女王陛下への報告
ボーモン、まじめにお仕事を頑張ります
「ボーモン・バスチアン。緊急の連絡とはなんですか?」
女王陛下は極めて落ち着いて連絡を受ける。
「我が領内での今年二度目の魔獣のスタンピードについてご報告があります」
ボーモンも落ち着いている……ように見えるが、実際には怒りに震える右手を必死に抑えていた。
「やはり、なにか裏があるのですね」
「はい。全てはテンペスタ帝国の仕業でした」
「ああ……やはり、あの国の仕業でしたか。我が国の明確な敵国はあの国だけですからね。意図的に魔獣のスタンピードを起こしていたのですね?」
「はい。魔獣達を兵器を使い驚かせて、スタンピードを起こしていたようです」
「なるほど……証拠はありますか?」
ボーモンは自領の魔獣の住む森の様子を念写したものを女王陛下に見せる。
「ここに兵器を使った跡があります。このタイプの大砲は現在テンペスタ帝国しか使っていません。最新兵器ですから」
「なるほど。報告ご苦労。しかし、最新兵器を誇るならこんな回りくどい手を取らなくてもいいと思うのですが」
「我が国に侵略すればそれを非難する国もありますから」
「三国同盟が盾になってくれたわけですか」
「聖龍様を恐れてのこともあるでしょうしね」
ボーモンはユゲットが脳裏に浮かぶ。はやく帰りたい。
「聖龍様はこの国を守護してくださいますが自然災害には手を出されませんからね。戦争を仕掛けて聖龍様に潰されるより自然災害を誘発して内側から壊したかったわけですか」
「支援をするという名目で潜り込む気だったかもしれませんね」
「……やはりあの国は野蛮ですね。ですが、お前の見つけてくれた証拠のお陰で国際裁判を開けそうです。息の根を止める、とまでは行きませんが……テンペスタ帝国は多くの国から非難されることでしょう」
「それで諦めてくれればいいのですが、やけっぱちになって暴走しないか心配です」
「ああ……ありえますね……」
遠い目をする女王陛下。テンペスタ帝国は最近皇帝が代替わりした。新たに皇帝になった男は魔力を人より多く持ち、それ故に魔法で国を一気に発展させることが出来た。しかし、その分元は弱小だった国が一気に発展したため舐められることも多いらしい。舐められないためにと軍事力を誇示するようなところがあり、また侵略戦争も平気で仕掛けてくるので割りと厄介な国なのだ。
「ともかく、証拠になりそうなものは先程見せた念写も含めて全て送ります。ということで私は家に帰ります」
「ええ、テレーズとユゲット様を安心させて差し上げなさい」
「ありがとうございます、女王陛下」
ボーモンはテンペスタ帝国の悪行の証拠になりそうなものを全て女王陛下の元へ魔法で送り、転移魔法でバスチアン侯爵邸へ真っ直ぐに帰った。
テンペスタ帝国に殴り込みに行きたくなるボーモンでした