を破棄したいというのも当たり前な気がします」


文「そこです!


テンプレの『完璧な悪役令嬢』というポイントを変更した場合、その変更点は婚約破棄を言い渡す側に有利な事情として扱われ、悪役令嬢が前世を思い出すなどの出来事により、その欠点を乗り越えて、政略だけど愛もある結婚をしてハッピーエンドというのが一つのパターンになっています


つまり、悪役令嬢は嫌われてもしょうがない存在だったということになります」


ト「なるほど」


文「一方、テンプレは、『完璧な悪役令嬢』がけなげにがんばっているのに理解されず、断罪されて酷い目にあいそうになる、という理不尽さという前提があって、その理不尽さに対する怒りがざまあの爽快感につながっています。


なので、メタな話をすると、テンプレでは、悪役令嬢は、嫌われている必要あるのですが、嫌われている理由を理不尽にするため、悪役令嬢側から見ると嫌われる理由があってはならない、しかもざまあな結論に到達しうる力、言い換えると理不尽をひっくり返すだけの力も持っている必要があるという矛盾した存在になっています」


ト「うーん、ゲームだから、ではダメですか。いわゆるゲームの強制力により嫌われているとか…」


文「確かに、ゲームの強制力は便利な説明です。ざまあの理由も、ゲームが終わって強制力がなくなったから、と簡単ですし。


そういう設定を使って面白い作品もあるので、全然OKです。


ただ、ゲームの世界だから、という理由にしてしまうと、ゲームが終わったら、その世界も終わりになるのでは?という点で、私はもにゃります。


悪役令嬢が暮らしている世界が、日本と関係なく、自律的に存在しているというのであれば、ゲームの強制力に逃げてしまうのはおかしな気がします」


ト「え、厳しい。…嫌われている理由をメタじゃなく、その世界の現実に照らして具体的に考えたいということですか?」


文「はい。そういうことです。

あと、悪役令嬢が婚約者から嫌われる理由と、味方がいない理由とは分けて考えたいと思います」


ト「婚約者から嫌われる理由としては、悪役令嬢が好みのタイプじゃないと言う感じでしょうか。


好みのタイプじゃないというのは、例えば、婚約者は優しいタイプが好きなのに悪役令嬢は生意気だとか、優秀すぎて劣等感を感じるとか、セクシー系が好きなのに悪役令嬢は清楚系つまり、胸がないとか、もしくはおしとやかすぎてボディタッチしてくれないとか」


文「多いですよね!ほとんどそれ。

それと、広い意味で好みのタイプじゃないという理由に含まれると思うのですが、『政略結婚だから嫌』とかいうのがあって。


多分、自分の好みや相性を考えずに親から結婚相手を押し付けられるのが嫌だということだと思うのですが、『政略結婚だから、どんな相手でも結婚しなくてはならない』というのと『政略結婚だから、どんな相手でも結婚したくない』というのは、どっちも相手の人柄を考えていない時点で同じなんですけどね。


どっちにしろ、好みのタイプかどうかの判断権を持っているのが婚約者だけだという思い込みは、傲慢です。

悪役令嬢が太めだったとかいう場合と違って、この場合は、婚約者側に婚約破棄の責任があるという話の流れになります。


あと、明示的に書かれていることは少ないですが、政略結婚としてのうまみがないという理由もあります。


婚約者は、なぜか第二王子であるなど政治的に弱い立場であることが多く、そういった状況で婚約しているため悪役令嬢の実家はあまり力がなく、悪役令嬢と結婚すると王太子にはなれないとか。

その場合、ヒロインは、男爵令嬢だけど聖女だとか、身分制をひっくり返すようなカードを持っています」


ト「なるほど。ただ、後者はラブラブじゃないですね、なんかさめる」


文「あまり、真実の愛という感じではありませんね。


ただ、乙女ゲームはヒロインの一人称視点で進むのが普通ですから、仮に婚約者側が政略的な発想でヒロインを選んで婚約破棄したとしても、ヒロインがそのことに気付いていなければ明示的に書かれないのではないでしょうか」


ト「では、次行きましょう。


どうして、周囲の人は悪役令嬢の味方をしないのか?


婚約者が王族なら、周囲の人は王族に刃向かえないからかなと思うのですが」


文「それが普通の考えですね。


ただ、テンプレはざまあが結論なので、王権が強すぎると、悪役令嬢側の対抗力の種類が限定されますね。


ざまあを目指さないなら別にいいのですが、まあテンプレどおり行くなら、悪役令嬢が、実は隠していたけれど聖女だったとか、もしくは悪役令嬢を密かに好きだった存在が王権より強い力を持っていたとか。隣国の皇太子とか、竜の番とか。


ま、私は、後者はモヤっとするのですけどね」


ト「ええー!いいじゃないですか、スパダリですよね!」


文「婚約者側の好き嫌いに振り回されて、結局、力を得たとしても、他の男の好き嫌いが力の源泉だというあたり、あまり好きではないかも。


というか、ヒロインが攻略した男の権力を笠に着て悪役令嬢を陥れようとすることが理不尽だというのが元々だったはずなのに、結局悪役令嬢も無自覚に同じことをしているよねというのが、ちょっとすっきりしない」


ト「…そういう感じ方もありますよね(こいつ、めんどくさい)」


文「すいません、あくまでも私はこう感じるというだけなので、トニーさんみたいにそういうお話が好きな方を否定するつもりはないというか…」


ト「ええっと、ブンタさんの考えはわかりました」


文「あと、王族に歯向かえないほど中央集権制であるなら、生徒が平等に扱われるという学園に王族や貴族を集める必要がなくないことありませんか?


生徒が平等というのは、平等に勉学して競わせようという考えがあるのだと思いますが、王権がそんなに強いのであれば、そもそも王族を競争の土俵に載せちゃダメだろみたいな」


ト「ふむ」


文「婚約者以外についても検討してみましょう。


まず、家族は、原則味方になるはずなのです。

だって、家族愛があれば、自分の娘が理不尽に婚約破棄されれば抵抗しますよね。愛がなくとも、悪役令嬢を自分の駒だと思っているとしても、駒と駒の使い手は利害関係が一致しているはずです。


ところが、家族が出てこないか、味方にならないことが意外とあります。


家族が味方ではない理由としては、虐待されているとか、妹の方をかわいがっていて婚約者の浮気相手が妹だとか、兄が婚約者の仲間になってヒロインに味方しているので別に政略結婚する必要がないとかですかね。


あと、家族は、仕事や遠隔地に住んでいると言った理由から、悪役令嬢に関心がないとか。


その他には、家族が王家への忠誠心が高すぎて、悪役令嬢を婚約者のわがままのために犠牲にすることを厭わないとか。


ト「なんだか、虐待っぽいですね」


文「まあ、家族が断罪の場にいないとか、居てもヒロインに攻略され済みの兄弟だったとか、そういうお話なら、しょうがないのかなと思いますけど、それ以外なら、家族が味方にならないことについては、なにか言及がほしいかな。


あと、悪役令嬢が他家に嫁ぐため養子なった義理の兄弟については、一緒に断罪している場合じゃないだろうと思います。自分の地位を脅かしているようなものですから。


こういうツッコミが入っている作品がけっこうあって、私、好きです」


ト「いろいろと考慮する要素がありそうですね。学園の生徒たちについてはどうでしょう」


文「派閥とかの関係で、悪役令嬢の実家は力が弱いとか、失脚を望む派閥があるとか、そういう政略的な理由はあるかもしれません。


他の派閥の令嬢とはマウントの取り合いをせざるを得ず、仲良くなれなかったとか」


ト「ただ、その場合、同じ派閥の生徒はなにをしていたのよって話になりませんか?」


文「そうですよね。


後は、悪役令嬢の性格が悪いと誤解されているので、軽微な罪に対して加重な刑を課してもざまあとしか思われていないという理由が多いですね。


テンプレの構造から、悪役令嬢が理不尽に詰められないといけないので、本当はいい人ですが、雰囲気が冷たそうだから友達がいないとか、王妃教育が忙しくて他の生徒と交流できていないとか、ヒロインに根拠もなく悪いうわさを流されたとか。


悪役令嬢の趣味が高尚すぎて低俗な周りと話が合わないとか、本当はいい人だけど忙しすぎて余裕がなくて上から目線で話をしちゃうタイプだとか。


まあ、周囲の生徒からすれば、婚約者もヒロインも悪役令嬢も同じ一味みたいな感じで、婚約破棄も単なる痴話げんかであって、他人事だと思っているだけかもしれませんけどね」


ト「あとは、使用人は、ヒロインの賄賂等により悪役令嬢の味方になっていないとか」


文「使用人は、王家に逆らえないのかもしれません。


日常的に接する使用人にまで嫌われているのであれば、悪役令嬢は本当に性格が悪い可能性が高く、テンプレを外れていきそうです」


ト「うーん、確かに何の瑕疵もない悪役令嬢が主人公であれば、理不尽な目にあった時の落差がすごくて読者を引きつけそうですけど、でも、そんなに瑕疵がない人じゃないと主人公になれないのでしょうか。


現実だと、少し変わっていたり、ダメなところがあったりするのがあたりまでですよね」


文「少し問題ありでも、それぐらいで国外追放とか処刑とか、理不尽なことは理不尽ですよね。

まあ、そこらへんはテンプレにこだわらなくてもいいのかもしれません」


ト「あと関係者と言えば学校関係者ですね、先生とか」


文「あまり出てきませんが、本来は婚約破棄を途中で中断させるとか、権力を振るうべき立場ですよね。


テンプレではざまあを予定している以上、婚約破棄を阻止できなければ、責任問題になりそうですし、生徒が学校内に兵力を連れ込んで、学校が預かっている生徒、つまり悪役令嬢に暴力を振るうなんて、学校側の責任問題になりそうです。


また、いじめがあったという申告があれば、婚約者側が力で解決するのではなく、教師が主体的に調査、解決するべきではないでしょうか。


まあ、婚約破棄の場が卒業式後の生徒たちの打ち上げなので、卒業をもって学校側の関与がなくなったということなのでしょうか」


ト「その割には、学生ノリで、公爵令嬢と男爵令嬢は学園内では平等だという前提で婚約破棄しますよね」


文「学生生活と卒業後の大人としての生活の狭間にあって、どちらの倫理も徹底していないというあたりが、卒業パーティが婚約破棄の舞台になる理由かもしれません」


ト「なんとなく、まとまったので、今日はこれまでです。


ご清聴ありがとうございました。またねー☆彡」



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