第118話 世界憲法樹立
北朝ジッポン中央に位置する、織部の国。
目がうつろな状態で、今日も和風だがどこか地球の日本とも趣が異なる庭園を見つめる、ウェーブがかかった美しい金髪に、緑の瞳、童顔だが形が整った目鼻立ちをした赤いドレスの可憐な少女が、呆けながら屋敷の軒先に腰掛け、左手には栄養失調にならないよう、ポーションと栄養剤が入った点滴を受けていた。
「やっべえよ、あの子。アイドルとか目じゃねえくれえ、かわいいじゃん。確か、マリーって子だっけ? 犬ちゃんさあ」
「ああ猿、あの子ヤバいくらい奇麗だよね。我らが親方のイワネツ様と、正式に兄弟の契りを交わしたジロー様の連れてきた、世界を救う切り札らしいよあの子」
転生前、元暴走族でしがない三下ヤクザだった背の低い猿顔のヒデヨシと、元傭兵でロシアンマフィア末端幹部、背が高く犬耳を生やした前島犬千代は、警護に着いた庭先から彼女を見つめる。
そして屋敷を見通せる木の上から、タヌキのような耳をピクピクとさせ、形が整った丸みを帯びた瞳を輝かせる、織部軍捕虜でもある、齢15の美少年かつ旧今田家家臣の松原元康は、やすやすと収容所を抜け出し、今日もマリーの姿を見て深窓の令嬢に思いを馳せるかのように、顔を赤らめて見つめていた。
奇しくも、後のジッポンで‶勇者を継ぐもの”と称される三英傑がそろい踏みした瞬間でもある。
だがマリーは守るべき領地と、自身を慕う騎士達の中心メンバーも失い、かつての親友の真意があの時理解できなかった苦しみにより、彼女に芽生え始めていた責任感が、逆に強い後悔へと変わった事で、あの時こうすれば等といった自責の念にとらわれて心を病んでしまう。
地球からの転生者、ヴィクトリー王国の女王にして、かつて半グレとも呼ばれた李絵里により、世界を救う英雄としての評価から一転し、この世界の騒乱の原因となった破壊者として、世界中から否定される存在となる。
そして世界情勢は悪化の一途を辿り、新たな封印されし者がこの世界で復活を遂げ、マリーが召喚した歴戦の勇者にして、侠客の勇者マサヨシも天界へ囚われの身になった事で、さらに世界救済が遠のいていたかに見えた。
しかし、その状況下でも諦めなかった男達が、水晶玉の通信にて会合を開く。
そのままの通信だと、エリザベスこと絵里や、破滅神ロキから傍受されてしまう恐れがあったため、異世界ヤクザ極悪組の技術力で、幾重にも暗号化された、仁愛の世界の最新の科学力を用いて。
「よう、ジロー。そっちはうまいこと行ったみたいだな」
「あー、みんなに紹介するさー。俺ぁと新しく兄弟になったイワネツさー」
「ふむ、何時ぞやの俄罗斯の匪賊出身の元頭領だったか? 頼りにしているぞ、新しい同志よ」
全員の姿を映像化し、まるでウェブ会議のような形になり、ジローと肩を組んだイワネツの姿も表示される。
「おう、元ロシアの盗賊のイワネツだ。俺はお前らと組むことに決めたからよ、よろしく頼むぜ。さて、これだけの面子が揃ったんだ。まずはふざけた神野郎共と、この世界の間抜け共の情報を知りてえ」
禁酒法時代、アメリカ合衆国で犯罪王とまで呼ばれた元ギャングにして、フランソワ大統領のデリンジャー。
中華帝国の元将軍にして倭寇の大海賊、この世界ではバブイール王国の皇太子アヴドゥルとして生まれた鄭芝龍。
前世で伝説の遊び人と称され、凄腕の沖縄ヤクザの金城二郎こと、旧イリア首長連合ことロマーノ連合王国王子として転生したジロー・ヴィトー・デ・ロマーノ・カルロ。
そして、配下のヒデヨシに新調させた真っ赤な特攻服を着る、史上最悪とまで言われたロシアンマフィアと世間一般で呼ばれる、盗賊組織の中でも、規律ある泥棒の称号を持った元首領、ヴァーツェスラブ・イワンコフこと織部憲長、またの名を勇者イワネツ。
水晶玉通信で一堂に会する彼らは、このニュートピアを救うため、地球世界で魂に傷を負って転生した人間の運命を弄ぶような者達から、尊厳を取り戻すために、現在の世界情勢及び情報交換を行う。
「会合を開く前に、まず俺達から礼を言わせてもらうぜイワネツ。彼女を、マリーを匿ってくれてありがとう。とてもじゃねえが、今の彼女をナーロッパにいさせてやれなくなってな、すまねえが面倒をかける」
「私からも礼を言わせてもらう。敵の悪辣な情報操作で、彼女は……すまない」
デリンジャーと龍が礼を言うと、イワネツは手をヒラヒラさせて、礼には及ばないとジェスチャーした後、織部では見せないような優し気な顔つきになる。
「別にいいさ……実はよ、あの子を救えるかもしれねえ技術を俺は持ってる」
「ジュンに!?」
「Really!?」
「真的嗎!?」
男達はそれぞれの言葉で、本当かとイワネツに問う。
「ああ、アメリカの刑務所に入っていた時に、筋トレの合間に読んだ臨床心理士の教材でな。この技術があれば、手下が増やせるって思ったのと、もしかしたら前の世界で死んじまったおふくろも治せたかもしれねえってよお、興味があってな。一通り本の知識を身に着けた」
イワネツは、マリーを一目見た瞬間、光を感じた。
それと自身が惚れた友であり、兄弟の契りを結んだジローの為と、自身の世界救済の助けになると思ったため。
兄弟分から託された少女の心を、癒し喜ばせ、本来の心を救えないで何が世界救済だと、転生前には思いもつかなかった心境へ、イワネツの心が変質していたためである。
「龍だったな、お前が俺に言った言葉の返答をしてえ。人間の尊厳を、想いを、男としての誇りを、誰かを愛する気持ちは止められねえだろって言ったな? 俺も……そう思う! 人間が人間として生きる為に! この世界で父と母を再び失ってやっと気が付いた!! 俺は、今度こそ人々を救い喜ばせる存在に、勇者になると!」
一同が、イワネツの漆黒の瞳に宿った光を見る。
その瞳はもはや、前の世界の人間社会に絶望し、光さえ脱出することができないブラックホールのような瞳の色ではなく、世界を救うと決意をして黒の中に、光り輝く星を宿した瞳の色となっていた。
「それで……これからどうする?」
イワネツの問いに、龍は世界地図の画像を会議に出席した全員に表示した。
「うむ、現在の情勢について、再確認するぞ。まずこの世界の脅威となっている四勢力だ。ヴィクトリー王国、ロレーヌ皇国、そしてチーノ大皇国改め、大幻ウルハーン。その背後にいるのは、ルーシーランド勢力のジュー及びキエーブ」
白紙の地図に、魔力で龍が各勢力ごとに色分けしていく。
「チッ、地球で言うところの俺の故郷ロシアみてえな所が、黒幕だって言いてえわけか? 安っぽいB級ハリウッド映画かよってんだ」
「へっ、低予算で作られたウエスタン・アヴェニューのB映画を、安っぽい密造カクテル片手に、暇潰しで頭空っぽにして見るのも悪くねえんだぜ? それをいやあ、俺の前の故郷だった合衆国。多分この世界では認知されてねえが、きっとあるはずだ。それについてはジロー、おめえこのジッポンの話が本当なら……」
「あー、そうさー。イワネツ達の話ぬ話ぬ本当ーやれー、くぬ世界に、しにやべえ奴らがいるさぁ」
ジッポンの伝説。
古来からジッポンの東の海より、魔物や人智を超えし化物や鬼が津波のようにやって来ては、ジッポン列島へ災厄をもたらすとされる、“百鬼夜行”伝説である。
「ああ、おそらく今この世界に蘇った似非英雄のジークが呼び出し、最終的に敵対してたって言う、ナーロッパの伝承にある魔王連中。それが、この世界のアメリカ大陸みてえな所にいやがるな。そして、長年この世界をデンジャラスな魔王連中やモンスターの侵略から守って来たのが……」
「このジッポンってわけか。神野郎らだけじゃなく、東の果てにあるだろう悪魔共の動向まで考えんとならんとは、クソ面倒くせえ」
「おそらく、我々の仮説に間違いないだろう。君のいるジッポンが、奇しくも定期的にやって来る、悪鬼とその勢力から守って来たのだ」
ジッポンの東の海の向こう、この世界の最果ての地に、かつてこの世界の人間達との戦争で追いやられた、魔王達の本拠地がある事を4人は予感する。
「俺達の仮説が正しければ、その魔王連中が、今の世界情勢に付け込み攻め入って来やがったらやべえ事になる。だからその前に、こっちの大戦を鎮静化させねえと。じゃあ、まずは俺のフランソワ周辺の状況だ。うちの国の状況は、補佐官にしたルイーズの尽力により、旧貴族の反乱は沈静化しつつある。ジロー、おめえが吹き込んでくれた策の成果も大きい」
「へっへっへ、そうだるー? 命どぅ宝やん」
悪い顔になってジローが笑うと、通信した全員が悪童の顔になり笑う。
反乱を起こした旧フランソワの貴族勢力に対し、デリンジャーはジローの入れ知恵により、大統領宮殿を占拠した貴族子弟を人質にすることと、首謀者でもあったルイーズを補佐官に仕立て上げたことによる懐柔政策。
大統領デリンジャーに恭順するなら、旧貴族に相応しい地位を保証する。
だがそうでないならば、断固とした措置をとり、国家反逆罪で死刑にすると脅迫したのだ。
デリンジャーは、死刑制度を数年以内に廃止する予定であったが、跡取りや親族が処刑されると聞いた旧貴族は血相を抱え、我先へ共和制に恭順し、国内が平定する。
「しかしまずい事に、ホランドで反乱が起きて王族のベルナドット家が幽閉され、俺のフランソワに侵攻し、フランソワ各地でシュビーツの傭兵団が暴れ回ってやがる。ぶっ殺されるのは、何の罪もねえ一般市民だ! ファック!」
ホランドはデリンジャーが休戦協定を結んだベルナドット一族が、戦争継続を望むジュ―達の陰謀により拉致され、フランソワからの虐殺を煽られて、廃墟と化したランヌの街を南下して侵攻し、元貴族の騒乱からナーロッパ最強の一団と称される、ロマーノを占領したシュビーツ傭兵団が、騒乱に乗じて勢力拡大を図っている状況。
「我がバブイールの状況に関しては、私はマリーク戦士団と合流し、一刻も早く王都イースタンを私の影響下に収めようとしている最中だが、おかしな事態が起きている。聞くところによると戦場に動物の仮面をかぶった男が目撃され、ロレーヌやハーン共の進軍が止まったらしい。私には好都合だが、何かおかしな状況だ」
仮面の男の正体は、砂漠の戦場の熱にあてられ、惹かれるように姿を現した罪神にして、残虐神の異名を持つ、封印されし凶悪な戦神セトである。
しかしセトは、バブイールに進軍中のロレーヌやハーンの動機が、略奪と自国の影響力拡大しか見いだせなかったため、彼らが作り出す戦場に失望し、自分が興味を惹かれるより強き者を呼び寄せるためと、自分の闘争本能を満足させる者を求め、バブイール、ロレーヌ、ハーンへ無差別攻撃を始めたのだ。
「ロマーノぬ情報やんしが、へっへっへ我にんかい逐一情報ぬいーるぐとぅ仕掛きしぇーん。信頼ないる弟分てぃがろー配下なちゃる戦力ぬ、いちやてぃん反転攻勢仕掛きらりーんじ」
「?」
英語だがジローの訛りが強くて、一同全員が首を傾げる。
「ん、ああ悪っさいびーん。つまりは、いつでも俺ぁロマーノん状況をひっくり返せるって事やん。奴らを泳がしてぃ、いい気持ちにさせて情報の探りいれてる。あったーらジューの動向の情報収集の網にかけとるっちゅう事」
ジローは、アヘンの禁断症状を克服して、再びこの世界で弟分にした比嘉小吉が転生したサルバトーレ伯を地下に潜らせ、ロマーノ中の護民官たちにジューと呼ばれる勢力の情報収集をさせていた。
沖縄組織の怖さは、米軍流れの武器の重武装化と、空手の腕っぷしの強さもさることながら、島内で起きた出来事を伝達する情報網とアンテナの感度が、本土の組織よりも頭一つ抜けて高い点が挙げられる。
そうでなければ、米軍相手や海外組織、そして本土の組織や半世紀以上続いた派閥抗争で戦えなかった実情があった為と、古代ロマーノ帝国が崩壊した後、千年以上繰り返してきたイリア都市国家間の内部抗争で、他のナーロッパ諸国よりもそういった事柄に、ジローが転生した半島国家は長けていた為である。
「さすがだな、ジローの兄弟。俺はよお、さっさとこのジッポンの内戦を終わらす。北朝? 南朝? 神社勢力に幕府、全てに価値がねえしくだらねえ! 全部ぶっ潰してやる!」
「なるほど、それで君はどのような手段でそれを成す?」
龍の問いに、イワネツはニヤリと極悪な笑みを浮かべる。
「決まってんだろ? 俺がなぜソ連を裏から支配したと思う? このジッポンのクソ野郎共、全員を一ヶ月もしねえで俺に跪かせてやる」
イワネツは、ペレストロイカに入る少し前、ソ連全土で、ウォッカの酒瓶片手に単身全国行脚をしながら、自身の組織とネットワーク固めを行った。
その内容は、ソ連各地の有力なヤクザや盗賊団の頭領を持ち前のドスの効いた声で脅しあげ、金を巻き上げた後、服従するならば配下に。
反抗するのであれば圧倒的な暴力で闇に葬り、イワネツが訪問した後には累々たる死体が転がると言われたほど、ソ連全土に恐怖のイワネツと呼ばれるほどの伝説を築き上げた男である。
彼はそれをジッポンで行う気だった。
「オーライ、俺がフランソワ全土を強盗し回って、貴族共を軍門に降らせた方法で行くわけか?」
「当たり前だろ? なるほど、デリンジャーも俺と同じ事して、この世界で大統領に上りつめたって事か。やるじゃねえか、さすがは俺と同様に前世が盗賊だっただけはある」
「まあ、俺には仲間の力があったからな。その仲間の一人、クロスクレイモアの使い手、クルスがマリーを守るため、敵にやられちまったが」
デリンジャーは、この世界でマリーと結成したローズ・デリンジャーギャング団の一員にして、ヨーク騎士団の団長、オーウェン・クルス・ジョーンズが、残虐神セトに殺された事を聞き、怒り心頭であった。
「そうか、俺もそのクルスに会いたかったが、残念だ。あとは、決め手になる何かが欲しい所だな」
「ああ、そうだなイワネツ。お前がジッポンの内戦を終わらす、大義名分ってやつがあれば」
すると、イワネツはふいにその大義名分を思いつく。
「そういや思い出したぜ。俺の親父が言ってたが、この織部の伊東湾の海底神社にあると言い伝えられる、三種の神器って伝説のアイテムがあってよ。初代天帝の武器アメノムラクモだったか? それ手に入れて、俺が天帝になってやるぜ」
元々織部一族は、神代から続く神官であり、ジッポンを二分したと言われる原丙合戦で、消失したと表向き言われる、ジッポン建国伝説の剣を守護する一族だった。
「やり方は任せるが、君がジッポンを手中に収めたその後、大陸のハーン共を……」
「ん? そんなまどろっこしい真似しなくてもよお、今すぐ俺がそのチーノを乗っ取ったハーンとか言う、ゴミ野郎に伝わるよう、ジューとかヒンダスの商人に空気入れればいいだろ? 龍よう」
イワネツは、自分達ジッポンが大陸のハーンに攻め込むのではなく、血に飢えた戦闘集団と呼ばれるハーンに喧嘩を売って、攻め込ませる手法を提案する。
「そうか、なるほど。仮に奴らがジッポンに軍を向けなければならないとなると、西方へ侵攻中のハーン共は二正面作戦を展開せねばならず、疲弊するか」
「そうだ。そんで奴らがジッポンに攻めてくるとしたら、海流が安定する南朝側だ。まとめて俺が潰せばいいだろ? ハーンも南朝もよ」
つまり、二正面作戦のような複数の戦線を保持するということは、古今東西どの戦場においても兵力の分散にしかならない。
それは結果的には個々の戦線における戦況の膠着の可能性と、長期戦化を生み出すことになる。
このような状況になると兵站が極めて重要になり、単純な戦術の優劣ではなく国力の差が顕著になる。
いかにこの世界の覇権国家たるチーノを乗っ取ったハーンであっても、戦争の長期化がもたらす厭戦によって、制圧したはずのチーノ各地で内乱が生じる可能性があるため、戦争をする側にとって、二正面作戦は避けねばならないのが戦争の鉄則。
「オーケー、そのプランで行こうか。問題はヴィクトリーとルーシーランド、そしてオーディンの一派とロキ」
イワネツは、舌打ちしながら頭をポリポリ掻きながら、バツの悪そうな顔をした。
「すまねえが、そのロキに先手を打たれちまった。俺は奴と契約しちまったんだ。一つは野郎の娘の保護。一つはオーディンに関する情報提供。最後の一つが、そのヴィクトリーとか言う国への協力だ」
全員が、イワネツを凝視する。
「無論、お前らの事を野郎に売るつもりはねえ。だが俺は、一度決めた契約を反故にはできねえんだ。俺の信念でもあるし、お前らと出会う前の話だ」
「なるほど、そう言うことか。ならば……」
「ああ龍よ、そう言う事だな」
「うん、マリーちゃんが正気を取り戻せば話が早いさあ。彼女もヴィクトリーの王女さぁ」
全員の意見を聞き、イワネツはニヤリと笑う。
つまり、ヴィクトリー本国であろうと、マリーに与しようと、同じヴィクトリーであると言う意味で、ロキへの契約違反にはならない。
「あとよ、それで、せっかく世界を救う面子が揃ったんだし、俺の考える世界救済の構想をお前達に発表してえのだが、いいか?」
イワネツが切り出した話題に、その他の面々が頷く。
「俺は、俺達は前世の地球社会の闇が生み出した盗賊だ。そんな俺達だが、人が人として当たり前に生きていける世の中にしてえと思ってる、だろ? 龍は自由に人々が交易できる社会を、デリンジャーは人が人を殺さねえでもいい社会を、ジローの兄弟は人と人同士の争いをやめさせ命こそが宝である世界を目指してる。そのためにはこの世界に規律が必要だ……そうじゃねえか?」
「ああ」
「そうやん」
「沒錯」
前世でアウトローだった全員が、イワネツの提唱に同意する。
「俺はこの世界に、共通の世界憲法を、人が人として生きていける権利、人権を制定してえ! 人間が人間として生きていけるような、二度と身勝手な神なんかにも、悪魔にも侵されない法と律を! 今こそ世界共通のルールを、規律もねえこの社会に俺達が作ろうじゃねえか!」
イワネツが提唱したのは、人間が人間として生きていける事を目指す権利、人権の提唱。
人間が生まれながらにして持つ権利、未来永劫に渡って人間に保証される基本的人権。
「強者が弱者を虐げるような、そんな悲しい世界はもう沢山だ! 俺達が決めようぜ兄弟達! この世界を救うために、もしも俺達が死んだ後でも機能するような規律を、社会の不条理を熟知した俺達で作る! 誰にも邪魔はさせねえ、それが神であったとしても! 人間の生み出す光を永遠のものにするために! 俺の意見に賛同する者は!?」
「オーライ、賛同するぜ兄弟」
「当たり前やん兄弟」
「異論はない、兄弟」
前世でアウトローと呼ばれた男達は一同誓い合う。
互いに兄弟であるという誓いと、ニュートピアと呼ばれる世界を、真に救済するための世界憲法の樹立と、各々が胸に秘める正義を果たすために。
続きます