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醜い伯爵令嬢は悪魔な少年に恋をする【10月より更新再開】  作者: 皇 鸞(すめらぎ らん)
本編
16/31

とある乙女ととある男の物語

「ディオス!ディオス!!」


「……ん?あぁ、ミネア。おはよう。」


寝台に横たわる美しいオッドアイの男性を翼の生えた美しい女性がすごい険相で起こす。


起こされた男性は柔らかな笑みをミネアと呼んだ女性に向けた。


「お、おはようじゃない、この駄目ディオス!!今を何時だと思っている!……全く、本当にお前は私がいないと駄目だな!」


「はは……そうだね。私は駄目な存在だ。」


呆れかえるミネアにディオスは笑いながら言葉を紡ぐ。


そして、寝台から起き上がるとミネアの頭をそっとなでた。


「そういえばフェリアはどうしたんだろう。この時間だとフェリアがもうすでに起こしに来てそうなんだけれどね。」


「私がきた時にはすでにいなかった。まったく、家の鍵もかけずに寝ている主を置いて家を空けるなど、どうなっているんだ、お前の家の執事は!!」


「う~ん、うちは放任主義だからね。」


「そういう問題じゃないだろ!!」


暢気な顔を浮かべているディオスに対し、終始怖い顔を浮かべるミネア。


対照的な性格の二人。


そんな二人は古くからの付き合いでいわゆる幼馴染だった。


「それに、この家には誰も近寄らないよ。出来損ないの片翼の天人の私に用のある者など君くらいだよ、ミネア。」


穏やかな口調で話しながら柔らかくミネアに微笑みながら話すディオス。


そんなディオスにミネアは頬を赤らめた。


「わ、私だって用はない!た、ただ、仮にもお前は私の婚約者だから仕方なく様子を見に来ているのだ!こんな誰も近寄らない不気味な森なんか、私だって来たくはない!!」


まるで照れを隠すように言葉をまくしたてるミネア。


そんなミネアを見てディオスはただただ笑みを浮かべる。


ミネアはそんなディオスを見てさらに顔を赤くした。


「……おや?でも、君と私の婚約はずいぶん前に解消されていなかったかな?」


「か、解消されてなどいない!!い、いや、今はされてはいるが、解消なんてすぐ取り消されるはずだ!私がいなければお前はすぐに死にそうだしな!可哀想だから考え直して欲しいってお父様に進言してやっているんだぞ!」


「はは、ありがとう。だけどミネア……私は君には私ではない誰かと幸せになってもらいたいな。私は君を幸せにはできないよ?そんな力のないただのダメ男だ。」


ミネアの頬に触れ、微笑むディオス。


その笑顔は穏やかで、ディオスはひどく落ち着いている。


そんなディオスを見てミネアは顔を歪ませた。


「ミネア。君は私と違い、とても力もあって、美しい存在だ。この天界で腫物扱いの私と添い遂げる必要なんてないんだよ。私と居ては君も心無い言葉を言われるだろう。……私は君の耳を完全にふさいであげられないし、私を忌む人々の目を君の瞳にも移してしまうだろう。……君はきっとそれらに耐えきれない。だから、君の心が傷つき、悲しむ前に私など捨ててしまっておくれ。私は君に愛されるほどの価値なんてないとてもとても駄目な天人なのだから――――――って、ミネア!?」


ディオスが柔らかな言葉で、だけど真剣に言葉を紡いでいるそばで突然ミネアが涙をこぼし始めた。


「……じゃない……お前は、駄目なんかじゃない……!」


美しいミネアの頬に涙が伝う。


そんなミネアの涙を見たディオスは慌てふためきながら急ぎ袖で拭う。


けれど、涙は止まるどころかどんどん流れ落ちてき、拭っても拭っても涙は零れ落ちてくる。


「……本当に君は泣き虫だ。」


気が強く、口調も力強いミネア。


けれどどれだけ強く見えてもミネアも女の子だ。


可愛い泣き虫な女の子。


ディオスは困った顔を浮かべて静かに泣くミネアを抱きしめた。


ミネアはディオスに抱きしめられるとディオスの胸を叩いた。


「い、痛いよ、痛い……叩かないで、ミネア。」


「うるさい……黙れ、黙れ馬鹿ディオスっ……。私は、私は負けない!!どんな目にあったって気にしないような、そんな強い女になってやる!!お前を護れるような、強い心の女にっ……!」


「……本当に仕方ないな、貴方は……。」


ディオスは困った顔で笑う。


困った顔で、だけど愛おしそうにミネアをなでた。


「……私は醜いです……だから本当に、どうか私への想いは捨ててください、ミネア……。」


「絶対……絶対に捨ててなどやるものか……。それに、私はお前を、お前の赤い左目を醜いとは思わない。……忌むべき魔族のと同じ色なんかじゃない。お前の瞳は……そう、私の大好きな葡萄酒の色なんだ……。」


困った笑顔を浮かべるディオスをミネアは涙を浮かべながら見つめた。


そして、ミネアはディオスの顔を両手で覆い、自身の方へと抱きよせる。


そして、静かにディオスの唇を奪ったのだった。

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