彼女はロイヤルティー収入を得る
テレーズ、お小遣いが増える
「ロイヤルティーですか?」
「そうだ。モデスト男爵家から打診があった」
テレーズはボーモンにそう言われるが、思い当たる節がない。
「……なんのことです?」
「マッサージチェアーの件だ。君がマルカをマドロン嬢に紹介したんだろう?その礼……というか、当然の権利としてロイヤルティーが発生する。受け取るか?」
「受け取るかと言われましても……いくらくらいですか?」
「現状で言えばこのくらい入る。多分、この先もっと入るがな」
ボーモンがそう言って提示した金額は、ボーモンが毎月くれるお小遣いの二倍の金額だった。
「……!?」
「もちろん、男爵家にもお金はちゃんと入るぞ。それでこの金額だ」
「う、受け取れません!というか、私よりマルカさんに渡すべきお金では!?」
「男爵家はマルカにも別にロイヤルティーを支払うことにしている。マルカもその金額に目を回していたが、受け取らせることにした」
「そ、そうですか……」
ボーモンはテレーズを見つめる。
「もしどうしてもというなら、テレーズ本人にではなく我がバスチアン侯爵家へのロイヤルティーの支払いにしてもらうことも出来る。その場合侯爵家の財政もより潤うから、君へのお小遣いもその分増額する。それでいいか?」
「是非それでお願いします!」
テレーズとしてはあんまりにも大金過ぎて持っているのも怖いし、使うのも大変そうだと感じたのだ。むしろバスチアン侯爵家に流れてくれた方が、一部差っ引かれるだけとはいえ助かる。
「君は相変わらず欲がないな。少し心配になるくらいだ」
「ボーモン様からのお小遣いで充分ノブレスオブリージュは果たせますもん。増える分は何に使おう……」
「投資をしてみるのはどうだ?」
「投資ですか?」
テレーズには今まで、縁のない世界である。
「好きな画家や作家、デザイナーに金を注ぎ込むのも良い。あるいは魔道具開発や通信事業、鉄道関連に投資するのも有りだな。どうせ必要ないと余っているなら、そういう使い道もある」
「好きな画家や作家、デザイナーに……つまり推し活ですね!」
「……よくわからないが、どういう意味だ?」
推し活と聞いて首をかしげるボーモンに、テレーズは説明する。
「好きな人やキャラクターを応援することです!」
「ああ、なるほど。そうだな。そういうことで良い」
「じゃあまずは推しを見つけなきゃですね!」
心底楽しそうな様子のテレーズを見て、ボーモンは微笑ましく思う。普段あまり欲の無い様子のテレーズに、少しでもその推し活とやらを楽しんで欲しいと心から願った。
そして後日、モデスト男爵家からバスチアン侯爵家にロイヤルティーが支払われた。半分を侯爵家の資産として、半分をテレーズの追加のお小遣いにする。テレーズはその大金を前に、推し活を本格的に行うことに決めた。
テレーズ、人生初の推し活を試みる