彼女は聖龍様とばったり出会う
聖龍様登場
テレーズは今、マルカに日傘をさして貰いながらまったりと庭を散策している。
「テレーズ様、今日もいい天気ですねー」
「そうですねー、こんな日には素敵な出会いがありそうですね!」
予感というものは、的中するものである。
「……今、幸福の木が動きませんでしたか?」
「え?」
マルカの指差す方向を見ると、たしかに幸福の木がウゴウゴしている。
「わあ、なにかの動物でしょうか?」
「テレーズ様、一応私の後ろに」
テレーズが一歩下がる。すると、ウゴウゴしていた木から動物が落ちてきた。
「……恐竜?」
「せっ……聖龍様の幼体ー!?」
「……ZZZ」
テレーズが的外れなことを言って首をかしげ、マルカは伝説上の生き物の突然の登場に思わず叫んだ。聖龍様と呼ばれた彼女は、呑気に寝ていた。
「……ということでボーモン様、聖龍様(子供)を一時保護しました」
「どうして君は様々な物事を引き寄せてしまうんだろうな」
ボーモンは最早諦めの境地である。ちなみに、聖龍様とはこのコンスタン王国の聖獣…守り神のような存在である。よっぽどでもない限りお目にかかれないはずの上位の存在なのだ。それが例え幼体だとしても。まあ、幼体でも大抵人間よりは長く生きているのだが。
「私は何もしてないですよぅ……」
「……仕方ない。とりあえずまずは聖龍様の目覚めを待つしかないな」
「でも、どうしてお庭の幸福の木にいたのでしょうか?」
「さあ……?」
テレーズとボーモンが首をかしげていると、簡易的に作った聖龍様用のベッドで寝ていた彼女は起き出した。
「んん……なんじゃ、もう起きる時間かぇ?」
ボーモンとテレーズは即座に頭を下げる。
「ほほ。これは良い寝台じゃの。用意したのはそなたらかぇ?」
「はい、聖龍様」
「良い良い。よくやったの、褒美だ。ほれ」
そう言うと、彼女は金塊を生み出してボーモンに与える。
「ありがたく頂戴致します」
ボーモンは恭しく授かった。
「んんー。しかしよく寝たのぅ…妾の愛し子の匂いがするからと来てみたが、この部屋は特に愛し子の匂いがするのぅ……んん?」
彼女はなぜかテレーズの周りを飛び回る。
「おお!みつけたぞ、我が愛し子よ!」
「……はい?」
思わずボーモンもテレーズも顔を上げて見合わせる。
「そなたが妾の愛し子じゃ!」
「ぼ、ボーモン様……」
「テレーズ……どうして君はいつもそうなんだ……」
「わ、私は何もしてないですよぅ!」
こうしてテレーズは今度は聖龍様の愛し子であることが発覚してしまった。
「ほほほ。光栄すぎて驚いたかぇ?」
そんな中でも聖龍様(子供)はマイペースなようである。
またテレーズの価値が高まる