彼女は着物を着る
テレーズは夢が叶う
テレーズは着物を着てみる。鏡に映る自分の姿を見て、テレーズは感動した。
「わあ……!」
「とってもお似合いです!テレーズ様!」
マルカも賞賛する。店主である嫋やかな女性は、にっこりと笑った。
「お気に召していただけましたか?他にもたくさんありますよ」
その優しげな笑顔に、テレーズは決めた。このデザイナーを、〝推し〟にしようと。
「デザイナーさん!お名前は?」
「高藤凛と申します。どうかなさいましたか?」
「凛さん、私にお店にある全ての着物を売ってくれませんか!?」
「て、テレーズ様!?」
マルカも思わず声を上げる。が、すぐに冷静になった。
「もしかして着物を〝推し〟とやらにするのですか?」
「うん!凛さん、着物って値段が高いですか?」
「ピンキリですね。今お客様が着ていらっしゃるものならかなり高額なものになります」
「全部買うとして、これで足りますか?」
テレーズは持ってきた金貨の山を差し出す。ロイヤルティー収入で得たお小遣い全額だ。
「……本当に全部買ってくださるのですか?ちょっと調べますのでお待ちください」
凛は金貨が本物か、質の良い真っ当な金貨か、金額は着物全てと釣り合うかを調べる。
「……大丈夫ですね。この金貨の山を着物全てと交換でしたね。一日で持ち運ぶのは骨が折れるかと思いますが、よろしければこちらで責任を持ってお待ち致しましょうか?」
「いや、出来れば全部今日馬車に積んで持って帰りたいです!着たいし、献上したい方もいますので!」
「では、せめて馬車へ積む作業くらいはお手伝いさせてください」
「もちろんです!よろしくお願いします、凛さん!」
ということで、迎えに来た馬車に三人でどんどん着物を積んでいく。なんとか全部持って帰れそうである。
「ありがとうございます、凛さん!凛さんはきっと、国一番のデザイナーになると思います!」
「ふふ、ありがとうございます。頑張りますね」
「応援してます!」
そしてテレーズはマルカを連れてバスチアン公爵家に帰った。
帰ったテレーズはさっそくいくつかの着物を着てみて、ボーモンにファッションショーを見せた。ボーモンはどれも似合うと大絶賛。
男物の着物も買ってあるので、ボーモンもテレーズのためにファッションショーさせられる。
テレーズは意外にも着物が似合うボーモンに大興奮。マルカはてっきり、着物を献上したい方とはボーモンのことだと思い二人の様子に微笑んでいた。だから翌日、突然女王陛下に謁見したいとテレーズがアポイントメントを取ろうとするのに物凄く驚いた。
ボーモンははじめての着物にちょっとテンションが上がる