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彼女は夫とお茶を楽しむ

ボーモンが日に日にテレーズに甘くなる。

「ボーモン様!お仕事も良いですが息抜きにお茶にしませんか!」


「ん?……そうだな。少し休憩するか」


三時。ボーモンの執務室に押しかけたテレーズはお茶のお誘いをボーモンにかける。ボーモンも可愛いテレーズからのお誘いに悪い気はしない。仕事の手を止めて、ワクワクした様子のテレーズに手を引かれるままついて行く。


「今日はお庭で食べましょう!」


「わかった」


庭では既に使用人たちがお茶の準備をしていた。そこについて、テレーズのワクワクの理由がわかった。


「ああ……野良猫か」


「子猫ちゃん達です!可愛いですよね!」


「そうだな。たまには動物を愛でながらお茶を楽しむのも悪くない」


「何か餌をあげても良いですか?」


「飼うつもりがないなら、中途半端なことをすると却って可哀想だ。見るだけにしておきなさい。それに、野良だから病気も怖いしな」


「はーい」


テレーズは庭でどこからか野良猫の親子が遊びに来たのを見つけ、ちょっと離れたところにテーブルと椅子を用意したらしい。ボーモンは猫の親子よりテレーズに対して可愛いものだと思う。


「はぁ……可愛い」


「すまないが、屋敷には入れられないぞ?動物は嫌いではないが、骨董品を破壊されたら面倒だ」


「ですよねー……」


ちょっとしゅんとしながらも大人しくシリルの作ったタルトタタンを味わうテレーズに、頭を撫でるボーモンは思わず零す。


「そもそも我が家には、もう可愛らしい子猫が既にいるしな」


「?」


きょとんとするテレーズに、ボーモンは微笑んで誤魔化す。


「マルカ……奥様は本当にすごいわね。旦那様があんなに甘い顔してる……」


「そうよ!テレーズ様はすごいんだから!」


何故か自分が誇らしそうなマルカに他の使用人たちも笑う。テレーズは、本当にこの屋敷の雰囲気をガラリと変えてしまった。仕事中に談笑出来るような雰囲気ではなかったのに、今ではこんなにも温かく明るい空気が広がっている。


「ボーモン様!猫ちゃん達がヨタヨタ歩くの可愛いですね!」


「手のひらサイズの子猫でも、もう歩けるんだな。野生の生き物は強いな」


「お母さんがペロペロして上げてる!可愛い!」


「ふむ。毛繕いも五匹もいると大変そうだな。親猫は一匹で良く頑張っている。何か支援してやりたいが、無責任なことを出来ないからな……残念だ」


「せめて庭にいる間だけでも穏やかに過ごせると良いですね!」


「そうだな。ここなら天敵になる動物も来ないだろうし」


テレーズの子猫達を見る目は優しい。だが、そんなテレーズを見つめるボーモンの目はもっと優しかった。

テレーズはそれに気づかない。

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