嫉妬 8
こうしてメルリルがやいちの事に驚いている間に、レニアスは考えていた。
(人型であれば、私でも相手出来るだろう。だが、今はあの形態だ。弱点も、倒し方も分からない。私も妖精と契約して、魔法が使えれば……)
だが、今自分の力で出来るのは、死ぬ覚悟を持ってこの剣で突き刺すということだ。
彼女が持っている剣はただの剣ではない。魔力を全く伝導させない特殊な鉱石で作られた代物である。これは、魔力が使えないのであれば、逆に相手が魔法で攻撃しようと、どんなバリアで身を守ろうとしても、それを破り、前へ突き進めばいい。そう彼女なりに考えた結果出来た剣である。
これならば、魔力を身に纏って防御しているレイビィアにも刺せるだろう。しかし、刺せるだけで大したダメージを与えられないだろう。
「我々は、役にも立てないのか……!?」
そうしているうちに、やいちの肉体魔力量が全て元に戻る。
「良し!」
やいちは肩を回し、今度こそ倒すと心で決め、歩き始める。敵に向かって。
「待て!!また同じ目に合うだけだぞ!!」
「じゃあどうすればいいんだ!?」
「私に考えがある。みんな、集まってくれ!」
そう言われ、やいちにスピネル、レ二アスに騎士団全員がメルリルを囲む。
「良いか、私が奴を食い止めている感じ、私の攻撃は奴に聞かなかった。しかし、勇者殿に、スピネルの攻撃は奴にしっかり効いた。そこに奴の弱点がある!!」
「というと?」
「私の魔力の性質は『岩へと変化させる』だ。それに対し、スピネルは火系の性質だし、勇者殿は分からないが、なんだか周りが焦げ臭い所から、『熱』が発生するような性質があるのだろうと推測できる。つまり……!」
「「「相手は熱に弱い!」」」
やいちとスピネル、レ二アスが同時に答えにたどり着く。
「ああ、ヤツは今、さきほどの攻撃でやいちと同様、一度の大量の魔力消費によって動かなくなっている。しかし、油断はできない。そこで、スピネルと勇者殿が再び魔力切れを起こすほどの魔力によって攻撃、大きなダメージを与えることによって勇者殿が言っていた人型の形態に強制的に引きずり戻す。そして、そこを我々が叩く!不満はないか?」
皆が頷き、その案に肯定の意を示す。
「よろしい、ならば作戦決行だ!」
こうして、最初にスピネルとやいちが自分の役割を果たすために敵の前に飛び出す。
二人はレイビィアの多数の目に見られる。辺り一帯に闇を充満させてこちらを覗くそれは、恐ろしく、恐怖で、悪夢そのもののようであった、そして、こちらを呑み込もうと巨大な口を開け、突進してくる。
「化け物め!これを喰らえ!!」
スピネルは空中に炎の巨大な球を。やいちは右手に魔力を終結させ、そのままバチバチと光に変化させる。
「「行くぞ!!」」
二人の声は重なり、同時にその攻撃を放つ。
炎の球は弾丸のように、やいちの光は槍のように、全てを込めた一撃を放つ。
「ああああアァああぁアアあァああ!!」
奴の巨体に二つの穴ができ、そこからドロドロに自分の肉体が溶けだす。
「ああ、ぎゃあああ、い、ああ」
どんどん自分の肉体が穴から飛び出し、どんどん巨体が小さくなっていく。そして、
「ううう、ううう!!」
そこには一人の人間が立っていた。
「ワタしは、こんナとコロで!!マケられない!!」
邪悪なエネルギーをその身に宿し、さきほどではないものの、それに負けない力を引き出す。
「ねタマしい、ネタマしい、ねたまシイ、ネタマシイ、ねたましい、ネたマシいいいいいいいいい!!」
どんどん自身の力を増幅させていく。それが頂点に達しようとしたときに、場は再び動く。
「今だ!」
メルリル、レニアス、騎士団が飛び出し、剣で奴の体を一斉に突き刺す。
グサ、グサグサッ!
彼女から一斉に血が噴き出す。持っていた邪悪な剣を落とし、その場で崩れ落ちる。
「ああ、ここ、までなの、か……」
その寂しそうな声と共に、眠りに落ちる。
体が上手く動かないが、それでもなんとかやいちとスピネルは立ち上る。
「死んだのか……?」
「いや、死なせはしないよ。彼女には、聞きたいことがいっぱいあるからね」
そうして皆が改めてレイビィアに近づこうとしているとき、やいちは何か頭に引っかかる。
「?」
それはどんどん強くなり、そして、気づく。
(武装が……消えない?)
倒れている彼女が身の纏っているのは、禍々しい鎧であり、それは明らかに自然に取れる鉱石で作られたものではない。彼女が放っていたエネルギーと同じ匂いがする。それが、解けないということは。
「まだ…終わっていない?」
「え?」
ぼそ、とやいちのつぶやきに一番近くにいたスピネルが気づく。




