ダンジョン暮らし 6
ダンジョンをぶらぶら散歩するリトル、今回の目的は地図埋めと宝箱探しだ、箱が欲しく前に指輪を拾った宝箱に行った所、何故か宝箱の中身が入っており、箱は地面から離れず運べそうに無かった。
調べた所、宝箱の補充は規則性が無いが、最大体感三時間程で補充されており、補充されてからの時間が長いほど良い物が入ってそうだ、すぐに開けると小瓶一つ少し時間を置くと武器や防具が出やすい、考え付いたのは宝箱の場所を全部覚え、 散歩ルートとすれば色々拾える可能性が高い。
「ここの小部屋は…あった」
地図万歳、行ってない場所がわかるのが凄く助かる、警戒しながら開けると、中身は…女性用の下着か、袋に仕舞っておく、これで5個の宝箱の位置が分かった、まだ警戒はしているが宝箱に罠がしかけられて無いのか、未だに罠を見ていない、地図を確認するとこの小部屋の隣にぽっかりと空いた場所、通路で囲まれてるが行ける通路は無かった、たまたま空いてるだけか?。
凄く気になる、幸いこの小部屋は狭い、部屋を隅々まで調べ床を壁を叩き音の反響を聞き取り、壁の向こうに空洞があるが、開けれそうな仕掛けは無かった。
結果、鶴橋で全力で壁を掘ってみる、何も無いかも知れないが掘りたい、暫くして鶴橋の先がずぼっと貫き、その周りを掘り、自分が通れるサイズの穴を開け入る。
「金色の箱だ」
狭い部屋に金色の宝箱が一つ…勝手に開き始めた、不味いと思い部屋から出ようとするリトルだが、突如穴が崩れ掘り起こさねば戻れなくなり、覚悟を決め開きつつある宝箱に向き合う、斧を構え開くのを待つ、開く金の宝箱が鈍い音を立てて止まる、錆びていたのか少し開いた状態で止まり宝箱はガタガタともがき中から舌がはみ出た。
「宝箱に擬態する魔物、殺るなら今か」
振り上げた手斧が容赦なく宝箱を叩き舌が挟まり魔物は悲鳴をあげるが、硬く強い手応えにリトルは今のうちに全力で叩き潰すと決めた、何度も何度も振り下ろし、渾身の一撃を切っ掛けに宝箱の魔物は砕け散り消滅し跡には銀色の輪っかが転がる。
拾い上げた瞬間生きてるかの様に輪っかが一人でに動きサイズを変えリトルの腕に腕輪の様に勝手に装備されたが、触ると使い方が何故か理解し、輪が広がりあっさりと外す事が出来た輪を細くし回し放つ、壁をガリガリと切り裂いた後スポッと俺の腕に帰ってきた。
失くすことの無い便利な道具が手に入ったと思っておこう、
瓦礫を退かし小部屋から脱出した、結構時間がかかったと思う、中身が復活してそうな宝箱を探しに行こう。
色々手に入ったが一番嬉しいのは腕輪だ、大蜥蜴の口に投げ込んだ所頭を貫き一撃で倒した、これは非常に便利だ、袋は…いっぱいだ、ソリを取り出し引き摺って帰ろうと思った矢先、誰かに見られてる感覚、魔物じゃない人間にしては遠い。
ガチャガチャと鎧が擦れながら走る音、何か叫びながら通路から飛び出して来たのはリーダーだった。
「ゴーブーリーンー!」
「…」
「はぁはぁ…ちょっと…待ってな…全力で走ったから…おぇ…」
大蜥蜴に座りリーダーが落ち着くのを待っていると後ろからぞろぞろと何人か現れた、前にリーダーと一緒に居た奴等と見覚えのある女。
「本当に待ってるし、言葉通じてるね」
「えっとその!ゴブリンさん!助けていただき有り難う御座います!!」
あ、地図を借りパクした人間だ…返すか、地図を取り出し女に放り投げる、女は地図を確認した後おずおずと俺に差し出す。
「あの、これはゴブリンさんにあげます!お礼になるか分かりませんが皆からも色々持って来ました!」
「(良いのか?)」
「はい!是非受け取って下さい!」
リュックからごそごそと色々取り出す女、整えられた木材、綺麗な布、手斧系、小瓶等色々使えそうな物を取り出して見せるとリュックに仕舞いリュックを差し出し俺は受けとる。
「皆からの気持ちです、何が必要か分からないので本当に気持ちの押し付けですが…」
「(普通に嬉しい)」
「本当ですか!良かったです!」
「…なあペトラ、コイツの言葉分かるのか?」
「表情で多少分かります!」
「表情か…」
じっと俺の顔を見るリーダー、暫くしてリーダーは諦めて本題に入った。
「ゴブリン、実は今回の冒険の目的は君を探してたんだ、お礼の品はついでだ、えっとなあれ?どこだ?」
「リーダーが持ってたら失くすから私が持ってますよ」
仲間からリーダーはスクロールを受け取り俺に見せる、鑑定のスクロール。
「本題は君を鑑定させて欲しい、嫌なら破いてくれ!」
「リーダー!それ高いし依頼料が」
「本人の同意の無い鑑定は犯罪だろう!」
「それは人間にだけ適応されるルールですよ」
「俺は彼をただのゴブリンだと思っていない!」
「(俺も少し気になる、鑑定して構わない)」
「あ、良い見たいです」
「なら使わせて貰う、鑑定!」
スクロールから光が溢れ俺の周りを回転しスクロールに光りが戻るとスクロールには文字が書かれていた。
種族 ホワイトゴブリン
名 リトル
ランク 20
「(あ、名前書いてる、ランクは基準が分からないな)」
「ランクはこの辺りに居るのだと今座ってる大蜥蜴が10です、どれくらい強いかの基準ですね」
「やっぱりネームドじゃん?!」
「リトルって名前なのか!よろしくなリトル!」
「(よろしくリーダー)」
「報告どうすんのリーダー?」
「えっと何だっけ」
「これですこれ」
別のスクロールを取り出し、リーダーが少し嫌そうな顔をする、何が書いている?気まずそうにリーダーが口を開く。
「このさい全部言おう、我々の所属しているギルドはダンジョンに住むネームドと呼ばれる者達を危険視しているが、危険ならレイドによる討伐、問題無しなら干渉禁止が発令される、その診断を今から行わせて貰うが良いか?」
「(俺が危険かどうかの判断か、構わない)」
「良いみたいです」
「人間を殺したことはあるか?」
全員に緊張が走る、後にする筈の質問をリーダーは真っ先に行った、内心無いと言って欲しいと全員が思う中、リトルは頷く。
「(ある)」
「何人位か覚えてるか?」
「(5人だ)」
指を5本立てるリトル、リーダーはそれを見て笑う。
「リトル、その五人は短剣を使う男と、穴熊…いや、他の冒険者を襲ってた四人か?」
「(ああ)」
頷くリトルに全員から安堵の息が漏れ、リーダーが大きく笑う、少し戸惑うリトルに謝るリーダー。
「すまないリトル、君が殺した人間は全員悪人だ、殺して構わない、俺は君が望んで人間を殺さないと信じていたんだ、そこの三人と違ってな、武器を仕舞えお前ら」
「ちょ、リーダー!」
「だって魔物だし!」
「賭けは敗けよ、従うわ」
魔物だから信用はしてなかったのか、まあ正しい、落ち着いたリーダーが気軽な感じで質問を続ける。
「今更だが、人間と敵対する気は?」
「(ない)」
「他の階に行く事は?」
「(像が邪魔で行けそうに無い)」
「何かが邪魔で行けない?」
「魔物避けの像か、行けるなら行く気は?」
「(行ってみたくはある)」
「ふむ、今住んでる所はあるか?」
「(ある)」
「通称で悪いがゴブリン大空洞?」
「(多分そうだな)」
「他のゴブリンは人間を助けるか?」
「(多分助けないな)」
「そうか…これは答えれるのか?まあ良いか、人間を助ける目的は?」
「(目的は仕事か?ん~助けたいと思ったから何だが…あ、そういえば忘れてたな)」
ごそごそと袋を漁るリトル、取り出すのはベル、鳴らせと言われていたな、振ってみるが鳴らない、警戒するリーダーの仲間と首を傾げるリトル。
「そのベルは何です?」
「(オサがリーダーに会ったら鳴らせって)」
「オサ?が鳴らせ?」
「長が居るのか?!会えるのか!?」
「(鳴らないな)」
「リトル、居たの?」
リトルの背後から現れヒョイとベルを回収するオサ、リーダーとペトラ以外は警戒し武器を取るが、オサが手を振ると後ろの三人は縫い付けられる様に地に伏せた。
「皆!!」
「大丈夫よ、危害を加える気が無ければ立てるわ、それより私は貴方と話したい」
「…会ったこと無いと思うが?」
「そうね、無いわでも私は貴方を知っている」
「…?」
「問いたいのよ、貴方は魔物と人間が共存出来ると思ってる?」
「出来る!」
「どうして?」
「言葉が通じなくとも心は通じる!」
「あはぁ、うん良いわね、やっぱり貴方で正解」
リーダーに近付き口付けするオサ、溢れる程の魔力が注ぎ込まれリーダーが倒れそうになるがオサが優しく受け止め、そっと支える。
「リーダーに何を?!」
「他の雌に取られない様にマーキング、後は最下層まで行けばねぇ…」
「(最下層って何階だ?)」
「それは秘密よリトル、部下だけど出来る上司としてはリトルにも報酬を払わないとね、他の階に興味があるのね、リトルには鬱陶しい像の無効化と…何処からでも巣に帰れる様にしてあげる」
手招きするオサに近付くとがリトルの頭に触れる、注ぎ込まれる魔力がメキメキと体を侵食し血が眼と鼻から吹き出し倒れるがオサは気にしない。
「まあこんな所かしらね、じゃあまたねダーリン、リトル、面白い人間が居たら鳴らしなさい、じゃあね~」
ベルをリトルの頭に乗っけてオサは消え、仲間達がリーダーに駆け寄り、倒れたリトルに敵意を向けるが、リーダーが制止する。
「止めろお前ら、これぐらいは想定内だっての、てかリトル!」
「(死ぬかと思った…)」
「無事で良かった、魔人が出てくるとはギルドに追加請求してやる」
起き上がりベルを袋に仕舞い小瓶を取り出し飲むリトル、体は痛いが急成長した感覚がある、リーダーの方は何をされたんだろうか、リーダーは確かめる様に体を動かす。
「多分何も変化は無いな、まあ魔力で匂いを付けたって感じか…しかし最下層なあ」
「(何階層まで行けてるんだ?)」
「ここだと最高記録が9です、大体10区切りなので早ければ10その次なら20です」
「闘技のダンジョンだと100階層あったな」
「ダンジョンが狭いほど深いと言われています、このダンジョンは広いので浅いと予想されてます」
「(気長に行くか)」
「ですね、何かさっきより言葉が分かる気がします!」
「そうみたいだな」
「(来る)」
リーダーとリトルは武器を構える、オサが居た事で近付かなかった大蜥蜴達が気配が消えたのを感じ一斉に現れる、その数六体、倒さず逃げれそうな通路はない。
「大蜥蜴がこんなに?!」
「リーダー!」
「リィンを守れ、援護は不要だ!そっちは任せたぞリトル!」
「(おう!)」
通路から這い出て威嚇する大蜥蜴の口にリトルが腕輪を投げ込み、もう一体に飛び乗り鶴橋で頭を貫き、リーダーは青い刀身の剣を構え飛び掛かってきた大蜥蜴の頭を貫く、氷漬けになり砕ける大蜥蜴、降り注ぐ破片の中他の大蜥蜴に向けて剣を立て構え、降り注ぐ破片が光を放ち氷の刃となり二体の大蜥蜴を襲う。
「リーダーは何時も通り凄いけど」
「本当にゴブリンなのか?」
リングが大蜥蜴の頭を砕きながらリトルの手に戻り、最後の一体にリトルは駆ける、大蜥蜴は喉を鳴らし毒液を吐くが、水のスクロールで現れた壁に毒液は防がれ、距離を詰めたリトルは火のスクロールを最大出力で口内に叩き込んだ、爆発する大蜥蜴の体内、大きく体が跳ね大蜥蜴は動かなくなり、六体の大蜥蜴は全滅した。
「これすると素材がなぁ…」
「(火力高過ぎたか)」
ボロボロの大蜥蜴と丸焦げの大蜥蜴を見て少し後悔する二人、リトルは貰った鞄に大蜥蜴を収納出来る事に驚き喜び、リーダーの体には何の問題も無いが、今回のリトルを探す目的は達成した為帰還するらしい、リーダー達を見送り、ペトラは名残惜しそうに何度か振り返り手を振り帰る。
リトルは巣に帰り大蜥蜴をガトに預け、体を綺麗にしてから自分の部屋へ、貰った物で造りたい物があったのだ、貰った木材でしっかりとした枠組みを造り貰った布を繋ぎ中に蜘蛛の毛を詰める、ベッド二号だ前より広くふかふかだ、前のベッドは椅子の代わりに使う事にしよう、後は貰った武器。
「しっかりとした手斧に、槍、弓矢、リーダー達も解体に使っていたナイフ、今のにも愛着あるが…」
使い込んだ手斧、刃は欠け巻き直した布は血が染み込み持ち手はひび割れている、限界か、せっかくなので今までの手斧は壁に飾りこれからは貰った手斧を使う事にしよう、ナイフは助かる。
袋は数を減らす、これからは鞄を使わせて貰う、タグ入れ、小瓶入れ、スクロール入れと予備入れの四つ、防具の点検も行う、鉢金は問題無いがそれ以外がわりとボロボロだ、明日山を漁り作り直そう、うとうとしてきたのでベッドに倒れ眠りにつく。
地上冒険者ギルドでは報告を聞き職員がため息をつく、リーダーから受け取ったスクロールを確認し再びため息をつく。
「本当に他の奴は見てないよな?」
「剣に誓って」
「リトル、ホワイトゴブリン、ランク20はリトルデーモン狩りの時点で想定通りやけど、筋力増加、体力増加、精力増加
はゴブリンらしいな、生存本能、観察眼、食い縛り、運搬、精神抑制、巨体殺し、女殺し、暗殺者はまぁ経験を積んだ冒険者に良くあるスキルや」
「だな」
「孕神の求愛、淫王の求愛、魔人の卵」
「聞いた事無いな」
「だろうな、ワイも文献で見た事しか無いわ、孕神の求愛は性行為を行った相手の安産だったり母体を健康に保つ、80代の女性と性行為を行ったら20代に若返り子供をどんどん生んだらしい、リトルがその気なら無尽蔵にゴブリンが増えてダンジョンスタンピード確定や」
「リトルがその気なら」
「淫王の求愛、これはハーレム王が持ってたらしい、性行為を行う場合無尽蔵な体力と精力を発揮し3ヶ月は余裕、孕神と合わせたら母体の数だけ手駒が増えるんや」
「リトルがその気ならだろ?」
「わかっとる!本来なら速攻討伐や!リーダー!何故お前はアイツを殺さなかった!!お得意の優しさか?!大勢死ぬんやぞ!!」
「だからリトルがその気ならだろ?アイツは襲える女を襲わない!巣にも連れて行って無い!」
「発覚してないだけかもしれんやろ!!」
「それに!」
「それになんや!」
「アイツは!リトルは!冒険者だ!」
リーダーの胸ぐらを掴み怒鳴る職員、リーダーは諭す様にその手を握り目を見つめる。
「魔人がリトルに叶えたのは他の階層へ移動出来る体だ、アイツは俺達と一緒だ!ダンジョンを潜りたい!何があるか分からない場所を見たいだけだ!」
「なんやそれ…分からんわ…」
「お前が納得する方法を教えてくれ」
「ゴブリンの根絶…は冗談や、そん恐い眼すんなや、ただでさえ最近キナ臭いねん、不安要素は排除したいんや」
「不安要素?」
「商人ギルドがダンジョンを荒らしとる、味方やと思った冒険者にズブリ、冒険者が使ってた物は貴族のステータスらしいで、金が絡めば動くものは多いんや…」
「それをどうにかするのがギルドの仕事だろ?」
「手が足りん、正直な所、リトルが本当に味方ならダンジョンを徘徊する穴熊の様な連中を狩って欲しい位や、冒険者が商人小飼の冒険者と揉めたなら面倒やけど、魔物に殺られたなら問題無いんや、既にあっちは家の冒険者魔物の餌にしとるわ」
「…」
「話しすぎたわ、帰ってきてそうそう悪かったわ、一旦頭冷やそうか」
「カイン、最悪相談はしろよ」
「分かっとるよリーダー」
リーダーが去ったあと部屋に入る者が1人、何か言うまでも無くスクロールを勝手に読みだす。
「リンク、仕事や」
「お父さんだからって横暴だよ」
「緊急や、今読んどるリトルの巣の情報が欲しい」
「うはぁ苗床が居たら最悪だね、調べるだけで良い?」
「繁殖しとったら全部殺せ、リトルもや」
「はいはい、手駒は何人まで?」
「三人」
「了解~ほな行くわ」
ひらひらと手を振り部屋を出るリンク、カインは机に置いてある写真が目に入り拳を握り締めた。