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転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第三章 英雄達は楽ができない
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第79話 ヘタレのヒデヨシ

――この野郎、秀吉だと?


 イワネツは転生前、偉人や伝記本の愛好者だったため、その名前にピンと来た。


 こいつ、もしかしてあの日本の偉人、豊臣秀吉の生まれ変わりなのではと。


 確か日本の偉人の秀吉は農民の出だったが、織田信長と言う名将の草履持ちをする事で出世し、ニックネームが猿と呼ばれていた事を思い出す。


「お前、あの高名なヒデヨシか!?」


「へい、ヒデヨシです!」


 イワネツは、ロシア人特有の表情筋の乏しさから一気に頬が緩み、使えるやつが配下にやってきたと一瞬歓喜の表情になった。


 しかしヘルは、ため息を吐いて猿顔の男、ヒデヨシを見やる。


「うん、間違いなくヒデヨシと言う名前だわさ。ただしこいつの転生前の名前は、木下秀吉。転生前に住所不定無職の元暴力団員だったけど、無様に死んだ子悪党だわさ」


 ヘルの答えに、イワネツはずっこけそうになった。


「んだよ、豊臣秀吉の生まれ変わりかと思って期待させやがって。失せろ猿野郎」


 しかし、ヒデヨシは土下座をして地面に擦り付けて懇願した。


「やっぱりあなた様も地球から転生したお人だったんですね! おねげえします! どうかあたしを男にしてやってくだせえ。あなたを見てピンと来やした! この方はこのあたしが生まれ変わった世界の、織田信長のようなお人だと! 役に立ちますんで、どうかあたくしめにチャンスを!」


 イワネツは舌打ちした後、情報をまず引き出す事にした。


「そうか、で、お前は……」


「ああ、この地獄にいた元罪人ならアレだわさ。勉強とかしないで、学校もろくに行かず暴走族に入った後、ヤクザになった。けどなんかパッとしない感じかしら? 犯罪者でクズだわさ」


 自分が聞き出そうと思った情報を、ヘルがすらすらと冥界魔法で魂の記録を読み上げたので、イワネツは思わずずっこけた。


 ヒデヨシも何でこの小娘は、自分の情けない前世を知ってるんだと目を丸くしてヘルを見る。


「おほほほ、わらわの事が気になるかしら? チビ人間よ、わらわはこの世界に舞い降りた、か……」


 言い終わる前にイワネツがヘルの頭を引っ叩き、睨みつけた。


「お前、俺の話聞いてねえのかメスガキ。おう、こいつは生き別れの妹で、今さっき出会えて再会を喜び合ってんだ! わかったか猿野郎!」


「ははー! ノリナガ様!」


 絶対嘘だろとヒデヨシは思いながら、とりあえず地面に頭を擦りながら頭を下げた。


 ヒデヨシは前世をふいに思い出す。

 

 彼が生れたのは1970年代後半、神奈川県の県央。


 横浜市と川崎市のような大都市と言う程でもなく、古都鎌倉や箱根と小田原や湘南地区と比べて観光明媚な名所もない、東京都町田市に近い地方都市と言った土地柄。


 ヒデヨシは駅前でスナック経営をする母から生まれて父を知らず、客はチンピラばかりで、若いはずなのに酒焼けして声がガラガラだった母から、お前の父親はすごい男だったんだ、偉い男なんだと言われながら、勉強もできずスポーツでも目立たなかった小学校を経て中学生になる。


 中学は窓ガラスがそこかしこ割れて、校舎が落書きされ放題、OBの暴走族が来ては後輩たちにタカリにくるような、底辺の市立中学だった。


 ヒデヨシは、一年生でヤクザの息子が中心の番長グループに取り入り、パシリを申し出る。


 スポーツも出来ない、勉強もできない自分が成り上がるには一番手っ取り早い方法。


 ヒデヨシと言う名前を持った以上、自分も古の英雄のように成り上ってやろうと考えたのだ。


 このヤクザの息子も、父が関係するスナックにいる息子だという事も小学校時代から知っており、同じ小学校のよしみもあり、信用できるし使えるパシリになるなと思い、グループに引き入れ、さして喧嘩も強いわけでもなく、金も持っていないようなヒデヨシは中学の不良グループの中心となった。


 あとは不良お決まりのコースである。


 地元で先輩の暴走族に入り、高校など通わずパーティ券、所謂パー券を売ったり、チーム名が書いてあるステッカーを売り捌いたり、吸引目的の工業用シンナーやトルエンを、オロナミンCや栄養ドリンクの瓶に詰めて、同い年くらいの年代に売り払うC瓶売り。


 ヒデヨシは商才があったのだろうか、喧嘩はからきしダメだったが、チームの資金を稼いだことで同世代から頭一つ抜け、暴走族連合の副総長にまで上り詰める。


「よう、ヒデヨシ。おめえよくやってるじゃんか。OBとして鼻が高いぜ、なあ? 族卒業したらうちの組に来いや」 


 当時は18歳で暴走族は卒業、だいたいが先輩勧めで地元の建築会社に入るか、大工や鳶になるか飲食店関係や、または夢を追いかけて東京や横浜などの都市部に向かうか。


 こうして警察から追い回され、公道をバイクや車で暴走する青春を送った少年達は、大人となるためにそれぞれの道を歩みだし、暴走族を卒業する。


 暴走族だったヒデヨシの卒業後の就職先は地元の極道だった。


 見習いヤクザは、修行と言う事で部屋住みとして事務所に住み込みとなる。


 この修行身分はきつく、ヘマをすれば容赦なく暴力が振るわれ、先輩ヤクザからのいじめの対象になったり、親分や幹部へのお伺いや電話番、炊事洗濯掃除やパシリなど。


 また、大きな葬儀や祝いの席などの義理事や、どうしても人が必要な仕事で、組織から有無を言わさず呼び出されて体をかけるので、部屋住みヤクザは24時間休みなしの暇なし金無しである。


 しかしヒデヨシは部屋住み時代さして苦労はしなかった。


 先に組で頭角を現していた族のOBの先輩達がいたおかげで、シノギが早いうちから回ってきたのと、自分の族の後輩達から来るアガリがあれば、修行中のヤクザでも定期的に金が入ってくる。


 しかも暴走族をやっていただけあって運転技術もあり、親分や兄貴分の送り迎えもお手の物で、先輩たちの無茶な要求やパシリも別に苦ではなく、慣れたもの。


 また、族を卒業する後輩達を自分の組に引き入れれば、先輩として威張れるから、面倒な部屋住み修業が大分軽減されていく。


 部屋住みを2年近く経験したある日、組のナンバー2の若頭から呼び出された。


「ヒデヨシ、おめえ若いのに頑張ってるし、真面目に仕事するし、いい感じじゃねえか。もうおめえも20歳だっけか? 誕生日プレゼントで親父さんがおめえに盃降ろしてくれるってよ、よかったな。俺からは誕生日記念に焼肉連れてってやる」


若頭(かしら)……ありがとうございます! 自分これからも頑張りやす!」


 ヤクザにとって、盃と言うのは重い意味を持つ。


 親子兄弟の盃は、疑似家族形態をとっているが、実の親兄弟よりも優先しなければならない、血の結束でもあり、これがないと一人前のヤクザとしても男としても認めてもらえない。


 一般社会で言うならば、盃を貰ってこその正社員登用。


 それ以外は、どんなに頑張っても命を賭けても非正規雇用身分なのだ。


 しかし、ヤクザには本質と呼ばれるものがある。


 1990年代、ヒデヨシはヤクザの本質を垣間見て、男を試されることとなった。


 西暦1992年平成3年5月15日、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、通称「暴対法」が施行され、裏社会の情勢が一気に急変する。


 今まで民事不介入として、ある意味野放しになってきたヤクザの活動が、「暴力団」と国から指定され、警察が躍起になって取締りを開始し、バブル景気も下火になり、日本中が不景気になった数年後に異変は起きた。


 社会全体が不景気になれば、今まで大手銀行や証券会社、大手企業でも少ない顧客、パイの奪い合いとなり統合合併や分裂騒動など社会問題化し、それは表社会だけでなく裏社会でも起きたのだ。

 

 当時、組の若手で売り出し中だったヒデヨシと自身の組は、巨大組織同士の抗争事件に巻き込まれる。


 自分が所属していた神奈川の組織は、戦後に三国人と呼ばれる不良外国人組織や愚連隊、今でいう半グレ組織を、伝説的な親分が圧倒的な暴力と人間力で制圧し、傘下にしていった日本でも有数の大組織だが、その親分も亡くなり跡目争いから大きな抗争事件に発展したのだった。


 さらにややこしい事に、親戚団体だったはずの関西大手の巨大組織、極悪組もこの巨大組織の分裂騒動に乗じるように関東に進出し、その尖兵として極悪組の中でも屈指の武闘派、清水一家の滝沢康、通称喧嘩師ヤスの二つ名を持つ男が手打ち調停と称して、切り崩しにやってくる。


 ヒデヨシが在籍していた神奈川の最大手は、かつての仲間だった組織同士が敵同士になり、早期の手打ちが実現されればと内心思ったが、極悪組の介入で抗争が激化の一途をたどり、自分達の上部組織は関西と徹底抗戦する派閥の急先鋒となっていたのだ。


 ある日ヒデヨシは、兄貴分や舎弟たちと、街から外れにあった中華料理屋の駐車場で、上位組織の親分と自分の親分が取仕切る会合の警護につく。


 懐にソ連製のコピーのピストル、トカレフを忍ばせ、ヒデヨシはもしも敵対組織に襲われたらと、想像しただけで身震いして、店から親分たちが出てくるのを待っていた。


 ヒデヨシは暴走族時代、副総長ではあったが、やっていたのは金稼ぎとOBでもあり先輩のヤクザとのパイプ役で、揉め事が起きた時は、総長と特攻隊長がタイマンで決着をつけてきたため、荒事なんかほとんどしたことがなかった。


 他には、越境してくる東京の八王子や町田、または横浜辺りの敵対暴走族相手に、半ば同盟状態にあった湘南の暴走族たちと共同の暴走行為や、後輩達と鉄パイプや金属バットで相手を取り囲んで脅しをかけたくらいで、先輩か後輩のバイクの後ろに乗って暴走行為中に、度胸試しでパトカーのフロントガラスを割ったくらい。


 ヤクザになってからもやっていたシノギは、後輩の暴走族の面倒見や、不良少年達を使ったダフ屋行為、ダイヤルQ2を利用したテレクラやツーショットダイヤルの援助交際の仲介、それに後輩がやってる飲食店のみかじめなど。


 自分は暴力と言うよりも、どちらかというと商才で食べてる部類であり、暴力とは無縁の筈なのにと、親分たちが店から出てくるまで、ずっしりとしたトカレフの重みを感じながら、注意深く付近の道路を注意深く警戒していた。


「たくよお、関西の野郎ら神奈川の事もわかんねえ癖にしゃしゃり出やがってなあ?」


「全くですわ。おかげで四六時中若いのつけなきゃならねえし、めんどくせえですぜ」


 自分の親分と上部組織の会長が愚痴を言い合いながら、店から出てきた時だった。


 駐車場に二人乗りバイクの男達がいきなり入ってきて、駐車場を塞ぐようにダンプカーが止まる。


 すると、あれよあれよという間に、バイクの二人乗りの男達は持っていた金属バットを、兄貴分や舎弟分に振り下ろしていき、自分は懐からトカレフを懐から抜き出すも、金属バットで右手を殴られてピストルを落としてしまう。


「ヒデヨシいいいいいいい! 親分だ、親分たちを守るんだああああああ!」


 暴走族時代の先輩である兄貴分が、流血する頭部を手で抑えながら自分に命ずるが、ヒデヨシは恐怖で足が全然動かない。


 自分が、若い衆が命をかけてでも守らねばならない、親分が目の前にいるのに、恐怖でヒデヨシの体は完全に固まってしまったのだ。


 フルフェイスのヒットマンは、ヒデヨシが持っていたトカレフを拾うと、それを逆に向けてくる。


「ひっ、ひええええええええ」


 ヒデヨシは恐怖で腰砕けになり、尻もちをついて小便を漏らし、その場を動けなくなった。


「はん、ヘタレが」


 ヒットマンはヒデヨシに吐き捨てるように呟き、トカレフを握り締めると、自分の親分や会長に銃口を向ける。


「すんまへん、渡世上の都合により申し訳あれへんが、往生したって下さい」


 短く乾いた銃声が8回した後、ヒデヨシの目の前で守るべき会長と親分が、蜂の巣にされた。


 これにより、関西との徹底抗戦路線は立ち消え、抗争は結局関西と手を握った派閥が勝利し、ヒデヨシの組織は組長を失い、報復に走った若頭も警察に逮捕されたことで組が解散。


 残りの組員は散り散りとなって、上部団体ごと関西極悪組に吸収合併と相成った。


 ヒデヨシは、地元にシノギの地盤があったため、地元を離れられず組の看板が極悪組に代わり、失意の日々を過ごしながら、冷や飯食いとなる。


 彼は、ヒデヨシはヤクザの本質を理解出来てなかったのである。


 子は慕った親を守り、体をかける。

 親は子を守り、組織の為に看板を死守する。


 これが本来のヤクザ稼業であり、それが世間一般では無法者、暴力団と呼ばれようが、親を殺されそうになったら命がけで相手に立ち向かう。


 (いにしえ)から受け継がれた、仁義の原理原則が理解できていなかったのだ。


 男が試される場面で男を見せることが出来ず、これ以降、ヒデヨシの組織内の評価は、売り出し中の若手から、自分のけん銃を奪われたことで親分も守れなかったヘタレ呼ばわりされ、落ち目の一途をたどり、ついた渾名がヘタレのヒデヨシ。


 自分が憧れた戦国武将、立身出世の夢である、豊臣秀吉とは真逆の人生だった。


 暴走族の後輩達は、次々と組織の階段を上がっていき、後輩達からも陰でヘタレ呼ばわりされながら、それでも見栄を張ったヒデヨシは、自分を大きく見せるために借金を重ね、雪だるま式に負債が増えていき、ついには自分ではどうする事も出来なくなる。


 しかし、それを帳消しにできるかもしれない最後のチャンスがヒデヨシに訪れた。


 2000年代後半、神奈川で起きた事が関西でも起きる。


 巨大組織極悪組の分裂危機騒動。


 6代目極悪組を受け継いだばかりの、凶暴にして大胆不敵、狡猾にして極悪とまで称された清水正義に反目する一派が、分離独立を企てる。


 この煽りを受け、神奈川でも極悪組に遺恨を抱く勢力がいたため、事態を重く見た極悪組若頭の滝沢康からの極秘指令が下った。


 事態がボヤのうちに反乱分子を処分するか暗殺せよ。


 借金まみれとなり、しょぼくれたヘタレのヤクザに落ちぶれたヒデヨシは、ある日組長室に呼ばれ、関西から来た若手でやり手の組長が、机の上にトカレフをごとりと置く。


「のう木下、お前元々は、組の古株やろ? 下の者からヘタレや言われて悔しくないんか? 男になれるチャンスや」


 ようは、鉄砲玉の命令である。


 ヤクザは、ヒットマンを鉄砲玉と呼び、一度撃ったら戻ってこないから鉄砲玉。


 敵対組織に殺されるか、警察に捕まり長い懲役に出るから来ている。


「これで手柄たてれば、誰もお前をヘタレなんか言わへんし、俺がそないな事、まわりにも言わせへんようにする。な? 頼むで」


 その時、新しく代紋を継いだ組長の声と言葉に、ヒデヨシはハッとなる。


 フルフェイスをして誰かわからなかったが、この目の前にいる男こそが、自分が落ち目になった原因を作ったヒットマンで、ヘタレと呼ばれるようになった張本人であると気が付いたのだ。


――殺すか? 今この場で、元々俺が盃貰ってて、可愛がってくれた親父さんの仇を取って。それとも……こいつの言う通り、俺は手柄を立てて……。


 ヒデヨシはトカレフを握り締め、目の前の組長をじっと見つめる。


「なんや? 心配すんな。あとの面倒は全部見てやるし、借金だって手柄さえ立てれば、チャラにしたってもええ。男になるか、ならんのかどっちや? お前はヘタレか?」


 ヒデヨシは人生の選択を迫られた。


 ピストルで、目の前の男を殺して仇を取るか。

 ピストルで、手柄を立ててやり直すか。


 そしてヒデヨシは第3の道を選択する。


 ヒデヨシはトカレフを手に取り、組長室から出て、懐に隠し持ったまま小田急電鉄に乗り込み、若い時に暴走族仲間と遊び回った思い出の地、江の島まで赴くと、海へトカレフを投げ捨てた。


「何がヘタレだ! もう俺はヤクザなんかやってられるか! 男を馬鹿にしやがって、ふざけんな!」 


 それ以降、ヒデヨシは組を戻ることがなかった。


「で? よくわかんねえけど、このヒデヨシはどんな野郎だったんだ? 妹よ」  


「わらわは、お前の妹じゃないだわさ! そこのヒデヨシだけど、ヤクザやめて東京で色々な事やったけどうまくいかなくて、なりすまし電話で、老人からお金騙しとる詐欺師をやろうとした。けど、結局ダメになったのだわさ」


 暴力団排除条例の、いわゆる5年縛り。


 現役ヤクザと同様、仮にヤクザを辞めても5年は、元ヤクザと指定され、銀行口座も作れず、交流のあった暴走族の先輩や後輩達も、次々とヤクザ組織からケツを割る。


 また、銀行口座を作れないと一般企業への就職もままならず、頭を下げに行った日雇いの交通警備のバイトですら、この5年縛りで元ヤクザであるとわかると退職を余儀なくされる。


 ヒデヨシは真面目にカタギの仕事でのし上がってやろうとしたが、結局はアウトローに戻る羽目となり、暴走族時代の後輩がやってた‶おれおれ詐欺″に手を貸して、一攫千金を夢見る。


 そして、騙した年寄りの口座からコンビニのATMで現金を引き出そうとした時だった。


「警察だ。その口座、君の口座じゃないよな?」


 ヒデヨシは頭が真っ白となり、自分を捕まえに来た刑事を突き飛ばし、夜の街で警察から追い回され、歩道橋に差し掛かったところ、階段から足を滑らせて転倒して、頭部を強打した。


「そしたら詐欺の容疑だって言われて、警察に捕まりそうになったかしら? 警察から逃げた時、足を滑らせて転倒して頭部を強打。その怪我が元で死んだのだわ。それでいろんな人生の不遇が原因で、魂に傷がついて地獄の刑期は……未遂とか従犯ばっかで、刑期は短かったかしら? それでこの世界に転生した、情けないクズ人間だわさ、おほほほ」


 ヒデヨシは目に涙を浮かべて、声をあげて泣いた。

 

「真面目に生きようと思ったのにダメだったんだ! 社会の表や裏からも俺は生きる事を否定されたんだああああああああああああああ!」


 地面に顔を伏せて泣くヒデヨシを、彼の人生をあざ笑う女神に、イワネツは瞬間的に激怒した。


「気に入らねえな」


 イワネツ自身も、転生前に社会の表で成功者になろうと夢見た過去を思い出し、魔力が瞬間的に高まり、握り締めた拳を振りかぶってヘルの顔面を殴り飛ばした。


 人間とは思えないイワネツのパワーで、女神ヘルは玄関先から吹き飛ばされる。


「気に入らねえ! 人の人生をあざ笑いやがってメスガキ! それとこの俺様をチビだのクズだの下に見やがるのも気にくわねえ!」


「な! 人間めええええええ! わらわを冥界の冥王と知っての狼藉かしら! もういいわ、お前なんてもういらないっ! この場で殺して、別の奴を勇者にしようかしらあああああ!」


 イワネツは、着物を脱ぎ捨て、フンドシ一丁になる。


「上等だ、俺と喧嘩しようや? 今までよ、このイワネツ様をチビだとかクズだとか面と向かって侮辱してきたやつは、生かしておかねえことにしてんだ」


 胸には、規律ある泥棒(ヴォールフザコーネ)の星の入れ墨が輝いていた。

次回、勇者イワネツ編のボス戦です

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