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ひまつぶしに書いた随筆  作者: 檻の熊さん
2/11

フクロウには、ギリシア神話ゆかりの鳥種がある

あとで気付いたら、書き直しも出来るんですか?

 “お母さん、冬ってどうしてあるの?”と子供に尋ねられたら、地球の自転と公転の説明をして、自分達の暮らす土地の緯度と経度について理解させたら完璧…そういう親は少数派でしょう。むしろ、ギリシア神話あたりを持ち出して、大地の豊穣を司る女神デメテルが娘のペルセフォネーが冥府の神ハデスのところに嫁に行っちまったのを嘆いてね、この頃になると仕事をしなくなるんだよ…と教えたら子供は納得する(と思う)。要は辻褄さえ合っていたらそれでよく、人間は分かりやすい説明を好むのです。ハデスというのは冥府の神なので悪者扱いされる事も多いですが、現代の倫理観に合わせると嫁さん一筋で地位もありそれに伴う財力もある、かなりな優良物件な旦那です。ちょっとストーカー気質な所が無いじゃないですが、兄弟神の海神ポセイドンや大神ゼウスが浮気をしまくってあちこちに子供を作ったのとはかなり対照的に、そういうエピソードが極端に少ない。デメテルは、何がそんなに嫌だったのでしょう?(娘の幸せが妬ましかったのではないかという、そんなエピソードまである:アリオンとデスポイナ)。


 ペルセフォネーがハデスの妻になったのは冥府のザクロを口にしたからだと言われておりますが、この事を神々に対して証言した冥府の庭師(アスカラポス:Ascalaphus)は、デメテルの呪いによりミミズクにされてしまいました。このミミズクとは、いったいどういうミミズクだったのだろうとなるのですが、よく分かりません。地理的に候補となるのはワシミミズク(Bubo bubo)です。ファラオワシミミズク(Bubo ascalaphus)というのがおりますが、生息域が地中海を挟んでギリシア世界の対岸に位置するアフリカ側になるので直接の関係は無いようです。なにはともあれ、昔に描かれた絵画に出てくるこのエピソードの“ミミズク”は、明らかに大型のフクロウ類です。ミミズクは、御存知ペストコントロールに関与する益鳥であり、デメテルは豊穣神だの地母神だの肩書きのある神ですから、一見したところ良い関係であっても良さそうなものですが、実はそんな間柄で、言わば昔の恨みでデメテルにこき使われていたトリだったんですね。


 こうやって見ると、ゼウスの娘のアテナがフクロウ(コキンメフクロウ:Athene noctua だと言われている)を聖なる動物として所持していたのとは対照的です。こちらの関係は良好なものだったはずで、アテナの別名の中に“フクロウの貌をした女神”というのがあるそうですから、間違っても呪いの対象と見なしていたといった背景はなかったはずです。現実的には、アテナというのは都市防衛における守護神という立ち位置の女神になるので、フクロウというのはその性質上、物見や斥候、間諜といった人々の暗喩だったのではないかと考えられます。


 血縁上、デメテルはゼウスの姉で、それぞれの娘であるペルセフォネーとアテナは同世代の女神になります。アテナというのは、ギリシア人の勢力が増すにつれてギリシア神話の中に比較的後から組み込まれた神になるそうで、こうしたミミズクとフクロウの扱いの中に感じ取れる違和感の正体とは、農耕→都市生活への移行といった、当時の人々の生活の変化の名残なのではないでしょうか。


 ミミズクとフクロウが、大きさや外観が理由で当時の人々からイメージ的に区別/迫害されていたって事は、ないんじゃないかなと私は思うのです。もちろん、でっかいワシミミズクに襲われたら、室内に侵入したらその部屋をなわばりにしているコキンメフクロウに頭を蹴られたというのとは、比較にならない怪我にはなります。事実、オランダには人間を50回以上襲ったというワシミミズクがいたそうですが…。


 この文章は、2021年当時、フクロウ類の学名について調べていた際に閲覧した、Wikipediaに書かれていた「デーメーテール」「ペルセポネー」の記載を参考にしております。


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