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76話 コミュケーションスキルを貪欲に学んでみる

 

 さてと。まずはコミュニケーションの鬼、トルティッサでも探してアイツの言動でも観察してみようか。


 アイツも少し極端すぎるところはあるが、コミュニケーション能力だけ見ればかなりの高レベルだろう。なんたってあんなに尖ってた俺に一番に話し掛けてくるくらいだからな。……空気を読まないってだけじゃないはず!


 俺はそんなことを考えながら男子寮に向かって歩き始める。この時間なら部屋に居るかな? 夕食にでも誘ってみるか。この間、断っちゃったし。まずは低めのハードルから越えてみよう。


 そこまで考えたところで、自分自身に苦笑する。一番にトルティッサを誘ってみようと思うあたり、俺も随分トルティッサに手懐けられたもんだ。


 ま、そこも含めてヤツのコミュニケーション能力の高さを証明しているのだろう。悔しいがそれは認めざるを得ない。


 俺はトルティッサの部屋の前までくると、大きく深呼吸をする。決意したとはいえ、やはり初めて人を夕食に誘うのは緊張する。万が一にも断られたらどうしよう……。


 ああ、こういう意味でもトルティッサは凄いな。俺に何度断られても食事に誘ってくれるもんな。なんだかトルティッサの評価が俺の中で鰻登りだ。いや、でも実際俺に出来ないことを平然とやってのけるんだから。そこに痺れる、憧れるって奴だ。


 えーっと、まずはノックしてから……なんて言えばいいんだ? 『よう! もう飯食ったか?』か? イヤイヤ、なんか馴れ馴れしすぎるな。『今日の夕食はどうするんだ?』かな? うーん、なんか唐突だよな……。


 俺がトルティッサの部屋の扉の前で悶々と考え事をしていると不意に声を掛けられた。


「おや? アダム君じゃないか! そんなところでどうしたんだい?」


 そこには暑苦しい笑みを浮かべるトルティッサが立っていた。


 げっ、コイツ部屋の中に居たんじゃなかったのかよ! やべえ、部屋の前で長考してたの見られたか? ずっと見られてたら恥ずいことこの上ねーじゃねーか。


 俺は焦りまくる心の声を何とか落ち着かせながら、出来るだけ平静を装って返事をする。


「あー、その、なんだ。お前……この後、俺と夕食に行かないか?」


 平静を装ってはいるが、動揺していることに変わりはない。考えていた以上に直球な物言いになってしまい、更に動揺する。


「え!?」


 トルティッサもいつも塩対応だった俺の突然の誘いに驚いたのだろう。珍しく絶句している。うん、デスヨネー。


「いや、その、この間、断っちまって、悪いと思って」


 しどろもどろで言い訳じみた発言をする自分に、どこか冷静なもう一人の自分が「そんなこと言わなくていいのに……」とため息をつく。おおう! 上等だ! じゃあテメーが前に出ろや!! 俺は動揺のあまり冷静なもう一人の自分に喧嘩を売ったりしてみる。


 すると、トルティッサがパァッと輝くような笑みを浮かべて頷いた。


 うぉ! キタコレ! イケメンスマイル。こういうタイミングで使うのか! よっし、メモメモ!!


「嬉しいよ! アダム君。もちろん、ご一緒させていただくよ!」


 おお、嬉しい時は嬉しいって恥ずかしがらずに言った方がいいんだな。メモメモ!


「そうだ! せっかくだから街に出て食事をしないかい? せっかくのアダム君との夕食だ。食堂の食事で終わらせるのも味気ないし! 良い店を知っているんだ。すぐに外出届を出して馬車を呼ぼう!」


「お、おお」


 トルティッサの勢いに飲まれるようにして、俺は気付いたら街へ向かう馬車に乗っていたのだった。


 ……時には強引に話を進めるのもコミュニケーションスキル……なのか? 一応、メモメモ。











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