第130話 異世界半グレ結成
世界中で同時多発的に発生した転生者の非道に、こんな筈じゃなかったのにと悩める女が二人いた。
「うそ……これ、全部私が担当して転生させた人間ばかり。よかれと思って持たせたスキルを悪用して、なんでこんな事に……」
神域ユグドラシルから、現在は異界に認定されたニュートピアの状況を確認していた戦乙女。
ブリュンヒルデこと、天界では智天使の身分を持つ、上級天使のサキエルが、白磁のような顔が青白くなり目眩を起こしそうになる。
マリーを始め、ニュートピアの転生者は一部を除き、地球世界の犯罪被害者または災害被害者、または不慮の事故で死んだ者が多いため、魂に大きな傷がついていた。
しかし、彼ら彼女らに同情した上級天使見習いだったサキエルが、自分の職権を大幅に越権し、天界で徳を貯めたものを対象に、本来救世主クラスが持つ事を許されるスキルを付与してしまったのだ。
例えば、マリーの絶対防御などがこのスキルにあたる。
他にも一部前世の記憶を引き継がせ、容姿を自由に選ばせるなどの優遇措置を行い、ニュートピアに転生させるなど、上級天使が手をつけてはならない違反行為を犯したが、全ては、自身が担当した魂に傷を負った少年少女に抱いた、彼女のよかれと思った同情心によるもの。
彼女の善意が、この世界の混乱を生み出した事に、サキエルことブリュンヒルデは心を痛める。
そして自分達や最上級神であるオーディンに下された処分にも。
「それに私たちユグドラシルが、父オーディンが、神界より追放なんて……一体何が……私たちはこれからどうすればいいんだろう……」
オーディンは大逆神として、4類と呼ばれる魂の消滅も許される極刑が下り、ユグドラシルそのものも、神界から切り離されて封印処分される。
また、彼女は疑念を感じ続けていた。
ニュートピアの救済任務のはずが、父神オーディンから下る命令は、どれも世界の混乱を生むものばかり。
冥界の勇者マサヨシにも、オーディンの真意が暴かれた事で、彼女は父に大きな疑念を抱きながら、任務を遂行してきたが、今回ユグドラシルが追放処分となった事で、疑念は確信に変わりつつあった。
「本当に、父上と私達は正しい事をしているのだろうか? 私達は、あの世界を救うのではなかったの? ヴァルハラシステムを利用して、魂の浄化をするはずだったのになぜ?」
娘のブリュンヒルデが思い悩む中、オーディンはユグドラシルのアーズカルズにある宮殿、ヴァーラスキャールヴの自室で、冷や汗を浮かべながら頭を抱える。
「なぜ、なぜ創造神様はこのワシを大逆神に。ヘイムダル、なぜワシを否定する。人間共は我ら神の道具、道具をどう使おうと、ワシにはその特権が認められていたはずではなかったのか? 全てはあの邪悪な巨人族の王子、ロキのせいだ。あやつのせいで、ワシの最愛の息子が……バルドル……」
オーディンは、自室でヴァルハラシステムを操作して、今は亡き最愛の息子を思い浮かべる。
「もう少しだ、バルドル。ワシはお前を甦らせるため、人間共を糧にし、もう少しでお前を……光の神の後継者にして、ワシの最愛の息子よ」
オーディンは独言ちながら、いずれ粛清にくるであろう神々と自分達ユグドラシルの、神々の戦争に備え始めた。
一方、もはや要塞を通り越して魔宮と化す、ヴィクトリー城の玉座に腰掛けるエリザベスこと、前世で半グレと呼ばれた絵里は両手で頭を抱え出す。
「なんで……なんで世界中でこんな酷いことする奴らが出始めたの? この世界の罪もない人たちを苦しめて、それを動画に配信するなんて」
フランソワで非道を行った黒ずくめの美少年は、†漆黒†という、明らかに前世が日本人だとわかる感じの、厨二心溢れるハンドルネームで動画を配信。
自身が行った村の放火と虐殺、そして村娘の陵辱映像を悪質ユーチューバーのように配信する。
これにアンチのように反応したのが、ロレーヌからの配信で、ハンドルネームがscarletと名乗る、真っ赤なゴシックロリータのような服を着た金髪碧眼の小柄な少女が、老齢の貴族をバラバラになぶり殺した映像を配信して、†漆黒†を女の敵だと罵る。
これにロマーノの蒼魔という匿名配信者が、両方のアンチコメントを配信して炎上。
すると次々と呼応する様に、自分の方が優れてるといった配信や、過激な映像配信がどんどん増えていき、犯罪自慢をする者や、人間の解剖画像を流して、解説を始める緑髪で東洋人風の顔立ちをした10代前半の白衣を着た少女の配信もなされた。
最後に現れたのはハンドルネーム、天。
「跪け愚民共」
南朝ジッポンからの配信で、水晶玉の通信限界からなのか画像が荒く、彼の背格好はわからなかったが、道に土下座させた大勢の老若男女を、踏みながら歩くという暴虐極まりない動画配信をする。
「あっはっは、超ウケる! ねえ? エリザベスちゃん。今度これ僕もやってみたいなあ、人間絨毯みたいなのさ」
動画を指さしながら爆笑するロキをよそに、エリザベスは、これは自分達が行った水晶玉通信の改変による影響で、世界各地で過激なユーチューバーみたいな者達が、自分のせいで出現してしまったのだと思い、顔面蒼白になる。
「なんで……世界によかれと思って私は……こんなひどい奴らが出てくるなんて」
エリザベスは、頭を抱えてこの事態をどういう形に収束させるのかを考えた。
なぜならば、現在起きている世界大戦にこのユーチューバーみたいな者達が参戦してきたら、面白半分に戦場を荒らされ、騎士や兵隊同士の戦争が、ルール無用の様相となり、一般市民への被害が拡大してしまうと考えたからだ。
「まあ、こいつらエリザベスちゃんがその右手に持ってる水晶玉の土俵で、勝手に踊っていきがってるだけなんだけどね」
今のロキの言葉で、エリザベスは閃いた。
「ねえ、ロキさん。彼らの発信を逆探知して、例えば地球のネットでいうところの、私が運営するチャットルームみたいなの作って、招待状みたいなのって送れるかしら? ダイレクトメッセージみたいな」
「あ、エリザベスちゃんが、なんか面白い事思いついたね。出来るよ、多分ね。君がこの水晶玉通信を支配しているんだからさ」
エリザベスは、身バレしないようにハンドルネームを白薔薇と変えて、彼らの水晶玉を逆探知を開始する。
おそらく、地球の記憶を持つ転生者達で、精神レベルがどこか幼さが残る、思春期の学生達のような感じがしたため、彼ら彼女らの厨二心をくすぐるダイレクトメッセージを送った。
「集え選ばれし者達よ」
対象者は、†漆黒†、スカーレット、翡翠☆、蒼魔、黄金堕天使、天の6人。
彼らは水晶玉の表示を確認すると、エリザベスが用意した、書き込みでコミュニケーションを取るチャットルームにアクセスした。
白薔薇:ごきげんよう、選ばれし者達よ。私は白薔薇、チャットルームに、あなた方選ばれし天才を呼びました。
†漆黒†:うわ出たよw いかにも厨臭え名前。お前男なの女なの? お前も転生者?
スカーレット:なんでイキリ陰キャ全開の漆黒がいるのよ。あんた見てるとイライラするのよ女の敵め。あ、白薔薇だっけ? よろしくー
蒼魔:阿呆二人黙れ。何が目的で俺をここに呼んだ?
スカーレット:え? 何あんた
†漆黒†:は?(威圧)
黄金堕天使:阿呆が阿呆って言ってて草なんだ
蒼魔:殺すぞ? ガキ
翡翠☆と天は、それぞれ配信先がウルハーンと南ジッポンのため、時差の関係で寝てるものとエリザベスは判断する。
また言語体系も文字も東方と違うため、魔力変換で言語翻訳のシステム変換を行った。
「うは、こいつらまんまと入ってきたよ。アホばっかでしょこいつら」
「ネットリテラシーとか、低いのかしら? 半分以上ログインしたけど、これで彼らはもう私の管理下に置かれたようなもの。得意なんです、こういうのは」
かつて半グレだったエリザベスならではの常套手段である。
ネットで悪目立ちする若者達に、フレンド申請を行って、海外サーバーのクローズドチャットルームなどに誘い込み、匿名性を維持しながら闇ビジネスを行う手法。
白薔薇:あなた方は、私と同様に前世の記憶を持ち、チート技術を持つ私の仲間だと思い、ここに案内しました。よろしくお願いしますね
スカーレット:あ、白薔薇もチーターなの? 私もそう
蒼魔:目的をはっきりしてほしい。俺は忙しい
黄金堕天使:自分からチート言い出して草
白薔薇:じゃあ私からチートスキルを
エリザベスは、水晶玉を操作して黄金堕天使をチャットルームから強制ログアウトさせ、水晶玉通信の機能の全てを剥奪した。
スカーレット:あイキリが一人落ちた
†漆黒†:あっ……(察し)
白薔薇:これは私のチートの一つ。この世界の通信手段の水晶玉を全て操れる。
エリザベスは、10秒後に再び黄金堕天使をログイン状態にして、チャットルームに戻す。
黄金堕天使:ふざけんなよ! このスマホみたいのも使って商売考えてんのに、勝手に人のスマホハッキングすんじゃねえよ!
スカーレット:白薔薇すごーい! じゃあ私の能力は、風の力のスキルと空間支配とか持ってるの
†漆黒†:雑魚すぎwww 俺なんて炎の力に、回復魔法に、ステータス限界突破だから。あと結界能力ね
スカーレット:殺すわよイキリ陰キャ。あと何で村とか焼いてんのよ
†漆黒†:俺つええええしてえからだよ! 弱い者いじめとか最高に楽しいじゃん。お前こそ俺を舐めてるとボコボコにしてハーレム入りさせてやんぞゴス女www
「うわっ、最低ねこいつ」
エリザベスは、†漆黒†をメンバーから外そうかと一瞬思ったが、スキルが本当なら使える戦力になるかもと思い、本題に切り出そうとしたが、その前に重要な確認を取る。
白薔薇:本題に入る前に、この中で、私を含め匿名で顔出しNGで活動したい人いますか?
蒼魔:俺
黄金堕天使:あ、俺も
すでに素顔を晒して活動してる、†漆黒†とスカーレット、翡翠☆以外の、蒼魔と黄金堕天使が顔出しは嫌だという同意をとった事で、自分も素性を晒さなくていいと、エリザベスはホッと胸を撫で下ろす。
半グレには組織形態にもよるが、エリザベスが作ったネットを介する半グレ組織は、メンバー間の匿名性を売りにしており、中には異性との出会い目的や、組織乗っ取り目的のものや、個人情報収集目的のものも少なからずいたため、仮にオフ会を開く時も、出身や本名でのやり取りは極力避けてハンドルネームでやり取りをしていた。
白薔薇:せっかくみんなこの世界にチートスキルを持って転生したので、相互連絡とビジネスや好きな事しながらこの世界をエンジョイするため、この場を設ける事にしました。
黄金堕天使:いいんじゃない? 俺別にいいよ。金儲けとか好きだし
スカーレット:賛成賛成。この世界に友達とかいなかったし。ただし†漆黒†は除外で
†漆黒†:死ねよゴス女! お前ら俺の足引っ張んじゃねえぞ
蒼魔:別にいいが
「クックック、人間って面白い生き物だ。ねえエリザベスちゃん」
「これでわかった事があります。彼らはほとんど私と前世で同世代くらいかしら? こういうやりとりに慣れてる感じだし」
文字や書き込みの癖で、相手の情報を得るのは、顔の見えないSNSならではのコミュニケーションであるのと同時に、エリザベスは特にこういった情報収集を得意にしている。
するとエリザベスが水晶玉に、画面4分割で男達の画像を表示した。
白薔薇:この4人の画像をご覧ください。
勇者マサヨシ、フランソワ大統領デリンジャー、ロマーノ連合王国元王太子ジロー、バブイール王国元皇太子アヴドゥルこと、鄭芝龍の画像である。
スカーレット:あら? 彼らいけてるじゃない
†漆黒†:なんだこいつら? ムカつく顔してるな
蒼魔:彼らは何者だ?
翡翠☆:招待ありがとう白薔薇さん。翡翠☆です。前のレス確認してきますね
天:朕を無礼にも呼びつけたのはお前か?
黄金堕天使:なにげに全員揃ったのな
黄金堕天使の言う通り、7人全員がこのチャットに勢揃いした。
白薔薇:この4人の情報を最優先でみんなで共有したいのです。判明しているのは、この黒髪の長髪の男の正体は魔王アースラという事。あと黒い肌の男はイリア首長国連邦あらためロマーノ王国から廃太子され、行方不明のヴィトー元王子。青髪の男がアンリ元王子で、現在フランソワ大統領のデリンジャー。そして褐色の男は、暗殺されたという噂もあるアヴドゥル元皇太子
†漆黒†:魔王!? それに俺が転生した国の国家元首か
翡翠☆:西方の王子様達と魔王?
蒼魔:情報収集の目的は?
天:左様、莫細亜三国とは無関係
エリザベスは自身の配下、黒騎士エドワードことアレクセイより情報を入手し、北朝ジッポンのノリナガことイワネツが支配する織部国に、亡命中であるという事がわかっており、今後の事も考え、わざと東方ナージアの南朝ジッポンに属する「天」の気を引こうと考える。
なぜなら、この「天」と名乗る者こそ、何らかの理由で南朝ジッポンに転生した者で、身分的にはジッポンの権威である天帝、もしくはそれに準ずる身分のものではないかと察したからだ。
白薔薇:この魔王は大陸及びジッポンの支配を目論んでいる可能性があります。我々西方の歴史にも、魔王と呼ばれた存在が世界各地を荒らしたと伝承にあります。彼らの情報を収集し、最終的には魔王もろとも、彼らを倒したほうがいいかと
エリザベスこと絵里は、彼らがいてはマリーこと真理が、また戦う羽目になり、命を落としてしまう可能性も捨てきれなかったので、彼ら4人の排除を目論んでいた。
天:鬼か。朕のジッポンは数百年に一度、百鬼夜行と呼ばれる、鬼や怪物共の厄災に襲われておる。
黄金堕天使:魔王とかやば杉内
白薔薇:そして彼ら王子は魔王に協力するチート戦士達です。女神フレイアを抹殺した神殺し
スカーレット:えぇ……うちの国の神様殺したの? このイケメン達、ドン引きなんだけど
翡翠☆:すごいなあ……彼らの体、脱がして解剖してみたい。特に魔王の内臓とか見てみたいなあ。私のスキルでこの世界の特効薬とか医療技術とか発展しそう……
「うわぁ……」
エリザベスは、翡翠☆の書き込みにドン引きした。
――ああ、こいつらまともな奴が一人もいない。かろうじて、スカーレットって子なら話が出来そう? 黄金堕天使や、蒼魔ってのも、この中では比較的まともなかな?
エリザベスが、集めた転生者に白目を剥きそうになり、ロキは内容を確認しながら、声を押し殺して心の底から嗤う。
闘神とも呼ばれた大魔王アースラは、すでに人間の身になって、勇者と呼ばれる存在なんだけどと思いながら、面白いから黙っておこうとニヤけた顔でエリザベスを見つめる。
白薔薇:困った事に魔王以外の素性以外は、転生前の王子達が何者だったのか、皆目検討がつきません。そして今度はこの画像を
エリザベスは、戦乙女スルーズとオルトリンデ、ロキが画像を収めたゲイラ、エイル、ゴンドールの画像を水晶玉に表示した。
白薔薇:この者達は、悪しき神オーディンが遣わせたワルキューレと呼ばれる存在。目的はこの世界の人間の抹殺。私達が転生したこの世界は、魔王と悪神、二つの脅威に晒されてます。
†漆黒†:くっ殺とか言いそうwww
黄金堕天使:ア●ル弱そうで草
翡翠☆:↑二人の頭を開いて脳を解剖したほうが後世の為になりそうかな?
スカーレット:同意。キモイ陰キャ全開で反吐が出そう
「上二人の女子に同意」
エリザベスは独り言ちながら、チャット画面に思わず書き込もうとする手を止め、チャットの流れを変えようと考えた。
白薔薇:そんな感じで、情報提供者や対象を討伐した人にはこれを
ヴィクトリーの通信塔、エリザベスタワーが生み出す希少金属の山と、ジューの商人達に流通させている、希少金属を使ったアクセサリーの数々の画像をアップした。
黄金堕天使:お? 白薔薇ちゃん太っ腹! どうしてこんなに金を?
白薔薇:この世界の大商人達にちょっとしたコネがあるからです。これは私のスキルと言うよりも、築いた人脈によるものです
†漆黒†:リア充ぶりやがって
スカーレット:あ、良さげなアクセサリーあるー。私、あなたに乗ったわ白薔薇
天:うむ、どこのものかは知らぬが、朕に献上するのならばありがたく受け取る。が、方法は?
白薔薇:世界的な商人のネットワークで、最長でも1月以内には
翡翠☆:研究にはお金いるし、ゆっくり生活するにはお金は不可欠。乗りました白薔薇さん
蒼魔:同意した。金はあればあるほどいい
「なんだかんだ言って、どこの世界もお金がものを言うのね」
ため息を吐きながら、エリザベスは虚しくなって思わず独り言ちる。
「もしくは物に希少価値を付与する手法もあるね、エリザベスちゃん。それにやるじゃない、このアホ共を君の影響下に置くとは。なんだっけ? 君の前の作った組織って」
「……半グレって大人たちに言われてた。私は、暴力は使わなかったけど……やってる事は大人の不良とほとんど変わらなかったです」
「へー、半グレかー……グッド! じゃあ半グレ作っちゃいなよこいつらで」
――まさか、この世界でもネットで組織をつくるとは思わなかった。
エリザベスは、水晶玉を見つめて意を決し、チーム名を決めて発表する。
白薔薇:それでは私達は、お互いチート能力を持つ者同士でちょうど7人いる。この集まりを「チート7」という名前で活動しましょう
黄金堕天使:まんまで草
スカーレット:悪くないんじゃない?
翡翠☆:いいと思う
天:チートってなんだ?
蒼魔:好きにすればいい
こうして、異界ニュートピアに半グレ集団チート7が発足する。
極道でも秘密結社でも盗賊組織でもない、水晶玉を介した悪人組合組織にも似た集団。
†漆黒†:じゃあリーダーは実力的に俺か
スカーレット:あんた馬鹿ぁ? 白薔薇でしょ? 流れ的に
翡翠☆:ねー
黄金堕天使:いきりンゴwwwww金を持ってる奴が偉いのは当たり前だよなあ?
蒼魔:勝手にしろ、慣れ合うつもりはない
天:許す、下郎共を朕に代りまとめよ白薔薇
†漆黒†:上からマウントとってんじゃねえよ天カス
天:ほう、処すぞ? 下郎
エリザベスは、何とかこの場の主導権は握れたと思ったと同時に、深いため息を吐く。
「だいじょうぶかしら? この子達」
「くっくっく、その表情もグッド、エリザベスちゃん」
ロキは憂鬱そうな表情をしたエリザベスの顔を、水晶玉画像に収める。
蒼魔:そういえばフランソワの大統領だったか? パリス広場で重大発表を明日の朝行うようだ。俺のスキルというものか? 分身が可能で、世界各地に俺の分身がいる。
†漆黒†:wwwww
黄金堕天使:なにわろとんねん
†漆黒†:俺がイキリチートの元馬鹿王子やりにくっきゃねえでしょwww
スカーレット:勝手にすれば?
翡翠☆:じゃ私この辺で
白薔薇:私もこれで
黄金堕天使:おつンゴwwwww
「はあ……こいつら、ほんと協調性が無いわよね」
「いいじゃん、お手並み拝見と行こうか彼の」
二人が水晶玉の画面を眺めていると、ロキの娘たちやクロヌスとセトも集まってくる。
「なんじゃあ? 何をニヤついとるんじゃロキ」
大逆神にして残虐神、戦嵐神セト。
「ずるいわよーエリーちゃん、なんか面白い事してるんでしょ?」
大逆神、太古の巨神ティターンのクロヌス。
「わっちらを入れてほしいでありんす」
ロキの娘ミドガルズオム。
「僕もお願いするんだワン」
ロキの長女フェンリル。
めんどくさいのが集まってきたと、エリザベスがさらに憂鬱な表情をして、彼らにため息を吐く。
「それより飯くれんかのう? わしヴィ―ガンじゃけぇ、パンにレタスとキャベツましましで」
「セトお前さ、喧嘩っ早いのは、肉食わないからだよ。肉には必須ビタミンとかあるんだよ? あ、エリザベスちゃん僕には骨付きハム頂戴」
エリザベスは、自身が召喚した彼らのために朝食を用意する。
「あたしはー、お肌に良くてコラーゲンたっぷりのシーフードねーん」
「わっちはオムレツがいいでありんす」
「お父様と同じものが欲しいワン」
ロキは、フェンリルの頭をよーしよしよしと撫で始め、対するフェンリルは尻尾をブンブン振る。
だがしかし、発足したばかりのチート7は彼らをなめていた。
百戦錬磨のアウトロー達の力と、本気の状態で世界を救済しに戻ってきた侠客の怖さと、精神力が飛躍的に増した彼女の力も、後がなくなったオーディンとワルキューレ達の強さも。
発足したての組織なのに死亡フラグビンビンです。
続いて、別の視点で世界情勢のお話をした後、主人公の一人称に戻ります