再結成
やいちは夢を見た。
「助けて!お願い、やいち君たちなら…!」
どういう意味だ?教えてくれ!おい!
「はっ!」
じりじりじり!と時計のタイマーが鳴り響いている。
「今日も同じ夢か…」
やいちは時間を確認すると、一瞬大学の授業に遅れた!と思ったが、起きたばっかりで寝ぼけていたようだ、よくよく考えると、昨日から夏休みに入っており、しばらくやらないといけないことなんて無かった。
「もうちょっと寝ておくか?」
しかし、休みの日にしては早く起きれたのだ、せっかくなので朝のゆったりとした時間を楽しむことにした。
とりあえず自分の部屋から出て、リビングのテレビの電源をつける。
二日前から、彼の父は一週間ほど出張でおらず、母も学生時代の友達と旅行ということで三日ほどいないということで家の中はかなり静かだ。いつも通りであれば、母が家事をしていたり、休みであれば父がテレビを見ていたりしているものだ。自由な生活ができると思っていたが、これはこれで寂しさを感じる。
『今日、空手日本代表の……』
テレビではニュース番組があっており、すぐに録画していたアニメにでも変えようかと思っていたが、ニュースの内容に耳を傾けてしまう。
というのも、この空手日本代表というのはやいちの幼馴染であり、戦闘能力の高さから「格闘家」と呼ばれていた。
昔は仲が良く、中学まで一緒だったが、別の高校に行くようになり、最初の方は度々会っていたが、時間が合わなくようになり、今では全く会うことはない。
(懐かしいな)
この格闘家以外にも、あと二人幼馴染がいる。
一人はかわいくて、小学生のころから男子に人気があった女の子でそれゆえに「姫」と言われていた。彼女は現在、高校を卒業した後、大学に行かず、ネットでバーチャル系の活動を始めたようなのだ。元から興味があるとは聞いていたが、今では視聴回数が百万は超えれるようになった大物だ。
もうひとりは成績優秀で、雑学王とも呼ばれていた。しかし、我々幼馴染の中では「博士」と呼ばれていた。彼女もまた、海外に留学してるという噂を聞く。
最近、彼らとの…小学生のころの事を考えてしまう。
高校から別々になり、最初の頃こそ、メールなどでやり取りして、会える日には遊んでいたが、だんだんと学校生活が忙しくなっていった結果、今では全くやり取りがない。
またあの頃のように…。そう思っているのは俺だけだろうか。
それと同時に、自分とはすでに住む世界が違う住人にも見えるのだ。
何かしら、自分の力で今では有名人である三人……それに比べ俺は何も成し遂げていない……。
『…ということだそうです。では次のニュースです』
別の事件の話にニュースが変わり、そこで心の中で思考していた意識が外の現実へと戻る。そして今度こそ録画していたアニメを見始める。
最初のCMとオープニングの間に歯磨きを終わらせ、朝ごはんを作るのがめんどくさかったやいちはパンをトースターに突っ込み、焼いたそれをバターに乗せるだけという工夫もなにもない朝食を取る。
ごはんを食べ、アニメを見終えると、自分の部屋に向かい、パソコンを起動する。そして最近人気のバトルロワイヤル系のFPSをやり始める。
(昨日、あともうちょっとで爪痕取れそうだったのにな…今日はランクマッチで普通にランク上げるか。そろそろプレデターだしな)
午後三時頃。
朝からやっていたやいちはお腹減ったなと思い、時計を見ると、すでに昼食の時間帯を過ぎているのに驚く。
「通りで腹が鳴るわけだ」
料理が出来ないわけではないが、あまり得意とせず、バリエーションもないため、近くのファミレスで外食でもしようと最低限の身だしなみを整え、家を出る。
ドアを開けた瞬間、熱気がぶわりと二十四時間クーラーをつけていた家の中に入ってくる。
「あっちーなぁ」
セミの鳴く声、照り焼く太陽。
すべてが夏を感じさせる。
そんな中、ふと目に入るのは公園の中でボールで遊ぶ子供たちだ。
人数は四人。まるで昔、幼馴染たちと遊んだ記憶がよみがえり、脳が勝手に子供たちと過去の自分たちに入れ替えていく。
懐かしいこの感じ。
その直後、めまいを感じ、頭痛が走る。
「うッ!」
近くのガードレールに左手を置き、体を支えさせる。もう片方の余った手で頭を押さえる。
「はぁ、はぁ、この暑さで頭がまいったか?」
近年上昇を見せる夏の気温。こうなってしまうのは仕方のないことなのかもしれない。ふらふらと歩きながら、数分かけてファミレスへとたどり着く。
「ようやくか…」
中は南国のように冷えており、昼過ぎの時間帯で客は少なく、適当に開いている席に座ろうとする。
「あっ!お、お前はっ―!」
驚きの声が通り過ぎようとしていた角のテーブルから上がる。
聞き覚えのある声…。この声は!
「格闘、家か?」
「お前はゲーマーじゃねぇか!」
そこには今朝ニュースで見た、幼馴染の一人。格闘家ではないか。
「久しぶりだな!いつぶりだ!?」
「さ、さぁな。高校一年の夏休み前までは会っていた記憶はある。でも、確か夏休みに入ってからお前は部活が忙しくなって、それから会えなかっただろ?」
「そうだったか?まぁ、良い。とりあえず、ここ座れよ」
そう言われ、彼の向かい側の開いた椅子へと座る。




