彼女は侯爵邸で居心地の良さを噛みしめる
テレーズ、侯爵家の使用人たちに癒される
「皆さん、ただいま戻りました!」
「ただいま。留守の間ご苦労だった」
テレーズとボーモンはアルビオン公爵領の観光も楽しみ、チーズも牛乳をお土産にして転移魔法で帰ってきた。
「おかえりなさいませ。旦那様、テレーズ様」
頭を下げて出迎える使用人一同。お土産を空間魔法で取り出して渡すとキッチン横の貯蔵庫に運んでくれる。
「やっぱり私、実家よりこっちの方が落ち着くかもしれません」
「そうか」
実家では使用人たちに不躾な視線を投げられていたので、そのせいだろう。侯爵家の使用人たちはテレーズに対してかなり好意的だからというのもある。それでも、テレーズが侯爵家を居心地が良いと感じてくれるは純粋に嬉しい。ボーモンはテレーズを優しく抱きしめる。
「ボーモン様?」
「大好きだ、テレーズ」
「え?私もボーモン様が大好きですけど、どうしました?」
きょとんとするテレーズが益々可愛い。
「いや、なんでもない。さあ、そろそろ夕食を食べて風呂に入って眠ろう。今日は楽しく遊び回ったからな。テレーズも疲れただろう?」
「そうですね!すぐに眠れそうです!」
テレーズとボーモンはシリルの作った夕食を堪能して、お風呂に入り、いつもの大きなベッドで添い寝をする。
「テレーズ、今日はアルビオン公爵領の案内をしてくれてありがとう。とても楽しめた」
「こちらこそ、ボーモン様と一緒に遊べてとっても楽しかったです!」
「美味しいチーズと牛乳をお土産に出来たのも良かったな」
チーズの話を振るとテレーズの瞳が輝いた。
「ですよね!シリルさんが早速明日からお料理に使ってくれるそうで、楽しみです!あそこの農家のおじいちゃんとおばあちゃんは、私がいくら文句をつけても嫌な顔一つせず、ずっと最高のチーズ作りに精を出してくれたんです!そして今やアルビオン公爵領はチーズの名産地になって、特におじいちゃんとおばあちゃんの作るチーズはブランド化して。お孫さんたちが商才もあるから、どんどん売れています。アルビオン公爵領の稼ぎ頭ですね!」
早口で喋るテレーズに、ボーモンは優しく頭を撫でた。
「君は本当にチーズとあの夫婦が好きだな。お孫さんたちは商才があるとのことだが、農場は継がないのか?」
「将来的には家族みんなで続けていくそうですよ。若い人が売り込み担当で、親世代がチーズ作りに専念する。で、牛さんの面倒を見るのはおじいちゃんとおばあちゃん。みたいな役割担当らしいです」
「そうか。ならしばらくは安泰だな。チーズが無くなり次第また購入しに行こう」
「はい、ボーモン様!」
こうしてボーモンとテレーズは今度こそハネムーンを終え、日常に戻っていく。
ボーモンはテレーズが楽しそうで何より