新旧換装 ~プレアデス五番塔メカニックのひとりごと~
-こんな夢を見た-
プレアデスはスバルといわれる星。
そこには地球に来る前に地球を学ぶ場所がある。
生命の設計図をつくる研究。それをするものが詰める塔。
そのひとつ、五番塔でひとりのメカニックが新旧モデルの換装をしている。
ニューモデルに組建て直したら使わない部品が出てきたので、傍らにある小箱にコロっと置いておいた。
部品を傍目に、ニューモデルの仕上げに取りかかる。
…ずいぶん古い型だなあと思う。
これはこれで趣があっていいのだが、
なにぶん重くて錆びやすい。
ニューモデルは滑らかで、有機的な、もしかしたら心が宿るのでは?と期待してしまうようなものにまで進化している。
ナノ技術とカーボンとコウジカビがうまく効いている。
しかし、不思議なもので、古いタイプがすっかり無くなるか?というと
「そうでもない」
ニューモデルが発光する。
振動の波の幅が細かくなって光出す。
それを凝視しつつ言葉にしてみる。
そう。そうでもない。
ふるくても、これがいいんだよとコレクションする人もいる。
すぐに熱でダレて誤差がでる。
不純物の出る部品を使っているからノイズが出やすくて振動が不安定。
これがいい。
動かしているという実感がわく。
手入れをしないと維持できないコレが、愛しい。
そういう需要があるのだから。
それでいいんだろう。
内燃式の車両がそこらをたくさん走っていた時代は、トランスミッションはオートマチックとマニュアルと無段変速という方法を取っていたそうだが、
一番操作が複雑なマニュアルがいつまでも無くならなかったのは、操る楽しみがあったからだと私は思う。
操るのだか、操られるのだか…
「それはわからない」
完成。
ニューモデルはふわりと微光を発する。
遠くまで見えるような大袈裟な光は要らない。
これ自体の内側を充たすだけの発光を生み出す振動数があれば、あとは自律的に…。
七日かけてメンテナンスをした。
七日目にやっと終わったニューモデルへの換装。
古いのが、だめなんじゃない。
もともと要らなかった補助パーツだ。
時が来たら外してやるのがメカニックの愛というやつだ。
いきなり外れた補助パーツに震えているのか、
それとも設計通りにスマートに震えているのか?
「神のみぞ知るってやつさ」
わたしは作業台を離れて部屋を出た。
プレアデスの五番塔、生物の設計は今日も生まれ続けている。
読んでくれて、ありがとう。