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転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第四章 戦乙女は楽に勝利したい
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第155話 戦嵐の中で黒く輝く者達

 オーディンが自身の軍勢を引き連れ、エリザベスがマリー奪還を企てていた一方、正午を迎えるバブイール王国首都がかつて存在した場所の瓦礫を踏みしめながら、主君を見つめる男。


 死臭と悪臭が漂う瓦礫の大地に降り立つこの騎士は、目の前の主君に違和感を覚えていた。


 ロレーヌ皇国はおろか、ナーロッパ最強と目される、ジークフリード騎士団長、ヨハン・ベルン・フォン・フェルデナント大公。


 頭髪を剃り上げ、身長が2メートル半の大男。


 英雄ジークの魂を覚醒させたフレドリッヒ皇太子に付き従う、ナーロッパ最強の騎士である。


 彼の心、いや魂が呟く。


 自分の皇太子がやはりおかしい。


 こんな事は騎士のする事ではないと。


 本来の皇太子フレドリッヒは、戦闘と戦術の天才ではあるが、心が未熟で、繊細な心を持っていたはずだった。


 しかし死んだとされる女神と共に、フランソワ北西部カリーの戦闘後、瀕死の状態から復活して、絶対君主的なオーラを纏い自分の前に現れた時、フェルデナントは歓喜する。


 今までの自信の無さが嘘のように男らしくなり、この皇太子が、戦闘経験により人間的に成長していたと、当初思い込んでいた。


 しかしこの目の前の皇太子は、好戦的に変わり冷酷非情であり、自分の知る皇太子ではないのではと、疑念を抱き始めていた。


「殿下、おそれながら今の攻撃は、戦時ナーロッパ条約違反かと。あれではバブイールの非戦闘民や王族も大量に……」


「だからどうした? 何万、何十万、何百万死のうが知ったことか。戦は勝たねば意味がない」


 ジークとこの世界で名乗った、恐怖の大王アッティラは、自身の魔力で火の赤龍、土の黄龍、水の青龍を召喚し、正規軍イェニチリーの大軍と交戦させる。


 その隙に、上空から騎士団を率いてバブイール市街地を急襲し、かつて戦闘を繰り広げた堕天使パイモンの得意技をジークは放つ。


 プルトーンの名を持つ金属を土の魔法で生成し、炎の魔力で原子核を臨界まで高め上げ、原子を連鎖崩壊させていき、水の魔力で爆縮後、風の魔力で威力を増す、原子爆発(エレメントバスター)


 4元素の魔法を混合させるこの魔法は、半径15キロを焼き尽くし、都市と生物を丸ごと消滅させる、戦略兵器めいた極大魔法だった。


 この魔法により、かつてナーロッパとナージア東西の交易路として栄華を誇った、王都イースタンは壊滅状態となり、エリート戦士団のイェニチリーらや王都に逃れた難民や王族、ジューの商人達も中性子線の炎で焼かれて、王国全人口の10%、死者150万人という天文学的な被害を出し、バブイール王国は滅亡する。


 ジーク一人でも可能であったが、自身の名を冠したジーク・フリード騎士団を同行させたのには、4つの理由がある。


 一つは自己顕示のため。


 ジークフリード騎士団は、団長フェルナンドを始めとする、ロレーヌ帝国内でも指折りの武闘派貴族の当主及び師弟たち。


 自身の力を誇示するために、彼らに今の魔法攻撃や召喚魔法をあえて目撃させたことにより、自身の権威をロレーヌ皇国内で高めるためである。


 二つ目は国内外に対し、自身への恐怖心を抱かせる事。


 目撃者であるジークフリード騎士団から、自身の恐怖の逸話をあえて広めさせる目的である。


 地球世界においても、ニュートピア世界においても、人生の大半を戦いに費やした彼は、恐怖の効果を誰よりもわかっていた。


 敵国王都を、木っ端微塵にする事ができると、国内外の諸侯が知れば、恐怖が生まれる。


 その恐怖が更なる恐怖を生み出し、自身が属するロレーヌ皇国に歯向かう者も失せていき、恐怖である自身の存在が戦争の抑止力効果を生み、戦乱を終結させる目的を企んでいた。


 三つ目が、大戦後における対外交渉で優位に立つ事である。


 ジークフリード騎士団を自身の歴史の証人として戦史として記録させる事で、世界に自身の名を轟かせる必要があった。


 一国を破壊できる力を持つ力を持つ自分が、世界各国の君主達に対して渉外を担当し、世界各国を畏怖させる事で圧倒的有利な条件で戦後保障を進めて、彼が世界を手にするための布石である。


 そして4つ目が、ある存在をこの戦場へ誘き寄せるためなのだが、自身の騎士団長であるフェルデナントは、これは騎士の、男のする事ではないと反発した。


「しかし殿下……我ら騎士は偉大なる英雄ジークを信奉し、弱き者の盾となることが前提の制度。これは騎士道に反してあまりにもむごく……」


「くどい! フェルデナント。俺がそのジークフリードその者だ! 次なる敵襲に備えて、俺に魔力回復のポーションを寄越すのだ。急げ、俺の予想ではおそらくが化物が来る」


 すると、バブイールの北東から遠雷が鳴り響き、大量に巻き上げられた土砂と水蒸気の雲から黒い雨が降り注ぐ現象が生じるなど、異常が生じ始めた。


 ジーク達は急遽組み立てた野営テントの中で、魔力を急速回復させるとジークは落雷と共に、人智を超えた恐るべき魔力反応を肌で感じる。


「ふん、やはりな。戦場の熱にあてられ来おったわ、例の仮面の男め」


 テントを出たジークは、黒い雨が降りしきる中、龍と騎士団を従えて反応があった辺りを見回す。


 ジークの目的は戦争勝利は当然として、バブイールの戦場を荒らし回り、無差別に攻撃を繰り返していた謎の男の正体を探り出し、懐柔できそうならば己の配下に、そうでないならば自身の世界征服の障害となるという事で殺すつもりでいた。


 すると大陸一美しいとされていた、トップカップ宮殿は、無惨にも骨組みだけを残す形になり、まるで地球世界の広島原爆ドームのようになった宮殿跡地で、一人の男が踊っている。


 爆心地でベリーダンスのようにも見える、死と戦争に歓喜の舞いを披露しながら、黒い(バク)のような仮面を被り、黒い雨にうたれる、上半身裸で金地の腰布姿の褐色肌の男は、ジークの気配に気が付き目と目が合った。


 その目は、家族に裏切られ、戦闘しか興味を見いだせなくなった男神の、血走った目。


 乾いた砂漠の大地に、焼きつくほどの太陽の光と黒い死を帯びた男の目だった。


「クックック、強者の波動を感じるけぇ。人間共が焼ける匂いと、土砂の雨が降り注ぐ戦場。わし好みのシュチュエーションじゃけえ……のう? 強者よぅ」


 ♀の形をした魔導兵器アンクを左手に、右手には混沌の魔力を秘め、古代エジプトでは「力」を意味する、神杖ウアスを持つ凶悪な叛逆神。


 人智を超えた魔力に、前世で戦ったヨハンという年老いたエルフの皇帝や、堕天使パイモンをも超えた力を持つと感じたジークは、冷や汗をかきながら、鉄塊のようなツヴァイヘンダーを両手で構える。


「お前の名は? 俺の名はジーク」


「われぇ、そがいに怖がらんでもええで? わしゃ神じゃけぇ。名をセト」


――神? 今は亡き我が女神フレイアや、精霊の神フレイ、東方で信仰されるニョルズ、これら神々の頂点にたつと言われるオーディン以外にも、神がいるのか?


「クックック、信じとらんようじゃな。神とは信じる人間がいないと概念自体成立せん。じゃけえ創造の神からワシらは力を与えられたんじゃ。まあ、そがいな話はどがぁでもええ。神じゃろうが人間じゃろうが、男と男が道具を持ちゃあ、やる事は一つじゃろ? のう強者よう」


 杖ウアスを右手で構えて、左手に持つ鎖を振り回すと、繋がったアンクから炎と風が吹き荒れる嵐のような暴力的な魔力波動に、百戦錬磨のジークも気圧される。


「なんだこいつの魔力!? やはり悪魔の類!?」


「神言うてるじゃろ? 話が通じんのうオドレも。たいぎぃんじゃあ!! わりゃああああっ!!」


 音速を超えたセトの神杖の突きが、ジークの黄金鎧を貫き、その体が高空までかち上げられる。


「ぐっ! ドラゴン共よ、我が盾になれ!」


 ジークを庇うように3頭の龍が、一斉にセトに襲いかかるも、アンクから生じた深紅に燃え上がるプラズマが龍達を吹き飛ばす。


「なんとデタラメな威力。龍3頭が何もできずに消滅するとは。フェルデナント! 我が騎士団を下がらせよ!! 俺が討ち取る!」


「殿下……くっ、ジークフリード騎士団よ。殿下の一騎打ちである、団長命令! 引くのだこの場は!」


 ジークが感覚強化で騎士団に命令を伝達し、フェルデナントは、血気にはやって加勢しに行こうとする騎士団に制止命令を出す。


 ジークは長大なツヴァイヘンダーに、さらに質量を重くするため剣に魔力を込めて、地上のセトの頭に剣を振り下ろした。


 が、容易く杖でいなされて、石突きの一撃をジークは受ける。


「ちぃ、面妖な!」


 吹き飛ばされながら、ジークは剣を横に薙ぐと、風の斬撃となってセトを一刀両断したかに思えたが、砂のように姿が崩れて、無数の質量を持ったセトの分身が、ジークに攻撃を加える。


「なんじゃあ? その程度かぁつまらんのう。ちぃとはワシを楽しませろぉぉ! 天土振剣(クアシャペト)


 セトの分身体が杖を空に掲げると、黒い雨が変質していき、雨に混ざる粉塵が、鉄と硫黄が燃える火の雨の礫となり、大地に降り注ぐ。


「ぬおおおおおおお!」


 燃える金属の雨がジークの体を蜂の巣のようにしていき、鎧をボロボロにされながら、かろうじて体を再生するも、セトの分身体が次々とジークに襲いかかる。


 しかしジークの転生体である少年の魂が、ジークの意思に反して体を動かすと、セトの分身体に次々と剣技を繰り出していく。


「ぐっ! 俺の魂に押し込めた小僧の力か。しかし、これならば戦える! 褒めてやる小僧、英雄の俺に力を貸せ!!」


 ジークの巨大なツヴァイヘンダーが、魔力で変質していき、それは拳銃というには明らかに大きすぎる、連続で魔力弾を撃ち出す銃身2メートル以上のハンドキャノンのような姿に変えた。


電龍撃砲(ブリッツ)


 無数のセトの分身に、青白く輝く電子の塊が連続で射出されていき、磁力を帯びたセトの砂や土の分身体が次々とくっつき出すなど、磁力化現象を引き起こす。


「あとはこの金属の塊を、我が魔力で高空に打ち上げ、貴様に振り下ろしてやるわ!」


 上空千キロメートルまで、直径50メートルにもなる磁力を帯びた金属の塊を浮上させ、本体のセトに、風の魔力で加速させて超音速で振り下ろす。


隕鉄(メテオ)!」


 大気圏から出現した、巨大な光の塊がセトに直撃した瞬間、半径2キロ圏内の大地が大爆発を起こし、ジークフリード騎士団は魔力で防壁を作るも、全員がその場から吹き飛ばされた。


「ぬおおおおお、殿下あああああ」

「ぎゃああああああ!」

「フリドリッヒ皇太子様あああ」


 全てが吹き飛ばされた大地にジークが降り立つと、ハンドキャノンが元のツヴァイヘンダーに戻り、剣を肩に担ぎ上げた彼は勝ち誇るように、大口を開けて笑う。


「ふはははは。どうだ悪鬼の類よ、これが世界を征服する者の力である!!」


 すると、大地がひび割れて大地が爆ぜて、頭部から出血したセトが現れ、今ので手傷しか負っていないのかと思ったジークは、再びツヴァイヘンダーを構える。


「何わろとんじゃいアホウ。まだ戦いは始まったばかりじゃろう、今度はワシの番じゃなあ?」


「悪鬼の如き化物め。やはり貴様は、我が世界征服の障害。この場で消すしかあるまいな」


「ワレェなにをカバチタレよんじゃあ! さっさかかってこぉボケエエエエエエ!」


 ジークはふっと笑い、体内で魔力を練り召喚する者のイメージを具現化する。


「ならば悪魔には悪魔だ」


 一方、ニュートピア上空で作戦行動する勇者マサヨシが呼び寄せた、異世界銀河連邦所属の宇宙艦隊は大混乱に陥っている。


 突如バブイール王国で生じた大爆発の電磁波により、監視衛星の映像が遮断され、高空にて生じた磁力を帯びた鉄塊により、レーダー波はおろか艦船のコントロールを失い、制御不能状態に陥ってしまったのだ。


「参謀本部ドリー司令長官及び連邦議長コルレド閣下、こちら航空艦隊旗艦マサヨーシ! 現在艦隊は制御不能! 緊急事態発生中!! 至急転移システムのゲートを! 司令部のあるノルド・スカンザ宙域まで急いでゲートを!!」


「了解連合艦隊旗艦マサヨーシ! 至急ゲートを繋げる! 貴官らは速やかに宙域より離脱せよ」


 宇宙艦隊がニュートピア高空より離脱する最中、偶然にも監視機能が復活した衛星より、バブイール王国の地表映像が参謀本部まで送信される。


 戦闘中のジークとセトの静止画像であった。


「こ、これは……急ぎ勇者様へ伝達を!! 標的発見!! 繰り返す、最重要標的発見!!」


 一方、召喚魔法を発動したジークがイメージしたのは、かつての魔将パイモンより聞き及んだ、古の魔界で暗黒の神とも呼ばれ、全妖魔の祖とも呼ばれて信仰を受けた伝説の悪魔。


 バブイール上空に巨大な魔法陣が出現し、空を黒一色に染め上げるほどの、大量の蝿の群れが出現する。


「ほう? こりゃあ魔神の一種じゃのぉ? ワレェ、ワシがなかなか楽しめそうな相手を呼び出したのう」


 無数の蠅は、吹き飛ばされた王都イースタンに残された、無数の黒焦げ死体に取り付くと、残留エネルギーを吸い取っていく。


 空にはどす黒い血の色の光で、魔神召喚の文字が浮かび上がり、エネルギーを蓄えた無数の蠅がセトに目掛けて一斉に襲いかかってくる。


「うらぁあああああああ!! 死体に群がるクソ蝿共! たいぎいけぇまとめて叩き潰しちゃるわああああああ!」


 セトは神杖を振るい、嵐の魔力で無数の蝿を迎撃するも、セトの背後で集まった蠅が、人型に実体化した瞬間、銃身を切り詰めた水平二連式ダブルバレルなソードオフ散弾銃が具現化して、セトを吹き飛ばす。


「ぐっなんじゃあ!?」


 並大抵の武具では傷一つ負わないはずの、セトの背中に赤黒い大痣が生じる。


 人型になった黒い塊は、禍々しいオーラを放ち、燻んだ金のロングヘアー、漆黒のパンツスーツに白いブラウスを着こなし、黒い肌を持つ、美しい女の姿をした悪魔になった。


「ほう? 何らかの力で呼び出されたと思ったが、ここは以前私の主が植民地化を考えた世界だったかな。それと君が召喚者か? 魔王軍ジークフリード元帥よ」


「……貴様は? 俺を知ってる悪魔か」


 ジークは、以前ルシファーと名乗る魔王が、召喚魔法の知恵を授けたのを思い出すものの、自分が奸計を企てて滅ぼした悪魔の中に、彼女のような悪魔はいなかった事を思い出す。


「かつての自分の上司を知らないとは。パイモンめ、彼への教育がなってない。まあ良い、召喚と契約に応じて力を貸そう」


 四肢を分離してバラバラになった女悪魔は、高威力の土と風の魔法で作った投げナイフと、自作の魔銃ベルゼビュートでセトに攻撃を加えていく。


「ハッハア! それでこそ戦争じゃあああああああ!!」


 女悪魔の援護を受けて、ジークがツヴァイヘンダーを両手持ちにして、一気にセトに切り込む。


 セトのスピードに慣れ始めたジークは、次々と斬撃を繰り出し、対するセトは神杖で剣撃を受けながら、左手に持つアンクから繰り出す真っ赤なプラズマを、拡散するビームに変えて女悪魔を迎撃する。


「なかなか楽しませてくれるのう。魔神、ワレェ名はなんじゃい?」


「妖魔の祖……とも呼ばれましたが、私の今の名はそうですね、魔宰相(まさいしょう)ゼブルとでもしておきましょうか」


 ゼブルと名乗る悪魔の全身が眩い光を帯びて発光し、無数の蠅状態に変わると弾丸のように硬質化させて、ジークと鍔迫り合いするセトの背後に周り、マシンガンのような体当たりをセトの背中に繰り出していく。


「ふっ、なかなかに役に立つ。悪魔ゼブルよ!」


「もはや人間も世界の破滅も魔界も、どうでも良いですが……神は一柱残らず滅ぼす! 手を貸せ魔に堕ちた者よ!」


 セトは神杖を回転させて、無数の蠅状態のゼブルとジークを弾き飛ばした。


「オドレらああああああ!! まとめてぶっ殺しちゃるわあああああ!!」


 セトが魔力を込めて杖を構えた瞬間、バブイール上空が燃えるような赤く光る空の色に変わる。


「チッ、また何か厄介な攻撃を」


 ジークが体を再生して、ツヴァイヘンダーを上段に構えた瞬間、セトの動きがピタリと止まる。


「ほう、こりゃこりゃあ、もう一柱戦場に戦闘キチガイが来たようじゃ」


 悪魔、英雄、闘神入り乱れる戦場に、漆黒の鎧に身を包み、神槍グングニルを手に持つ巨神オーディンが姿を現す。


「久しいなセト。どうだワシが生み出す戦場は? 美しかろう、戦いに己を見出す戦士達よ」


「ええのう、ぶち最高じゃあ。じゃけえワレと戦闘が出来るともっと楽しいんじゃがのう?」


 するとオーディンが笑い出す。


「それは楽しそうだ。他にも、この戦場にはフレイアが呼び出した戦士と、魔界の敗北を受け入れられない魔族の戦士もおるな。クックック喜べ、戦いに明け暮れる貴様らに、そしてこの地で戦い続ける勇者達にも平等にくれてやる」


 オーディンが右手に持つ槍を掲げると、空が光り輝き、異世界の銀河連邦が高空に打ち上げた監視衛星が、流星となって世界に落下し始めた。


「戦い続ける者達への楽園(ヴァルハラ)を! 等しき死を! 再生を! そしてまた死を! 永遠に戦いに明け暮れる戦士達の理想郷と黄昏を、全ての次元世界に!」


 オーディンの呼びかけに呼応するかのように、南アスティカにて魂召喚(セイズ)で呼び出された最悪の魂が封印を破り、世界の理を変え、負の意識を持つ者に作用する強烈な念を発し始める。


 闇の精霊に導かれし者。


 その名をエム。


 かつて地球世界で生まれ、人々に無自覚な悪意を振り撒いた最悪にして災厄の存在。


 地球において、人の世の不条理が生んだ最悪の犯罪者が、異界と化したニュートピアで覚醒する。


 同時刻、人の世の不条理によって生まれたある義賊が、人の運命を弄ぶ者達に反旗を翻すため、世界の心ある魂を持つ者達に、ある宣言を行う。


 黄昏ではなく、愛すべき者達へのため、己の正義を果たすために、この世界の夜明けを求めた人々の思いを乗せて。

敵側の話をしたので次は主人公サイドの話です

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