第125話 闇を打ち抜く光
そして私の黄金鎧にヘイムダルが融合する。
「あれは……天女様じゃ」
「お姫様が天女様になられた」
「ハラショー、すごいパワーを感じるあの子」
「すげえ! 黄●聖闘士じゃん!」
ヘイムダルと融合することで、なぜかジッポン語も理解できるようになったし、なんか日本からの転生者もいるようだけど、私はヴァルキリー……召喚術師にして勇者の弟子。
人々の尊厳を否定する悪に、心優しき人々が立ち向かえないのならば、私が立ち向かう!
「マリー殿下、我らが薔薇姫! ご命令を!!」
ヴィクトリーの騎士団達が、全員私の前に整列する。
騎士達は私と同様、自分達の使命を思い出し、もはや迷いはない心を持っていた。
「誉ある騎士達、まだ周囲にはモンスターがいる状況です。助けなさい、私達がお世話になったあの人達を、ヴィクトリーの誇りにかけて」
「は! 標的、化物集団! ヴィクトリーの騎士の意地と誇りを見せてやるのだ! 突撃せよおおおお」
「うおおおおおおお! 我らの王女殿下とヴィクトリーに栄光を!」
騎士達が魚のモンスター集団に立ち向かっていき、私はニョルズを睨みつけて、天界魔法を唱えた。
「時間停止」
私は時間停止の魔法を使い、一気にニョルズまで間合いを詰める。
HPは文字化けしてて化物じみて、レベルもハンパじゃなく高いが魔法量も大量消費した状態。
「喧嘩の基本は先手必勝、であああああああ!」
私は新しくなった杖ギャラルホルンを、時間停止解除の瞬間、思いっきりニョルズの頭に叩きつけた。
「ぬおおおおおお、貴様は!?」
地上へ吹っ飛ばしたニョルズに向けて、杖に光の魔法を込め、マシンガンのように連射する。
「虹星極光」
光の魔法は連続エネルギー弾みたいになって、ニョルズを吹き飛ばしていき、地上ではイワネツさんが金属バットのような武器を持って振りかぶる。
「すげえなあの子、Прикольно! セクシーさに惚れちまいそうだ俺も! さあて神野郎、ラプターって知ってっか? ロシアの古いスポーツで、俺もガキの時によく遊んだアメリキーのベースボールみてえなもんよ。バットなんて、大人になってから人間ぶっ叩く道具意外、使った事は無かったが……お前ボールやれ!」
地表に向けて叩き落としたニョルズを、イワネツさんが綺麗なフォームでかっ飛ばす。
「ぎゃああああああ」
「オラァ! ボール行ったぜ兄弟!」
かっ飛ばされたニョルズの方向に、先回りしたジローが宙に浮き、満面の笑みで私を見てくる。
「俺ぁが惚れたマリーちゃんが戻ったさあ。兄弟! オーライ、オーライやん、なあ、ぽってかすうううう!」
ジローが、サッカーのオーバーヘッドキックのような浴びせ蹴りをニョルズにくらわせ、私の方向にニョルズが飛んできた。
「ぬあああああ貴様らああああ!」
私は空中で、ギャラルホルンをバットに見立てて構える。
肘を開かず肩を崩さずに、コンパクトなスイングを……。
ソフトボールをゴロ打ちして大きくワンバウンドさせるように、全ての力を込めてフルスイングのインパクト!
「悪球撃ち!」
私がフルスイングしたニョルズは、砂浜に頭をうずめた瞬間、衝撃で砂浜が大爆発して砂塵が飛ぶ。
「行くぜ神野郎おおおおお!」
イワネツさんが、野球の乱闘試合のように、バットのような武器を砂浜に体をうずめたニョルズに次々と振り下ろす。
「オラァ! 調子乗りやがって! ぶち殺してやるぜクソ野郎!」
殴りかかるイワネツさんに、ニョルズは水の障壁を張って防御し、光の槍を具現化すると彼のお腹を突き刺す。
「お前が調子に乗るな悪魔! ワシが神魔精霊大戦で、どれほどの悪魔を屠ったか! 貴様程度の技と力など、児戯にも等しい!」
するとニョルズに、プラズマのような光の銃弾が浴びせられる。
「くぬ外道!! 何だばあああああ! 人ぬ心根踏みにじーるヨゴレ! ぶっ殺すぞクソ野郎!!」
ニョルズがたまらず、体を水蒸気の様にしてジローの銃撃をかわした。
「時間停止」
停止した時間の中で、魔力銃ウッズマンを構えるジローの背後に、光の槍を振り降ろそうとするニョルズの姿が見えた。
「やらせないっ!」
私は停止した時間の中で、ギャラルホルンの出力を最大まで高め、炎の穂先を具現化して、一気にニョルズのもとに詰めて脇腹に穂先を突き刺し、時間が元通りになる。
こいつのクセを私は見ていた。
ニョルズは体を水蒸気させて回避して実体化した時、わずかだが隙がある。
その隙を私は突かせてもらったわ。
「ぬぐっ、貴様は……そうか、ヘイムダルが選んだ戦乙女」
「うらあああああああああ!」
杖の穂先の炎の魔力を一気に高めて、彼の体を突き刺しながら頭突きをお見舞いする。
「負けない! この地の優しい人々を、差別して命を奪う悪なんかにっ!」
頭突きをお見舞いした私に、今度はニョルズが首を仰け反り、魚のえらがかたどられた兜を私に向けて鈍器のような頭突きをしてきた。
「お前に何がわかる! ワシが生み出した生命を、ワシの世界を奪った者どもに、精霊種や悪魔共のような薄汚い異物が混入するように汚された! そして生まれ変わっても同じ過ちを繰り返すクズ共! ワシは神として、このジッポンは救いがたい地であると滅ぼすことに決めた! ここが、この地がこの世界の生命と人間が生れた起源の地だ!」
そうか、このジッポンが、この世界の生き物や人類全てが生れた地。
彼は、この地に愛着を持って誰よりも愛していたのは本当の所だろう。
だけど……。
「させないっ! この地の人々の生命の営みを、人として気高く生きようとする思いを、この世界に救いを祈った人々の気持ちを踏みにじった、あんたなんかに負けるもんかあああああ!」
私がさらに頭突きを加えた瞬間、竜巻のような勢いでジローが回し蹴りでニョルズを吹き飛ばす。
「人々ぬ救い祈いる世界滅ぶさとぅする外道! お前ー神やあらん!!」
吹き飛ばされたニョルズを、ゴスロリ服を着た女の子の巨大ロボットが前に立ち、ロボの右手で鷲掴みする。
「祟神ニョルズ! この地の人間の尊厳を侮辱し、人間達の魂を長年苦しめた罪! 重殺人罪と魂侮辱罪の重罪!! 冥界の審問官ヘルとして許しがたい大罪なのだわ!! 神乃右手ああああああああああああああああ!」
黒い巨人のニョルズを握った右手が白熱化した瞬間、握り拳に空間と重力が圧縮されたような異空間が発生し、重力場が崩壊したような超がつくほどの大爆発を起こしたが、技の見た目とは裏腹に効果は薄い……いや、無効化された!?
「ハッ? 祟神にわらわの神の力は通じない……」
「ぐおおおおお! 大逆神の娘がああああ」
拘束から水蒸気化して逃れたニョルズが、黒い巨人に対し数えきれいないくらいの水の槍を具現化させ、彼に対する黒の巨人の目が怪しく輝く。
「水槍雷雨」
「原子光線」
水の原子と光の電子が結びついた無数の槍に、原子を分解する光の熱線で女神ヘルは対抗する。
無数の槍が巨人に突き刺さるが、彼女は怯むことなくニョルズに拡散する光の熱線を、ビーム状に撃ち出して肉薄していた。
「何も知らなかったわらわに、人の世の美しさを、世界の美しさと温かさをくれたこの地を守る! 神であることを放棄した愚か者から!」
私も……負けられない!
たぶん彼女は神だろうけど、あんな小さい体で頑張ってる女の子に、負けられないっ!
「電磁防壁」
ニョルズの雨のような無数の水の槍の攻撃を、電磁バリアで防ぎ、ニョルズに向けて水蒸気でも逃げれないような、面の攻撃を!
「光焔万丈」
バリアで生まれた電子や光熱により物質が電離する際の、範囲を定めた爆発魔法でダメージを当てて、ニョルズの目の前まで間合いを詰める。
「でやあああ」
ギャラルホルンの穂先を、ニョルズに向けて一直線に突くも、彼の持つ光の槍でいなされて、カウンター攻撃の突きが私の胸を突こうとした。
「うるぁ!!」
「やっさあ!」
ニョルズの後頭部に、イワネツさんがバットをフルスイングして、ジローが赤い魔法のスティックをヌンチャクに変えて槍を奪い取る。
「マリーちゃん、槍の使い方なら任せるさー。琉球王家ぬ武術ー本部っちゅう、大昔ぬ先生ぬ体系化しー、我も世話になったぁ、武術家ぬ上原先生からー習っちょーんさぁ!」
ジローが、ヌンチャクをズボンのベルトにしまい、ニョルズから奪った水色の光の槍を手に持って構える。
「なめるな人間!」
ニョルズが新しい槍を生み出して、ジローを電光石火の速さで突きに行く。
「マリーちゃん、円ぬ動きと直線ぬ動きさぁ」
槍を回転させる動きをして、ジローは柄の石付で払い、さらに足捌きが円を描くようになって、ニョルズに回り込み、喉もとを突く。
弧を描くように相手の攻撃を防御して、攻撃する時は最短距離で直線を突く武術であると、私は理解し、タヌキ耳の男の子は私の側で、ジローの動きをじっと見据える。
「円ぬ動き意識しーがちー、隙一見つけ直線んかい突ちゅんさ……あんしぃ怯んだらぶっ叩くさぁ!!」
ジローが槍でガンガンとニョルズの兜を、叩き回し、イワネツさんがバット持って一緒にニョルズを叩き回す。
「オラァ! 散々人間をコケにしやがって!! 死んじまえってんだクズ野郎!」
「くぬぽってかすーが! ぶっ殺すど!!」
一方的に見える状況だけど、私は違和感を覚えた。
このニョルズに、かなりのダメージは与えてるはずだけど、何かがおかしい。
魔法量も大量消費していた筈なのに、普通に魔法を放ってくる。
「心を熱く、頭を水に、冷静に対処するのが喧嘩の鉄則」
もう私は、二度と同じ失敗をしない。
「状態確認」
ニョルズ LV291 状態 祟神
HP 2610/軣膄뫩隓 2943/軣膄뫩隓 5647/軣膄뫩隓……14564/軣膄뫩隓……MP5643/谿コ縺吩ココ髢 こいつ!?
スキル状態確認を使うと、ニョルズの生命力が一気に減ったと思ったら、すぐに物凄い勢いで回復していって、MPも回復してて、まずい! このままだとあの大津波の魔法をあいつが。
なぜ? 何の要因がこいつに力を回復させてる?
生命力回復効果は、何らかの回復魔法っぽいけど、この一気に回復する魔法力回復は一体?
「おい、お嬢さん。こんなカスにこのバット、いや宝剣を使うのがもったいねえ、ちょっと持ってろ」
私はイワネツさんから金属バットのようなものを受け取り、あまりの重さに腰を抜かしそうになる。
これはおそらく、金属の重みじゃなくて、こもった魔力の重み。
「こっちの方がしっくりするぜ、なあ……神野郎! 罰をくれてやる、ぶち殺してやるぜ畜生がああああああ」
イワネツさんが両拳を握り締めて踏ん張る様にしてか力を溜めると、溢れんばかりのオーラを放出するのと同時にきらびやかな衣装が破れて、両胸の下の八芒星の入れ墨が光り輝き、青白い背中には黒い入れ墨で色が入ってない……あれは仏像の、伐折羅像?
さらに荒々しい力を放出させて、彼はニョルズに間合いを詰めていった。
「貴様! その姿、ひっ! 古の魔界の大帝……大将軍と呼ばれるバ……」
「Давай!!」
振りかぶった拳でニョルズの顔面を打ち抜き、あまりの力でニョルズの体が、空中で縦に一回転して仰向けに倒れた。
「なんという力……来るな悪魔め!」
吹き飛ばされ、仰向けに倒れたニョルズは、水圧のカッターや、レーザー光線のような水圧の攻撃、上空から暴風をともなった落雷の嵐のような攻撃を繰り出すが、彼は、イワネツさんは止めらない。
すぐにイワネツさんがニョルズの兜を掴んで持ち上げると、宙に浮いて物凄いラッシュ、アッパーとか打ち下ろしパンチとか、左右のフックとか鬼のようなパンチを物凄い速さで繰り返す。
「上上、下下、左、右、左、右、B、A! 上上、下下、左、右、左、右、B、A! 無敵の俺様が、コ●ミのゲームおなじみ、無敵コマンドをお前に叩き込んでやるぜクソ野郎!!」
ニョルズが繰り出す嵐のような攻撃に一切怯まず、まるで凄まじい暴力の嵐、ボクシング?
ていうかコナ●って、スポーツジムとかの最大手で、男の子とか好きなカードゲーの会社だけど、ゲーム会社だったっけ?
よくわからないけど、無敵コマンドとか言いながら、イワネツさんがパンチの嵐で滅多打ちにする。
「ぐああああああ、悪魔だあああああああ!」
「お前の所業が悪魔だ! B、Aはただのパンチコマンドじゃダメか? ならばB!」
ニョルズを両手で掴み、思いっきり引き寄せると、足払いをかけて思いっきり二人同時に転倒……いや、勢いと体重を思いっきりのせた大外刈り。
「A!!」
イワネツさんは、横たわったニョルズの体を両腕で抱えるように引き起こして、頭を両太ももに挟み込んで思いっきりジャンプした。
「カールゴッチやん! パイルドライバーさぁ!」
「ぬうりゃあ、回転も加えてやるぜ!」
空中でスケート選手のようにスピンして、思いっきり砂浜にニョルズの頭頂部を叩きつけるプロレス技っぽいのを繰り出した。
「ハッハー! スクリューパイルドライバーよ! レバーを一回転してパンチボタン……しまった、AボタンやBボタンは、スーファミだとパンチボタンじゃねえよ馬鹿野郎!! お前この野郎、コマンドミスっただろうがゴミ野郎!」
今のダメージで動けなくなったニョルズを、執拗にサッカーボールみたいに蹴り飛ばしてる。
先生もヤクザな戦い方で荒々しい感じだけど、理不尽さや暴力性が先生を上回ってるこの人。
けど、ダメ……
あいつ体力を回復させて……目の前の海から光の粒子のようなものがニョルズに吸い込まれて……。
これはポーションのような魔法力の要素? そうかわかった!
「みんな、こいつは海から魔法力を回復させて、その力で回復魔法を使ってる!」
「マリーちゃんわかったん! やしが……海ぬでぇじ広くてぃ大きいさあ」
「小賢しい真似しやがってゴミ野郎!」
すると狸耳の可愛い男の子が、私に右の掌を見せながら、中腰になる。
「姫君、それがしに剣を」
「え、ああ……うん」
剣というより、野球のバットのような武器っぽいけど……。
私は思いながら、男の子に手渡すと彼の目つきが変わり、剣道のような構えを取ったが、私にもわかるくらいこの子強い……先生と同じ剣の使い手。
「如流頭の荒魂よ、それがし偉大なる幕府を築いた原家末裔、松原元康なり! いざ尋常に勝負」
男の子が金属バットを構えたまま、一足飛びでニョルズに間合いを詰めた。
「貴様……原氏だと!? 我が妻にした丙家、地球世界では平の時子と呼ばれ、その息子安徳の仇の一族! 死ねい、雑種!」
彼の金属バットとニョルズの水と電子の槍が激しく火花を散らす。
「我が先祖の業……であるか如流頭。ならば先祖の過ちを業と受け入れ、族滅されし丙家……いや平家をいたみ申す」
ニョルズの槍を弾き飛ばした松原と名乗った男の子は、反す刀でニョルズの胴へ思いっきり金属バットを振り抜いて、吹っ飛ばした。
「よって我が名を松平家康とする!! いずれわたくしに機が熟したならば、志半ばで死した天帝様の名をあやかり、平家の名を継ぐ原氏のわたくしが徳の一字をいただく。これを以て国家安寧の礎とせん! 沈まれ荒魂よ!」
彼は松平家康と名を改めた。
私でも知ってる、地球世界の歴史、このニュートピア世界に現れた徳川家康のような存在。
このジッポンに、いずれ泰平の世をもたらす定めを持つ、運命の子なのかもしれない。
「何だかよくわからねえが、このガキ使える! 行くぞお前ら!」
ジロー、イワネツさん、家康の3人がかりで、ニョルズの生命力を減らしにかかるが、彼らの猛攻でもすぐに回復されてしまう。
「痴れ者どもめ! 大禍津波で、この地もろとも押し流してやる!」
まずい、ニョルズの体が液化し始め、徐々にさっきのような巨大化をして魔法力が回復しつつある。
「させない……そんなことなんか!」
私は、新しくなった杖に力を込める。
ここは海、海水を分解して魔力の触媒になる電子がある状況……ならば。
「神様、光の神様。私にこの地を救える力を与えたまえ。人々の尊厳や祈りへ暴力を持って応える悪に負けない力を、みんなを救える力を私に……」
海中から、ニョルズが回復するエネルギーを私が吸い取った形になり、杖にエネルギーがどんどんたまっていき、ヘイムダルの知識が私の頭の中に……。
分子や電子や粒子の光の核を、融合させ濃縮したエネルギーと光を崩壊させ、原子核の放射性崩壊を起こさせて、生み出されたニュートリノの光で重力すらも崩壊させるエネルギーを、瞬間的にあの悪へ……闇を打ち抜く光をニョルズに繰り出す!
「私にこの地を救う力を! くらええええ天体爆発!」
私がエネルギーを放った瞬間、ニョルズが変身した水の巨人が光り輝き、超高熱とともに海が大爆発を起こして電子の光に変わる。
「Боже мой! やべえぞあの子、ジロー何なんだあの子!」
「はは……でぇじやっけーさぁ。あの子怒らせるとぅ、沖縄ぬ女より怖いさぁ……」
だが、ニョルズは……かなり参っているようだけど、奴は海そのものと融合を果たしてて、すぐに生命力を回復させて体を具現化させた。
「だめだ、ダメージは与えてるけど私や騎士団にイワネツさんの軍総動員でも、ニョルズの超回復する生命力と魔法力には対抗できない……考えろ私、どうすればコイツに勝てる? あ、そうだ」
私は、ふいに先生や閻魔大王様から教えられた切り札を思い出す。
召喚次第では先生にも悪影響を与えるかもしれない切り札で、絵里とセトとの戦いでは、冷静さを欠いててこの切り札を使えず仕舞いだった。
その時、見た目が黒柴のバロンが私の側に尻尾ぶんぶん振って駆け寄ってくる。
「娘よ、そうだ。その手しかないだろう、奥の手の件は大王様より聞いている。そして、我が弟分のマサヨシはまだ天界から釈放されておらなんだ……奥の手を使うしかあるまい、あのお方の召喚を」
私はバロンに触発され、残りの生命力と魔法量を使い、ニョルズを倒すための召喚を行う……かつて大魔王と呼ばれた存在の召喚を。
次回決着です