彼女は娘をさらに愛おしく思う
ユゲットもユゲットで孤独を抱えていました
「テレーズ。ユゲットに家庭教師をつけようと思う」
「それは良い考えですね、ボーモン様」
「ただその前に、まずはユゲットの今の教養と能力を測ろうと思う。聖龍様なわけだし、我ら人間の能力など遥かに超えている可能性もあるからな。下手を打つとユゲットの正体がバレかねない」
「わかりました!」
「というわけでユゲット。私が作った教養レベルを測るテストを受けて欲しい」
ボーモンがユゲットを見れば、ユゲットは嬉しそうに頷く。
「パパが妾のことを考えてそうしてくれるのなら、喜んで受けるのじゃ」
ということで、ユゲットは丸一日教養レベルを測るテストと睨めっこした。
翌日ボーモンが採点をすると、なんと全ての問題を正答していた。早まって家庭教師をつけなくて良かったと息を吐くボーモンと、すごいすごいとユゲットを手放しで褒めちぎるテレーズ。
「妾は伊達に長生きしとらんからのぅ。教養レベルは高いぞぅ?」
「ユゲットは本当にすごいですね!ママは鼻が高いです!」
「そうじゃろうそうじゃろう」
「ユゲット、たしかにすごく立派なんだが……」
「ああ、もちろんパパとママ以外の前では見た目年齢相応の知識レベルしか披露せんよ。それで良いじゃろう?」
ユゲットがウィンクすれば、ボーモンは微笑んだ。
「助かる。ありがとう、ユゲット」
「パパとママのためじゃからのぅ。聖龍は親子であっても〝普通の親子〟の関係にはならず、〝後継者〟としてしか接して貰えないのじゃ。パパとママとの関係はとても面白くて、楽しくて、心が満たされるのじゃ。この関係を続けるための努力なら、妾は惜しまぬよ」
ユゲットの言葉にテレーズは前世の自分を思い出し、思わずユゲットを強く抱きしめる。
「それは寂しかったですよね、ユゲット。パパとママにはたくさん甘えていいんですからね」
「ママ、ありがとうのぅ……ママの温かさが心地よいのじゃ」
「パパもママも、いつだってユゲットの味方だからな。ユゲットが間違えれば叱ってやるし、ユゲットがイジメられたら守ってやる」
「パパは頼りになるのじゃ。パパもママも、本当に大好きなのじゃ!」
ユゲットは初めての〝甘えて良い相手〟〝無償の愛をくれる相手〟に穏やかな気持ちになる。テレーズとボーモンをそれを感じ取り、ますますユゲットを愛おしく思った。
「ところで、家庭教師を付けないなら暇になるのぅ。なにか手伝うことはないかぇ?」
「それなら、魔封じの網作りを手伝って欲しいです!」
「よしきた!任せるが良いぞぅ!」
やる気マックスのユゲット。果たしてどうなるだろうか?
テレーズはさらにユゲットが愛おしくなりました