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彼女は質問される

テレーズ、根掘り葉掘りされる

ボーモンや使用人たちに叱られたり泣かれたり怒られたりしつつも、なんだかんだでみんなも仲直りをして体調も回復したテレーズ。今日は、そんな彼女にあるお誘いがあった。


「女王陛下からのお手紙だー!わーい!」


テレーズの大好きな女王陛下からの手紙には、音楽家を紹介するので久々に歌の練習でもやってみないかと書いてある。女王陛下はテレーズが小さな頃からその歌声が好きだったが、大きくなるにつれ段々と女王陛下に歌ってくれることが少なくなり寂しかったらしい。


「ボーモン様、ボーモン様」


「どうした?テレーズ」


「女王陛下が音楽家さんを紹介してくださるそうで、歌の練習を始めてみないかって!小さな頃のように歌って聞かせて欲しいそうです!」


「そうか。わかった、是非雇おう」


「ありがとうございます、ボーモン様!」


瞳をキラキラさせて嬉しそうなテレーズにボーモンは微笑んだ。


「君は本当に女王陛下が好きだな。よっぽど可愛がってもらったんだな」


「わかりますか?女王陛下は私が小さな頃はいつも甘ーいお菓子と芳しいお茶を用意して、私を膝の上に乗せてくださって!私はいつもご機嫌で歌を歌って、女王陛下に甘えていました!」


「なるほどなぁ。女王陛下は子宝には恵まれたが、いずれも王子ばかりだからか?」


「そうなんです!一時は私と王太子殿下の婚約の話もあったそうですよ!」


ボーモンはいきなり落とされた爆弾にむせる。テレーズは慌ててそんなボーモンの背中をさすった。


「ボーモン様、大丈夫ですか!?」


「き、君と王太子殿下が結婚?」


「まあ、その頃にはわがまま娘に育っていたので荷が重いだろうとなかったことになりましたけどね!」


「そ、そうか……」


ボーモンは少し冷静さを取り戻す。


「それに、女王陛下は私の能力をご存知ですから。本当は王家に取り込みたかったんです」


「ああ……なるほど」


ボーモンは考えて、聞いてみることにした。


「君の能力を知る者はどのくらいいるんだ?」


「どうでしょうか……お父様とお母様、お兄様方……使用人たちとアルビオン公爵家直属の騎士団員、あと女王陛下と王配殿下……くらいですかね」


「結構いるな……王太子殿下は?」


「どうなんでしょう?教えていませんが、王太子殿下のことですから調べて知ってるかも?」


「……なるほどな」


ボーモンは頷いた。


「それで、君は今まで何度能力を使った?用途は?」


「用途はもちろん魔獣のスタンピードの押さえ込みです。スタンピードなんてそうそう起こるものではありませんが、アルビオン公爵領だけでなく討伐依頼があった他領でもこっそりやりましたから両手でも数えきれないくらいやりましたね。まあ私の能力は秘密なので手柄はアルビオン公爵家直属の騎士団に明け渡しましたが」


ボーモンは少し心配そうにテレーズを見る。


「そうか。……ちゃんと、褒めてはもらえたのか?」


「それはもちろんです!倒れて数日は寝込んでいましたけど、元気になるとご馳走をいっぱい貰えるんです!お父様もお母様も、お兄様方もたくさん褒めてくださいました!ただ、お母様は時々もう私に無理はさせたくないと泣いていましたけど……」


「なるほど、ちゃんと心配もしてもらえていたんだな」


「?はい。だから、お父様やお兄様方は普段はすっごく過保護でした。お母様はむしろ、元気なうちに好きなように過ごせと言ってくださったのですけど」


ボーモンはなんとなく思う。テレーズの母のそれは純粋な母の愛だが、テレーズの父や兄達のそれは領主やその息子としての『テレーズの利用価値』を考えての……愛とはまた別のものではないかと。


かといって、ボーモンは別に彼らを否定する気はない。ボーモンも領主である以上、テレーズの父や兄達の気持ちも良くわかるつもりだ。利用するものは利用して、自領を守る。それは自分たち領主には必要な考え方だと思う。他領に恩を売るのもよくわかる。


それに、この間訪ねてきたテレーズの兄の様子を見るにまったく愛情がないわけではない。そもそもテレーズの利用価値を考えれば、あえて嫁がせず病弱設定でも付けて手元に置いておく方がいい。それでもボーモンのところに嫁がせたのは、やはり娘や妹に幸せになって欲しいという思いからだと思う。


「テレーズ、君はご実家の方が好きか?」


「はい!大好きです!」


「なら、うちは?我が侯爵家は気に入っているか?」


「もちろんです!ボーモン様も職員さん…えっと使用人の皆さんも大好きです!」


「そうか……ならいい」


テレーズの頭を優しく撫でるボーモン。テレーズはなにも考えずにその手に擦り寄る。ボーモンは、テレーズがわがままな悪の華として有名になった理由になんとなく思い至った。


彼女は多分、本当はどこかで父や兄達が自分ではなくその能力を見ているだけだと感じていたのだ。だから、気を引きたくて悪い子になったのだろう。今のテレーズが良い子なのは、きっとそういう苦しさから解放されたのもあるかもしれない。


ボーモンは、テレーズを大切にしようと改めて誓った。

ボーモン、テレーズに益々庇護欲をくすぐられる

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