表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/176

9話 石と言えども引きこもりたくなる日もあるし、人恋しくなる日もある


キューちゃんを探すのを諦めてから、俺の中に残ったのは『もう生き物に会うのが嫌だ』という気持ちだけであった。


また情が湧いてしまったら、別れるのが辛くなる。あんな思いは二度としたくなかった。孤独も寂しいけど、別れの辛さよりはずっとマシだとその時は思っていた。


そして俺がそんな風に思っている間、不思議なことに俺の周辺に生き物が現れることは一切なかった。


ただ、動く生き物の出現が無い代わりに、俺の周りでは植物がどんどん育っていた。


特に俺の足元から生えてきた芽は成長が早く、俺を自らの幹の中に取り込んで更に大きく大きく成長していった。


森は静かにゆっくりと大きくなっていった。



……


……


……



ふとある時、周辺の様子を感知してみると、もはや樹海と呼ばれてもおかしくない程の広範囲に木々が勢力を広げていることが分かった。


俺はと言うと、樹木に囲まれて穏やかな時を過ごしているうちに、いつしか『生き物に会いたくない』という気持ちはだんだんと薄まっていっているようだった。


俺の気持ちの変容と共に、俺の住む樹海には次第に生き物が姿を現すようになってきた。初めは小さな虫だけだったが、段々と大きな動物たちも姿を現すようになっていた。





そしてある日、俺の中にまだ少し残っていた『生き物に会いたくない』という気持ちを、かけらも残さず吹き飛ばすような出来事が起きた。


 

――なんと、森の中に『人間』が入ってきたのだ。



俺は思わず目を疑って、二度見した。……いや、目は無いんだけどね。比喩だよ、比喩。久しぶりの。



やっぱり間違いない。……人間だ。


若い人間の男が二人、慎重に森の中を探索するように歩いている。一人は体格の良い精悍な顔立ちの青年で、もう一人は細身の優男だった。


二人は手に槍の様なものを持ち、体に巻き付けた布を腰の部分でひもで縛ったただけのようなシンプルな衣服を身に着けている。



うっわ。人間だ! 人間!! 初めて見た!!


俺はなんだか急にテンションが上がってくる。


ヤバい! 観察したい! 近くに居たい! しゃべりたい!


おい、こっちだ! こっち!! どっちでもいい! 俺に気付いてくれ!! 


俺は久しぶりに体内から光を発してみる。随分久しぶりだったので、どうかと思ったが以前と変わらず光ることが出来た。


強く強く強く……体を光らせる――。




「~~~~~~! ~~~~~~~~!?」


体格の良い青年が俺の方を見て、隣の細身の青年に何かを叫んだ。


あ、気付いたかな?? 


……けど、やっぱり彼らの言葉は俺には分からないんだな。俺は若干ガッカリする。


まあ、俺もまさかここで彼らが日本語を話し始めるなんて都合の良い展開があるとは思わないが、なんかチート的な力とか設定で自然に言葉が理解できたりしないかなぁ……なんてちょっと期待してたり、してなかったり。


ま、とにかく、言葉については分からないということが分かったので、とりあえず二人の反応を見る。


「~~~。~~~~? ~~~~~~~~!?」


細身の青年が俺の方をじーっと見ながら、体格の良い青年に何やら話し掛ける。


「~~~~~~?」

「~~~~~~」

「~~~~~~!」

「~~~~~~!」


二人は何やら、ゴニョゴニョと会話をしている。


最後に体格の良い青年が頷くと、俺にゆっくり近づいてきた。


お? 


体格の良い青年が恐る恐る、といった感じで木の幹に挟まれている俺を見る。


「~~! ~~~~~~~~~!?」


すると急に驚いたような顔をして、細身の青年に何事かを大声で叫んだ。


おお! なんだよ! なぜ体格の良い青年が驚いているのかはよく分からないが、俺はその青年の声にビックリして光るのをやめた。


「~~~~~~~? ~~~~~~~!」


体格の良い青年が首を捻りながら何かをしゃべった後、俺に手を伸ばして少しだけ躊躇した後に、ゆっくり俺の体を触った。


……人間の手だ。


なんでもないようなことなのに俺はなんだか感動する。じんわりと暖かい人間の体温を感じた気がして、柄にもなく心が震える。うおー、俺ってばこんなに人間との触れ合いに飢えていたのか……。



「~~~~~~~? ~~~~~~~~」


体格の良い青年が俺を見つめて何か呟く。その後、おもむろに俺に手をかけて引っ張り始めた。


初めは力だけで俺を取り出そうとしていたが、思いの外がっちりと木の幹に嵌まり込んでいたようで、青年は持っている槍を使って木を剥ぎ取りながら俺を取り出した。


「~~~~~~~~~~~」


段々と木の幹の間から姿を現してきた俺を見て細身の青年がキラキラ輝く目で何かを呟いた。


「~~~~~~~~~~~」


体格の良い青年も何やら呟く。


この時に初めて分ったことだったが、俺の体の大きさはどうやら人間が両手で抱えるくらいのサイズだということが明らかになった。おお……思ったよりも大きかったな、俺。


「~~! ~~~~~~~~~。~~~~~~~~~~~!」


体格の良い青年が俺を持ち上げようとするが、どうやら重くて持ち上がらないようで、恐らく細身の青年にも手伝うように声を掛けたようだ。


すぐに細身の青年も俺に手を伸ばし、一緒に木の幹から引き上げる。


へー、俺ってそんなに重いのか。ま、石だしな。


二人掛かりでようやく俺を木から取り出して、青年たちは一旦俺を地面に置く。


「~~~~~~~~~~~」


「~~~~~~~~~~~」


「~~~~」


二人は、なにやらまたモニョモニョと話していたが、おもむろに二人で俺を持ち上げて、えっちらおっちら運び始めたのだった。


うおー。俺、どこに連れて行かれるんだろう~。ドキドキワクワク。













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ