彼女は蜂蜜を掬う
テレーズ、無意識にやらかす。
「蜂蜜?」
「はい!とっても高かったんですが、とっても美味しいんです!」
「ふむ。そのくらいならお小遣いからではなく普通に買ってしまっていいんだが」
「自分のために買ったものですから!」
とても美味しい蜂蜜が手に入ったとご満悦で報告に来たテレーズに、ボーモンは優しく微笑む。
「よかったな、テレーズ」
「はい、ボーモン様!ありがとうございます!ボーモン様も一口味見しますか?」
「いいのか?」
「はい!」
ボーモンがそれならスプーンを用意させなければと考えている間に、テレーズが自分の指で蜂蜜を掬う。
「どうぞ!」
「……ありがとう」
ボーモンは一瞬迷ったが、蜂蜜が垂れる前にテレーズの指ごと舐めとった。テレーズはくすぐったいのか少し笑う。一方でボーモンは、なんだか悪いことをしている気になって気が気ではない。使用人たちもその光景に、ある者は赤面して目を瞑り、ある者はそのラブラブっぷりに頬が緩むのを隠せない。
「……どうした?」
「ボーモン様はしてくれないんですか?」
期待した目を向けてくるテレーズに、ボーモンはまたも一瞬だけ迷ってすぐに指で蜂蜜を掬う。
「ほら、あーん」
「あーん」
テレーズは至って無邪気に蜂蜜を舐めとる。ボーモンとの戯れ合いが楽しいらしい。一方でボーモンは、ちろちろと動く赤い舌や指を這う動きにどうしてくれようかと考え、蜂蜜に満足したテレーズが離れるとその頬をむにょんと引っ張った。
「むー。ボーモン様?」
「むーはこちらのセリフだ。他の男にはやるなよ」
テレーズは理解していないなりに頷く。
「私が蜂蜜を分け合いたいのなんてボーモン様だけですもん」
「それは良かった」
ボーモンはハナからテレーズが理解するとは思っていないので、その返事で満足した。
「あと、これからはちゃんとスプーンを使いなさい。はしたないぞ」
「あ、ごめんなさい!つい、早く味見してほしくて……」
怒られた子犬のようにしゅんとするテレーズに、ボーモンは困ったように笑う。
「怒ってはいない。美味しい蜂蜜を分けてくれてありがとう」
「……!はい!」
パッと笑顔になるテレーズに単純だなぁと思うボーモンも、テレーズに関することには大分甘くなっていることに気付いていない。ボーモンもある意味単純になってきている。そんな二人に使用人たちは今日も癒されていた。
ボーモンもテレーズには甘々。