第104話 自業自得 前編
イワネツは自分が父と慕った、織部憲秀の亡骸の前で涙を流していた。
前世の父親は、自分が収容所の檻の中にいる間に酒に酔って屋外で眠りこけたまま凍死して、22歳の時にすでに故人であり、母親はモスクワ郊外の診療所でソ連崩壊を見る事なく、心が壊れたまま一生を終えている。
いずれもイワネツが感知してない所で、両親が死んでいたので、彼にとって親が死んだ事実を認知したのは初めての事。
親の葬儀の段取りや死後の相続を取り仕切り、親の死に目に会うのは初めての経験で、正直どうしていいのか、彼の前の人生でも経験したことがない事に彼は涙を流す。
そして自分の周りで、このジッポンの神である如流頭に祈りを捧げる、神社勢力の神官達の読経もイワネツにとって耳障りだった。
「鬱陶しいぞ役立たず共が! 去れ!」
涙声でイワネツは神官達に怒鳴り散らし、怪訝な顔をする神官に対して、あげられた線香や抹香の灰を掴むと、立ち退かない神官達にぶち撒けるように投げつけた。
「去れって言ってんだろ! 殺すぞ!」
神官達を追い払ったイワネツは、大広間で父憲秀の亡骸に縋り付くと、大声を上げて泣き喚いた。
その姿を、その場で気配を消して力を失った筈のヘルが見つめる。
「クズ人間のくせに、親が死んだくらいで大袈裟だわさ。実の親でもないのに、クズ犯罪者のくせにわけがわからないのだわ」
イワネツは、いつの間にか姿を現したヘルの物言いに瞬間的に激怒し、神も恐れを抱くような顔付きに豹変して、彼女を睨みつける。
「お前……」
「だって本当の事じゃないかしら!? 今まで多くの人間を殺してきた凶悪犯罪者。そのせいで、親や愛する者を失った魂を無数に生み出したのがお前だわさ。そんな感情があるのに、凶悪犯罪ばかり起こしてきて、わけがわからないのだわ、このチビ人間!」
ヘルは、激怒するイワネツに巻物を見せる。
生前の憲秀はヘルが神である事を知り、息子にと遺した遺書だった。
「お前に渡すように、その人間から言われたのだわ。この男の魂は、わらわの祈りのもと冥界で再審手続きをされる筈だわさ」
イワネツは、憤怒の表情でヘルから遺書を引ったくると、内容を読む。
『最愛の息子へ。ワシは胃を患い、まもなく寿命を迎えてあの世に旅立つだろう。お前と初めて逢ったのはいつだろうか? 今田との戦のあと我が織部の勝鬨城で、親もおらず普通の赤子よりも大きな産声を上げていたお前だったか? いや、お前とワシはもっと前に出会っておる。ワシの記憶が正しければ、お前は成長するにしたがって、ワシの白昼夢に出てくる雪の降り積もるどこかの地の牢獄で出会った愛する息子だという事を、今のワシは確信する。我が子よ、最愛の我が子、ワシとお前はこの世に生まれる前からすでに出会っていたのだ』
この世界の父の遺書を読んだイワネツは絶句し、涙が溢れだして遺書を抱きしめる。
「どうしたのかしら? 手紙の内容でお前は泣いてるのかしら? クズ人間のくせに……」
「今の俺に話しかけるな馬鹿野郎! 頼むから……俺を独りにしてくれぇ」
ヘルは自分の裁判の際、冥界の裁判システム「法照らす」に則って、どうせ大罪を犯した極悪人だと思い込み、ロクな精査もせずに流れ作業でイワネツを裁いた。
本来のイワネツの刑期は、多く見積もっても1万数千年前後で、システムが導き出した刑期10万648年などという、社会で身勝手な大虐殺を行った者達の刑期が加算されること自体がおかしな話だったのだが、この時イワネツの魂の源流の正体が発覚しなかったのは幸いであったと言える。
なぜならば、発覚した時点で魂の消滅をさせねばならないほどの指定を受けていたのが、イワネツの魂の源流であったためだ。
その裁判の最中も、ヘルに不遜な態度で悪態をついていた男が、まるで弱々しく泣きべそをかく子供の様に懇願した姿を見て、彼女は少し動揺しながら大広間を後にする。
『前世のワシは社会から隔離され、暴力と恐喝、強盗と闇市場の商売でしか生きていけない男だったと記憶する。多くの人民が死んだ戦争を、大祖国戦争などと言って正当化していた国家に、腹が立って仕方がなかった。ワシは自分が生れた国に敵対していた時、少年だった前の世界のお前に出会った。その最低な国で、人間として生きる世の中を取り戻したいと言ったお前に、ワシの方が惹かれたのだ。本当のお前は……暴力と強奪がものを言う裏の世界で生きることなく、表の世界で輝くべきだったのだ。人々を導き、世の不条理を正す生き方を目指すのがお前の本来の生き方だったのに……盗賊の道しかお前に示してやれなかった。ワシは、前世でずっと後悔しておったのだ……前の世界の牢獄で死んだときも』
遺書を再び見ながら、イワネツは涙を流して嗚咽する。
この世界の父と慕った憲秀こそが、転生前のイワネツを盗賊の道に導いた、かつてモスクワの闇市を取り仕切る盗賊にして、最期は孤独に獄中で死んだゲオルギー・ガリンコーフの転生体。
彼は刑がすでに確定して地獄で服役する最中、冥界の女神ヘルがイワネツをニュートピアに転生する手続きを取った際、前世の未練で魂が吸い寄せられるようにニュートピアのジッポンの豪族にして、織部分家筋の長男の魂に融合し、45年前に生を受けたのだ。
『ワシは、この世でも多くの人々を殺めてきた。おそらくは地獄行だろうし、それは仕方のない事。自業自得の人生であるが、ワシはお前に会って救われたのだ。いや、ワシだけでなくこの織部の国の民たちの多くも、お前に救われた。しかしお前は、戦場で多くの者を殺し、盗賊としての前の人生を引きずっているように見え、ワシは胃の痛みではなく心が痛かった。そういう人間にしてしまったのが、他ならぬワシの業であったのだから。息子よ、お前はどうか本当の自分に気が付いてほしい。本当のお前は世の不条理を激しく憎み、人々を救済するために生れてきた優しい子の筈。どうかワシの最後の頼みだと思って、これからも人々を救い、己を戒め、戦乱を繰り返す悲しいジッポンの希望の存在となってほしい。親愛なるイワネツへ愛を込めて』
イワネツは全てを読み終えると、憲秀の亡骸に縋りつき、慟哭した。
「親方……俺は……そんな高尚な人間じゃねえよ。盗賊以外の生き方なんて、わかんねえんだ。お父さん……俺はどうすれば……」
イワネツが独り孤独にむせび泣く中、巳濃では乱世の梟雄にして国盗りの二つ名を持つ佐藤道山が、長男辰興より幽閉され、牢獄に囚われている。
天帝家より、賊国織部を滅ぼすべしと勅命が下り、織部憲秀が急死し、織部憲長ことイワネツも病に臥せった状態と聞いた長男の辰興は、周辺国と結託して家臣団を率いて織部に攻め入ろうとしたのを、道山が反対したためであった。
「うつけ共め……北朝も将軍家もうつけすぎるわい。あの天才が、ワシが認めた憲長めが病程度で死ぬわけなかろうが。逆に攻め入っても、あの常軌を逸した織部の武力で無駄な血を多く流すだけじゃ。あの聖徳神社の爆破で、朝廷に巣食う神社勢力めが謀を企てたか? 狂信共め……この世は阿呆ばかりじゃ」
ジッポンを陰から支配する、ニョルズを信仰する神社勢力の企てではないかと、合理的な思考を持つ道山は導き出した。
神社勢力の教祖は賢如と呼ばれる神官であり、表の支配者が天帝家や将軍家ならば、ジッポンの影の支配者が神社勢力と呼ばれる宗教組織である。
「だいたい神なんぞに祈っても、このジッポンは救われたためしがない。ワシの先祖の忍者一族も、人々から忌み嫌われ差別され、戦乱の道具にされてきたのに。神がいるならば、ワシの先祖たちにも救いの手が差し伸べられたはずじゃて。非合理的じゃ、神への祈りなど」
すると門番たちが音も無く倒され、牢屋を解放した黒装束の忍びが現れた。
「父上、今のうちです。外に馬を用意してますゆえ、織部まで一旦身を引きましょう」
「お主は……胡蝶か? かたじけないの。同盟を結んだ婿殿の国まで、一時身を寄せるとするかのう」
黒装束に包んだ胡蝶が父の道山を救出し、国境まで逃げようとするが、それを読んでいたかのように辰興の軍に包囲された。
「ふっ、流石は父上。天才忍者、毒蝮の勘九郎と言われただけあって、おとなしく縄につく気はござらぬか? それに胡蝶! うつけものが、憲長などに熱を上げおって阿呆めが」
「うつけはうぬじゃ! 辰興よ、いくら周辺国家が同時に攻め入ったとしても、あの織部には勝てぬ! ならば巳濃は織部と共に盟を組み、このジッポンの戦を……」
「黙れ!」
辰興は、魔力を込めた手裏剣を丸腰の道山の喉に投げつけ、道山は膝を付く。
「ずっと気に入らなかったのだ! この辰興は父上の蛇のような目つきも、次期当主たる俺を下に見る態度も、何もかもが気に入らなかった! 蝮の子は蝮、俺はアンタからこの巳濃を奪い取る!」
「う……うつけものめ……」
道山は喉を押さえて、その場で息絶える。
戦国の世の下剋上が起きた瞬間であった。
「兄上! いかに兄上の力が優れようが、あのイワネツ様には勝てませぬ! もはや兄上は父殺しの大逆人、私が父の仇を」
魔法を繰り出そうと印を結ぶ胡蝶に対して、鼻で笑った辰興は右手をサッと上げる。
すると、鉄砲隊から魔力を込めた徹甲弾が無数に放たれ、彼女の体を貫いた。
「ふん、お前は織部に嫁いだ身。そして佐藤家当主たる俺を殺そうとした大逆人よ。お前などもはや妹ではないわ! こやつらの首を取れ」
胡蝶は心の中でイワネツの名を叫ぶも、もはや声を上げられず瞼を静かに閉じた。
一方、織部北部国境の砦が設置される大鷹村では、甲猪の高田家と越弧の植杉、そして幕府将軍家東條と連合した今田軍に攻め入られ、戦の世の習わしに従い阿鼻叫喚の地獄絵図となる。
古来よりどこの世界でも、戦争を継続するには手っ取り早く戦地の略奪、敵地の領民から物資を強奪せねば戦争を継続することはできず、兵站確保の為ならば罪なき農民や村民を何人殺してでも食糧を奪わなければならぬのが、世の習わし。
逃げ遅れた織部の領民は、男であるならば首を刎ねられて‶生き胆″にされる。
すなわち肝臓を抜き取られて「人胆丸」と言う粉末状の薬として市場に出回り、女は兵に見つかれば入れ替わり立ち替わり犯され、奴隷として他国に売られるか、その場で殺される定め。
幼子や物心ついた子供は、生かしておくと復讐を企てる恐れがあるため、見つけ次第、兵から殺される運命にある。
こうした乱暴狼藉であっても、その国の兵たちは残忍で恐れを知らぬという風評が立てば、その国への恐怖が敵国に伝播し、戦意を挫き敵の士気を低下させ、弱い国は滅び去る。
救いを求める民が多ければ多いほど、戦で死ぬ民が多ければ多いほど、神社勢力は寄進により富を蓄え、ニョルズへの信仰が迷信として各地に広まり、信仰が深まるのだ。
また、この国の上流階級は、自身の保身と地位しか頭になく、互いにいがみ合いながら戦争を繰り返し、女は政略の道具として嫁ぐ運命にあり、人間の命が軽すぎる社会である。
発展途上の世界、中世ではどの世界でも見られることではあるが、こういった非道に異を唱えたり、改革を標榜する人間が歴史から出るからこそ、どの世界の人間社会も少しずつ進歩して発展する。
しかし人々が信じる神が、人間や世界を呪う祟神と化したジッポンでは、人々を導き、非道を改めるための社会変革を起こす存在は、この国の長い歴史の中で今まで出たことが一度も無かった。
元は大陸の戦火を嫌い、様々な種族が東を目指して辿り着いた末に建国されたのがこの国の始まりだが、非道の歴史を長い間繰り返し、人間が人間として生きていけない、救いのない戦を繰り返してきたのが、ニュートピア極東のジッポン。
この世界の覇権国家だったチーノ大皇国をして「悪魔の島」と呼ばれた国の実情。
そして風前の灯火と化した織部から逃げようとする男が二人。
ロマーノ連合王国からやってきた、海軍中将にしてジッポン駐在大使の任についた、アントニオ・デ・ラツィーオ伯爵改め、侯爵に出世した男と、織部軍の新参にして日本から生まれ変わった、猿というニックネームを与えられたヒデヨシである。
「もうこの国はダメだ。イワネツ様も死にそうだっていうし、体かわすっきゃねえよ」
ヒデヨシは自身の生まれ故郷、相原から逃げ出した時のように、着の身着のまま自分が作った特攻服をわきに抱えて、織部から逃げ出そうとする。
「どこへ行こうというんだい? 猿」
そのヒデヨシに、魔力銃・多根が島を右手に持つ犬こと、転生前ロシアンマフィア末端幹部だった、ニコライ・ソバキンこと、犬千代が立ちふさがった。
欧米の作り出すイメージ、ロシア人は西欧より野蛮でルーズで、冷酷なイメージがあると言われるが、一旦コミュニティに入ってきた客人や仲間を温かく迎え、面倒見をするのが美徳とされる、世話好きで優しい側面をロシア人は持っている。
ニコライこと犬千代は、仲間になった猿こと新入りのヒデヨシの世話を焼いたのも、ロシア人特有の優しさから来ていた。
しかし、自分と自分の属する共同体の面子を潰して、泥を塗ったとなると話は別である。
「君、織部軍に入って、オレから金を借りてるくせに、何してんの?」
普段表情は乏しいが、ヒデヨシと話す時はジョークなどを交えて、年相応の愛嬌ある笑みを浮かべる親友から、シベリアの永久凍土のような冷酷な目つきで銃を突きつけられ、その場でヒデヨシはへたり込んでしまう。
「あ、金ならなんとか返すって……」
「いらないよもう。ロシアでも日本でもそうかもしれないけどさ、普通常識的にありえないよね? オレが金貸して世話したのに敵前逃亡しようとかさ。オレやイワネツ様や組織の面子を潰すとかあり得ないでしょ? 処分の対象になるよ? 猿」
もはや金などどうでもいい、自分とボスの面子を潰したならば死をもって償えという、無言の圧力と氷のような殺意をヒデヨシは、犬千代から感じ取った。
ロシアンマフィアは地球世界一冷酷であると言われるが、その理由の一つは、組織の面子を潰した裏切り者であると判断が下されたら、例え地球の裏側にいようが刑務所の中にいようが、居場所を探し出されて絶対に殺されてしまうことから来ている。
日本のヤクザの組織的な処分の場合‶絶縁処分″を除き、破門や所払いといった処分は、その土地で二度とヤクザ稼業をしなければ、命は保証してやるし、場合によってはヤクザに戻してやるのも考えてやらんではないというという意味合いがあるが、ロシアンマフィアにはそれが一切ない。
中国マフィアであってもイタリアマフィアであっても、欧米のギャングであっても、中南米のカルテルであっても、その組織の力が及ぶ場所でなければ、処分者は生きていくことが可能である場合が多いが、ロシアンマフィアは違う。
処分者イコール絶対の死であり、文字通り世界のどこにいても、たとえ発展途上国の便所に隠れていても、処分者は必ず見つけ出され、見せしめのために息の根を止められるのが、世界一冷酷なロシアンマフィアの処分の仕方なのだ。
ヒデヨシは、このままでは土下座しても殺されると思って立ち上がると、ヤクザの修業時代に身に着けた、腰を直角に折る日本古来からの誠意の示し方、90度のお辞儀をした。
「ごめん! 俺ちょっとビビってたけど、犬ちゃんの姿みて元気でた! 今からイワネツ様の寝てる邸宅行って、目覚めてくれるために、励ましの声を一緒に贈ろうよ!」
ヒデヨシは嘘を言っていない。
思いつきであるが、行動を切り替えてさっきの行動を素直に誠意を込めて犬千代に詫びた。
無表情だった犬千代は、ヒデヨシに向けていた多根が島の銃口を上に向けて構え、ニコリと笑う。
「そうか、それならいいんだ。オレはせっかく出来た友達を、処分したくないからさ。じゃ、行こうか」
前世にヘタレと呼ばれたヤクザのヒデヨシは、前世で逃げ出したヤクザ稼業から、絶対に逃げる事を許されない、ロシアンマフィアのブラトワに所属してしまった事を、身をもって知ったのだった。
一方、伊藤湾織部港に設立されたロマーノ大使館で、大使のアントニオが風呂敷のようにした布団に、自身が書き記したジッポンの内情報告書‶東方見聞録″をまとめて、脱出しようとしていた。
「国主も死に、やっとこの野蛮な国から文明国のロマーノに帰れるぞ! 先週連絡したヴィトー様も通信で残念がっていたが、イワネツと言う男が死に、この織部も攻め滅ぼされるとなれば、一刻も早く逃れなければ」
アントニオは、南朝に拿捕されて部下達全員の首が斬り落とされ、自身も犯されそうになった事で、このジッポンを内心毛嫌いしていたため、ようやく母国に帰れると急ぎ大使館を後にする。
そして魔道船ガルバルディに乗船しようとした時、三川湾から攻撃魔法が一斉に飛んできて、魔道船もろとも織部湾は火の海にされてしまった。
「うああああああああああ、もう逃げる事も出来ねえ! ふざけんなよ、こんな野蛮な国で一生独身のまま死にたくねえ、畜生、畜生が! 本国にも通信繋がらねえし、どうなってんだよ!」
東方見聞録を背負ったまま、勝鬨城のある城下町までアントニオは風魔法を使って、戦火を逃れるために文字通り風の如く避難していく。
この織部の国が、北朝国家に包囲されて攻められている光景を、戦場の喧騒につられてきたように、鎧姿の女たちが宙に浮かびながら見つめていた。
「こちらでも始まったわね、この世界の迷える魂をヴァルハラに送るための世界大戦が」
「ゲイラ姉様……私達のターゲット……女神ヘルと勇者」
「はい、ゴンドール姉様。ブリュンヒルデ姉様からの指令は、冥界より手配された女神ヘルの身柄の引き渡しと、我々の障害になりかねない冥界の勇者暗殺です。父オーディンより指令があったようですわ」
オーディン親衛隊ワルキューレ達が、ジッポンの内戦に介入しようとしていた。
「まずは、慎重に事を進めるべきですわね、お姉さま達。姉様の情報によると、ロキの軍も動き始め、フリック姉様が敵の手に落ちたようですし。私達の分隊に失敗は許されません」
「ああ、エイルの言う通りだ。まずはこの戦場に現れるであろう勇者の実力を偵察すべきだろう」
彼が勇者になるための、試練はまだ続きます