過去の異形と現代の異形 9
ティアマットはそんな騒々しさも知らず、その鈍かった動きをどんどん強くさせる。
そして、化け物の敵意は世界の管理者へと再度、向くのであった。
だが、問題もあった。それは世界の管理者がティアマットを侵攻させないように空間に差し込んだ別の世界。またもやその時空の違う壁に阻まれ、ティアマットは雄叫びを上げる。
「ゴオォォォォォォォォォォォ!!!!」
だが、その時空の壁にヒビが入り始める。
パキ、パキパキ、と。
本来ではありえない。破壊することなど、不可能である。
そう、本来では。
この神を殺すために造り出された究極の生物兵器。時空間破壊生命体、通称ティアマットにそんな『本来』だとか『普通』だとか『通常』なんてものが通用するわけがない。
あれだけ破壊できなかった壁をガツン!とあっけなく破壊し、意気揚々に古代都市エヴィルへと突っ込んでいく。
「はぁ、はぁ」
シリウスは建物の壁にもたれかかり、荒く呼吸をする。だが、すぐに敵意を感じ、そこから飛び出る。すると、瓦礫を破壊しながら黒い泥が津波のように呑みかかる。
シリウスは必死にその泥から逃げるが、その波はもうすぐ足元まで追いついてくる。
もうダメだ、そう思った瞬間、泥はバスン!とはじけて、強い衝撃波を生み出す。
シリウスはその衝撃波に巻き込まれて吹っ飛び、ゴロゴロと地面を転がる。
その彼女の前に歩いて現れるのは、世界の管理者であった。
「私を倒すんじゃなかったのか?」
「……そのつもりだよ」
そうして、拳銃を構える。だが、構えるだけで精一杯。
魔力を込めて、引き金を引く。だが、当てられる自信がない。
(ここまで、か……)
あそこへ行けば。
到達することができれば、まだ、勝てる可能性が……。
だが、どうしようもない可能性を考えたところで、それはどうにもならない。
(弾丸も、今シリンダーに入っている三発で在庫切れだ)
この三発で、殺すことはできなくても!!
彼女はその最後の力を振り絞ろうとしたそのとき
「「!?」」
二人は同時に驚く。
この都市全体に響き渡る低い唸り声、それと共に石畳の地面が地震の激しく揺れ動く。だが、ここは天空。地震が起こることなんてありえない。
では、一体、何が?
と思考しているその最中
ガリガリガリ!と硬いレンガを削る音が鳴る。遠くの建物が根元から破壊され、倒壊していくのだけが確認できる。そして、建物を倒壊させているナニカは、だんだんこちらへと近づいている。
慌てて世界の管理者は原初の泥を召喚し、迫り来るナニカに向けて押し流す。だが、それは泥を跳ね除け、現れる。
その巨大な口で全てを飲み込み、鋭い牙で標的を噛み砕かんとするそれは、神殺しの化け物。
「ティアマット、だとぉ!?」
まさか、ありえない!
あの別世界の壁を突破してくるなんて、予想外すぎる!!




