第25話 召喚獣ガルーダ
「兄貴、島民を呼んできたさー」
ヴィトーが、シシリー島民を連れてマリー達の前に現れた。
元ヴィクトリー近衛ヨーク騎士団は、アンリが抵抗しないよう、周りを取り囲んでいた。
そして勇者によって正座させられて、頭を項垂れる、フランソワ王国所属の精霊騎士団の姿もあった。
島民達は、フランソワに見せしめに家族を殺され、抑圧されていたのか、憎しみがこもった目付きで、マリーに取り押さえられたアンリや、騎士団を睨みつける。
「殺せ、あんなやつら殺せばいい」
「よくもお父ちゃんとお母ちゃんを」
「フランソワに死を!」
人々の憎しみにマリーは、自分がヴィクトリーで処刑されそうになった事を思い出し、思わず目を伏せてしまい、目の前にいる右手首の関節を極めて制圧したアンリを見た。
「殺してくれ……俺は報いを受けるべきだ。人殺しの自分は、惨めに死ぬべきなんだ……」
すると、勇者がアンリの前に立つ。
「うるせえんだよゴラァ! それを決めるのはマリーだ! てめえじゃねえ!」
勇者が一括するとアンリは沈黙し、ヴィトーに目配せする。
「みんな、俺ぁロマーノ連合王国のヴィトー・デ・ロマーノ・カルロさ。この島の領主にして臣下のシシリー大公と、フランソワの非道、この連合王国の元首として、お詫びしてえ! 申し訳なかった!」
ヴィトーは、その場で跪いて地面に両手をつけると、額に地面を擦りつけて、土下座をした。
ヤジを放っていた群衆がシーンと静かになる。
国家元首が頭を下げるどころか、地面に無様にも額を擦りつける事など、この世界では前代未聞だった。
そして勇者もヴィトーの横で、地面に両手両膝をつき土下座をする。
「ヴィトーの、兄分の俺も頭下げる! 舎弟のやらかしは俺のやらかしよ! おめえさん達の人間の尊厳を蔑ろにした、シシリー大公と、フランソワは敗北した。この島の新たな所有者によって」
島民達が、一斉にアンリを取り押さえた、美しい少女を見る。
「ほれ、島民さん達に挨拶だぜ? 新領主さん」
「自信持って堂々とすればいいさー」
勇者とヴィトーが日本語で、シシリー島救済の宣言を促した。
「私、ヴィクトリー王国の王女、マリー・ロンディウム・ジーク・ローズ・ヴィクトリーと申します。もはやこの島は抑圧された島ではありません。私が今後責任を持ってこの美しい島を豊かに、自由な島にする事を誓います」
マリーが宣言すると、島民から歓声が湧く。
「うおおおおおおおおおおおお」
「俺達は解放されたんだ! ロマーノからもフランソワからも」
「英雄だ、英雄が現れたのよ」
「ヴィクトリー王国のマリー姫殿下万歳!」
そして、マリーは勇者を見る。
自分の心を伝えると、勇者は優しげな顔付きになって、ニコリと笑い頷いた。
「そして、フランソワのアンリ・シャルル・ド・フランソワ王子が、あなた方に今までの非道の責任を取りたいと申しています。なので、私が彼に責任を取らそうと思います」
「待ってましたああああああ」
「殺して! あいつはフランソワは夫を!」
「お父ちゃんとお母ちゃんの仇を取って!」
島民から殺せコールが巻き起こり、フランソワ騎士団も、自分達や王子が処刑されると思い、直立不動で頭を項垂れ、無念の涙を流し始めた。
「アンリ・シャルル・ド・フランソワ、今からあなたの関節を自由にします。島民の前を向いてください」
マリーが関節技を解くと、四つん這いになったアンリはその場に座り、ジッと島民を見据えた。
「正座だろこの野郎!」
勇者が座ったアンリの顔面に蹴りを入れる。
「てめえは地べたさんに跪いて、足を折りたたんで、膝に手を置いて、あいつらの方をしっかり見て座るんだ! 誠意を見せろ島民に!」
ヴィトーは、この先アンリがどうなるか、なんとなく察した。
この男気あふれる自分の兄貴分と、自分が惚れ込んだ優しい女が、彼らを皆殺しにするような、仕置きなんかしない事に。
「オラァ! うぉらぁ! ゴラァ! ドラァ! ウラァ! クルァ! どりゃあ!」
勇者が、フランソワの騎士団の頰を次々とビンタして回った。
「てめえらの王子が、正座してんのにボケッと突っ立ってんじゃねえ! てめえらも倣って正座だろ! このボンクラ共が!」
正座した騎士達は、涙を流して次々とアンリの助命を申し入れた。
「我々はどうなっても良いので王子殿下は」
「この方はフランソワの希望ですのでどうか」
「アンリ殿下にお慈悲を……」
勇者は助命を申し入れた騎士達を、その辺に落ちてた棒で、殴り回った。
勇者の迫力と暴力に、島民達が思わず息を呑み、マリーも目を背けそうになる。
「やめてくれ! 彼らは俺の命令を忠実に守ったのに過ぎない! 俺の命でどうか……」
アンリは騎士団の助命を申し入れる。
彼は、誇り高い伝説の男の魂を取り戻しつつあり、騎士達もアンリの心根を感じ取り、お互いに庇い立てあった。
しかし勇者は舌打ちし、何かを言おうとする前に、マリーが口を開く。
「あなた達は、お互いを庇い合う人間らしさを持ってるのに……。何でこの島の人達を、同じ人間として接する事が出来なかったんですか! どうしてこの人達を酷い目に……同じ人間なのに」
マリーが涙ながらに訴えると、島民達も感極まって涙を流し始めた。
「どうしてあなたたちは、この人達に今のような人間らしさを、見せてあげられなかったんですか? そうしなければならないような、理由なんて最初からなかったはずだ!」
勇者は、自分が言おうと思っていたことをマリーが言った事で確信した。
この娘は、世界を救う英雄としての道を歩んでいると。
彼女を教え導き、支えてやることが、この世界の救済につながると。
世界に潜むまだ見ぬ巨悪を見つけ出し、退治する鍵になると。
そして、ドスと呼ばれる短剣を持ったマリーはアンリの前に立ち、刃を向ける。
「俺は、男としての誇りを失った。もう俺は民衆の味方じゃない、俺が憎んだ奴らそのものになっちまった。ケリをつけてくれないか? 君の手で」
遠い昔の記憶、人殺しをタブーとし、多くの人々から義賊と呼ばれた男の魂は、今の自分の行いを許せず、死を望んでいた。
そしてマリーは、アンリのアゴに刃を押し立て、彼の男の誇りのあご髭全て剃り上げると、年相応の若者の顔立ちになったアンリは、呆然とする。
「あなたの男としての象徴と誇りは、今ので消えて無くなりました。これであなたは男として死んだも同然です」
ヴィトーは、ニヤリと笑いながら勇者に小型ナイフを渡し、二人でフランソワの騎士団全員の髭を剃り落とした。
「髭を無くして女みたいになったこいつらは、もう男じゃなくなったさー」
「おかま野郎共! 島民さん達に詫び入れろオラァ!」
この世界の成人男性は、ひげを蓄えた者が多くおり、捕虜となった貴族や王族の髭を切り落とすことは、最上級の侮辱となる。
「この者達は、マリー・ロンディニウム・ローズ・ヴィクトリーの名の下に、男としての象徴の髭を切られ、もはや死んだも同然。最後にこの者達から、島民への心からの謝罪をもって責任を取らせることとします」
アンリは、この時悟った。
マリーは、自分達を殺すことなく贖罪をさせることで、島民の心と自分達の命を守ろうとしてくれたのだと。
「王位継承者アンリ・シャルル・ド・フランソワが、祖国フランソワを代表し、シシリー島民へ謝罪する。申し訳なかった!」
「申し訳ありませんでした」
「そして俺は今回の責任を取り……フランソワの王位継承権を放棄! フランソワ王家から出奔する!」
アンリと騎士団が謝罪を口にし、王子の地位を捨て去る宣言をすると、歓声が沸いた。
「マリー姫殿下万歳!」
「私達シシリーの名誉を取り戻してくれたんだ!」
「我ら生涯をかけて姫様に忠誠を誓います!」
島民達が立ち上がり、万雷の拍手を贈った。
フランソワの名を捨てたアンリは、精霊騎士団の前に立つと、自分の軍服に着けた勲章や徽章を右手で掴み、引きちぎると、地面にばらまく。
「精霊騎士団に告ぐ、もはや俺は王族ではない。アンリ・シャルル・ド・フランソワは死んだと、父上に伝えよ!」
「王子殿下……我らの助命の為に……かしこまりました!」
聖霊騎士団は、涙を流して港にあるフランソワの軍艦に、ジークフリード騎士団と乗り込み、祖国へと帰還した。
アンリは、今度はマリーの前に立つ。
「俺はもう王子じゃない。ただのアンリとして、マリー姫殿下に仕える用心棒として、雇ってくれないか? 王子なんて地位を捨てて、一から俺は男としてやり直したい」
マリーはアンリの申し出にやや困惑し、勇者とヴィトーの方を見ると、二人の男はマリーに頷く。
「わかりましたアンリ。あなたを私の用心棒として認めましょう」
マリーが、アンリを従者にすることを認めた瞬間、空を覆う鳥の群れが現れた。
一羽が舞い降りると、鶏のような鳴き声を上げる。
とさかがある極彩色の鳥で、尻尾はトカゲの尻尾のようにも見え、島民は捕獲しようと鳥に近寄ると、鳥と目があった。
その瞬間、島民の皮膚が硬質化して動けなくなり、猛毒のブレスを吐くと島民は体を溶かされて絶命し、辺り一面悲鳴が響き渡った。
「な!? コカトリスだ!」
勇者は長ドスを鞘から抜き、ヴィトーもトンファー式の魔力銃を装備し、傭兵団と騎士団が身構える。
「コカトリス?」
「そうだマリー。おめえらあの鳥と目を合わせるな! 体が石化するぞ! 毒と石化と鋭いくちばしが奴らの武器だ! ちくしょう……なんでこの世界にあんな厄介なモンスターが……撃ち落とせ! マリーは風のシルフを召喚しろ!」
マリーは親指の指輪に力を込めた。
「出でよ、風のシルフ! 私たちに力を貸して!」
HPとMPを消費して、マリーは風のシルフを再び召喚した。
緑の長着を着たシルフは、男用の濃紺の着物と、黄金に光る魔力増幅のアクセサリー、光学照準器付きの回転式大型魔力ピストルや回復アイテムを、両手に抱えている。
「お呼びでしょうか? 姐さん。親父さん、コルネリーア卿が渡し忘れた装備を用意しておきました」
相変わらず美しい顔立ちをしたエルフの美少年に、マリーが思わず見とれるが、今はそんな状況ではないと、横に首を振る。
「お願い、コカトリスが沢山現れたの! あのモンスターを何とかして!」
すると、エルフの美少年は勇者に頭を下げて、装備品を手渡すと空を飛び、マリー達に風の魔法を纏わせた後、弓を使ってコカトリス達を駆逐していく。
「あれは……亜人だ! 手練れの亜人の騎士だ!」
ヨーク騎士団とスィード傭兵団が、空を飛ぶエルフの美少年を指さす。
そして勇者は全裸になった後、魔力反応で透明化するボディーアーマーと、濃紺の長着に山吹色の帯を締め、右手に大型拳銃を装備した。
「へへ、やっぱり俺専用の装備がねえとな。世界救済と言えば、この黒光りするマグナム、パイソン893とドスに、粋な恰好柄の着物ってもんよ」
勇者の姿に、ヴィトーが満面の笑みで指笛を拭く。
「兄貴いいなそれー。俺ぁも、前世で愛用してた真っ赤なポロシャツか、沖縄シャツに白のスラックスと、カッコいいコルトの銃欲しいなー。うちの国で作らせよっと」
勇者はパイソン893を両手で構え、魔力弾を6連射すると、上空のコカトリスが次々と落下して絶命した。
「数が多いなクソ! しかも緑と紫の羽も混じってやがるから、変異種を越えて毒性が高いやべえ奴。こんなの魔界でしか見た事ねえぞ! マリー、小さい砂利みてえな燃える金属弾をイメージしろ。あとはマシンガンみてえに、そのデリンジャーでぶっぱなせ!」
マリーは、デリンジャーを連続で発砲しながらコカトリスのステータスを覗き見る。
「嘘! レベルが今の私と同じ20!? 何なのあの鳥!? 石化と猛毒のスキル持ちなんて」
騎士団と傭兵団が住民を庇い、盾となって避難させているのを見て、髭を剃られたアンリが立ち上がる。
「名も知らぬ英雄よ、俺にも銃をくれ。俺の方が射撃はうまい」
勇者はマスケットライフルを放り投げると、受け取ったアンリの瞳に、真っ赤な炎の光が灯る!
「俺は……もう迷わない! 俺が本当になりたかったのは、人殺しじゃねえ! 民衆から称賛されるような……英雄だ!」
炎を纏ってサラマンダー化したアンリは、精霊魔法と風の魔力で飛び回り、毒のブレスをかわしながら、空中でも構えを崩さず、魔法のマスケット銃をコカトリスに次々命中させていく。
転生前、対峙する警官隊や捜査官達の命を奪わないよう、徹底的に磨いてきた銃の腕を披露すると、思わず着物姿の勇者が口笛を吹いた。
「ヒュー、流石伝説の男! すげえチャカの腕前だ。そして強烈な魔力反応……何か来やがるな」
コカトリスと魔力弾が飛び交う戦場に、金色の翼と真紅の頭をした巨大な鳥が、雷鳴と共に現れる。
「召喚獣ガルーダよ、ここがロマーノとフランソワの植民公社があるシシリー島。お前の力で殲滅せよ!」
エリザベスの声!?
全員が、突如現れた巨大怪鳥を見る。
「状態確認」
マリーが、巨大モンスターガルーダのステータスを確認した。
ガルーダ レベル44 HP18000/18000 MP560 攻撃100 防御90
「ちょ……私のレベルの倍以上あるんですけど! 雷まとってるし、絶対ヤバイモンスターだよねコレ」
マリーが敵モンスターのステータスに驚愕するが、勇者がにやりと笑う。
「へえ、そういう事かい。いいこと考えたぜ! おい金城、おめえ地上のコカトリス相手にしろ! ブロンド、召喚時間が切れる前に精霊魔法で俺とマリーに風の力をアップさせるんだ! あの鳥公共を晩飯で水炊きにしてやるぜ!」
「わかりました親父さん」
「あいよー、兄弟」
マリーと勇者は風の魔力を浴びて、体が宙に浮く。
「マリー、俺が囮になる。おめえは、デリンジャーの魂を蘇らせたアンリと一緒に、あのガルーダとかいう鳥公を倒すんだ!」
「はい、勇者さんいえ……先生!」
マリーは、勇者の事を師と仰ぐ。
自分が思い描く正義のヒーローとは程遠い、素行不良だが、人間の情を愛するヤクザを。
勇者は、自分はそんな柄じゃあねえと思いながら、はにかんだ笑みを浮かべた。
「先生ねえ、まあいいや。そんじゃあ、あの鳥公を俺の絵図に嵌めてやる。おらぁ、鳥公! かかってこいやオラァ!」
空中で魔力を集中させ、長ドスで空を飛ぶコカトリス達を斬り捨てていき、ガルーダの風切羽を切り裂く。
「墜ちろ鳥公!」
風切羽とは鳥類の翼後方に整列している、揚力と推進力を司る一連の羽根の事を言い、切られた鳥は羽ばたいても空を飛べなくなる。
しかし切られたガルーダは、すぐさま再生させて勇者に雷撃を繰り出し、勇者は紙一重で電撃をかわして、パイソン893で銃撃して応戦する。
「くそ、堕ちねえか! だがかかったなアホの鳥公め」
ガルーダが雷撃を放った先のコカトリス群れが、地面に落下していく。
「ハッハー、焼き鳥完成だぜ! この島のワインであれつまみに一杯やるのも悪くねえな! コカトリスはトサカと喉の毒袋、そして内臓取り除けば、風味豊かな極上のジビエよ!」
「あれ、食べる気なんだ……」
マリーは師と仰ぐヤクザな勇者にドン引きしながら、コカトリスを殲滅したアンリと合流した。
「マリー姫よ、彼は……英雄ジークじゃないはずだ。何者なんだ? あの男は」
転生前の記憶を取り戻したアンリは、壮絶な最期を遂げた仲間のネルソンを思い出す。
狡猾にして凶暴、そして誰よりも義に厚かった男の事を。
「彼はアウトロー、転生前はヤクザと言う日本のギャング組織にいた。そして、幾多の世界を救ってきた勇者と呼ばれる英雄。彼の信条は、”弱きを助け強き悪を挫く”」
弱きを助け強きを挫く、転生前にアメリカのギャングだったアンリは、そんなギャングが自分以外にもいたのかと思い、感銘を受けた。
「弱きを助け、悪を挫くか……決めたぞ! ならば俺は、不殺の誓いと共にその生き方を参考にしよう!」
アンリは、魔法のマスケットライフルを構えて、勇者を追い立てて雷撃を繰り返すガルーダに、転生前に警官隊と銃撃戦を繰り広げた、愛用のマシンガンを思い浮かべた。
M1921。
木目調のストックが美しい毎分800発の高速連射が可能な、トンプソン・サブマシンガン。
別名トミーガン、シカゴタイプライターと呼ばれる、世界最初のサブマシンガンで、弾丸の口径は一発でも当たれば、大の男がすっ飛ぶ45口径。
アンリはサラマンダーの精霊力で炎の力を高め、先端に切れ込みと窪みを付け、内部に高温の炎を宿し、体内で弾丸が破裂する、人間相手には決して使わない、必殺の弾丸をイメージする。
「本当はフォアグリップがあった方がいいがしょうがねえ、俺の炎の機関銃だ!」
異名の通りタイプライターのような乾いた発砲音が空に響きわたり、ガルーダの体内で炎と共に金属弾がはじけ飛び、連射するごとに大ダメージを与え、雄たけびを上げたガルーダは、必殺の電撃をアンリに浴びせた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
アンリは、肉が焦げ高圧電流で血が沸騰するような激痛が全身を駆け巡るが、それでもなお引金に指をかけ続け、必殺の弾丸を連射する。
「前世で、死刑判決を受けた強盗仲間は電気椅子で処刑された。ならばこれは、本来俺が受けるべきだった苦痛! だがそれがどうしたああああああああ!」
アンリは不屈の闘志で引き金に指をかけ続ける。
「鳥公、おめえの相手は俺だ!」
勇者は最大限の魔力を込めて、ガルーダにパイソン893を6連射した。
この回転式魔力拳銃は、6発放つと魔力充電が必要だが、絶大な威力を誇る。
勇者がイメージするのは、超高速で撃ちだされた弾丸の先端部を硬質化し、モンロー/ノイマン効果により、弾丸に封じられた冥界の炎がさく裂する、HEATと呼ばれる成形炸薬弾。
通常の場合、弾頭を大型化しないとこの効果は得られないのだが、勇者の魔法技術によって小型の魔力弾に、金属すら液体と化す冥界の炎の噴出によって可能としたもので、一発一発がミサイル並みの威力である。
「キェアアアアアアアアアアアアアアア!」
あまりの威力に、肉が爆ぜ、体内を冥界の炎の燃焼ガスで焼き尽くされ、ガルーダが悲鳴を上げる。
「状態確認!」
マリーがガルーダの残りHPを確認すると、HP1000/18000となり、あと一息でガルーダが絶命する。
そして、勇者の攻撃で生じた隙をマリーは見逃さなかった。
「今だ!」
マリーは上空に、燃え盛る大岩をイメージし、ダメージを受けボロボロになったアンリが、更に炎の岩にサラマンダーの炎で燃え上がらせ、マリーはガルーダの頭部めがけて、燃え盛る炎の岩をぶつける。
「隕石」
ガルーダは、高空から落とされた隕石が頭部に直撃し、くちばしが砕け悲鳴を上げ、隕石衝突の威力でシシリー島のエリス火山の火口まで吹き飛ばされる。
「キョェアアアアアアアアア!」
隕石ごと火口に衝突すると、火山の噴火と共にキノコ雲が上がり、ガルーダの命が尽きた。
「ったく、火山なんて爆発させるんじゃねえよ。しょうがねえ娘だな、どれ」
勇者は体を阿修羅化して、噴煙を上げるエリス火山に魔力を集中させた。
「烈風怒涛」
勇者は火山上空に激しい烈風を引き起こし、有毒ガスや噴石、火砕流を巻き込みながら、宇宙空間まですべて吹き飛ばしてしまった。
「あーしんど。鳥公も片付けたし、あとは島民と一緒に焼き鳥タイムよ。この島のレモン絞って、塩を振りかけ、ワインで一杯やったらうめえだろうなー」
人知を超えた勇者の極大魔法を見た、マリーとアンリは思わず空中で顔を見合わせる。
「なあ、彼は……人間なのか?」
「人間……だと思う。彼は人間離れした力を得てきても、人間性を失わなかった勇者……多分」
そして三日後の世界会議の前に、大国フランソワの第一王子アンリ・シャルル・ド・フランソワ逝去の報が流れ、ニュートピアと呼ばれる世界は、より混迷を辿るのだった。
なんと アンリが おきあがり なかまに なりたそうに こちらをみている!
なかまにしますか?
→ はい
いいえ
アンリは なかまになった
ふような ジョブとスキルを えらんでください
→プリンス →剣士 →王族の威厳
おもいだす ジョブとスキルを えらんでください
→ガンマン →強奪の心得 →犯罪王の美学
よろしいですか
→はい
いいえ




