彼女はショッピングをする
テレーズ、楽しむ
ボーモンから与えられたお小遣いを全てノブレスオブリージュの為に充てていたテレーズは、予想外の形で大金を手にした。ボーモンの勧めで投資をすることになり、人生初の推し活を頑張ってみようと意気込んでいる。
が。
「推しって、どうやって作ればいいんだろう……」
前世ではネグレクトを受ける子供で、今世では欲しいものはなんでも手に入る立場にいた。推しの概念は分かるが、見つけ方がわからない。
「マルカさーん。どうしよー」
「大丈夫ですよ、テレーズ様。私も人生初の大金にどうしたらいいかわかりません」
「ポロさんはなんて?」
「貯金してもいいけど、金銭感覚がズレない程度に豪遊してもいいんじゃないかって」
「なるほどー」
ポロさんには相談するんだなーと思うテレーズ。自分の恋愛には疎い割に、ポロとマルカの両片思いにはなんとなく気付いていたが口には出さない。何故って、ポロにマルカを取られたくないからである。
「ということで、テレーズ様。私の奢りでショッピングに行きましょう!いつも喫茶店で奢っていただいているお礼です!」
「乗った!」
ということで、ボーモンに許可を得てテレーズはマルカと出かける。〝友達との〟ショッピングということで、テレーズの強い希望でマルカはお仕着せを脱いで私服に着替えた。馬車に乗って、街に出る。
「さあ、テレーズ様!着きましたよ!」
「おー、これが商店街!」
前世でも今世でも〝商店街〟は初めてなテレーズ。わくわくした様子で一歩を踏み出す。
「まずはどこから回りましょうか」
「じゃあ、あそこから」
「かしこまりました!」
商店街の、雑貨屋や編みぐるみ専門店、文房具屋にパン屋、ケーキ屋などなど様々な店を友達と巡るテレーズ。友達とのショッピングは、どれもとても楽しかった。ボーモンにもお土産のケーキやパンを少しだけ買ってある。あんまり買いすぎるとシリルに怒られるので控えめな量ではあるが。
「さて、最後はこのお店ですね」
「これ……」
テレーズは目を見張る。そこには〝着物〟があった。
「極東の国の出身の人がデザイナーとして単身出稼ぎに来ているそうですよ。そのデザイナーの作品でしょう。ご興味がおありですか?」
「うん……」
着物は、前世でも気になっていた。前世、何処かで見て一度着てみたいと憧れていたのだ。着物の印象が強烈で、何処で見たかはわからないけれど確かに憧れだった。
「ごめんくださーい」
マルカと一緒に中に入る。着物を着た美しい女性が現れた。
「まあまあ、いらっしゃいませ。着物に興味がおありですか?少し着てみますか?」
「では、是非!ね、テレーズ様!」
「う、うん……!」
前世からのテレーズの願いが、今叶いそうである。
マルカ、豪遊中




