彼女は誕生日を祝われる
スタンピードの件があり大々的なパーティーはできません
「おはようございます、ボーモン様!」
「おはよう、テレーズ。今日も君は元気だな」
「はい!元気が取り柄なので!」
「そうか。確かに君の笑顔は幸せを運ぶものな」
いつもどおり、テレーズが目を覚ましてボーモンを起こす。ボーモンはそんなテレーズの頭を撫でて、テレーズはそんなボーモンの手に擦り寄り甘える。ふと、ボーモンの手がテレーズの頭から離れる。テレーズはまだ撫でて欲しいと思いつつ、ボーモンの手を目で追いかける。
「テレーズ」
「はい、ボーモン様」
ボーモンが何かを手にしたのはわかった。テレーズは大人しくボーモンの言葉を待つ。
「お誕生日、おめでとう」
そう言って差し出されたのはシネラリアの花束。
「ボーモン様、私のお誕生日知ってたんですか!?」
「いや、さすがに妻の誕生日くらい把握してるが。君は私をなんだと思っているんだ……」
若干落ち込むボーモン。しかしそんなことはテレーズには関係ない。テレーズは花束を受け取り無邪気に喜んだ。
「ボーモン様!ありがとうございます、大好きです!」
「こちらこそありがとう、テレーズ。…すまないな」
テレーズはボーモンから謝罪を受け、首をかしげる。
「何がですか?」
「君の活躍のおかげでスタンピードの被害を最小限に抑えられたのに、誕生日パーティーも開いてやれない。嫁いできて初めての誕生日だと言うのに……」
テレーズはそんなボーモンの頭を撫でて言った。
「復興の途中ですし、そんな暇ないのは分かってます。それに、領民たちの心に最大限寄り添うボーモン様のそういうところが大好きですよ。自慢の旦那様です!来年、復興も終わって領民たちの心も前に向いてから盛大にお祝いしましょう!」
「……そうだな。ありがとう、テレーズ。誕生日パーティーの代わりにはならないかもしれないが、シリルに言って朝食も昼食も夕食も君の好物ばかりをたくさん用意した。今日は一日食事だけでも楽しんでくれ」
「わあ……!ボーモン様、ありがとうございます!」
好物ばかりと聞いてテレーズは瞳を輝かせる。単純なテレーズにボーモンは小さく笑う。
「そうだ!花束はお部屋に飾りますね!あ、一輪栞にも使おうかな」
「花束もいいが、プレゼントもあるぞ」
「え?」
「プレゼントは何がいいか、ずっと考えていたんだが……」
ボーモンはテレーズの左手を恭しく取り、キスを落とした。
「今日一日、私はテレーズのそばにいる。そのために仕事も昨日死ぬ気で片付けた。私の一日を、君に捧げよう。……どうだ?」
「……ボーモン様大好きー!」
テレーズはボーモンに抱きつき、ボーモンはテレーズを軽々と受け止める。今日一日は、充実した時間を過ごせそうだとボーモンは微笑んだ。
代わりにボーモンがテレーズを喜ばせようとしております