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爆発少年

 それからというものの、俺たち三人は訓練後には必ずオリビアとの稽古に励むようになった。基本的にはニンフのコントロール練習と、実際の剣技指導だ。チャーチルとリゼは順調に【ニンフサーキット】を使いこなすようになり、苦手の剣技でオリビアにしごかれる毎日を送った。


「――お、オリビアっ、はやいはやい、早すぎるぅううう!」

「ほらほらほらほらっ、どうしたチャーチルっ! こんなんじゃあ敵の剣撃を防ぎきるなんてとうてい無理だぞ!」


 それを遠目に見て、リゼが言う。


「あれは女性の剣さばきのスピードをはるかに超えているような気がします」

「……そうだな、あれは獣人だし、脚力も腕力も桁違いだ。でも実際の戦場だと、ああいうのがゴロゴロいるんだろうな」


 俺は何度か霊力の抑えが効かなくなって、暴発し、ギャグ漫画に出てくる爆発ネタで黒焦げになって髪の毛がくるくるのちりちりになっている人みたいな風貌になっていた。もうかれこれ一ヶ月が経とうとしていた。


「剣技はまだ俺の方がうまいけどさ、ニンフと仲良くなっているお前たちがうらやましいよ。どうなってんだ俺の聖剣は」

「セラフィムの異光聖剣は類似データがありませんし、仕方ないのでは」

「まぁ、そうなんだけど、ヒントぐらい欲しい、これじゃ進まないんだ」


 その日は海のステージだった。チャーチルとリゼはすでにニンフの加護を受けられるようになっていて、防具を着けずに軽装で、海の中でも呼吸ができるという素敵仕様で海中に現れた魚人の敵軍を仲良くみんなで迎撃していた。


俺は重たい防具を着けていたせいで訓練開始早々に海の底に沈み、もがきにもがいて防具を脱ぎ捨て、浮上して海の上で呼吸を整える始末だった。まるでお笑い芸人のコントみたいな感じで、なぜステージが毎回ランダムで、あらかじめ海だと教えてくれないのかと恨んだほどだった。光組の連中は俺のことを大いに笑った。


「――よし、次、リゼだ」

「はい、今行きます」

「頑張れよ」

「あなたもね」


 俺はこれ以上失態をさらすわけにはいかない。しかしオリビアにもらった卒業生のデータが収められた本には茜色の聖剣に関する記述がない。かの伝説、初代団長ラインハルトさんとやらは士官学校ができるはるか以前の人物だし、なにより文献がほとんど残っていないとどこぞの裏切り者が言っていたのを思い出して途方に暮れた。


「はぁ、誰に相談したら良いんだか……」


 くたくたになったチャーチルが戻ってきた。


「ふひぃーー、疲れたぁ」

「ほら、お前の好きなアップルジュースだ、飲め」

「うん、ありがと」


 チャーチルがぽっちゃりだったことを覚えていらっしゃるだろうか? 今もぽっちゃりだが、しかし今は少し様子が変わってきた。力士というか何というか、体の輪郭は変わらないが、筋力がついてきたような気がする。最初はオリビアの剣に吹き飛ばされてばかりだったが、今はなんとか足を地面に踏ん張って、ガードだけはできるようになっている。


「はっ! やぁ!」

「む、やるなリゼ、もう少しスピードを上げよう」

「望むところです!」


 リゼは華麗な剣捌きを覚えて、非力でも力をいなす技術で対抗していた。女の生徒は剣筋が美しくなる傾向がある気がする。ところどころパワー不足なのはニンフの加護で防ぐという戦術まで応用していた。


 あーーーっ! 人のことばっかり気にしてんじゃねぇ! こうなりゃやけだ! 


 鈍くさい防具男からの脱却を賭けて魔力回路を藪から棒に組み替えて、ニンフの様子を見る。そして無茶が過ぎて霊力が暴発する。


《チュドーン!》


 霊力量だけは豊富な俺の聖剣は、ガス欠になって爆発しなくなるなんてことはなく、しっかり毎度俺を光の球のなかに包み込んで爆発してくれる。俺はいらいらが限界に来て、誰にも何も言わずに医務室へ向かった。



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