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4 やばい、バレた

サブタイトルを修正しようとしましたがよく分からなくなりました……。

おやつのプリンを美味しくいただいた俺は、部屋に戻ってベッドでくつろいでいた。


冒険者についての本をぺらぺらめくりつつ、考えるのは今後のことだ。


現状は、シフェリアという身体に、男子高校生のはずの水無 葉月の意識が乗っている、という状態だ。


はず、というのは……あまり考えないようにしていたのだが、記憶にどうにも抜けが多いのだ。


例えば、高校生だったことは覚えているが高校の名前を思い出せなかったり、親が居たはずなのに親のことが思い出せなかったりする。


つまり、水無 葉月という存在はかなり希薄なのだ。


シフェリアとしてのこれまでの記憶が無い以上、俺は希薄な水無 葉月を内に抱えて、シフェリアとして生きていくしかない。


魔法があったり冒険者組合があったり、この世界は本当にファンタジーで、楽しいはずなのに。


これは俗に言う『異世界転生』というやつで、きっと無双だとか、多分そういうことができるのに。


現実を直視すると、どうしようもなく不安で寂しかった。


何より、気付かない間に死んでしまったらしい事実が辛かった。


漠然としかもう分からないが、俺は本を読んで、適当に部活をこなして、友人と駄弁って……そういう生活に、満足していたのだ。


名前も顔も思い出せないのに、もう会えないという事実が胸を突き刺してくる。


「…………魔法の本でも、取りに行くか」


内容が頭に入ってこない本を置いて、赤くなった目元を擦りつつ、俺は気分を変えるために書斎に向かった。


───


物知りなメイド、マーズさんに他の魔法の本を取ってくれと頼みに行ったら、目が赤いことを心配された。


目にゴミが入っただけだと言い訳をして、書斎にて魔法についての本をどっさりもらう。


「お嬢様は本を読むのがお早いので、このくらいがよろしいでしょう」


とにこにこしながら言われた。どうも脳筋娘が読書家娘になって嬉しいようだ。


ふと思いつきで、マーズさんに訊ねてみる。


「あの、マーズさんって魔法得意なんですか?」

「……人並みですね。勉強はしましたが、光と闇の適性率が中途半端でしたので」


マーズさんがしょんぼりとした顔をしてしまったので、慌てて謝る。


「あ、す、すみません」

「ああいや、魔法については特に気にしていませんよ」

「……え?じゃあなんで……」

「その言葉遣いです」


俺が首を傾げていると、マーズさんが説明してくれた。


「丁寧になったのは喜ばしいのですが、やっぱり距離を感じてしまいましてね……」

「ああ……」

「できるならば、マーズと呼び捨てにして、口調を崩していただけるとありがたいです」


おいそれと呼び捨てにできない事情がこちらにはあるのだが、困ったように微笑まれてしまうと弱い。


「ま、マーズ……」

「ありがとうございます、お嬢様」


やっぱり俺の中ではマーズさんはマーズさんなので、違和感がある。それに、口調を崩すとバレるのだ。男言葉が。


とりあえず自分の羞恥心が耐えられる範囲で、口調を女に寄せてみる。


「あの、できれば、なんだけど……魔法、教えて、くれ、ない?」

「私でよろしければ少しは教えられますが。ああ、そうそう。無理をなさらずとも本来の口調でよろしいのですよ?」

「え……っ」


背筋が凍った。


本来の口調とは、本来のシフェリアの口調ということだろう。となると、俺にはさっぱり分からないし、これ以上上手く繕える気もしない。


どうしよう。俺が本来のシフェリアじゃないと分かったら、シフェリアはこの家から放逐されてしまうのではないか?


本来両親から愛されていたはずのシフェリアの幸福を、奪ってしまう形になるのでは──?


「……昨日の夜、旦那様と奥様と話し合いました。今のお嬢様は、一昨日までのお嬢様とかなり違われましたので」


ひゅっ、と喉が鳴った。


やばい。これはもうバレている。何をしてでも、いや何をしてでもはシフェリアの身体を借りているからまずいが、とにかく、放逐だけは何としてでも避けねば……。


「……大丈夫ですよ、お嬢様。結論から申し上げますと、お嬢様はありのままでよろしい、ということになりました」

「……それは、どういう……?」

「そのままですよ。無理して繕わなくても良いのです。私達は、ありのままを受け入れますので」


マーズさんは、にっこりと微笑んでくれた。


「……本当、か?放逐はしないでほしいんだけ」

「そんなことは致しません!」


食い気味で言い切られた。そうか、よかった。


「じゃあ、普通に話すよ」

「ありがとうございます。……申し訳ございません。お嬢様はなんだか、無理をしておられるように見えるので、つい」


……無理、か。確かにしてるかもしれない。でも、これまでお転婆なだけだったお嬢様が、いきなり中身男子高校生になりましたとは言い難い。


「よろしければなのですが、夕飯の際に事情を説明願えますか?」


うっ、言い難いと思っていた所に……。

……どうしたものかな。


「……全部聞いても追い出さないって約束してくれるのなら……?」

「だから、追い出しませんよ。でも、それなら話して下さるということですね」

「うっ……、はい……」


やっぱりマーズさんには敵わない。引きつった笑みを浮かべる俺を尻目に、マーズさんは「ではこの話は一旦終わりにしましょう」とにっこりと言った。


「さて、この本はお嬢様の部屋に持っていきますか?」


先程見繕ってもらった本を指して、マーズさんが問う。


「お願いします」

「……お嬢様」

「癖なんですって……。お願い、マーズ」

「承りました」


マーズさんに呼び捨てタメ口は、やはり難しかった。



───



本を借りたついでに、マーズさんにメモ&ノートがわりの紙をいただいた。魔法書のあれこれを自分なりに纏めるためだ。


紙をもらう時に「お嬢様、文字を書けるんですか?」と失礼な心配をされたが、読めるんだから書けるはず。


本とにらめっこしつつ、ノートに文字を書いてみる。

が、いつも自分の思い通りに動くシフェリアの身体が上手く動かない。


結果、ミミズがのたくったような字になった。


「……もしかして、シフェリア……字を書いたことないのか……?」


確かにシフェリアは5歳児なので、まだ字を書いたことが無くてもおかしくはない。


「さすがマーズさん……心配も完璧に的中か……」


しょんぼりとしながら、俺はマーズさんにこの世界の50音表のようなものを貰いにいき、夕飯まで無心に書き取り練習をしていたのであった。

未だ手探りですので適正と思われる文の書き方やタグ付けなどがあれば教えて下さると嬉しいです。

また、評価していただけると作者が大変喜びます。よろしければ、よろしくお願いいたします。

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