彼女はお守りを作る
テレーズ、魔力の扱いは得意。
「ボーモン様、顔色が悪いです。大丈夫ですか?少し休みましょう」
「……そうだな、少しだけ君の膝を貸してくれ」
「膝枕ですね!どうぞ!」
テレーズは、最近仕事終わりに疲れた様子を見せるようになったボーモンを見て即行動を起こした。魔力の糸を編み、超強力なアミュレット……精神汚染を弾くものを自作しようとした。そして思い至る。魔力の糸を編むのは簡単に出来るけど、デザインだけはどうしようもない、と。
「ということで、侯爵家の家紋をモチーフにしたんだけどどう思います?」
「素敵だと思います、テレーズ様!」
そして出来上がったのは、侯爵家の家紋に使われている蛇と熊のデザインのアミュレット。とても良い出来である。
「これなら普段から身につけて居られるかな」
「そうですね!旦那様はきっといつでも身につけてくださいますよ」
「よかったです。実はついでに自分の分も作ってあるんだよね。どうですか?」
「わあ……!ペアルックですね!いいと思います!」
そしてテレーズは、おやつの時間にボーモンにプレゼントがあると言ってアミュレットを差し出す。
「ボーモン様、気に入っていただけますか?」
「ああ、これはとても良いな。ありがとう、テレーズ」
「えへへ、はい!」
そしてボーモンがアミュレットを身につけた瞬間だった。ボーモンの身体からモヤのようなものが上がり出て行った。代わりに、最近入ったばかりの新入りの使用人にモヤが入っていく。
「バカな!?呪詛返しだと!?く、さすがは悪女テレーズ!」
新入りの使用人はそれだけ言うとどこかに逃げていった。ボーモンもテレーズもあまりの急展開についていけない。
「ええっと……呪詛返し、ということは彼がボーモン様の最近のお疲れの原因?ですか?」
「そうらしいな……我が侯爵家の騎士団に跡を追わせて調べさせる。少し待って居てくれ」
「はい!」
すっかり身体が軽くなったボーモンは騎士団に指示を出し犯人を割り出す。犯人はボーモンに恋をした令嬢に雇われた呪術師で、他の女性を嫁にしたボーモンに対して嫉妬に狂った令嬢に大金を積まれたとのことらしい。犯人はもちろん犯罪奴隷に、雇った令嬢も修道院行きとなった。
「君のおかげで助かった。ありがとう、テレーズ」
「えへへ。お役に立てて何よりです!」
テレーズの無邪気なその姿に、ボーモンはなんだか少し残念に思った。モテる夫にもっと嫉妬してくれてもいいんじゃないか、と。ボーモンの中で庇護欲とはまた別の感情が、少しずつ芽生え始めている。
ボーモンが鈍いのではなく呪術師の力が強かっただけです。それを祓っちゃうテレーズはすごい。