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84話 突如始まる(似非)青春ミステリー


 結局、俺とルビーはその後の授業はサボってしまうことにした。出来の良い息子になろうと誓ったばかりだったが……ラナムナのおっさん、スマン。


 俺達はそのままプライベートルームに居座ることにした。バトラーの入室も禁止して。え? なぜかって?


 「父上、お変わりございませんでしたか!?」


 ルビーの胸の谷間からチョロチョロとキューちゃんが這い出てきたからだ。トカゲと喋ってるところを見られたらマズいからね。ってか、キューちゃん……けしからんな。ルビーもそんなところにドラコーヌを格納すんなよ。


 俺は心の中で密かに二人に冷静なツッコミを入れつつ、答える。


 「一人で居たせいか、色んな奴に話し掛けられるようになったな」


 「そうですか」


 キューちゃんは頷きながら安堵の表情を浮かべたが、ルビーの顔が少し曇った。


 お、やっぱりルビーの奴、自分が周囲を威嚇していたことは認識しているのか……と、一瞬思ったが、ルビーから返ってきた言葉は俺の想定とは違うものだった。


 「おかしいですね……。人間除けの魔法をアダム様にかけておいたのですが……」


 「「え!?」」


俺とキューちゃんが同時に驚きの声を上げる。なんだよ、その変な魔法は……。


「ちょ……ルビー。どういうことだ?」


俺が問い詰めるとルビーは少し困ったような顔をしてモゴモゴ答えた。


 「アダム様が入学以来ずっと女子学生たちに狙われておりましたので、わたくしが不在の間も貞操をお守りしようと思いまして……」


 ――いやいやいやいやいや。俺はどこの箱入り娘だよ。普通ないよね? そんな守り方? 聞いた事ねーよ。人間除けの魔法なんて。


 「それが効いていないとは……。何者かが魔法の効果を解除したとしか思えません……」


 ルビーが深刻な顔で呟く。


 「しかし、人間除けの魔法がそんなに簡単に解除できるものでしょうか?」


 キューちゃんも口を挟む。え? なんなの!? キューちゃんもそんな魔法があること知ってるの?


 「……いいえ。そんな簡単に破られるような魔法ではありません。もし本当に私の魔法を破った者がいたのだとしたら……その者はかなり高位の魔法使いでしょう……。先ほどキューチャン様が感じられた不穏な気配というのももしかすると……」


 「……不穏な気配? なんだそれは?」


 ルビーの言葉を遮って俺は二人に尋ねる。するとキューちゃんが少し間を置いて答えた。


 「――先ほど、学院に到着した時に人間の物では無いような魔力を感じたのです。しかし、私が探ろうとしたのに気付いたのか、その後その魔力はすぐに消えてしまいましたが……。少なくとも学院内に人間ではないモノが潜んでいるということです。それもかなり魔力の扱いに長けているモノです。……ルビー殿の魔法を破るほどのモノとそんなに魔力の高い存在がこの学院内に二人もいる方が不自然です。恐らく同一のモノだと考える方が可能性は高い」


 キューちゃんが(おそらく)険しい顔をして呟く。キューちゃんにここまで言わせる魔法使いが敵だとしたら厄介そうだけど……。俺はそこまでのやり取りを聞いて少し違和感を感じ、口を開く。


 「――ふーむ。とはいえ、色んな奴に付きまとわれはしたけど、特に大きな害になるようなことは起きてないけどな。そんな難しい魔法を解除したとしたら、何のために解除したのかさっぱりわからん」


 俺が言った言葉にキューちゃんも腕を組んで考え込む。


 「父上の身に特に何も起きていないのなら、確かに動機が不明ですね」


 「……いいえ」


 しかし、俺達の言葉にルビーは真っ向から異を唱えた。


 「動機は明白です。……きっと犯人はアダム様と仲良くなりたかったのです! そのためには高度な魔法解除もためらわない程に! ……許せませんね」


 ……ルビーはなんか考え方が若干斜め上なんだけど大丈夫かな? 少し引き気味に見つめる俺にキッと視線を向けて、ルビーが言葉を続ける。


 「アダム様。わたくしが不在の間に、アダム様に近づいた者の名前を漏らさず教えてくださいませ! きっと犯人はその中にいるはずです!」


 鬼の形相のルビーに問い詰められた俺は、ルビーが居ない間に喋った奴らの名前を残さずゲロさせられたのだった――。


 

 「……怪しいのは、レルワナ・シュパナテイクかルルリナ・シュパナテイク、もしくはさっき追い払ったシュリアルラ・メルトーサ辺りでしょうか……。ジェム・ゾイダートという者も怪しいですが……。いやダークホース的にマシュラ先輩も怪しい気がしてきました……」


 俺の話を聞いて、ルビーが犯人候補たちの名を上げる。怪しい奴多いな! おい!


 「アダム様。犯人捜しはわたくしめにお任せくださいませ!」


 ルビーがスッと背筋を伸ばしたかと思うと、俺の前に頭を下げた。ルビーの頭の上に掴まっていたキューちゃんが振り落とされそうになって慌てているのが見えた。


 ルビーはなんだか今回の件に関しては、なんだかポンコツになりそうな香りがするなぁ。強引に冤罪をでっちあげそうな予感……。シュリアルラ辺りを陥れるために。


 「よし。じゃあ、犯人捜しのメインはキューちゃんに任せる。ルビーはキューちゃんの助手!」


 「「え!?」」


 ルビーとキューちゃんは同時に声を上げた。






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