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転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第四章 戦乙女は楽に勝利したい
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第164話 騎士の誓い

 ごきげんよう、マリー・ロンディウム・ローズ・ヴィクトリーです。


 転生後の名前、めっちゃ長いからマリーって呼んで欲しいんだけど、今は一人の騎士の思いを果たすべく、悪の帝王ジークフリードを討ち果たすため、帝国上空を空中艦隊で飛行している。


 騎士の名は、ヨハン・ベルン・フォン・フェルデナント。


 ロレーヌ皇国における最強のジークフリード騎士団長でもあり、大公でもある彼が遺した思いを果たすために、彼に誓った騎士の誓いと義理を果たすために。


 私は当初、自身の騎士団を率いてヴィクトリーへの攻撃を計画していた。


 全ては魔女と呼ばれし絵里を、本来の姿に取り戻すため、呼び出された4類の反逆神を先生と討伐する、筈だったんだ。


 しかし予想外の事が起きた。


「すまねえ、マリー来てくれ。臨時会合だ」


 私は、基地の広間から参謀本部に赴くと、なんかモニターとかいっぱい設置してある部屋に、先生と女神ヤミーの他、異世界から来た多分偉い人達がテーブルに腰掛けていた。


「おう、作戦変更だ。ヴィクトリーについては……クソが!! 神界から攻撃停止命令が親分のところに来やがった!」


「えっと……なぜ?」


 すると、女神ヤミーが唇噛み締めて、めっちゃ悔しそうな顔をしている。


「最上級神の会合で、ヴィクトリーには今は手出しできぬとされたのじゃ。奴らめ……原初の地母神にして災厄の女神、ティアマトを呼び出した」


 ティアマト?


 なにそれ、それが私達がヴィクトリー王国に足を踏み入れられない理由なんだろうか?


「その件だが、親分から話がある。おめえ、俺とヤミーと一緒に、ちょっと来てくれ」


 私は、冥界のワンコのバロンの遠吠えと共に、先生の親分である閻魔大王の玉座の間まで赴いた。


 紫色の火が灯る蝋燭が石壁に掲げられてて、石畳から一段高い玉座に、閻魔大王が葉巻を咥えて私達を見下ろしている。


「妹とマサヨシ、そして我が勇者の弟子よ。我がお前達を呼んだ意味、わかるのう?」


「へい」

「はい兄様」


 え? 


 先生達、呼び出された理由とかわかるの? 


 私はティアマトってやばそうな女神が現れたとしか知らないけど。


「事態の深刻度について、我から説明する。その昔、創造神様の側近だった原初の神、巨神の1柱がティアマトじゃ。ティアマトは全ての生命体、人、獣、龍、魔、及び、原初の神達の概念そのものを作り上げた母神じゃった」


 えーと、全ての存在のお母さんって事?


 神も悪魔も龍も人間も何もかも含めた。


「そうじゃ、別名螺旋の女神。原初の世界で生命の螺旋、いわば全次元宇宙で生命のデザインを担当した神と言われておる。かつての大天使長ルシファーよりも前に存在しておった、まさしく原初の神じゃ」


 なにそれすごい。


 原初のデザイナーとかやばいって。


「その昔、アプスーとティアマトという神がおった。しかし、ティアマトはアプスーを殺害。原初の大邪神キングーと共に、厄災戦、創造神様含めた神々に戦いを挑んだという。結果は、神々の勝利じゃったが、ここから先が肝心なのじゃ」


「へい」

「はい兄様」


 なんだろう、超スケールが大きい話になったけど、それがヴィクトリーに踏み入れちゃダメな話に繋がるのかな。


「女神ティアマトの死は、全ての神々及び生命体のデザインが失われる事となる。つまり概念自体が消失するという意味を指すのじゃ。よってかの女神を幽閉する世界と大義名分が必要になった。それが指定4類と呼ばれる概念と、彼女を収容するニブルヘルと呼ばれる大逆神専用の牢獄じゃ」


「つまり、女神ティアマトをぶっ殺しちまうと、神界はおろか、うちら人間も神も魔族も、あらゆる生命体も存在の意義が無くなっちまうってわけですね。そして、それを呼び出したのがロキの一派とエリザベスのガキ」


 ちょおおおおっと。


 なんて事してくれたのよ絵里の奴。


 そりゃあ神様達も、手を出すなっていいますっての! 


 もしも討伐って事になったら、概念とか消滅してみんな死んじゃうじゃないの。


「この件に関しては、創造神様が必要な措置を講じるまで、女神ティアマトに関しては、一切手出し無用と通達が下されたのじゃ。我も打開策を構築中ゆえ、しばし待て」


「へい、わかりやした」

「はい、承知しました兄様」

「あ、はい」


 まずい事になったわ。


 だって、当初の計画は私がジッポンにいるって事にしてて、裏をかいてヴィクトリー王国に進軍して、敵勢力の無効化と私が絵里を説得後、オーディンと戦うって手筈だったのに。


「それでは親分、自分はそれ以外のカス共標的にします。ジークの野郎とセトの野郎が、バブイールにいるって情報掴みましたんで、そいつら先に潰します」


「うむ、検討を祈る。我は女神ヘルに命じ、イワネツめを直で吟味する。この者が勇者として相応しい男かのう。相応しくなければ地獄に送り返してやるわい。それとかの世界救済は、創造神様の命令じゃ。絶対に失敗は許されん、良いな?」


「へい、親分。わかっておりやす、それでは失礼いたしやす」


 次元が歪んだ瞬間、私達は参謀本部に帰還し、賢者アレクシアさんが先生に寄り添う。


「マサヨシ様、黒ゴキブリ……失敬ヤミー様も交えてこれより作戦内容の変更と、方針を我々が提案いたします」


「なんじゃシロヒトリ蛾め、はよう我らに必要な伝達事項を済ませるのじゃ」


「申し訳ありません。ゴキブリ(ヤミー)様」


「この毒蛾め! とうとう口にしおったな!」


 あ、賢者さんにぐるぐるパンチみたいな感じで飛びかかろうとする女神を、先生が止めた。


「おめえ、俺の女なら俺の神に敬意払え」


「申し訳ございません、マサヨシ様」


 あ、えーと、うん。


 この女神と賢者さんめっちゃ仲悪い。


 なんでだろう、ちょっと記憶を読ませてもらおうかな。


 あ……。


 これは私が踏み込んじゃダメな奴だわ。


 初対面の時からお互いの第一印象最悪っぽい。


 ていうか、多分10数年前なんだろうけど、まだ少女だった賢者さん、可愛らしい顔して騎士団長らしき人を、顔色一つ変えずピストル持って平気で撃ち殺してるし怖っ!


 先生を巡って女同士、争いあってる記憶ばっかりでめっちゃ怖っ!


「それでは必要な伝達事項を、わたくしから。ナーロッパ情勢については、我々の計画通りに進行中。無論ヴィクトリーを除いてですが……それとルーシーランドより斥候部隊からの情報。オーディンが現れたとのこと」


「おう、わかった。オーディンの野郎については、デリンジャーや金城の作戦成功後だ。無理してこっちから挑みかかるなよ、下手打つ原因になる」


「はい、かしこまりました。それと高空より監視中の艦隊が、謎の電波妨害を受けて撤退。航行不能に陥り、現在艦船は修理中。監視衛星も多数落とされ、敵への電波妨害に支障が生じ、地表においてはセト、ジークフリードの姿が確認されました」


 先生は思いっきり舌打ちする。


 先生が連れてきた異世界の銀河連邦の艦隊が、無力化されて、監視衛星も落とされたそうだ。


「ざけやがってクソ野郎。マリー、さっそくバブイール王国に向かうぞ。騎士団も連れて行く」


「はい!」


 こうしてバブイール王国王都、イースターに向かったわけだけど、私達が向かった時にはすでに王都は跡形もなく吹き飛ばされた状態だった。


「チッ、お前ら土魔法で鉛作って鎧にコーティングしろ。俺もお前らを魔力で守ってやるが、生身だと放射線と重金属汚染で死ぬぞ」


 先生はいつもの着物じゃなくて、真っ黒いアダマンタイトの鎧に身を包んで騎士団長代理を務める。


 ていうか、放射線と重金属汚染って……この地で起きたのはまさか核攻撃!?


 私の騎士団達も動揺し、部隊長達も感情に流されそうになってるが、こういう時ほど……。


「そうだ、上に立つ者は我慢とリーダーシップよ。たとえ困難な状況でも、おめえは頭を水にして、心の火を消さずにだ。いざという時の決断が鈍る」


「はい」


 幸い、私の顔はイミテーションで作った黄金の兜で口元しか見えないようになってるし、表情で動揺が悟られる事はないだろうけど、先生が口酸っぱく言ってる、所作だとか気をつけないと、騎士達の士気に影響でちゃうから、心を強く持たないと。


 黒焦げの遺体しかない、凄惨な状況でも生存者を探すために、廃墟と化した市内を探索していた時だった。


 空から船団が着陸して、船から降りる龍さんを見つける。


「……生まれ変わっても、また祖国を失うとはな。すまない、君たちも来てくれたのか」


「龍さん……」


「私も生存者を探そう。船長たる者、挫けてる暇はない。そしてこれをやった者の手掛かりを」


 やはり、この人はすごい。


 こんな状況下でも、前世で大船団の船長でもあり、皇太子をしていただけあって、弱いところを一切人に見せないでいる。


「ああ、おめえさんがいてくれると心強い。例のルーシーランド国境は、うちらが抑えてるから心配すんな」


「すまない、清水。向こうの戦場は酷いものだった。少なくとも1千万人以上ハーンに殺されてる」


 え……一千万人以上って。


 この世界の人口がどれだけいるかは知らないけど、一千万人以上ってそんな……。


「クソッ! オーディンの野郎……ハーン使って民族浄化やりやがったか」


 先生が危惧してた民族浄化の危険性。


 そうならないように、ジューを保護名目で拉致してたけど、バブイールとその周辺国がモンゴル帝国みたいな悪の帝国に虐殺されてしまったらしい。


「部下にチーノ人も加えたが、チーノ大皇国でも毎日のように皇族貴族が殺されていて、民達も何人死んだかわからないそうだ」


「わかった。俺の呼び出した軍団に、救済に向かわせる。もうこれ以上奴らの好きにはさせねえ」


 先生は水晶の通信で、チーノ大皇国に大部隊を投入するよう指示した。


 そして広大な瓦礫の大地を歩むと、ナーロッパ最強の騎士、フェルデナント大公を見つける。


 自身の槍で串刺しにされて息絶えそうな光景に、思わず私も目を背けた。


「な!? この御仁は……ナーロッパ最強の武人にして騎士! フェルデナント大公!? 幾度か槍を交えるも、我が力を寄せ付けなかった御仁が。クロスクレイモアの使い手のオーウェン公をも凌ぐ達人が……」


 ハーバード侯は、同年代でナーロッパ最強を誇った騎士の無残な姿を見て気が動転し始め、私もホランドの戦線で共にした長身の騎士である事を思い出し、心を痛めこれを行った何者かに怒りが湧く。


「酷い……こんな、こんな事をする人は人間の心を持ってない……」


 先生はフェルデナント大公を見つめ、回復魔法をかけながら槍を抜き、傷を塞いでいく。


「マリー、奴から記憶を。俺の回復魔法でも、残念ながら生命力を消耗しきり、血を流しすぎて。クソが、すでに手遅れだ。だがまだ魂は、あの世に召されてねえ」


 命が消えようとしてる、フェルデナント大公の記憶を読むと、この地で行われた戦いの記憶が私に入ってきて、先生も冥界魔法でフェルデナント大公の記憶を読み取っている。


 すると、この地で起きた真相が判明した。


 東西の交易路だったこの王都を消滅させたのは、フレドリッヒに乗り移ったジークフリード。


 おそらく状況から、核攻撃のような魔法を放って、バブイール最大の街、王都イースタンをこんな酷い有様にしたんだ。


 そして、セトが襲来した。


 怖い、この神やっぱり。


 死と闘争を楽しんでる。


 敗北した時の恐怖が蘇って気分が悪くなる。


「この野郎がセトか。ジークとなんか喧嘩おっ始めたぞ?」


 そのあと、この地でセトとジークフリードの一騎打ちが行われて……滅茶苦茶な戦いだ。


 私が負けたセトと、やや押されてるけど善戦してて、隕石まで降って来て……これはなに? 


 上空に魔法陣……召喚魔法!?


 空を覆った大量の蝿がセトを攻撃して、あれは散弾銃? 大量の蝿が集まり、女性の姿になった。


 黒のパンツスーツに、金髪で黒い肌のすごい美人さんだけど、彼女は一体……。


「チッ、最悪だ。ジークの野郎、やべえやつを呼び出しやがった」


「え?」


「かつての魔皇ルシファーの最側近にして、サタン王国の頭脳と呼ばれたベルゼバブ。ある意味ルシファーより厄介だった性悪女だ」


 ベルゼバブって、確か蠅の王の異名を持つ、大悪魔だっけか。


「あの悪魔の知能は、俺の賢者を遥かに上回り、俺もぶっ殺されかけた事もある」


 ちょ、先生が殺されかけたって。


 めっちゃやばい悪魔だそれ。


「あの性悪女の描く絵図はハンパじゃねえ。厄介度ならばロキに匹敵するだろう。なるほど、セトも戦闘で手を焼いてやがるな」


 うん、フェルデナント大公もこの破茶滅茶が押し寄せて来そうなバトル見て、加勢にも行けず悔しい思いをして……!?


 空から隻眼で漆黒の鎧を装着した大男が現れて、あれは!?


「確かゲイラって戦乙女(ワルキューレ)が持ってた、馬鹿げた威力の……神槍グングニル」


「ああ、オーディンの野郎だな。野郎もこの場所にいやがったんだ」


 なんだろう、何か話をしてて、フェルデナント大公が感覚魔法で盗み聞こうとしてる。


「久しいなセト。どうだワシが生み出す戦場は? 美しかろう、戦いに己を見出す戦士達よ」


「ええのう、ぶち最高じゃあ。じゃけえワレと戦闘が出来るともっと楽しいんじゃがのう?」


 するとオーディンが笑い出す。


「それは楽しそうだ。他にも、この戦場にはフレイアが呼び出した戦士と、魔界の敗北を受け入れられない魔族の戦士もおるな。クックック喜べ、戦いに明け暮れる貴様らに、そしてこの地で戦い続ける勇者達にも平等にくれてやる」


 オーディンが右手に持つ槍を掲げると、空が光り輝き、異世界の銀河連邦が高空に打ち上げた監視衛星が、流星となって世界に落下し始めた。


「チッ、あの衛星作るのにいくらかかると思ってやがんだクソ野郎。ドリーの艦隊が撤退したり、通信障害起きたって報告聞いたが、こいつのせいかボケ」


「戦い続ける者達への楽園ヴァルハラを! 等しき死を! 再生を! そしてまた死を! 永遠に戦いに明け暮れる戦士達の理想郷と黄昏を、全ての次元世界に!!」


 オーディンの体が光り輝き、ジークの傍らにサキエル、いやブリュンヒルデが寄り添う。


「ああ、貴方様を思い出しましたわ。私の愛するアッティラ様、ジークフリード陛下」


 ジークは、ブリュンヒルデを一目見て涙を流し始めて、肩を抱き寄せたが、なにこれ一体。


「……我が妃マリアンヌ。ああ、やっと会えたイルディゴ。俺は君とまた結ばれる運命だったか」


 ……いや、違う。


 これはオーディンのなんらかの力で操られて、おそらく洗脳されたんだわ。


「英雄ジークフリードよ。ワシがオーディンである。我が伴侶女神フレイアの救世主としての活動、大義であった。褒美に貴様の伴侶を会わせてやったぞ」


「……あなたが神なのはわかったが、我が女神と夫婦だった証拠はあるのか?」


「ある、あやつめの左鼠蹊にホクロが3つ。右の乳房の裏に毛が生えたホクロが1つ。夫婦でなければわからぬ秘密であろう?」


 うわぁ、このオーディンって神、女性のそんなところまで見てるの?


 キモッ、こいつ。


「確かに、乳房に毛が生えたホクロがあった気がする……そして強大な力……オーディン神」


 ちょ!? こいつもキモッ!


「どうじゃ? ジークフリードよ、そしてこやつと契約した魔族。ワシはお前達の望むものを与えてやるぞ」


 今度はベルゼバブの方をオーディンが向いた。


「憎き神め、私が望むものを与えるだと?」


「そうだ。ワシは神界から手配中の指定4類、反逆神である。ワシを滅ぼしに神達が集まってくるが、お前が憎む神々を滅ぼす復讐に、ちょうど良いのでは?」


「あなたがそのような身分になった経緯はどうでもいいですが、あなたなかなか使えますね。なるほど、神界の争いに付け込めるか」


 先生は苦虫噛み潰した顔になってる。


 このオーディン、私達よりも一歩も二歩も先を行ってる陰謀の達人だ。


 すると、セトがオーディンに魔力を込めた神杖を向けて魔力を高めた。


「たいぎぃけぇ、さっさと喧嘩しようや戦神よ」


「ふふ、ワシとはいつでも戦闘できるではないか。それよりもセトよ、ワシはこの地に戦士達の理想郷を作り出そうと思っとる」


「戦士の理想郷?」


 オーディンは漆黒の神槍グングニルを空高く掲げて、眩い七色の光を空に具現化させて映像化する。


 夜が明けたと同時に、数多の男が殺し合いをしてる凄惨な映像が流れて……酷い。


 そして生首を掲げた男が、ワルキューレ達に招かれた屋敷で、着飾った女性達とパーティーした後、その男女は……。


 妊娠とか一切なくて女から子供達が生まれて、急速に成長していき、夜が明けて同じことを繰り返す。


 地獄だ。


 いや、地獄以上のディストピア。


 こんな酷い世界に、オーディンはするつもりなのか。


「これが我らが戦士の理想郷じゃ。夜が明けると戦に励み、夕日の黄昏と共に戦が終わり宴に酔い、それを一日中、延々と繰り返す理想郷(ユートピア)!」


「ほう? そりゃあええのう」


「ふふ、生の充足感と死の満足感を繰り返し、己が力を延々と高めることが可能。このユグドラシルにあるヴァルハラシステムを利用して、何度でも強者達を魂召喚で呼び出して戦闘も出来る! くくく、いつでも何処でも好きな戦争が様々なシュチュエーションで楽しめるのだ。ワシら神の力を無限に高める事が可能という事よ。ハーッハッハッハ! まさに我らが力を増す道具として、人間以上に素晴らしい生き物はいなーーーい!」


 私と先生は真なる邪悪を見た。


 悪魔を超えた邪な存在、邪悪神。


「そんな事させるもんですか」


「ああ、このワルは絶対に許しちゃおけねえ。消滅させてやるか。いや……待てよ、クックック」


 何!?


 先生、このオーディンと同じかそれ以上な邪悪な顔つきになったけど、何を思い付いちゃったの先生。


「この野郎に相応しいケジメを思いついたぜ。楽しみだなあ、野郎ぶっ潰した後のケジメの時間がよお」


 どうやら先生、魂の消滅よりもやばいケジメの方法を思いついたようだ。


 オーディンよりも恐ろしげに笑う先生だけど、そのオーディン達に、立ち塞がるかのように、フェルデナント大公が大槍を構える。


「させるか、そんな事。我らが皇太子、フレドリッヒを加担させてなるものか!」


 ダメ、相手は人智を超えた化け物達。


 いくらナーロッパ最強の騎士でも……。


「フェルデナント、槍を下ろせ。神の御前だぞ」


「私に命令できるのは皇太子と、マリア猊下だけだ。お前は皇太子じゃない! 邪悪な何かだ!」


 この人は気がついたんだ。


 目の前の男が、フレドリッヒじゃなく悪の帝王アッティラ、ジークフリードだと。


「なんだこの人間? ジークフリードよ。どうやらワシに歯向かうようだ。鬱陶しいから殺せ」


「ジーク様、私達に逆らう愚か者を」


 槍をオーディンに向けたフェルデナント大公に、ため息を吐いたジークが巨大なツヴァイヘンダーを向ける。


「俺はお前達が崇め奉る英雄だぞ。フェルデナントよ、槍を下ろせ。今ならばその無礼、神に申し立てして不問にしてやる」


「黙れ、邪悪な者よ。私は、お前の部下じゃない。私の仕えるべきはロレーヌ皇室。騎士として私はお前達を止める!」


 フェルデナント大公は、槍を一直線にジークに突くが、ツヴァイヘンダーでいなされて弾き飛ばされた。


「俺に叶うわけないだろ。主君に槍を向けるとは愚か者が。お前ほどの優秀な部下は惜しいが、殺すしかないな……!?」


 なんだ?


 ジークが動かなくなって困惑してる。


 何が起きてる?


「うおおおおおおおおおお!」


 槍を飛ばされても、フェルデナント大公は巨体を持ってジークを組み伏せて、馬乗りになって殴り始めた。


「最初から……こうすればよかったんだ! 男として間違った事をしたならば、父として親として正すべきだったんだ! 悪しき者から目を覚ましてくれ私の皇太子よ!」


 親として……。


 まさかフェルデナント大公は……。


 そしてフェルデナント大公の手放した槍は、セトが投げつけて体を串刺しにされた。


「何じゃあ、鬱陶しいのう。オーディンの理想郷の邪魔やけ。死ねや」


「捨ておけ、そんな道具風情。ジークフリードよ、ワシに従うのだ。今日からワシがお前の神」


 なんて奴らだ。


「さあ、ジーク様。帰りましょう、私たちの国へ……? ジーク様?」


 泣いている、ジーク。


「小僧、フレドリッヒよ、涙を見せるでない。たとえ親の死に目でも帝王たる者涙を見せてはならぬのだ。フェルデナントめ……馬鹿者が」


 フレドリッヒ……。


 こうして、私達は真相を知った。


 悪の帝王ジークがオーディン側についた事。


 先生も苦戦した大悪魔が蘇った事。


 ロキの一派だったセトがオーディン側になった事と、フェルデナント大公の真実。


ーーマリー殿下でございますな。どうか、私のフレドリッヒを、私の皇太子殿下を悪しき者からお救いください。私の皇太子を、どうか……マリア猊下万歳


「誓います、誉高き騎士団長。あなたの思いを果たします」


 彼は満足そうに笑い息を引き取った。


 ずっと彼は、フェルデナント大公は自分が父親だって言えなかったんだ。


 皇族と公爵では身分が違うから。


 それにおそらくは、フレドリッヒの意識がまだ生きている。


 私は先生と顔を見合わせ、憂国の騎士の亡骸の前に立った。


「黄金薔薇騎士団、悪しき者に立ち上がり、命を落とした騎士に対して、ささげー剣!」


 私の号令に騎士団達はフェルデナント大公の亡骸に、剣と槍と銃をささげ持ち、哀悼の意を示す。


「なおれ! これより、ロレーヌ皇国へ私達は進軍します。亡き騎士の思いを果たすために、私達は彼の国を救済に!」


「私も力を貸そう、マリー君。邪悪なる者に男の魂を踏み躙った報いを受けさせる」


「ああ、奴らは男をコケにした。この落とし前、兆倍にしてカエシてやる」


 こうして、私達と悪の帝国となったジークフリード帝国との抗争が始まった。


 家族を想った騎士のために、最後の英雄にして救世主フレドリッヒの魂を解放させるための戦いが。

次回ロレーヌ皇国もといジークフリード帝国攻略戦

ヤクザな勇者はダンプを使いたいようです

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