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冒険の世界へ 2

 「まず、何から話そうか…。とりあえず、最近、色んな所で話題になっている流星の話からしよう。まず、我々の世界にはある伝説がある。『闇の者を追い払う者たち、天空から四つの光として降り注ぐ』というものだ。そして三日ほど前、四つの光が空から降ってきた。そしてこの村付近にその一つが落ちてきたのだが、そこに君がいた……」


 「つまり、その伝説の『闇を追い払う者たち』の一人だと?」


 「さぁ。伝説として語り継がれてきたものだし、その確証はない」


 やいちは一度自分の身に起こったこと、そして、彼が話してくれた伝説のことを合わせて頭の中で情報を整理し始める。


 まず、自分の部屋で起こったあの光。ここに来たのはあれが原因だろう。そして、伝説の話。その中の一人だとは思わない。それに、『闇を追い払う』という所から、もし仮に自分が勇者的なポジションだったとしても、この世界に興味はない。


 今、心配なのは、三人の事だ。


 四つの光、自分を除いて三つ。つまり……格闘家に博士、姫がこっちの世界に来ているのだろう。


 「なぁ、残りの三つはどこに落ちたんだ?」


 「それはまだわからないですが、落ちた方向を見るに一つは東、次が西、そして最後は北だというぐらいですかね」


 「方角だけか?」


 「もっと詳しくいうなら、東の国である妖国に、北の国シン。そして、西の国ジョウキリに落ちたのではないか?と予測しています」


 「そうか……」


 やいちは再び自分の寝ていたベッドに戻り、座る。


 「では、次に我々の事を教えよう。私は見ての通り医者だ。君が落ちてきたとき、その衝撃でこの村の者数名が大怪我を負ってしまった。ので、ここで治療をしている、そしてこちらの男が―」


 医者が言い終わる前に、研究者らしき男は医者よりも前に出てしゃべり始める。


 「私の名前はイードルと言ってただの研究者だ。君の事はたくさんの者が知りたがっているし、多くの者が伝説の勇者だと思っている。もちろん、私もそうだ!この国の騎士だって君のことをスカウトしようと狙っている。私以外の……伝説について調べている歴史学者や、この世界とは違う君の肉体を知りたがっている人体学者、私のような魔法学者だって君のことを生で見て研究したいと思っている!それで―!」


 「少し待ちたまえ、イードル博士」


 騎士の恰好をした女性は一度に早口でしゃべる彼を無理やり止める。


 「一度に多くのことを話したって理解できまい。それに、この勇者殿もきっとこの世界に来たばっかで混乱しているのではないか?」


 「あ、ああ。そうですねぇ……少し興奮していました。ちょっとの間、外で風に当たってきます」


 そういってイードルは部屋から出ていく。


 「すまないね。さて、まずは自己紹介をしよう。君の名前は?」


 「やいちです」


 「ヤチイ?ヤツィ?すまない。あまり聞きなれない発音で言いにくい。すまないが、このまま勇者殿で良

いか?」


 やいちはこくりと頷き、了承する。


 「では勇者殿。私の名前はエイビル・レニアスと言うこの国の騎士団、副団長だ。私は単純に魔物討伐の任を受けてこの付近を探索していたのだが…ちょうどそのタイミングで君が降ってきた。部下に君のことを伝えるために騎士団本部へと送らせ、そしてその間君のことを監視させて貰うことにした。一応、空から落ちてきた身元不明の怪しい人物だからね。なぁに、監視と言っても四六時中見ているわけではないから、安心してくれ」


 そういうと彼女は立ち上がり、この部屋から出ようとする。


 「ではまた明日、君の様子を見に来る。ではまた」


 そう言い残し、出て行ってしまう。


 「さて、私は他の患者を見に行かなければいけないから、私も出ていこう。君はあと数日私のところで診させてもらうよ。でも、体の具合は良さそうだから、外には自由に出ても良い。何かあったら……さっきの騎士とかに助けを求めれば良い。お金のことに関してはあの研究者にでもたかってくれ。君であれば快く快諾するだろう。まぁ、のちに見返りとして研究対象にさせてくれとか言ってくると思うがね」


 そういって部屋にはやいちと、ベッドで寝ている数人の患者しかいなくなる。


 やいちは再びベッドで横になり、考える。これからのことを……。


 (俺はどうするべきだ?この世界に助けてくれるような知り合いはいない、金もなければ、家もない。いや……俺の目的はただ一つ。あいつらを探して、無事四人で元の世界に戻ること―。ただそれだけ!)


 窓の外を見る。どうやら起きてから数十分しか経っていないが、そもそも起きた時刻が遅い時間帯だったらしい。すでに日が落ちかけ、世界は緋色に染まっている。


 「明日からだな、行動は……」


 そう思いながら、その夜はやいちのベッドでずっと横になっていた。

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