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転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第三章 英雄達は楽ができない
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第116話 失楽園 中編

 敵による分断戦略が、私達を疲弊させていき、いたずらに時間を浪費していく。


「とりあえず、シミズの組織の者達が救難艇を用意する手筈になった。それまでジロー、私とお前は交代で敵の水晶玉からの情報を注視しよう」


「やっさ、交代で睡眠とってぃ見張り(シキテン)すっさー」


 先生の組織の人の救難艇が来るまで、ジローと龍さんは交代で水晶玉の情報収集と監視をすることになり、私は仮眠した後、こっちに亡命してきたヴィクトリーの騎士達全員で、島民たちに今回の権を説明しまわり、いざという時の避難誘導がしやすいよう動き回る。


「ふむ、娘よ。いざという時は、私の力を頼るがいい。一発だけなら、私の最強魔法を使用することができるだろう」


 いつもはご飯を食べた後の散歩以外は、寝てる事が多い黒柴のようなバロンが、とても頼もしく見えたが、それに比べて……。


「ブヒヒン、私は嫌だぞ! この島のメス達や植物、そしてぶどうと柑橘類の楽園から離れたくない!」


 元々オーディンの軍馬をしてて、今はただの白馬になったスレイプニルは、首を嫌々させてめっちゃ駄々をこねてて、バロンから思いっきりお尻をかじられてた。


「未熟者め! 人間界で二度力を使った貴様は、敵から襲われたらひとたまりもないのだぞ!」


「嫌だ、離れたくない、ここのブドウとオレンジとリンゴから離れたくないのだ!」


 こいつめっちゃめんどくさいって思ったっけ。


 そんなこんなで、お昼が経過したある日、事態が急変する。


「な!? まずいぞこれは……」


 バロンのお鼻がピクピクと動き、東の方角を向く。


「どうかしたんですか?」


「うむ、大量の人間の匂いだ。金属臭がないが、酷く不衛生で大量の老若男女の人間達の臭いが、東の海からこちら方面に向かってくる。それと焦げ臭い匂いが対岸からする」


 私は、龍さんとジローにバロンの情報を伝えた。


「東の海から……だと、まさか!?」

「心当たりあるぬが?」


 議場の机を、龍さんが鉄槌を振り下ろすように右拳を叩きつける。


「我がバブイールの民たちの流民だ! くそ! おそらくロレーヌ皇国の動きに乗じて、ハーン共がバブイールに侵攻したんだ! いや、それだけじゃなく、ロマーノを簒奪したシュビーツも動いたな? そして、陸路はロレーヌと東のハーン共、そしてロマーノに挟み撃ちをされているから、こちらに流民が向かってきてるのだ!」


 頭脳明晰な龍さんは、議場の机に地図を広げて私達に説明する。


「おそらくは、私の暗殺も我が友ジョンの誘拐事件も、我々の動きを止める陰謀! 彼女達ワルキューレや、敵の首魁であるアレクセイが企む本命は、大陸中央のバブイール王国の混沌化。我がバブイールは広大な領土を持ち、このように三方から敵に責められた場合、内戦となった我が国がとる手法は……可悪(クソ)! 最悪だ!!」


()ーがやん?」


「この世界の私の父、バブイール国王にして前世は大清皇帝だった康熙帝なら……やりかねんか。その昔大唐時代の偉大な李靖将軍に対し、吐谷渾(トヨクコン)と呼ばれた鮮卑族が取った戦術。兵站を断ち、敵からの略奪を防ぐための。国の食料や家畜の飼料を焼き払い、敵の進軍を防ぐ目的の焦土戦術!」


 私達は、バブイール王国がとる戦術を看破した龍さんの言葉に絶句した。


 つまり、敵の進軍が予想される地域に対して、略奪を防ぐために、国土に火を放つ焦土作戦とも呼ばれる非道な戦法で、そんな事をされた王国民達は、飢えて難民になり、国外を脱出するしか手はなくなる。


「そんな……そんな事って酷い……」


「放っておいても、敵から略奪されて臣民が辱めを受けるのならと……思ったんだろうよ! クソ、ならば私は!」


 龍さんは、水晶玉で内戦を起こしたマリーク戦士団に連絡を取りつなぐと、ワンコールもしないうちにマリークの指揮官のザイード将軍、転生前は龍さんの船員だった施琅(しろう)と言う人が通信に出る。


「老船首、通信をお待ちしておりました。我らマリークは王都イースターの南、マルムラン海対岸のブルサージュにて物資を補給し、王都急襲に向けて……」


混蛋(ボケ)!!」


 龍さんは、まるでこの宮廷全体がビリビリ震えるような声量で、普段の優雅さとかけ離れた怒鳴り声を出して、通信先のマリーク戦士団を一喝する。


「王国各地に点在する、腐っても精鋭の正規軍イェニーチリーが、そう簡単に反乱軍のお前ら相手に王都の側まで接近させるわけがあるか! それがなぜかお前にわかるか!?」


「い……いえ」


「お前には前世でも教えた筈だぞ、施琅よ。略奪する相手が強大な勢力だった筈が、抵抗もなく我々海盗をすんなり乗船や上陸させた場合は!?」


 水晶玉の音声が沈黙し、長考しているようだった。


「単純な話やん、別の誰かにもう略奪んかいされてぃ、くるされたくないからやん」


 ジローが代わりに水晶玉へ返答する。


 そう、彼らが正規軍の抵抗されずに王都近くまでこれたのは、正規軍が別の敵に対応中だから。


「そんな……私は、老船首を亡き者にしようとした奴らに復讐しようと思っていたのに、私が生まれ変わったバブイールが、外国から侵略されている……」


 龍さんは、ため息を吐いて私とジローの方を見る。


 うん、彼が何を言わんとするか、仲間である私達はすぐに察した。


「行って、助けてあげてください、バブイールを。これ以上、戦争で悲しい思いをする人達が出ないためにも、あなたの力を」


お前(やー)、ちばりよー。戦争(いくさ)とぅお前(ぃやー)ぬ因縁、終わらすさぁ!」


 龍さんは私達に無言で頷き、自分の因縁に結着を付けるために宮殿を後にした。


「あいつー体ん調子しにヤバい筈やん。心配さー」


「ええ、いくら龍さんでもバブイールは広いし、まだ万全な体調じゃないし」


 すると、議場のドアがノックされて開かれると、私達の前にオーウェン卿とレスター卿率いる、ヴィクトリーの騎士団が整列する。


「我らが王女殿下に対し、非礼とは知りつつも、アヴドゥル殿下に関する、先ほどの軍議を聞かせていただきました。我らがマリー殿下は、我々騎士団が命に代えてもお守りします。ロマーノ殿下は、急ぎアヴドゥル殿下に協力されてはいかがでしょうか?」


 その時私は、どうしようかとジローと顔を見合わせると、議場の水晶玉が振動し、用心棒さんことマサトさんと通信が繋がる。


「マリーちゃん、叔父貴。親父が天界にパクられたってさっき聞いた。それと、この世界がやべえ状況だってのも、うちの若頭から聞いたよ。こっちはいつでもそっちに協力できる体制だ」


 私は決断した。


 龍さんとバブイールを助けるために、この世界を救うために。


「わかりました、用心棒さん。ジロー、あなたは龍さんを」

「あー、なんくるないさー。マサト、頼むー」


 ジローは、先生の組織を使って龍さんの救援に赴き、それとは別にこのシシリーに救難艇がやってきて、島民や難民を救おうという計画となった。


 そう、ここまではこれで良かった……筈、でも……。


 私達は、領土のこの島を守るために、数日以内にここに来るであろうエリザベスを待ち構える事にして、オーウェン卿指揮のもと党内に防衛線を築き、この城で籠城できるように物資を集める。


 レスター卿率いる財務官僚は、交代制で変質した水晶玉から情報収集を行う。


 そして、5日かけてシシリー島民を、先生の組織の人達により、旧ノルド帝国のスカンザ共同体にピストン輸送するが、秋の収穫時期なので、畑に残るって言うお年寄りや、離れたくないって言い張る人達が、全島民の4分の1ほど出始める。


 私と騎士団は粘り強く避難するよう訴えかけ、地主さん何人かは納得して、避難に応じてくれる。


 水晶玉の状況は、世界を救う英雄としての私の話題が持ちきりで、少し照れくさい。


「マリー姫殿下、ナーロッパやナージアからの民の声が、7チャンネルやティクタクに次々と。マリー姫殿下を英雄として皆が称え、救いを求める声がどんどん大きくなってます」


 レスター卿は、おそらくうれし泣きだろうか。


 私を必要としてくれる声や書き込みとかメッセージを見て涙を流していた。


 なんとかして、住人達全員を避難させ、まずはバブイールとロレーヌをなんとかしなきゃと、その時の私は考えていた。


「思えば、エリザベスの魔女も……あの最悪な女神に利用され、エドワードと名乗るジュ―達に利用され、哀れなものです」


「然り、ジョージ陛下を暗殺したエドワードめ、絶対に許さんぞ!」


「ロレーヌの似非英雄もだ。何が英雄ジークフリードだ、元凶め!」


 彼らは、この世界の混沌の原因になった者達へ恨みつらみを吐き出してた。


 無理もない、彼らのせいでこの人達は国を追われる羽目になったし、この私も。


「けど、すでに女神フレイアも、ジークフリードも私達が討伐しました。あとは、あのアレクセイと背後にいるオーディン、そしてエリザベスが呼び出したロキの一派をなんとかすれば……」


 その時だった。


 水晶玉の情報監視していた騎士が、私達の方に困惑しながら見つめる。


「ジョーンズ卿、レスター卿、これを御覧ください。意味不明のタイトル記事が7チャンネルに配信され、急速に情報が拡散されて、物凄い勢いで書き込みが!」


「見せたまえ、ふむ……タカヤマ・マリについて……なんだこれは? 人名か? 画像も……この絵は、ナージア人の少女に見える。髪が黒くて肌の色が……まるであのマサヨシ先生のような」


 オーウェン卿の呟きに、私は一瞬思考が停止する。

 

 先生や、ローズデリンジャ―ギャング団のみんなや、サキエルしか知りえないはずの情報と、転生前の名前と姿だった。


 おそるおそる水晶玉の画像を覗く。


「タカヤマ・マリ……享年16歳、地球世界日本国東京都生まれ。経済産業省、商務情報政策局、業務管理官室長の高山守の長女として生まれ、何不自由なく暮らすも怠惰で陰キャの引きこもり女子。娘の引きこもり状況を苦にした父により、母の真由美と共に殺害される……」


 や、やめてよ、なんで前世の私の情報が載ってるの? 今の顔じゃなく、前世の顔も。


 化粧気も無く、別にかわいくもなくて、お洒落でもない私の制服姿の絵がアップされて、次々とよくわからない悪口が書き込まれて……。


 ここまで私の詳しい話を知ってるのは、先生と閻魔大王に、サキエルことブリュンヒルデくらいのはずなのにどうして。


「この少女が転生し、モンスターと魔王を呼び出して、顔と名前を変えて英雄気取りの異世界デビューなパリピ女が、マリー・ロンディウム・ジーク・ローズ・ヴィクトリーの正体。あなたには薔薇の花より、机に置かれた菊の花がお似合いじゃないかしら? って、え、ちょ、どうしてこんな……いやああああああああああああああああ」


 前世のいじめを思い出して、頭を抱えてしまい動悸がして息苦しく……。


 過呼吸みたいになって、頭がクラクラして。


 誰が、どうして、なぜここまで、前世の私の事を知ってる?


 やめて、やめてよ、みんなに今のマリーじゃなく、不特定多数の人達がただの高山真理の姿を馬鹿にしたり、面白おかしく私を馬鹿にし始めて。


 するとネットのテンプレ文みたいに、次々と私の話が書き加えられていく。


――タカヤマ・マリは英雄じゃない。処刑の死の恐怖で自分勝手にモンスターや魔王を呼び出し、救世主気取りの陰キャ女のマリー。怯えて学校や社会から逃げて惨めに父親から殺されたただの、いじめられっ子。恵まれた環境で生まれたのに、頭が悪くて勉強できない、ずる休みの馬鹿女。


「いやああああああ、やめてやめてやめて」


「王女殿下!」


「クソッ、なんなのだこれは。姫殿下の姿が、先程のタカヤマ・マリの顔になって、見たこともないような、まるで我が国の海兵のような画像に!?」


「やめて、私そんなもの見たくない! なんなのこれ、どうして!? ハア、ハア、息が、呼吸が苦しく……」


 私は立ち眩みがして、その場に膝から崩れて呼吸困難になった。


「殿下ああああああ!」

「早く医務室へ!」


 私は意識が遠のいて、目の前が真っ暗になり、城の医務室で目が覚めた私は、周囲を見渡すと窓から日が差し込んでいた。


 私の水晶玉には、みんなからの着信があったけど、水晶玉を手に取った瞬間、転生前の顔の制服姿が画像広告みたいに出てきて、水晶玉を発作的に投げた。


「どうして、誰がこんな事……私、うっ、ううぅ……」


 涙が溢れ出した私は、医務室の枕に顔を埋めて、吐き気と動悸がして動けない。


 思い出したくなかったけど、前世の辛い記憶や殺された時の記憶が蘇って、体が全然動かせなくなった。


 その日の夜の事に恐怖した私は、ヴィクトリーの王女である責任を放棄して、ただ泣いている事しかできなくなる。


 みんなは、ジローもデリンジャーも、龍さんも、前世の私じゃなく、今のマリーに好意を持ってるのに、昔の可愛くない私を見たら……。


 どれくらい時間が経ったんだろうか……。


 騎士団が挨拶してきて、机に食事を置いた音がしたけど、彼らの方を一切見る事も出来ず、体も動かせずに医務室のベッドの枕に顔を埋めたまま、身動き出来ずにいた。


 私がいる医務室の前で、オーウェン卿とレスター卿の話し声が聞こえて来る。


「レスター卿、この3日間、マリー姫殿下はろくに食事も取らず、例の画像と情報が、タカヤマ・マリの情報に塗り変わり、面白おかしく茶化す不逞の輩の配信や、書き込みも多数に……」


「……おそらく、あれは真実であろう。世界情勢も深刻化していき、ヒスパニアにヴィクトリー海軍が駐留。バブイールも、ロレーヌに侵攻されると同時に、ナージア覇権国の強大なチーノが進軍中だという。フランソワは、暴動は鎮静化しつつあるが、シュビーツの傭兵団が攻め入ったという連絡も来た。そして、マリー殿下に討伐されたジーク帝が、生きている」


 状況は、世界大戦になりつつあった。


 私達が命懸けで止めた筈の戦争なのに。


 やっつけた筈のジークも復活してる状況だと言うし、訳がわからないわからない状況になる。


「だがな、レスター卿! 前世が何者だろうが、私達が仕える主君はあのお方だ! デリンジャー大統領閣下もロマーノ殿下も、アヴドゥル殿下も、我々と王女殿下に励ましの声を届けてくださってる! 我らヴィクトリーの騎士がお守りするのだ! 我らが世界の英雄たる姫を、今度こそ魔女から!」


「然り! オーウェン卿! 我々が、命に代えてでも守るのだ! 主君に忠を尽くして国を守護するのが我ら騎士! 偽りの英雄が誕生する前から、我らの先祖は国と主君と民を守るために、騎士となった!」


――みんな……私、立ち上がらなきゃ。リーダーとして、彼らのために私は……。


 私は、重たい体を起こしてみんなの前に姿を現さなきゃって思って、涙に濡れた顔を洗おうとしたら、空間にノイズが入った音が……。


 音の方向に振り返ると、いやな顔して笑うロキと、ドレス姿をした無言のエリザベスが私を見つめていた。


「タカヤマ・マリちゃんだっけ? 酷い顔してるねえ写メとろっと、ねえ? エリザベスちゃん」


「確かに酷い顔しているわね、マリー。いや、日本からの転生者タカヤマ・マリ。あなたが本当は何者か、思い出したかしら?」


 エリザベスにも、私の前世を知られた!?


 よりにもよって、一番知られたくない相手に。


「くっくっく、僕らを見て何が何だかわからないって顔してる。いいねグッド、その顔いい」 


 ロキが指パッチンすると、部屋のドアノブが無くなって完全な密室状態になってしまい、私の魔法の杖もなければ、武装もしておらず、ロキとエリザベス二人がかりの状況。


 もしかして、エリザベスとロキはアレクセイやオーディンが作り出した状況を利用して、みんなから離れ離れになった私の状況を狙って、やってきた?


 私は奴らのステータスを読み取る。


 ロキ レベル リ鐚鐚 クラス 4類指定 

 HP ‡å­�クåã‘ MP ��スゑス

 総攻撃力 £㈱①Ⅱ 総防御力 遐皮ゥ自蒔


 エリザベス レベル34 クラス 魔女

 HP 2943 MP $¢£㈱①Ⅱ

総攻撃力 譁�ュ怜喧縺 総防御力 291


 エリザベスは、レベルとHPはたいしたことないけど、ステータスがいかれてる。


 スキルで読んだ表示が文字化けしてて、まるで本気になった先生のステータスみたいだ。


 どうしよう、勝てない、先生やみんながいないとロキとエリザベスには絶対勝てない……。


 いや、こういう時、先生はどうする? 突破口を……。


「負けを認めなさい、マリー。そうすれば、あなたの命はとらない。この島を、あなたの領地として認めてあげてもいいから、もう二度と戦争には関わらないでちょうだい」


 負け、私の?


 いやだ、先生からせっかく色々教えてもらって、ここまで来たのに。


 それに私の負けは、私についてきてくれた騎士達や、何よりローズ・デリンジャーギャング団の敗北になるし、先生の教えがこの女に負けたって事になる。


「私は、世界を救う召喚術師! この世界は、みんなで救うって決めた! あなたの思い通りに何かならないっ!」


 私は立ち上がり、胸のペンダントに力をと念ずると、ドレスが一瞬で焼失して胸に黄金に光輝く胸当て、肩甲、手甲、腰当、膝当、足甲が次々と装着されていき、背中に黄金に光り輝く羽根がつく。


 頭に光り輝くカチューシャが装着されると、耳を覆い、アゴまで伸びて急所をガードするヘルメットのようになり、力が湧く。


 首には、ピンクゴールドを細工したような、中心にルビーが入った薔薇の形のペンダントトップが再び具現化した。


「そう、それが貴方の力なのねマリー、いや真里ちゃん?」


「!?」


 なんだコイツ、なれなれしく私をちゃん付けして。


 するとドレス姿だったエリザベスから漆黒のオーラが噴き出し、黒のとんがり帽子、セットされた彼女のプラチナブロンドがサラサラのロングヘア―になり、眼鏡とドレスが焼失して漆黒のローブ姿の、文字通り魔女に変身した。


「手を貸そうか? エリザベスちゃん。いや、前の名前は絵里だったっけ?」


「いえ、あなたの力が無くとも、今のこの私の力で彼女を」


 え? ロキは今何を言ったの、エリ? 


 ロキはニヤリと笑って姿を消すけど、え? 嘘? 

 

 エリザベスも確か、日本からの転生者だった。


 まさか……彼女の正体は!?


「あ、あなたは……まさか竹田絵里……」


 もしかして、水晶玉通信の様相が変わってしまったのも、英雄という記録を塗り替えて世界中に私の前世の事をばらして、ネットの炎上みたいにしたのも、まさか彼女が……。


 なぜ、どうして、彼女がこの世界に転生した!?


「違うわ真里ちゃん。私の本当の名前は、竹田なんて名前じゃなかった」


「え?」 


「日本で何不自由なく育った、日本人のあなたなんかには、わからないと思う。私の本当の名前も、日本社会の愚かしさも、私の先祖が受けた苦しみも」


 私はどっかの和風っぽい国で、その時の記憶を思い出していた。


 あの時、何を、彼女は言っていたっけ?


 自分が、本当は日本人じゃなかったって事だったっけか?


 正直怖かった。

 

 私の弱みを握っている相手との戦いが。


 けど隙を、彼女の弱みを見つけて、戦いに勝利するため、私は彼女の正体と本心を掴もうと、あの時は考えていたんだ。

次回は主人公と因縁のある彼女の本質に迫ります

そして、主人公がなぜ打ちのめされてしまったのかも


アウトローの話で避ける事はできない問題に迫ります。


今まで読んでくれて来た方々なら分かると思いますが、筆者である自分は、人様の人種や出身や立場等の生まれや、特定の宗教や人種をコケにする事は絶対したくないと言う事を、申し上げます。

よろしくお願いします<(_ _)>

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