彼女は孤児院にいく
テレーズ、孤児院の子供達に囲まれて幸せそうに笑う
「孤児院への慰問ですか?」
「そうだ。子供達が毎月の寄付金とスイーツパーティーのお礼に、テレーズに何かしたいと言っているらしい。具体的に何をする気かは知らないが、護衛もつけるから一度ちゃんと会ってやって欲しい。子供達の気持ちを無下にするのは気が引ける」
「そういうことでしたら、行ってきますね」
「頼む」
ということでテレーズは、添い寝の最中にボーモンに頼まれて孤児院へ慰問に行くこととなった。
そんなに遠くもないので、護衛をつけて馬車で向かうテレーズ。マルカも一緒に行く。
しばらく馬車に揺られれば、孤児院についた。
「あ、テレーズ様だー!」
「テレーズ様ー!」
子供達が無邪気に、馬車から降りたテレーズに手を振った。テレーズも手を振り返す。
「皆さんこんにちはー!」
「こんにちはー!」
「今日はお招きいただきありがとうございます!」
「こちらこそいつもありがとうございます!テレーズ様のお陰でご飯が美味しくなりました!」
「お勉強もたくさん出来るようになったんだよー!」
子供達のキラキラした視線に、テレーズはとても感動する。
「皆さんのお役に立てれば何よりです!」
「テレーズ様、早速中に入って!いっぱいやることがあるのー!」
「はい、今行きますね!」
テレーズは子供達に手を引かれて孤児院の施設内に入る。孤児院の職員たちが微笑ましげに見守る中で、テレーズはソファーに座らされた。
「まずはマッサージするよ!僕は肩!」
「私は右腕!」
「私は左腕!」
「レーナが左足!」
「ソフィアが右足やるのー!」
テレーズは子供達の微笑ましいやり取りに笑顔になって、子供達の好きにさせる。
「では、お願いしますね」
「任されたー!」
子供達の力はまだ子供なのでそこまで強くはないが、一生懸命にやってくれているのが伝わる。寝てしまうほどの心地良さではないが、とても気持ちいい。時間を忘れてしまうほどの至福のひと時は、子供達が疲れたら他の子供達と交代しながら一時間で終了した。
「気持ちよかったー?」
「気持ちよかったですよー」
「次はね、演劇を見せてあげるー!いっぱい練習したんだよー!」
テレーズは演劇と聞いて瞳を煌めかせる。
「本当ですか?楽しみです!」
テレーズは前世で、ネグレクトを受けていたためそういうものに憧れていたのだ。
テレーズは子供達の拙くとも一生懸命な演劇を観て感動した。演目もありきたりで、所々端折られていたがそれよりも子供達が自分達で作り上げた演劇というのがテレーズの心を動かしたのだ。
「皆さんお上手でしたよー!」
「ありがとう!テレーズ様にこれあげるー!」
妖精の衣装を着た子供が、テレーズに花束を渡した。
「孤児院の庭に咲いたお花だよ!持って帰ってね!」
「お部屋に飾りますね!ありがとうございます!」
こうしてテレーズと子供達との交流は温かな時間となった。馬車で無事に帰ってきたテレーズが案の定ほわほわと幸せそうにしていたので、ボーモンは行かせてよかったと微笑んだ。
孤児院の子供達も今は小さな幸せを見つけています