彼女は川に遊びに行く
テレーズ、ちょっと季節外れなデート。
「テレーズ、川にでも遊びに行くか」
「え」
「この間デートを出来なかった埋め合わせだ。しばらく忙しいから、近くの川に遊びに行くくらいしか出来ないが」
「ぜひ行きます!」
ということで、テレーズとボーモンは領内の川に遊びに来た。マルカとシリルを連れてきて、バーベキューをしたり川の生き物を観察したり、楽しく穏やかな時間が過ぎる。
「バーベキューってこんなに美味しいんですね!」
「なんでだろうな。ただ肉や野菜を焼いて食べるだけなのに」
「開放感がいいですよね!」
「なるほど、それもあるか」
「あと、なんとなく雰囲気的にああ遊んでるなって!」
「なるほど?」
テレーズのはしゃぐ姿にボーモンはもちろん、マルカとシリルも癒される。
「テレーズ様、こんなところに小魚が!」
「わー!可愛いー!」
「テレーズ、少し川に入って遊ぶか?」
「いいんですか?」
「ああ。ただ、川は浅く見えても深い部分もあるから、本当にこの辺だけだが」
「全然いいです!」
テレーズは身内しかいないのをいいことに、素足を晒して川に入る。秋から冬に変わるこの季節だが、今日は暖かいので冷たい水が気持ちいい。
「ボーモン様も早くー!」
「私は……いや、いいか。よし」
ボーモンも川に入る。入ると言っても本当に浅いところで足だけ浸る程度だが。
「ふふ、えい!」
テレーズがボーモンに手で水鉄砲をかける。
「やったな?それ!」
「えへへ!えい、えい!」
しばらく水掛け合戦が続いた。マルカは念のためにタオルと着替えを持ってきてよかったと安堵する。シリルはおそらく上がる頃には冷え切っている二人のために、温かいスープを用意するため仕事に取り掛かる。
ひとしきり遊ぶと身体が冷えたことに気付いた二人は川から上がる。マルカに手伝ってもらい身体をタオルで拭い、お互い見えないように着替えてからシリルお手製の温かいスープを飲んで温まる。
「来年はちゃんと夏に来よう。もっと楽しめるぞ」
「わーい、楽しみです!」
「今度はスイカとか持ってきてもいいな」
「スイカ割りが出来ますね!」
「スイカ割り?」
聞き慣れない言葉にボーモンが興味を示す。
「目隠しをして棒でスイカを割るんです!他の人がこう、指示をして」
「……危なくないか?」
「楽しいからいいんです!とはいえ、安全には配慮して行いましょう!」
「そうだな。そうするか」
早くも来年のデートに胸を踊らせる二人に、マルカとシリルも来年の夏が楽しみになる。改めて良い主人に恵まれてよかったと、マルカもシリルも幸せな気分になった。テレーズとボーモンはそんなことなど露知らず、来年の夏の話に花を咲かせていた。
来年の夏、もっと楽しみましょう。