神にも電波障害があるようです
この年、僕は15歳になる。
15歳というのは特別で、成人として扱われるようになる。つまり大人の仲間入りというわけだ。
村の中心にある遺跡に村の人が全員いるのでは?と、錯覚する程の人が集まっていて少し緊張する。
「何言われるのか楽しみだな」
言葉とは裏腹に鋭い目つきで言う彼は【グリード・エアバルト】黒髪黒目の少し長めの髪を上で結っている。
「思ってないでしょ」
やれやれ、といった仕草をする彼女はグリードの双子の妹【エイダ・エアバルト】同じく黒髪黒目で短髪。前髪をヘアピンで止めているが、視界に髪が入るのが嫌なんだとか。
「あーめんどくせー!早くおわらねぇかなー!って思ってるでしょ!」
ダメだよと言わんばかりに人差し指を立ててグリードに言う彼女は【シオン・メーシス】桃色の髪と目をしていて、小柄で少し肉付きの良い彼女は村の男からの人気は高い。
そんな3人と僕は、よくある田舎の小さな村で人生一度きりの天啓を迎えた。
遺跡の両脇に立っている柱の中央に4人で立ち祈りを捧げる。
4人の足元を囲むように白い光が円状に光り、それが両脇の柱に伸びると2本の柱は光り始め、遺跡の中央が左右に開く。
「では、初めにレイ・アドラ。遺跡に入って聞いてきなさい」
長老に会釈をして、遺跡の中へと向かう。
中に入ると遺跡の扉は閉まる。ランプのような光源は無く、陽の光も届かないはずなのに、なぜか明るい。
部屋の中央に黒い長方形の石が置いてあるのみでそれ以外の物は何もない。
事前に言われていた通りに黒い石の前に跪き、こうべを垂れる。
黒い石に緑色の線で紋様が浮かび上がり、その紋様は床や壁、天井まで伸び、無機質な女性のような声が部屋全体に響き渡る。
「あなたは……ザー…ザー…魔王…ザー…世界…ザー…ザー…です」
その無機質な女性のような声が聞こえている間、部屋の明かりは点滅し、不気味な様相を呈していた。
いやいやいや。明らかにおかしいよね?照明とかすごい点滅してたし、そもそも天啓がノイズだらけでまともに聞こえなかったけど。
え?僕は魔王なの??世界を征服しろみたいなこと言われた??
混乱する頭で必死に考えるも答えが出る事は無く、部屋中にあった緑色の線も無くなっており、扉が開き始めた。
遺跡を出ると長老にお疲れ様。と会釈され、3人の隣に戻る
どうだったよ?って聞いてくるグリードは同時に長老に呼ばれて、軽く舌打ちをしながら遺跡へと入っていく。
「で、どうだった?」
隣にいるシオンに聞かれる。そのさらに横からエイダが興味津々に顔を覗かせている。
「どうと言われても、ノイズばっかでよく聞き取れなかったよ」
「ノイズ?」
「そう。ノイズ。ザー…ザー…って」
「神にも電波障害はあるのね」
そういってクスクス笑うエイダは長老に睨まれていた。
「とにかくこれが終わったら詳しく話すよ」
とは言いつつも、魔王がどうとか、世界がどうとかって言うべきではないかなと思考を巡らせる。