魔力鉱脈のありか
それからの日々は俺にとってかなりハードなものとなった。
まずエリザは役割分担をした。具体的にはセシルがメイド長に専念することになり、クラウスが面倒くさい魔法法律のことを専門知識で解説するようになって、それ以外の一般教養や最新の魔法技術はエリザが担当した。
弓は相変わらずマルコから教わるわけだが、剣はどうする、という話になった。
「剣を重視してこなかったのですか」
「平和だったからな。せいぜい道楽で狩りを楽しむくらいだ。弓だけで事足りたのだよ」
「いけませんっ! 貴族に剣は必須です、品位に関わることです!」
「う、うむ、分かった」
「近接の剣さばきは私が教えますが、聖剣は特殊技術ですので、専属のコーチを別で雇います、いいですね?」
「聖剣? そんな高等魔法道具、ボナパルト家にはないぞ」
「こちらで用意いたします。そんな心配は無用です」
「ああ、すまんすまん、で、専属のコーチとはどのような方だろう」
「ふふ、会ってからのお楽しみです」
エリザは同時並行で街の復興に着手していた。執事達に持ってこさせた街の周辺地形の地図を見て、彼女は首をかしげた。
「――おかしいですわね」
「……何がだ」
「魔力鉱脈が近くを通っているのに、なぜか魔力結晶の採掘量が極端に少ないのです」
「魔力鉱脈だって! おい、それがあれば我が領土は」
「もちろん、見つけた場合には大量の魔力資源が得られて、一瞬で近代化できますわ。見つけられたら、の話ですけれど」
「むぅ、どうすれば」
「スーチェス、アジル、魔力感知に優れた執事を十人ほど揃えておいてください」
「はっ!」
そばで待機していた執事二人に指示を出し、数日後、集めた執事達に魔力鉱脈探査用のサーチマテリアルという鉱物の一種を手渡した。これもエリザが実家から仕入れたものだ。
「さぁ、地図でマークしたとおりの位置まで行ってらっしゃい」
「イェス、マダム」
すっかりボナパルト家の正妻として周知された彼女はそのたぐいまれなる知性と教養で、すでに魔力鉱脈の位置に当たりをつけていた。
「――おそらく地形からいって、鉱脈の流れはドスターク山からエスピオ山の方へ移ったのではないかしら。地震の記録も、そのあとの山の形状変化からいっても、こちら側に鉱脈が軌道を変えたと考えるのが妥当。ドスターク山をいくら掘り返しても、もう何も出てこないのはおそらくそういうカラクリね」
「すごいなエリザ。そんなことまで分かるのか」
「当然です、腐っても侯爵家カエサル一族の一人娘ですから」
エリザの読みはズバリ的中した。執事達が持ち帰ったサーチマテリアルが示したログデータを映像マッピングしてみると、地下深くに極太の流動性エネルギーが存在していることが明らかになった。鉱物の間を流れる魔力の動きが検知されていたのだ。