彼女は庭師と仲良くなる
テレーズ、着実に侯爵家に馴染む
テレーズは今、なにもすることがないので侯爵邸の中庭を散歩している。
「マルカさん、日傘ありがとうございます!」
「いえいえ、テレーズ様のためですから!」
使用人である自分に当たり前のようにお礼を言ってくれるテレーズに、マルカは良い主人を持てたと幸せを噛み締めていた。
「わー、この花可愛い!薔薇かな」
「薔薇も色々種類がありますもんねー。テレーズ様は薔薇は好きですか?」
「可愛いから大好き!」
テレーズとマルカがそんな話をしながら散策を続けていると、年若い庭師の少年と出会った。
「ポロ!なにしてるの?」
「マルカ。なにって仕事だよ。……奥様!失礼いたしました」
ポロはテレーズに丁寧に頭を下げる。
「そんなに畏まらなくていいですよー。手に持っているのはお花ですか?」
「あ、はい。美しい庭を維持するために、必要な花だけを残しているのです」
「へー。お庭の手入れって奥が深いんですね!」
「はい、そうなのです!植物たちが病気にかかっていないか、栄養や水分は足りているか、どうしたらさらに美しく咲き誇ってくれるか……やることはたくさんありますが、その分やり甲斐もある仕事なのです!」
熱弁してから、ポロはハッと我に帰る。
「も、申し訳ございません奥様。つい熱くなってしまいました」
「テレーズ様。ポロは先代の庭師の孫で、この仕事に誇りを持っているんですよ」
「ま、マルカ!」
テレーズはそれを聞いて、花を持つポロの両手を握った。
「奥様?」
「ポロさんは素晴らしいです!そこまで自分のお仕事に誇りを持てるなんて!」
「そ、そうでしょうか……?」
「そうですとも!お爺さんの仕事を受け継いで、きっちり仕事をこなすその姿勢!私も見習わなきゃですね!」
キラキラした瞳で自分を見つめる奥様に、ポロは自然と口を開いていた。
「あの、奥様。もしよろしければ見学していかれますか?」
「ちょっとポロ!?」
「いいの!?ありがとうございます!」
「テレーズ様、見学するんですか!?」
「うん!」
こうしてテレーズはマルカと更に仲を深めて、ポロの心もがっちりと掴んだのだった。
マルカとポロは幼馴染です