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2 魔法とか鍛練ってテンション上がりますよね

朝食を終えたところで、メイドさんに頼んで書斎へと連れて行ってもらった。


本が読みたいと言ったら例の如く感激されたが、そこは面倒なので割愛。


ちなみに、謎のままだった恰幅のいいメイドさんの名前は、マーズというらしい。感激中にぽろっと零していた。


「こちらが書斎です。お嬢様はお転婆ですから、魔法書を読む場合は私を呼んで下さいね」


魔法書!?


「魔法書があるんですか!?」

「……?ええ、ありますよ。読みたいですか?」

「よ、読みたいですっ!」


魔法。それは男ゴコロをくすぐってやまない、ロマン溢れるもの。


「も、もしかして、魔法剣とか、冒険者とか、そういうのもあったりしますか?」

「魔法剣の本と、冒険者についての本ですか。おそらくあるかと。……持って来ましょうか?」

「是非!!」


うおお、楽しみだ、楽しみだ!

正直、右も左も分からなくて不安だったけど、ここは剣と魔法の世界なんだ!


マーズさんに持って来てもらった『魔法入門書』を読んでみる。音読しましょうか?と聞かれたが、開いてみたら文字は読めたので辞退した。


色々書いてあったが、ざっくり要約すると


・魔法は力に鍵となる言葉を乗せることで発動するよ。

・人によって扱い易い力が違うよ。

・力の種類は『炎・氷・風・雷・土・光・闇』の七つだよ。


ということらしい。


その後は系統別に初歩的な魔法が並んでいる。


ふむふむ、炎の初歩は『火球(フォイアバイル)』、か。


ええと、力の動かし方は……『源なる素』が動き回る感じ。ふむふむ。


試しに『源なる素』を動かしてみよう……うぇ、難しい!動かすのめっちゃ変な力使う!とりあえず、えいやっ!


火球(フォイアバイル)!」

風壁(ウィンズ・マウアー)!」


俺の指からへろんと出た火球を、マーズさんの風の壁が吹き消した。


ん?マーズさんってことは……


そうだ、ここは書斎で、そして俺がぶっぱなした(へろへろだったけど)のはその天敵の火じゃないか。


やべぇ、これは怒られるのでは……?と戦々恐々としながらマーズさんの方を見ると、どこか安心したように微笑んでいた。


「それでこそ、お嬢様です」


あ、はい。

とりあえず、何かありがとうシフェリアさん。


「それにしても、入門書を読んですぐ魔法を使えるようになるとは、お嬢様はやはり大天才ですね」

「え?」

「お嬢様にはよく分からないかもしれませんが、普通は源なる素を動かせるようになるまで短くても二週間、長くて一年以上かかるものなのですよ」

「……そうなんですか」


なんかこう、感覚ですーっとできてしまった。


「お嬢様、ちなみに『そうですの?』と聞いた方がより世間一般的なお嬢様に近付けますよ」

「……ソウデスノ?」

「……まあ、無理はしなくてよろしいですよ。お嬢様ですので」

「……ソウデスノ」


すみません、男子高校生にはキツイです。


「あと、お忘れかもしれませんが、そろそろお父様との鍛練のお時間ですよ?」

「そういうことは先に言って下さいよ!案内お願いします!」


『魔法入門書』と『魔法剣入門書』、『冒険者のイロハ』、『現代貴族覚書』という本を部屋に持っていってもらう約束をして、鍛錬場に急いで移動。


ちなみに『現代貴族覚書』は父のお手製ノートだったりする。下手な本を読むより分かりやすいはずだとマーズさんに勧めてもらったのだ。


まあそれはさておき。


鍛練です!


「お嬢様が大好きな鍛練の時間を忘れているとは珍しいですね」


と言われていた通り、シフェリアは鍛練が大好きらしい。


俺もラノベみたいだとうきうきしているが、身体の浮つきぶりが尋常じゃないのだ。


現在、外から見たシフェリアは、木槍を慣れた手つきでぶん回しながら鼻歌を歌っている。


俺は運動神経は普通なので、シフェリアさんが積み重ねてきたものに期待させていただきます。


さて、どんな鍛練が──


「まずは武器を持ったままの走り込みだ!鍛錬場十周!」

「はい!」


地味!地味だけど鍛練っぽい!


体育館でやる持久走みたいな感覚なので、俺も慣れている。


しかし持久走と違うのは、父が横を並走していて、こちらに木槍を振るってくることだ。


手加減はされていると分かるそれを的確に避けつつ、十周。鍛錬好きなシフェリアといえども息が上がる。


「では続けて練武に入る!」


えっ、マジですかお父さん、鬼畜……。


俺は正直休ませて欲しかったが、シフェリアの身体はしっかり動いた。


へろへろになりそうになる身体に力を入れて、父の槍を防いでいく。疲れた身体には一つ一つが重く、身体の反射だけでいなすには少し難しい。


ので、身体任せにせず、シフェリアの身体の感覚に俺の思考を染み渡らせて、父の攻撃をいなしていく。


「む……っ!?」


めちゃめちゃ身体がダルいのがダイレクトに伝わってくるが、男なのでそこら辺は根性で耐える。こういうのも剣と魔法の世界の醍醐味っぽくて燃えるのだ。


戦闘スタイルは、基本はシフェリアのセンスに任せつつ、父が嫌がりそうな所に攻撃を入れる感じ。


父の顔がだんだん険しくなっていく。見たところ、手加減の度合いをどうするか考えているみたいだ。


できれば、この手加減されててもいいから父に一度勝ってみたい。


そう、(シフェリア)が望んでいる。


ちょっとズルかもしれないけど、どうせだから相手に知られていない、できたてほやほやの手札を切る。


氷弾(アイス・クゲル)!」

「ぐあっ!?」


思ったよりも上手くできてしまった氷弾が父の頭にごん!と命中。火球はあんなにへろへろだったのに、これは一体……。


とりあえず当初の予定通り、足払いをかけて首筋に槍を当てる。ちょっと勢いがつきすぎて首をちょっと打ってしまったことは許してほしい。


「うぐっ。私の、負けだ……」

「まあ、まあ!お嬢様はやはり天才ですね!」

「そうだな……とても嬉しい……」


狂喜乱舞しかねないテンションの、マーズさんの手当てが入る。父は、狂喜乱舞したいが体力が無いという風情だ。


「お、お父さん、その、ごめんなさい……?」

「いや、謝る必要はない。私はシフェリアの成長がとても嬉しいよ」


ふふ、と嬉しそうに笑う父を見て、ようやく肩の力が抜けた。と、同時に。


「お嬢様!?」

「シフェリア!?」


体力の限界にきていた俺は、ぶっ倒れたのだった。

調子の良い時は連続で投稿しますが、基本は週一投稿になると思われます

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