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転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第一章 王女は楽な人生を送りたい
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第32話 終える者と始める者達 後編

「先に兄様に、許可を取るのじゃ。そな……お主もわかっておろう? 地獄の管理者は兄様、閻魔大王じゃ。送り届けてやろう」


 えーと、先生の事を今、そなたと言おうとしたようなこの女神。


 なんか好きな人に素直になれないけど、恋する女子っぽい印象を、この女神ヤミーに感じた。


 すると私達は、石造りのどこかへ先生と飛ばされ、私と先生が歩を進めると、玉座に座った赤ら顔で髭を生やした、言い伝え通りの強面の大男が腰掛け、私を上から見下ろすように、ジロリと見る。


「親分失礼しやす!」


 先生は腰を直角に倒す綺麗なお辞儀をして、私もそれに倣って、頭を下げた。


 この神が、先生の親分さんでもあり、悪人の魂を裁くという冥界の最上級神、閻魔大王。


「うむ、ご苦労じゃ。ヤミー、お主は下がっておれ」


「はい」


 女神ヤミーは閻魔大王に一礼し、玉座の間から踵を返して、私と先生と閻魔大王だけが残される。


 怖い顔をしてる神様だけど、不思議と恐怖感は感じず、どこか優しげな表情をしているように見えたが、先生は緊張してるのか、閻魔大王の前に立ったら直立不動のままだった。


「我が勇者よ、事と次第は我が妹と大天使長殿から聞いておる。その方、マリーと申したかの? 一同楽にせよ」


「へい」

「はい」


 先生はその場に正座する。

 えーと、私も倣った方がいいのかな?

 でも楽にしろって言ってたし……。


 正座とか足が痛いし痺れるから、嫌なんだけど、楽じゃないし。


「チッ、んん゛、ん゛、ウェッホン……おめえ所作きちんとしろ」


 立ってる私に、先生が舌打ちやワザとらしい咳払いして呟き始めたから、閻魔大王よりも先生の方が怖くて、私もその場で正座した。


「うむ、お主たちに良くない知らせじゃ。ユグドラシル最上級神オーディンが、今回の件に激怒しておってな。ロキの抹殺と、フレイアとフレイの始末含め、自分達に任せよと、うるさく言ってきておる」


 閻魔大王は、私たちに告げると、すごい大きい葉巻を袖から取り出して、口に咥える。


「失礼しやす」


 先生が、流れるように立ち上がり、閻魔大王の葉巻に魔法で火をつけ、また元の位置に正座し直した。


「うむ、すまぬの。それでのう、我はオーディン神に言ったのじゃ。そちらの神が、我が勇者に陰謀を企て、危険に晒した件はどう詫びると。今回の件、我が優秀な勇者達、マサヨシとロバートの組織に任せる気じゃとも、事と次第によっては勇者ラーマも出陣させる気であるとも伝えた」


「へい、当然ですね。元はと言えばあちらの不始末で、このあたしとあの世界が、あんな目にあいましたし。うちらでケジメつけるのは、当然の流れでしょう。それにラーマの兄さんがいてくれりゃ、心強いですが……そうもいかねえ事情がおありなんでしょう?」


 すると、閻魔大王は瓶詰めの何かを放り投げ、先生は両手でキャッチした。


 私が横目でチラリと見ると、瓶の中にホルマリン漬けされたような、灰色の瞳の目玉が入ってて、グロくて気分が悪くなった。


「オーディン神が落ち度を認め、シヴァ様立ち会いのもと、我にその場で手ずからコレを差し出した。お主、その意味がわかるな?」


「へい、わかりやした。向こうさんが通らぬスジを通すため、詫びとケジメの目を持ってきたのなら……向こうさんの言い分を呑まねば、シヴァ神や、うちらの格好がつきやせん」


 ちょ!?


 最上級神のオーディンさんが、今回の件でケジメって事で目玉を取ったって事!?


「うむ、そういう事じゃマサヨシよ。それでのう、オーディン神はすでに神馬スレイプイニルを派遣し、準備ができ次第自分の娘、戦乙女(ワルキューレ)達の派遣するつもりじゃ。そしてこちら側の勇者とヤミーに退いてくれと言い出した。期限はあの世界の一週間後となる」


 うわぁ、それじゃあせっかく来てくれた女神ヤミーや、ロバートさんと先生も、一週間後には冥界に帰らなきゃいけないって事?


「ほう? そうですかい。じゃあ一週間以内で、うちらが救済の目処立てりゃいいわけですね。それに、あたしはそう簡単に引く気ねえですぜ?」

 

 まあ……そうなんですけど、やはり先生は無茶苦茶だ。

 それと……足が痺れて来たんですけど……。


「ハッハッハ、まあお主ならそう言うと思ったわ。そこでじゃ、仮に一週間後、救済出来なくとも、我は神界法の抜け道を考えておる。わかるの?」


 あ、閻魔大王が笑いながら言うと、先生も悪そうな顔してニヤリと笑った。


「へい、そう言う事ですね。それと、マリーの件ですが……」


「うむ、話をしてやろう。本来の召喚魔法に関してじゃが、体内の魔力ゲートが不安定過ぎて、世界のバランスが崩れる可能性がある。よって、我の権限で一時的に封印する。マリーよ、よいな?」


「はい、わかりました」


 私の召喚魔法は封印されるらしい。


 しょうがない、私は召喚魔法で世界崩壊の引き金を引いてしまったようなものだ。


 しかし、天使サキエルは私に自分程度しか召喚できないといっていた筈。


 どうしてこんな事に。


「うむ、その件はじゃの、創造神様の側近にして大天使長殿からの話じゃ。天使サキエルは行方不明、行動から見て我は黒と判断する。よって、天使サキエルも見つけ次第、事情聴取し、天界に引き渡す。拒否すれば討伐対象として加える、以上じゃ」


「はい……」 

「へい、わかりやした」


 私は、どうもあの人が良さそうなサキエルが陰謀めいたことを考えたとは思えない。


 きっと何か事情があるのではないかと考える。


「マサヨシよ、この娘、お主が見込んだ通りじゃ。正しい心と優しい魂を持っておる」


「へい、あたしなんかよりも、この子は人間的に正しい心を持っておりやす」


「うむ、マリーよ。それでお主の母の魂の事じゃがな……お主と一緒に死んだ後、お主の世界ニュートピアで転生し、お主を再び生んだのじゃ。自分の命と引き換えに、お主の魂を宿して」


 え!?

 お母さんが……転生後もお母さんに……。


 私の転生後のお母さん、王妃は、私を生んですぐに死んだことになってるけど……お母さん……。


「もちろんお主の事など、転生後に覚えておらなんだ。だが、魂は結ばれておる……親子とはそういうものじゃ」


 私は顔を伏せて涙を流した。


「だからこそ、俺は許せねえんですよ親分! 魂に傷がついた人々の、運命を弄ぶような外道! 可哀そうな奴らを、生まれ変わってもこんな目に遭わす奴らなんか、最低のクソです! 俺が立ち向かったワルの中で、最低最悪の所業だ! 親分だってそう思うでしょ!?」


 先生は、私の心を代弁するように閻魔大王に投げかける。


 この人は、ヤクザだったけど魂の奥底に、正義の魂を持っている。


 人間への非道を、尊厳を傷つけるものを、誰よりも憎んでいるんだ。


「うむ……断じて許してはならぬ悪じゃ! 循環した魂の尊厳を弄ぶなど言語道断! それも冥界に無断で! 我も、その兆候を見逃さなかった! だから我は、あやつらをあの世界に転生させた。現世では悪と断じられたが、心正しき魂を持っておるあやつらを、もしもの事態のために」


「なるほど、そういう事ですかい。金城やデリンジャーの魂を、あの世界に送ったのは親分でしたか」


 そうか……閻魔大王はあの世界が危機に陥る前に、彼らを転生させたんだ。


 ヴィトーに、アンリ、おそらくアヴドゥルの3人を。


「しかしこの件、一筋縄ではいかんわい。この件、ロキやフレイ、フレイア兄妹以外にも、魂を弄ぶ凶悪な何かが活動しておる。天界にも神界にも、冥界にも、敵の間者がいるかもしれん」


 どうやら、あの世界は魑魅魍魎だらけの、恐ろしい世界のようだ。


 神々や何者かの陰謀が張り巡らされ、人間国家同士も陰謀だらけの……上辺だけ綺麗な、最悪の世界。


「それと、英雄ジークだったかの? かつてフレイアが投入した救世主じゃが、何度もあの世界に投入されておるの。そして、何らかの影響で魂が汚染され、悪に囚われてしまっておる」


 英雄ジークが……悪。


 そして、何度もあの世界に投入されてるなんて……まさか、今もあの世界に!?


「うむ、あの世界に救世主の生まれ変わりがおる。もうお主も、マサヨシも出会ってる筈じゃ」


「ああ、あの小僧ですね。力も魔力も只者じゃねえと思ったが、そう言う事か」


 フレドリッヒ・ジーク・フォン・ロレーヌ。


 彼の正体は、英雄ジークの生まれ変わり。

 だから先生があんなに苦戦を強いられて。

 

「それと最後に、お主の父についてじゃ。転生後の父、ジョージは魂の循環に入ってはおらなんだ」


「え!?」


「考えられるのは、二つ。一つはまだ生きている可能性。もう一つは、魂が冥界または天界行きを拒んでおるかじゃ」


 あの時、父の心臓は完全に止まっていた。

 とすると……。


「マサヨシよ、その子の父の魂じゃがの、お主も無関係ではないぞ。言ってる事はわかるの?」


「へい、わかりやした。なるほど、そういう巡り合わせか。ならば俺が、この子を救ってやるのは必然。エリザベスのガキもな」


 なんの事かはわからないが、転生後の父は、先生と縁があるようだ。


「そして、転生前の父は……マサヨシよ、良いのじゃな? この娘に会わせても」


「へい、お願いしやす。何かあれば、全身全霊で、この子を守りやすんで」

 

 私と先生は、閻魔大王との謁見を終え、衆合地獄へ赴く。


 衆合地獄という所は伝承通り、亡者の叫び声が響き渡り、血の池や針の山に、亡者を焼く鉄板のようなものが置いてあった。


 他にも、屈強そうな黄金の肌をした鬼たちが、地獄の亡者たちに、あちこちで拷問されている状況で、あまりにも悲惨な光景に私は目を背ける。


「同情する必要はねえぞ、マリー。こいつらは現世で、こういうことをされるくらい、ワルさした連中よ。おめえさんは、ああいう奴らのようになるな」


 先生の顔が、少し影を帯びた表情になる。


 そうか、先生もヤクザだし、前世では悪いことたくさんしてきたんだろう。


 怖くて何をしてきたのかは聞けないけど。


 女神ヤミーに見送られ、先生は、黄金の肌をした屈強そうな地獄の鬼たちに、お父さんの名前書いた、回状と言うものを渡している。


「すまねえ兄弟ら、あっちにいるのか?」

「うむ、あそこのエリアだ、同志マサヨシ」


 私と先生は、無非闇処(むひあんしょ)という、塀に囲まれた場所へ訪れた。


 妻子や家族を殺した、極悪人が集められた地獄の刑務所だそうだ。


 門番の鬼達は、先生を見るなり、金棒を掲げる礼をして、先生もそれに応えるかのように、腰を直角に曲げて一礼し、私もそれに倣う。


 そして敷地内に入った瞬間、泣き叫ぶ亡者たちの悲鳴と鬼の怒号で、耳がおかしくなりそうだった。


 拷問道具や拷問器具がそこかしこに並び、殺風景な石造りで、天井がなく不快な血の匂いが漂う、まさに地獄。


「貴様らは愛する者達を手にかけた極悪人だ! ここの刑務所は他所と違って甘くねえぞ!」


「とろとろしてんじゃねえ懲役共が! ケツに金棒ぶち込むぞおら!」


「お前達なんかに転生なんてない! さっさと魂の消滅を願い出ろ!」


 うわっ、金棒持った獄卒の鬼たちが、野球のバットみたいに振りかぶって、次々とケツバットで、罪人たちを針山に叩き込んでる。


「兄弟ら、仕事中すまねえ。ここに、高山守って罪人がいるって聞いてよ、どこよ?」


「ああ、同志マサヨシか。アレだ」


 地獄の鬼たちが指さした先に、全裸でトゲの針を背負い、血まみれにながら、熱した鉄板の上で涙を流している、私のお父さんがいた。


 あまりにも悲惨な光景に、私は思わず目を伏せる。

 

 先生は無表情だが、こめかみに血管が浮き出ていて、まぶたがピクピクしてて……怒ってる。


「ほーんあれかー。マリー、おめえの親父さんに挨拶しに行ってくるが……何が起きても、俺を信じてほしい。そして、あの哀れな高山守って野郎の魂も信じてやれ。兄弟、道具かせ」


 先生は鬼から借りた金棒を持って、お父さんに近寄り……怯えた目で見つめる、お父さんの頭に金棒を振り下ろした。


「うぉらぁクサレ外道! てめえかこの野郎! あんなに素直でいい子をぶち殺しやがって、ふざけんじゃねえぞボケ!」


 先生は、私の父に金棒を無慈悲に振り下ろし、あまりにも非現実的な光景に、私は呆然として膝から崩れ落ちる。


「か、勘弁してください! 私には私の事情もあって、もうしません許して……」


「うるせぇ! しゃべるな外道! 何でてめえ背負った針山勝手に落としてんだぁ? 口開けろ! 今から溶けた鉄を、てめえの胃袋に流し込んでやっからよお」


 先生は金棒を空中に放り投げると、金棒が先生の魔法でドロドロに溶ける。


 鬼たちに口を無理やり開かされたお父さんは、液体になった真っ赤な鉄を、無理やり飲まされた。


 お父さんは、のたうち回りながらも得た鉄板を転げ回り、あまりにも残虐な光景に、私は涙を流す。


 先生はどうして、こんな酷い事を……。


「ぎゃあああああああああああ! お願いですから許して! もう勘弁してください!」


「何だこの野郎……謝る相手がちげえだろうが!」

 

 悲鳴を上げるお父さんを、今度は何度も何度も蹴り続ける。


「俺にもよお、娘がいるんだ! 俺の命が続く限り、愛してやろうと思ってる娘たちがな! なのにてめえはなんなんだ!? てめえみてえな子殺しの人でなし野郎はよお、ぶち殺したくなってくるんだよ! てめえの何が悪かったのか言え!!」


 すると父の姿が変異し、どす黒い何かに変わっていった。


「私は、私のキャリアを傷つける邪魔者を排除し、その責任をとったに過ぎない! 思い通りにならない家族を、私の手で抹消したんだあああああああああ」


 酷い……それが父の本音……こんな人に私やお母さんが……。


 父は恐ろしい、黒い影のような邪悪な鬼の姿をして、極卒の鬼たちがホイッスルのような笛を吹く。


 すると鬼たちが金棒持って集まり、金棒を構えた。

 

「あれは邪鬼とも餓鬼とも言う、マリー。地獄の懲役で反省もせずに、罪とも向き合おうこともできず、自分の本当の過ちがわからねえクズがああなる。だから……おめえさんが決着(ケリ)をつけてやれ、マリー。心配するな、俺がついてる……おめえさんの魂の傷、決着をつけるんだ」


 お父さん……どうして……どうして私を、お母さんを?


 私がそんな邪魔者に思っていたの?

 何で……そんなに官僚の出世って大事なの?


「俺は、順調に出世の階段を歩いていたんだ! 邪魔者を排除して、事務次官に昇る男だったんだああああああああああ」


 私は、手にした魔力銃デリンジャーを握り締め、極卒の鬼たちは金棒を構えるが、手で先生は制した。


「手出し無用だ兄弟たち! あの子に、あの邪鬼のケジメを付けさせてくれ、この通りだ」


 先生は、地獄の鬼たちに土下座をし、鬼も目に涙を浮かべて私を見る。


 そして先生は立ち上がり、私に振り向く。


「あの野郎にわからせてやれ! おめえにしかできねえ事だ。あいつの高山守の、邪鬼になった魂は、ああなると、大抵は魂の消滅しか選択肢はなくなる。お前が救うんだ、あの哀れな妻子殺しの魂を! 信じるんだ、おめえの父親を!」


 私は、邪悪な黒い影で10メートル以上に体が膨れ上がり、黒い罪の化身になった父へ、銃を構えた。


「お父さん……私は、前世の決着をつける! 過ちを認められぬ哀れなお父さん、お母さんと私を殺した、悲しい人……私は、あなたを本当の魂に解き放つ!」


 私は、引き金に指をかけて、小型けん銃を何発も発射すると、邪鬼はその場にあった、懲罰用の鉄板を持ち上げガードする。


「私は、誰よりも上に立つべきだったんだああああああああ」


 私は、叫び声をあげる邪鬼の周りをまわりながら、銃撃を繰り返す。


 父の過ちを、魂の叫びを心に受け止めながら、あの人に私の魂を、想いを届けるために!


「マリー、水の魔力弾だ! あの男を救うイメージで、浄化の水をイメージしろ! 俺が……野郎の隙を作る!」


 私は先生から言われた通り、魔力銃に浄化の水の力を込めた。


 信仰するのは、転生前にしか初詣に行かなかった日本の神。


 それはまるで、今の私から頬から流れ出る涙のような、浄化の涙(ティアドロップ)


 そして、引き金へしぼるように指をかけ、魔法の銃弾を発砲するけど、邪鬼が両手に持った熱せられた鉄板で、銃弾をガードする。


 その時、先生が着物をはだけて上半身裸になり、背中に入れ墨が入った。


 それは……さっきの女神ヤミーの入れ墨と、魔王阿修羅の入れ墨だった。


 ステータスを確認すると……文字化けして測定不能になっており、レベルは推定300以上は確実。


「この勇者マサヨシ、義によって助太刀するぜ! うぉらぁ!」


 邪鬼になった父へ、先生は回転しながら回し蹴りを放ち、邪鬼が両腕と共に、持ってた鉄板がすっ飛んでいっく。


「おらぁ! てめえの娘が涙を流してまで救おうとしてやがるのに……てめえそれでも親かこの野郎! 受け止めろ! 愛する者の想いを! そして、これでダメージが通る筈だ! ぶっぱなせえええええええええええええ!」


 私は照星照門で狙いを定め、連続で魔力銃をマシンガンのように撃ち込む。


 私の脳裏に様々な記憶が思い浮かぶ。

 

 物心ついた時、背中におぶってくれた記憶。

 七五三で、母と一緒に写真を撮った記憶。

 ディズニーランドに初めて行った思い出。

 小学校の入学式に、忙しい中で仕事を休んでまで来てくれた記憶。


 中学生になってソフトボール部をやめた時、母は叱ったけど、自分の本当にやりたいことを見つけなさいって、優しく言ってくれた時のお父さんの記憶。


 都内の有名私立高校にチャレンジして合格した時に、私と一緒に喜んでくれ、お寿司を頼んでくれた時の記憶も思い出しながら、私は銃の引き金を引く。


 すると、邪鬼の体から黒い煙が噴き出し始めた。

 

「何か……来る!」


 ネアポリの賭博場で鍛えた、勝負勘と私自身の勘で……わかる!


 あの楽しい賭博も、無駄な時間じゃなかったんだ。


「天界魔法だマリー! 今のおめえさんの力ならば、天界魔法を使えるはずだ。天界魔法は時空をも操れる魔法系統! 精神を集中させ、周りの時空がゆっくり流れるようイメージしろ! ビデオ映像を、再生速度をスローモーションにするようなイメージだ」


 私はうなずき、精神を集中させた。


時空操作(クイックタイム)


 周りの景色が、邪鬼の動きがゆっくりになり、これなら次の攻撃が見えるっ!


邪悪乃霧(イービルミスト)


 私が邪鬼から距離を取ると、邪鬼から噴出した煙が、辺り一面を覆った。


 霧に紛れた邪鬼が私の前に現れ、腕が再生して、私を引き裂こうと腕を振るうが、緩やかな時間の流れで攻撃を回避し、前回り受け身をとった。


 床を回転した後、膝をつきながら連続で銃撃を放つと、時間が元に戻る。


 邪鬼は、霧を吐き出したせいで影が薄くなり始めてるが、私の銃撃をものともせずに、突進を繰り出し、タックルで私を吹き飛ばした。


 あまりの衝撃で激痛が走り、地面に転がる瞬間受け身をとるが、脇腹が……痛いっ!


 すると邪鬼が霧に紛れながら、膝をついた私の頭に、攻撃を振り下ろす。


 痛い! 視界が一瞬暗転して、頭の中に火花が散って衝撃が! 


 頭がクラクラして、額から汗が流れて……いや違う、これは私の血。


「私は上に立つためにならば、なんだってやってきた! 同期を追い落とし、上司の弱みも握り、邪魔者を排除し、事務次官の階段を、順調に上り詰めてたんだあああああああああああああああ!」


 頭から血が流れて……お父さん……どうして?

 私を地獄でも、邪魔者だからって排除するの?

 

「……嫌だ! 私は、もう転生前のようにお父さんに殺されるなんて絶対に嫌だ! そして本来のお父さんは、こんな邪悪な悪鬼じゃない! 時空操作(クイックタイム)


 私は激痛をこらえながら、邪鬼から間合いを取り、銃撃を繰り返す。


 私が転生前に習った合気道と、先生から習った射撃と格闘術、この経験も無駄になってない。


「くそ、魔力銃の火力が低いんだ! こうなりゃあ、俺のパイソンをあいつに貸してやって……いや、俺が出て行ってあの外道を始末するか。マリーに任そうと思ったが、もう我慢の限界だ! 親を慕い、信じる子の気持ちもわからねえ外道は、俺が消してやる!」


 先生が腰に下げた刀の柄に手をかけたが、私は祈る。

 

 どうか、私の召喚魔法のせいで酷いことになった世界を救えますように。

 

 先生のように強く、どんな悪にも屈せずに、負けないような、人々を救う力を与えてくださいと心の底から祈ると、私のHPとMP、血液に反応して、封印された筈の召喚魔術が作動し、光の文字が浮かび上がった。


「召喚魔術・光神(ヘイムダル)召喚」


 すると私の頭上に、黄金に光り輝く鎧を着た神が、冥界の衆合地獄に召喚された。


 その瞳は、生命への慈しみに溢れ、私を慈愛のこもった眼差しで見つめる。


「心優しい、正しい心を持つ乙女よ。私の力を、君に与えよう。そして我が千里眼で見た未来を信じる。心ある英雄たちによる、悲しくも美しい、かの世界救済の未来を信じて」


 私の体に光の粒子が纏わり付き、一瞬下着姿になると、私の胸に光輝く黄金の胸当て、肩甲、手甲、腰当、膝当、足甲が次々と装着されていく。


 光り輝くカチューシャが装着されると、耳を覆い、アゴまで伸びて急所をガードするヘッドギアになり、首に細身の金のチェーンが巻かれ、胸にピンクゴールドを細工し、中心にルビーが入った薔薇の形のペンダントトップが具現化した。


「私の加護を授けた戦乙女(ヴァルキリー)よ、世界を救い、人々を導き、正義を果たすのだ」


 光の神は私に告げると、光の粒子になって消えていく。


「マジかよ! 親分が召喚魔法を封印した筈なのに。封印を解くなんて、あれは最上級神クラスの神だ……ていうかなんだあの金綺羅金(きんきらきん)の鎧は! 俺の事務所に置いてた漫画の、●金●闘士(●ールド●イント)かってんだよ、何が起きたんだ!?」


 先生は困惑しているが、力が湧いてくる。


 ステータスを見たら、HPとMPが全回復して、運以外のステータスが倍になっていた。


 なんだろう……負ける気が全くしない!


 その時、お墓にあるような木の(しゃく)が投げ入れられた。


「使うのじゃ! お主が手にした瞬間に、我の権限でそれはお主の武器になる! お主の力で、あの哀れな男の魂を救ってやるのじゃ!」


 女神ヤミーが駆け付けてきて、私に投げ入れた物だった。


「それは、おめえさんの道具だ! イメージするんだ自分の得物を! それは世界を救うおめえさんの武器になる!」


 私は先生の声にうなずき、床に転がった杓を拾い、イメージした。


 どうか世界を救えますように。

 目の前にいる父を救えますようにと。


 すると手の杓が形を変えていき、光り輝いた。


 私が手にしたのは……え? 何これ。


「魔法の杖? いや……鉄パイプっぽいんですけど! ただの建築資材っぽいんですけど!」


 そう、私が手にしたのは、背丈と同じくらいの長さの、U字に曲がった先端に、鈍色の輝きを持つ、鉄パイプだった。


 こんなものでどうしろと。


「イメージだマリー! それは魔法の杖! 離れた相手に向ければ砲撃になり、突けば槍にもなり、振りかざせば薙刀にもなる! 俺の親分、閻魔大王が得意とする魔法の杖よ」


 杖を手にした私に、邪鬼が襲いかかる。


 私は杖に力を込めると、鉄パイプが黄金に輝き、曲がった先端に、真っ赤な丸い宝玉が具現化した。


 咄嗟に杖で、邪鬼を両手持ちで突くと、先端の宝玉がピカッと光って、ガスバーナーの炎を大きくしたような光の槍になり、邪鬼の体を突き刺した。


 だけど……抜けない。


 邪鬼は腕を伸ばして、私の頭に攻撃を振りかぶろうとする。


「やめて! お父さん!」


 私が杖に力を込めると、光の穂先が邪鬼の体内で爆発する。


「きゃあああああああ」


 爆発の威力は凄まじく、杖を右手に持ちながら、左手で後ろ受け身をとって立ち上がり、距離を離した。


「なぜだああああああ、なんで俺がこんな目にいいいいい!」


 父が叫ぶが、先生は舌打ちしながら邪鬼を睨みつけた。


「まだわかんねえか! なんでこんな目にだとこの野郎? てめえの罪は、役所の出世しか見てねえで周りの人間を貶めてきたクズ根性だ! てめえは勝手な理由で妻子を殺したカス野郎だ! そして、今この時も、娘が救おうとしてるのに気付いてやれねえ、ボンクラだからこうなってんだよ!」


 先生の言葉に、邪鬼になった父が、ピタリと止まる。


「マリー、隙が出来たぜ。ありったけの風の魔力と、浄化の水の魔力を杖に込めるんだ。あとは風の力溜めて、水をガス圧でぶっ放すようなイメージで、こいつにぶちかませ!」


 私は言われた通り、杖を両手で突き出すように前に構えて、魔力を高めた。

 力が、私の魔力が、この杖に伝わっていくのがわかる、


高圧放水砲(インパルス)


 先生が教えてくれた通り、超高圧放水を散弾銃のように父に一気に撃ち込むと、物凄い衝撃なのか邪鬼になった父がふきとばされ、飛び散った飛沫は、光が当たって虹になった。


 私が何度も高圧放水砲を撃ち込むと、邪鬼の黒い霧やオーラが消えていく。


「うまくいったぜ。消火用インパルスシステムって奴で、火災の時、消防士がバズーカみたいにしてこいつ使うのさ」


 へー、先生はやはり物知りだ。

 色んな事を知ってる。


「だがサツの野郎コレ改良して、俺の組の総本部に強制捜査(がさいれ)しやがった時、騒いだ子分共が機動隊にこれ食らってよお……子分らまとめて吹っ飛ばされて、公務執行妨害でしょっ引かれてな、面子潰されて往生したわ」


 あ……そう。


「けど先生、その……ヤクザ だったし、悪い事しておまわりさんにやられたんだから、自業自得じゃ……」


 そして、父を覆ってた黒い影が消え去り、床に両膝と両手をついて、私を見ながら涙を流し始めた。


「お父さん……私の事を覚えてる? 真里だよ。私とお母さんの事、いまだに許せない気持ちがある。……っ……けど……だからちゃんとここで罪を償って、生まれ変わったら、もう一度……今度こそ私とお母さんと……」


 私は言葉に詰まって、涙を流し、先生がお父さんの前に立つ。


「てめーを始末してえ所だが、この子に免じて許してやる。娘は、この俺が責任を持って、一人前に育ててやるから……地獄で罪と己に向き合い、懲役を務め上げろ、いいな?」


「はい……どうか、よろしくお願いします」


 父は消え入りそうな声で言い、こうして、私は地獄で転生前の父の魂を救い、先生と一緒にその場を後にする。


 さっきの黄金の鎧は、元の赤いドレスに戻り、胸に薔薇のペンダントのみが残され、魔法の杖は宝玉が消えて、ただの鉄パイプに戻っていた。


 父は地獄の刑務所の床に両手両膝をついたまま、涙を流して私の事を見つめ続けている。


「よう、最後にあの野郎に生んでくれてありがとうって言っとけ、な?」


 先生は、私に優しげな顔をして呟いた。

 私はうなずいたあと、お父さんの方を向く。


「転生前、私を生んでくれてありがとう。お父さん……」


 父は私の言葉に嗚咽しながら泣き崩れ、私達は女神ヤミーと共に、再びあの世界へと戻った。

 

 町では、アンリ達やヨーク騎士団、それに勇者ロバートが、バーベキューをしながら私たちを待っていた。


「さっきのマリーとやらが召喚した、光の神ヘイムダルなんじゃが……聞いたことない名前の神なんじゃが何者じゃ? 兄様の封印を破るなんて」


 スレイプニルは、女神ヤミーの元へ寄って頭を下げる。


「おそれながら、上級神様……ヘイムダル様は遠い昔にすでに魂が消滅した神の一柱。大逆神ロキに魂を消滅させられたはずです」


「なん……じゃと!?」


 また訳が分からない状況になってきた。


 私に光の鎧と、胸のペンダントを与えた神は、もう既に消滅して死んでいるという。

 

 じゃあ、さっきの神様は……幽霊?


「へえー面白い話聞いちゃった。あいつ死んだと思ってたけど、君に力を貸したのか」


 え? なんでロキがこの場に……帰ったんじゃ。

 まさか、私達を騙してずっと私たちを見ていた?

 アンリとヨーク騎士団が私を守るように、囲い込む。


「てめえ! 帰ったとか言ってたが、透明化してずっと俺達の後を付けてたのか。よおし、てめえを今この場でぶち殺し、世界救済と行くぜ!」


 先生が串焼きをペッと吐き出し、ロキに白鞘の刀を持って詰め寄っていく。

 着物をはだけて、背中には女神と魔王の入れ墨が入っている。


「おー怖い怖い。アースラ、色々聞いたよ? 君が魔王になってから、神々と戦ってきたことや、嘲笑うように神や精霊から宝物を奪い去った話。そして神に復権するも人間になった話……最高に面白かった。まるで若い時の僕のようだ」


「Fuck you‼」


 邪悪な笑顔で笑うロキに目がけて、勇者ロバートが、いつの間にか長大な銃身の狙撃銃のようなものを構えて、躊躇せずに引き金を引く。


 すると超高速の光の弾丸が発射されたが、ロキの光のバリアで防がれてしまった。


「うるさいよ雑魚。せっかく僕が、昔の友神と懐かしい話をしてるのに」


 ロキは光のバリアを右手に圧縮し、光弾を放つと、勇者ロバートを吹き飛ばす。


 何とか生きてるけど、血まみれにされて戦闘不能になっていた。


「兄弟!? てめえ、ぶっ殺す!!」


 先生はまるで瞬間移動したように、一直線に踏み込み、ロキの首を刀で突くが、ロキの体がテレビの砂嵐のようにザザッとなった後、今度は先生の背後に立つ。


「はは、相変わらず君は手が早い」


 今度は女神ヤミーが、長大な金棒を持ってロキの頭にスイングするけど、また残像でかわされた。


「君は見たことない神だな、若いくせになかなかや……」


 先生が左足を軸に回転させ、回し蹴りを放ち、ロキが吹き飛ばされる。


「うるせえんだよボケ! 勇者なめやがってぶち殺すぞ!」


 すると、瞬間移動してきたロキが、先生の頭上に現れて、踵落としを放った。


 先生は頭部を強打されて、膝をつく。


「マサヨシ!」


 今度は女神ヤミーの背後に現れたロキは、いきなり後ろから女神ヤミーの胸を鷲掴みした。


「うーん、こっちはいまいちだな。君、ちゃんと栄養あるもの食べてる?」


 女神ヤミーは顔を真っ赤にしながら、ロキの足を踏み、頭突きを後ろのロキに食らわせる。


「あー、初々しい反応いいねー。君、女神のくせにまだ経験……」


 鼻血を出しながら吹き飛ばされるロキの首に、ピアノ線みたいなものが巻き付けられた。


「Kiss my ass! motherfucker‼」


 魔法で糸を作り出したロバートが、糸を握り締めた右手を、ぐっとガッツポーズすると、ロキの首が両断されたが、すぐに両断された首が元通りになる。


「こいつらクレイジーだ。俺のレベルじゃ、このバトルに加われない」


 アンリが悔しそうに歯ぎしりし、オーウェン卿も悔しそうに、女神と勇者二人を手玉に取る、破滅神ロキの戦闘を見つめていた。


「うん、雑魚かと思ったがなかなかどうして……首をはねられるなんて何万年ぶりだろう」


 先生が首が繋がったロキの体に刀を刺した。


「べらべら大物気取ってんじゃねえぞ? 今からてめえの体を爆散させて……!?」


 ロキの体に剣を突き刺した先生の体が、徐々に縮み始め、身長が10分の1以下になり、まるで着物を着た人形(フィギュア)のようになった。


「おいてめえ、巨大化しやがってなめやがってゴラァ! てめえぶっ殺して……違う、俺の体が……だあああああああああああ、縮んじまった! 何しやがったてめえ!」


 先生、声の感じが、ヘリウムガス吸ったみたいになってる。


「はっはっは、この喧嘩僕の勝ちだね! 神界魔法、小人化(ミニマム)をカウンターで使わせてもらったよ。そのうち戻ると思うけど、君なら余裕だよね? あー楽しかった。僕、ヴィクトリーって国にいるからさ、気が向いたらまた遊ぼう」


「Bullshit‼」


 勇者ロバートは、武器を拳銃に変えて撃ち込むが、笑いながらロキは姿を消した。


 強すぎる……。

 こんな相手が、私達の敵。


「きゃああああああああ、我も体があああああ! 胸も小さくなってええええ」


 うわ、女神ヤミーも体が縮んで、美少女フィギュアみたいになってるけど、胸は元々そんな大きくないんじゃ……。


 すると、小さくなった女神ヤミーが宙を飛び、私の胸を思いっきりパンチしてくる。


「なんじゃ貴様! 破廉恥な乳しおって! こんなもの、こんなもの!」

「いたっ! 痛いです! やめてください! 女神様!!」


 私は先生のステータスを確認すると、レベルは60のままだったが、ステータスが魔力以外10分の1以下になっており、さらに弱体化している。


 こうして、先生達と女神はロキに敗北し、町の広場でキャンプファイヤーしながら、私達は今後の事を話し合った。


「くそが、こんな体じゃドスが振るえねえ! どうすりゃいいんだ」


「我の魔力でも全然戻れぬ! あれは神界魔法というより呪いの力じゃ」


 あー、凄い悔しそう。

 この二人凄い負けず嫌いっぽいし。


「申し訳ありませんヤミー様、私とマサヨシがいながら、後れを取ってしまい……クソが! あのドチビのファック野郎、無茶苦茶な強さだ。一週間以内に世界救済のめどを立てねえと、親分(カポ)の面子が潰れちまう! 今まで戦ってきた敵とは次元が違う、ベリーファッキンなエネミーだ!」


 ああ、このロバートって人に至っては紳士的で優雅そうに見えたけど、怒るとかなり口が悪い。


 ていうか、先生より怒ると怖い顔してるし……。


 するとアンリは立ち上がり、今の状況に落ち込み、座り込んでる面々を見下ろす。


「立ち止まっても状況は良くはならねえ。行こうみんな! まだゲームは1回表みたいなもんだ! 点を入れられたら、取り返せばいい! ゲームセットにはまだ早すぎる!」 


 アンリの言葉に、みんなの気持ちが奮起され、お互いが頷き合う。


 本当の魂を取り戻したアンリは、最初に会った時以上に、雄々しさとリーダーシップに溢れていた。


 そしてヴィトーも、優しくて頼りがいのある男になった。


 ならば私も立ち上がって、決意表明しなきゃ。


「少し休んだら、私達の旅をまた始めよう! 先生は私に教えてくれた。世界を信じてろ、仲間を信じろと。だから始めましょう! 私たちの世界救済の旅を!」


 よし、決まった。

 私もちょっとカッコイイ感じになった気がして……。


「お、おい……格好つけるのはいいけどさ、その……」

「オーマイガ! 目のやり場に困るからその……早くなんとかしたまえ!」

「シィット……マリー姫……その俺は何も見てねえぞ! 大丈夫だ! 問題ねえ!」


 へ?


 あのう、なんか先生達や男性陣が凄いガン見してきたんですけど。


 そして女神ヤミーは意地悪そうにニヤリと笑ってるが。


 私は視線を胸元に降ろすと、女神ヤミーにパンチされたところのドレスが破けてて、ブラもずり落ちて……胸が……。


「い、いやああああああああああああ!」


 私が慌てて胸元を隠そうとすると、大勢の騎士団に囲まれる。


「フランソワ王立憲兵騎士団だ! ローズ・デリンジャー・ギャング団!! 神妙に縄につ……け?」


 私たちを取り囲むように集まってきた、騎士団の男共も、私の胸にくぎ付けになった。


 スキル、魅了が発動したのか、騎士団は完全に動きを止めてしまっている。


 確かに、楽に逃げられるけど……なんなんだこの状況。


「もういやあああああ、なんなのこれ!? 最低!!」


 スレイプニルが引く馬車で、私達は走り出す。


 陰謀渦巻くニュートピア救済の旅が、本当の意味で始まる。


 最っ低な始まり方で。

第一章終わります。

ここで主な登場人物の紹介に移ります


主人公マリー(転生前 女子高生 高山真里)LV38

転生したら楽をしたいという、欲求を持ってるただの女の子で、ヴィクトリー王国第二王女の16歳。


ハッキリ言って、社会経験も無ければ、社交性もそんなに高い子ではありません。

容姿は本人がキャラメイクで作った顔とスタイル、そして魅了のスキルを持っている為、それだけでチートなのですが、上手く活かしきれていない様子。


本人は勉強と学力にコンプレックスを抱いてます。

頭の良い子ですが、サボり癖が付いてるので、キチンと育ててあげないと、地あたまのいい子なので、見えないところで楽をしようとしてしまいます。


指導者が良ければ、大成するキャラで、自分磨きのため、勇者に弟子入りし、本人の思いとは裏腹に、英雄への道を歩んでいる召喚術師。


第一章のラスボス、邪鬼戦で、魂の傷を克服したため、精神力がかなり高くなっているのと、馬鹿げた運のステータスをしている為か、命中率が低い大技も当たりやすい。


何かの手違いなのか、陰謀なのかよくわからない状況で転生しました。

これといって特に無味無臭で、クセが無かった彼女ですが、物語が進むにつれて、どんどん個性的になっていく予定。


武器は、小型拳銃と鉄パイプのような魔法の杖。

謎の神の力で黄●闘士みたくなる。


身長158センチ 体重56キロ

スリーサイズはB 89 W 59 H87 


勇者こと先生(転生前 ヤクザの大親分) LV60

幾多の世界を救った、チートステータスを持つ歴戦の勇者だが、召喚魔法の影響でステータスが弱体化中。

転生前は、凶暴にして大胆不敵、狡猾にして極悪と呼ばれる最恐武闘派ヤクザ

豊富な資金で、数々の抗争事件や凶悪事件を引き起こして来たアウトロー。


殺人、死体遺棄、拉致、監禁、拷問、何でもありの元暴力団組長で、見た目とは裏腹にかなりの年寄り。

異世界の各地で女を作り、子供や孫すらいる模様。

身長180センチ 体重69キロ


ヴィトー(転生前 アシバー 金城二郎)LV58

大陸南方の半島国家、イリア首長国連合の16歳の王子。

クーデターを起こして国の実権を握り、国名をロマーノ連合王国に変え、盟主となる。

パリピ感全開で、商才と投資と女しか見てないように見えて、かなり頭がいいキャラクター。

転生前は、勇者と関係があったアシバーと呼ばれる、凄腕のアウトロー。


本来の魂を取り戻すと、沖縄弁訛りの空手とトンファーの使い手になる。

主人公達との戦闘後、筋トレと鍛錬を繰り返し、いわゆるパーティ外成長を図っている模様。

愛する地元に裏切られて魂に傷がついている。

身長175センチ 体重70キロ


アンリ(転生前 ギャング ジョン・デリンジャー)

大国フランソワ生まれで22歳の王子。LV59

主人公が殺されたと思い、大国の王子達と、ヴィクトリーへの復讐戦争を企てる。


戦闘スタイルは、精霊魔法と精霊化を利用した剣の使い手。

自信たっぷりで、男気があり人情味もあるが、身分違いの人々を人間と見てない、差別主義者だった。


本来の魂は、公共の敵ナンバー1、犯罪王、義賊デリンジャーの二つ名を持つ、不殺の銀行強盗ギャングの伝説的なアウトローで、銃と精霊魔法で戦うようになる。

愛する女に裏切られ、魂に傷が付いているが、後世の自分の扱いを聞いて、傷が癒えつつある。

身長192センチ 体重84キロ


アヴドゥル (転生前 ?? ???) LV ??

東方にある、砂漠の超大国バブイール王国出身の皇太子(30歳)

ナーロッパと呼ばれる、西方世界を侵攻するため、父王ハキームと陰謀を企てている野心家。

武器は属性魔法と半月刀だが、基本的に武器であれば何でも使えるマッチョマン。

権謀術数に長け、知能が高く、転生前はアウトローのようだが、本性は不明。

第二章で覚醒予定のかなりの大物。

身長186センチ 体重100キロ


フレドリッヒ (前世 英雄ジーク・フリード)

LV ??? 大陸中央のロレーヌ皇国皇太子で、若干14歳にして、剣と魔法の天才。

一国の軍事力に匹敵する力を持つチートキャラ。

教皇にして女帝のマリアと組み、フランソワ王国を手中に収める、気難しいショタっ子。

主な武器は鉄塊のようなツヴァイヘンダーとレイピア。彼が仲間になるのは結構先かもしれません。

身長160センチ 体重52キロ


上級神 閻魔王ヤミー LV???

癇癪持ちで性格にやや難ありのロリっ子女神。

通称 駄女神

普段は冥界でスイーツ食べてるか、勇者が救いに行く世界で手助けをするが、本業は冥界の裁判官。

なお数字に弱い模様。


勇者に恋心を抱いており、それをヤクザな勇者も重々承知はしているが、お互い素直になれないのと、兄神の閻魔大王に遠慮しているせいか、互いに微妙な距離感がある。

身長151センチ 体重50キロ

スリーサイズ B71 W51 H77


勇者ロバート (転生前 マフィア グッドガイ・カルーゾ) LV???

転生前はニューヨークでコーサ・ノストラと言われる、イタリア系マフィアコミッションの委員長だった愛妻家。

怒ると口が悪くなる凄腕の勇者にしてアウトロー。

常人を遥かに超える嗅覚を持ち、転生前は軍歴もあるため武器全般使えるが、魔法戦はそれほど得意ではない。

なおかなりの甘党の模様。


敵キャラサイド


エリザベス (転生前 ????)

主人公マリーの転生後の姉で、18歳。

プラチナブロンドの才女で、決して容姿は悪くないものの、険のある顔と気性が激しい性格をしている為か、異性の反応はイマイチな、残念な美人さんです。

本来は外交能力や政治力が高い筈ですが、周辺国家から魔女扱いされて、八方塞がりに陥ってしまいました。


主人公が何処かから召喚したモンスター軍団を、自身の召喚魔術で操って、主人公の暗殺を狙いますが、尽く失敗します。


もはや破滅フラグ立った、悪役令嬢通り越して悪役女王になってしまった、日本からの転生者です。


しかし何者かの策略と入れ知恵で、破滅神を召喚してしまった模様。彼女の近況から第二章はスタートします。

身長160センチ 体重55キロ

スリーサイズ B 84 W59 H88


“終える者”破滅神ロキ LV???

第一章最後で復活して、主人公一行の負けイベントバトルになりました。

邪悪で悪戯好きで超大な戦闘力と、知能が極めて高く、トリックスター等、様々な異名を持つ、チート神。

ロキの率いる巨人軍と主人公達との、本格的な戦いになるには、まだまだ主人公サイドのレベル不足です。


ニュートピア世界 

地球のような世界ですが、魔法技術と独自の科学力がある異世界。

元々は地球世界で、魂に傷を負った地球出身者の慰労の為の世界だったが、神々の様々な策略もあり、陰謀渦巻く最悪な世界になりつつあります。


西方 ナーロッパ地方

地球の中世ヨーロッパっぽい大陸西側。

北方の亜人国家と泥沼の戦争状態に陥ってる。


ヴィクトリー王国 

周囲を海に囲まれてるイギリスっぽい国で、メシマズ国家で、英雄ジークを信仰している。

海洋航海の技術が発展し、外洋の発展途上国や未開発の島々を植民地にして国力を蓄えている。


フランソワ王国

ヴィクトリー王国と海峡を挟んだ先にある、フランスっぽい軍事大国にして、メシウマ国家で文化大国。

北方の亜人国家と戦争中で、亜人とも混血が進んでいるのか、長寿で精霊魔法の使い手が多い。


ロレーヌ皇国

フランソワとロマーノ連合王国と、山脈を挟んで国境を接する、ドイツっぽい大陸中央の宗教大国。

大陸中央の諸侯はジーク教を信仰し、実力者揃いが多く、大陸最強とも噂される。

ちなみにメシマズ国である。


ロマーノ連合王国

旧イリア首長連合王国という、イタリアとスペインが合わさったっぽい半島都市国家群。

軍事力は他国に劣るが、傭兵制度と海軍増強で、徐々に力をつけつつある。

経済力が高く、交易と投資が得意なメシウマ国家。

かつてはロマーノ帝国という大国だった。


東方 ナージア地方

東方の中世アジアっぽい地域。

バブイール以外にも超大国ひしめく強豪国揃い。

西方への進出を企んでいる。


バブイール王国

広大な領土を持つ、オスマントルコっぽい超大国。

東西交易で富を溜め込み、国土は荒凉としているが、その分土木技術と魔法技術と科学力が発展し、部族間の人口が増加して超大国となった。

なお、東西交易の中心地の為かメシウマ国。


北方ナーデル地方

亜人達が建国した地球の北欧っぽい地域。

ヒト種の西方と東方から見て謎が多い地域で、ヒト種と亜人種はお互い嫌悪し合っている。


フランソワ北方の亜人国家ホランドと、後盾の超大国ノルド帝国、西方と東方に遺恨を持つルーシーランド諸侯国家が存在する。


以上です。

色々とご覧になってくださった読者の皆様、ありがとうございました。

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