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醜い伯爵令嬢は悪魔な少年に恋をする【10月より更新再開】  作者: 皇 鸞(すめらぎ らん)
本編
25/31

悪戯

リオネル様と共に過ごした素敵な休日。


その休日からもう10日程たち、新入生たちもそろそろ学校になれ始めていた。


「おい、フィアナ。ここの問題、答えが間違えているぞ。」


図書室でリオネル様と勉強をしていた私はリオネル様に魔法学の問題の回答についての指摘を受けていた。


「……リオネル様はすごいですね。魔法もすごくて、頭も良くて……。」


取柄なんてない私とは大違いだ。


「……はぁ。お前を知ろうとし始めてから幾日か経ったが、お前は自己評価が低くて駄目だな。第一、この問題はかなり難しい問題だ。間違えても仕方がない問題なのだ。そのほかの問題は回答がっているんだ。お前だって頭は良い方だろう。」


落ち込む私を慰めようとしてか、私の頭を褒めてくれるリオネル様。


でも、結局はリオネル様には何一つとして叶わないという事を思い知らされるだけで、

素直に褒め言葉を受け入れる事が出来なかった。


「……フィアナ。一つ聞きたいんだが、あの一年とは会っているのか?」


「……え?」


突然の質問に私は静かに驚きの声を上げた。


リオに指輪を返してからもう10日程。


その間、一度も聞かれなかったことを聞かれたからだ。


「……いえ、会ってないです。それにこれからはもう、私から会いに行くことはないと思うので。」


あの夜、いきなり部屋を出て行ったリオのことが気にならないといえば嘘になる。


「またね」といっていたということは向こうは私と会う気があるのかもしれない。


でも、私は選んだのだ。


お父様を、大切な人を救ってくれたリオネル様を。


優しい、リオネル様を。


「……フィアナ。今晩は私の部屋に来い。」


「……え?」


「絶対に来い。」


少し気心が知れたとはいえ、相変わらず命令口調な事が多いリオネル様。


別に命令されなくても行くのにと思いながらも私は静かに頷いた。


そして――――


「……待っているからな。」


静かに頷いた私の頭をリオネル様は優しく叩いたのだった。





「それでは今日の授業はここまでです。」


5限目、魔法学クラスの担任であるファウスト先生による魔法学の特別授業が終わった。


ファウスト先生はちょっと頼りないけれど非常に優秀な先生で、授業が解りやすい。


その為、授業後は他の魔法歴学の授業で理解しきれなかったことについての質問者が殺到する。


今日も今日とて、終了の号令の後、ファウスト先生は生徒たちに囲まれていた。


(私も質問したいことがあったのだけど、忙しそうね……。)


先生を囲む生徒たちに私は混ざれない。


遠巻にされる怪物が近寄れば皆、逃げてしまう。


それは質問をしているほかの方たちに申し訳なくて、質問することをためらってしまうのだ。


なのでおとなしく帰ろうかと席を立ちあがったその時だった。


「ウェイルズさ――――ん!!まってくださぁぁい!!」


私の名前が少し離れた教団の前にいるファウスト先生に大きな声で呼ばれたのだった。


私は名前を呼ばれたことに戸惑い、固まっていると、ファウスト先生が私の傍に駆け寄ってきた。


「お願いします!助けてください!!」


駆け寄ってきたファウスト先生は勢いよく私に頭を下げた。


その行為が周りの生徒たちを騒がせることになるとは知らずに。


「おい、みろよ。化物姫が先生に頭下げさせてるぞ……?」


「やだわ……先生可哀想。」


私は何もしていないのに周りは好き勝手を言う。


……本当に、私が何をしたというのだろうか。


「先生、頭を上げてください。私にできる事なら何でもしますので。」


というか、あげてもらわないと周りの視線が痛い。


一秒でも早く上げてもらいたいとそう思った瞬間、私の手はファウスト先生に強く握られた。


「魔塔にある資料庫に行ってください!行ってくれるだけでいいんです!お願いします!本当にお願いします!!」


(え?い、行くだけ……?)


ひどくせわしなくお願いしてくるファウスト先生。


その圧に私はよくわからないけれど、とりあえず頷いた。


(遅くなる用事じゃないわよね?)


今日はリオネル様に部屋に呼ばれている。


遅くなるようなことは御免だ。


別にリオネル様は前みたいに突然私の首を絞めたりなんて事はもうしないと思うし、

結構寛大に何でも許してくれる。


でも、怒る怒られないの話ではなく、単純に待たせたくないのだ。


そんな事を思いながら魔塔の書庫に入った瞬間だった。


扉が大きな音を立てて勝手に閉まってしまう。


驚いた私は急ぎ扉を開けようとするけれど、扉は開かない。


(一体どうして……――――――)


「ちょっと、誰だか知らないけど、何勝手に入ってきてるわけ?ここ、一般生徒立ち入り禁止――――――って、あんた……。」


扉が突然しまって困惑してる私に話しかけてきた人物。


その声に聞き覚えがあった私は急ぎ振り返った。


そして、そこには見覚えのある人物。


リオがいた。


「……ここ、魔法学クラスしか入れない特別な書庫なんだけど?」


私を見るなり不機嫌そうな声を上げるリオ。


そのリオの反応は当然の事だ。


でも、私だって好きでここに来たわけじゃない。


「ファウスト先生にここに行ってほしいって頼まれたのよ。行ってくれるだけでいいって。」


そう、頼まれてきただけなのだから。


「……なるほど、そういう事。ねぇ、お茶飲む?この書庫、奥に給湯室があるんだよね。多分その魔法、一定時間この書庫に人を閉じ込める魔法だと思うから、まぁ、何で発動したかは知らないけど、しばらく出れないだろうし、喉乾いてたらついでに入れてあげるけど?…………あぁ、最も、毒が入ってないとは言い切れないけどね。」


冷ややかで不気味な笑みを浮かべるリオ。


そのリオの表情に私の背中がひどく寒さを感じる。


でも、リオはきっと毒なんていれたりしない。


……と、思う。


「い、頂くわ……。」


私はリオを信じ、好意に甘えることにした。


でも、リオはそんな私の反応が望むものじゃなかったからか、不機嫌そうに【本当に毒、入れてやろうかな。】と吐き捨て、給湯室に姿を消した。


(ま、まさかね……。)


先日私を殺そうかなとは言っていたけれどあれも本気じゃなかったと信じたい。


とはいえ今、おぞましいことが吐き捨てられた現状から嫌な想像をせずにはいられず、何とも言えない気持ちで近くの椅子に腰を掛けた。


そして、しばらくしてリオは茶器を二つ持って戻ってきた。


「はい、紅茶。悪いけど砂糖無かったからストレートで飲んで。」


「え、えぇ……。」


そっけない感じで話してくるリオ。


そんなリオから茶器を受け取り、私は紅茶を一口口に含んだ。


(あ……この渋さ、好きな渋さだ……。)


紅茶の渋みが丁度いい。


渋すぎず、薄すぎず。


でも、普通よりはちょっと渋い。


このぐらいが私は好きだった。


でも……――――――


「…………。」


「…………。」


どれだけ紅茶がおいしくても、私とリオは無言。


話が弾まない事により、紅茶の美味しさが半減していた。


「……ねぇ、婚約者様とはもう寝た?」


「…………えっ!?」


突然のリオの質問に私は変な声が出る。


いきなりなんて質問をしてくるんだろう、この人は!


「そ、そんなことしてないわ!大体、本来はそういうのはちゃんと結婚してからで――――――」


「ふぅん。」


私の言葉を聞き終える前にリオは興味なさげな声を上げた。


聞いておいてとひどく思う。


……何がしたいのかわからない。


「……ところであんたさ、もう少し人を疑うこと覚えた方がいいと思うよ。」


「……え?」


「その紅茶、本当に何も入ってないと思ったわけ?」


ニヤニヤと楽しそうに笑うリオ。


そのリオを見て私は紅茶に何か入れられたことを悟った。


(嘘っ……一体何が入れられたのっ!?)


別段、体に異常は感じられない。


だとしたら一体――――


そう思った瞬間だった。


私の視界が大きくゆがむ。


なんだか頭もぼぉっとしてきて、瞼が重くなってきた。


「リオ……貴方――――――」


一体何を入れたのか聞こうとした瞬間だった。


私の意識は遠い暗闇の中へと落ちていったのだった。








「……駄目だよ、フィー。悪魔の事なんて信じたらさ。って、そもそも俺が魔族って知らないだろうけど。」


フィアナが突然机に突っ伏し、意識を手放したのを確認するとリオは椅子から腰を上げてフィアナに歩み寄った。


そして、軽々フィアナを抱き上げ、

書庫の窓際にあるソファへとフィアナを寝転がらせた。


そしてリオもフィアナのすぐ近くに座り、フィアナの頭を自分の太ももに乗せた。


いつぞやの様に膝枕をし、眠るフィアナの頭をなでた。


「……少しだけでいいから一緒に居てよ、フィー。」


リオが入れた薬。


それは睡眠薬だった。


それも即効性はあるが、持続力はない睡眠薬だった。


「まさか、本当にやるなんてね、あの人間。フィーをここに連れてきたら授業でてあげるとは言ったけどさ……。」


独り言を言いながらフィアナの頭をなでるリオ。


そのリオの表情はとても切なそうだった。


「……本当、面倒くさい女。」


寝息を立てながらすぐ近くで眠るフィアナ。


そんなフィアナの醜い左側の顔を隠している飾り。


その眼帯に触れたリオはなんとその飾りを外してしまう。


それから30分ほどだろうか。


リオはフィアナの寝顔を眺め続けていた。


そうしていることにも飽きたのか、リオはフィアナの頭をソファの上にゆっくりと降ろして立ち上がり、書庫の扉まで歩み寄り、扉に手をかけた。


「じゃあね、フィー。」


ニヤニヤと楽しそうにフィアナの顔を隠す飾りを手に持ちながら笑顔を浮かべるリオ。


リオは眠るフィアナに挨拶をすると書庫から姿を消したのだった。

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