表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひまつぶしに書いた随筆  作者: 檻の熊さん
8/11

ニワトリの鳴き声はコケコッコー

 個人的に、私はどうやら「ネットのお友達」というのが好きではないらしい。


 その昔、まだブログなんかが流行するようになる前、個人開設のHP(ホームページ)なんて物が流行っていた頃のことです。

 今では考えられないことですが、HPにはメールアドレスなんかが普通に貼られ、さらされておりました。

 こういうアドレス相手に迷惑メールや詐欺メールがジャンジャンやって来るようになったのは、もっと後の話、初めの頃は「相談」で、それなりに用事のある方達からのメールが普通でした。

 ペットの健康相談、当時走りだったセカンドオピニオン、中には「薬を処方してくれ」とか「野鳥を引き取りたい」とか法律に触れるような物までありましたが、それなり本業とリンクした内容のものが送られて来ました。

 いえ、当院顧客の方達なんてほぼおらず、私北海道相手方九州みたいな、よく分からないものばかりでしたけどね。


 そういった中、自分的には「不思議な経験」というのをした事があります。

 ひとつは、テレビ番組の製作を行っている会社(正しくは、なんと言うのでしょう?)から、連絡が来るのです。


 あるとき、小道具の提供を求められました。

 もちろん貸すだけですが、なるほどドラマの中で使われたオオタカのレントゲン写真は当院で撮影したもので、なんとエンドロールにうちの動物病院の名前が出ている。

 「あの女優さんが、このレントゲンフィルム触ったの!?」ってなもんです。

 ──家宝にしたりはしませんよ?


 そういう経験、何度かありまして、ものを貸したり、意見を求められてみたり、何なら番組で使う動物を預かってみたり、全てネット上にある当院の情報によってそういう連絡を戴いていたらしい。


 中には馬鹿げたものもありました。

 何回目の改正後だったか、動物愛護管理法に基づいて逮捕された人物がおり、この人は毒を使って飼い主のいるペットを殺そうとしたんですね。

 この関係で、マスコミが取材をしようとして電話が一日中何回も鳴って困ったことがあります。

 なんとなれば、当時病院ブログに「トリの」中毒に関する記事が載っていたからです。

 記憶では、当時事件になったのは対象が犬で、猫にも被害があったらしいですが、当院関係ありません。

 記者の方達の電話内容も微妙で、当院にそのペットくんなりが入院して治療をしているんじゃないか探りを入れてくる内容でした。

 いえ、「記事にはしない!」と言うんですが、電話口で放してくれずに延々30分とか、あり得ないですよね?

 そんな事を何社かやられまして、当時辟易したことがあります。

 まあその、状況から、どの動物病院に入院しているかなんてすぐに分かったんですが、そんな事「親切にも」教えてやるつもりなかったよ。


 まあその、不思議な体験のもうひとつというのは、出版業界というのでしょうか、翻訳をしている方達からメールをもらったことがあります。

 「方達」と言うくらいですから、何回かあります。

 いわく、「獣医系のドラマの台詞で、何を言っているのか分からない」。

 いわく、「トリの鳴き声の擬音の解釈」。

 ──つまり、具体的な部分は辞書に書いてないので、現場で働いていそうな人じゃないと分からない訳ですね。


 いえ、「血管のインとアウトを間違えるな!」みたいな臨場感のあるシーンなんだという説明とかですね、「日本ならニワトリの鳴き声はコケコッコーと書くし読む、でもこの本を書いた国では違っていて、この鳥種ならこう書くのだろう」とか、そんな事を時間をかけて調べて、メールで返していたのです。


 初めの頃は面白がって答えておりましたが、そんな事が10年以上も続いたある日、返信するのを止めました。

 なんなら、メールアドレスをネット上にさらす事もしなくなった。

 つまり、こういった話、全て無報酬で見ず知らずの人々から突然もたらされる謎の依頼だったからです。


 自分では、よく付き合ったものだと思っております。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ