彼女はベルトラン公国を堪能する
ハネムーンは存分に楽しんでもらいます
テレーズとボーモンのベルトラン公国ハネムーン二日目。二人は美術館に足を運んだ。
「あ、この絵って確かこの画家の代表作ですよね」
「そうだな。この画家は自分の家族を描くことが多かったらしいな」
「娘さんと奥さんですかね。可愛い」
「この画家は、この絵にどれほどの愛情を注いで描いたんだろうな」
「きっとすごく深い愛を注いだんでしょうね。見ているだけで温かい気持ちになります」
ふんわりと笑うテレーズに、ボーモンも微笑む。
「家族というのは、良いものだな」
「はい!ボーモン様と家族になれてとっても幸せです」
「私も君という家族が出来て幸せだ。…これからも、側にいて欲しい」
「もちろんです!」
人前だというのに容赦なくイチャイチャする二人だが、幸い周りからは温かい目で見守られている。それはいかにも新婚夫婦という雰囲気だからなのか、それとも彼女がアダラールと月詠の婚約を取り持ったテレーズだと薄々気付いているからか。多分両方である。
「あ、こっちは動物の絵ですね。可愛い」
「確かこの画家は犬を専門に描くのが特徴的だったな。犬への並々ならぬ愛情が伝わってくるな」
「描くのが犬だけに限定されているのに、こんなに描けるなんてすごいです」
「写実画というよりもはや念写レベルだよな。上手過ぎる」
テレーズが写真より正確なのではないかと思うほど、リアルな絵である。ボーモンは〝写真〟は知らないが、知っていたら写真だと思っていただろう。
「犬はずっとじっとしてくれるわけじゃないでしょうし、どれほどの努力を積み重ねてきたのでしょうね」
「画家が生きていた当時は人気がなかったというのが悔やまれるな」
「今ではこんなに人気なんだよとご本人にお伝えしたいですね」
テレーズもボーモンも、心置きなく美術館を楽しんだ。
「次はどこに行きましょうか」
「そうだな、せっかく美食の国に来たのだし食べ歩きでもして行くか」
「はい!」
ボーモンとテレーズは屋台の並ぶ通りに出て、一通り食べ物を買い食いしてみる。ボーモンにとっては珍しい経験であり、テレーズにとっても前世ぶりの経験なので新鮮で楽しい。
「美味しいですね、ボーモン様!」
「そうだな。正直とても楽しい」
「ですね!和の国ハネムーンもベルトラン公国ハネムーンも大成功ですね!」
「ああ。滞在期間はまだあるが、早速いい思い出をたくさん作れて最高だ」
満足そうな雰囲気の二人に、マルカ達使用人一同もご満悦であった。
マルカ達も見守るだけだけど楽しんでいます