人生と同じくらい難しかった言葉
今や故人の松本零士さんの座右の銘、「時間は夢を裏切らない。夢も時間を裏切ってはならない」というのがあります。
記憶にある初出は、『銀河鉄道999』の続編。
その後、あちこちの作品で見かける様になったかな。
当時の私には、これが意味するところが分かりませんでした。
「夢は時間を裏切らない」なら、分かるのです。
夢は色褪せない、夢を忘れずに、ひたむきにひたむきに走り続けよう──といった所でしょうか?
ところが、「てにをは」の話になりますが、「時間は…」「夢も…」と少しばかり変更されただけなのに、訳が分からなくなる。
当時は、分かった様なふりをしてお茶を濁し、濁し続けていた言葉だったのですが、何年も経ったある日、気が付きました。
有名なゲーテの『ファウスト』には、最後になってファウスト博士が放つ有名な台詞があります。
「時よ止まれ、おまえは美しい」──と。
時が美人って、考えてみたら奇妙な表現ですよね。
出典は、北欧神話あたりなのでしょうか?
あちらの国では、時間というのは女神の管轄で、「時」というのは言わば概念ですが擬人化される事のある表現だったのです。
いたよ!
松本零士さんの作品には、女神様みたいなスッゴイ美人がいたじゃないか!
本当に、ある日ふと気が付いたのです。
メーテルと鉄郎の事だと。
時がメーテルで、夢が鉄郎だったのです。
ようやく、「夢をあきらめるな。時間はおまえの味方だ!時間がおまえを見ている!だから、おまえも時間を裏切るな!」と言っていたのだと、理解出来たのです。
つまり、メーテルみたいな美人さんが、少年の日の夢を忘れないおまえを何時までも見守ってくれているぞ…と。
当時、リアルな自分は「時間というのは残酷なもので、精神も肉体も疲弊していく、夢とはドンドン風化していくものだ…」と、かなりそんな感じだったのだと、気付きました。
いえ、割と夢も希望も全部失った時機に出会った⾔葉だったので・・・松本零士さんゴメ
ンナサイ。
今では、成りたいものに成って、やりたい事を腹⼀杯やって…全然ましな人⽣だったと思えるようになりましたよ。
ちゃんと自分は、この言葉の意味が分かるようになりました。
2017年頃に書いた物です。当時、健康上の理由から人生セミリタイアを余儀なくされ、今ではいよいよセミセミリタイアで人生残り少なくなっておりますが、挫折感というのはあの頃の方が非道かった。
気持ち的に落ち付いたある日、松本零士さんの座右の銘、その意味するところが天啓のように理解出来た。
あくまで個人の解釈ではありますが、そういう事がありました。